第24期雀王決定戦観戦記 1日目(2回戦)

【担当記者:中島由矩】

2回戦(矢島-橘-仲林-西村)抜け番・千貫

僅差の1回戦を、現雀王の仲林圭が制して迎えた2回戦。1回戦4着だった千貫陽祐が抜け番で、入れ替わるように入ってきた矢島亨にとっての初戦となる。

【東1局0本場】

リーチ・一発・タンヤオ・ピンフ

橘哲也が8000を先制すれば、

【東3局0本場】

リーチ・ツモ・タンヤオ・チートイツ

西村雄一郎が2000・4000を返す。

2回戦は、この2人によるマッチレースとなった。

【南3局0本場】

東家・仲林圭 8000
南家・西村雄一郎 38900
西家・矢島亨 12900
北家・橘哲也 40200

3着目の矢島が、麻雀牌:一萬ポンから発進。ドラが麻雀牌:中であることも加味して、他家を牽制しつつ、高く仕上がれば、というところ。こういう仕掛けには「お出かけ」という名前がついている。果たして、正式な麻雀用語として認められる日は来るのだろうか。

矢島は続く麻雀牌:六萬チー

麻雀牌:九萬チー

と三副露し、ガムシャラに前に出る。

3つ鳴かせた責任…、と思ってはいまいが、西村も麻雀牌:五索をチーして三色同順片アガリのテンパイを取る。トップ目の橘まで1300点差に迫る中、ここで退くわけにはいかない。

しかし、このツモがあった。自身の目から3枚目で、場にはションパイのドラ麻雀牌:中だ。

西村は、当会に入会して17年目の選手で、関西本部に在籍している。Xには「初めて決定戦いったぞー!これを逃せば次はいつになるかわからない、これが最後かも知れない。一打一打噛み締めて堪能したいと思います」と記した。

◾️打麻雀牌:七萬なら矢島に8000の放銃
◾️打麻雀牌:六萬か打麻雀牌:中ならセーフ
◾️上記以外は自身がノーテンに

という状況の中、

牌の組み合わせ上、カンチャンやペンチャン、シャンポンなどもありえる数牌ではなく、タンキにしか当たらない麻雀牌:中を選択した。

この局は、トップ目の橘も最終盤に粘り込んで形式テンパイを入れ、三軒テンパイで流局する。

【南4局1本場】

東家・西村雄一郎 39900
南家・矢島亨 13900
西家・橘哲也 41200
北家・仲林圭 5000

今局も軽快に仕掛けていくのは矢島。二副露してタンヤオに向かい、3着を確定させにいく。

「協会ルールはオカがあるからトップの価値が大きいけど、ラスにならないことも大切だよ」

と矢島から教えてもらったことを、今思い出した。自身の麻雀も磨きながら、同時に後輩の面倒見もいい矢島を、慕う若手は多い。きっとたくさんの応援団が、スマホやタブレットの向こう側で祈っていることだろう。

親番の西村は、789の三色同順を本線に手を進めるものの、最後は形式テンパイを受け入れる麻雀牌:六索チーで、次局に向けて懸命に望みをつなぐ。

すると、西村の粘りに、ついに牌が応え出す。

南4局2本場、後のインタビューで「払おうと思っていた」と語ったドラのペン麻雀牌:七筒を引き入れてテンパイ。即リーチに行く。

最後は、麻雀牌:二筒が4枚見えたことでノーチャンスになった麻雀牌:一筒を、矢島からロンアガリ。裏ドラが1枚乗って、7700は8300に。

ついに橘を逆転し、次局伏せて終われる権利を得ると、4着目の仲林が自風の麻雀牌:北から発進したことを利用し、麻雀牌:一索を打ってテンパイを入れさせて、

麻雀牌:三筒を差し込んで、自身のトップを確定させた。

西村は試合後のインタビューで、「ピンズで待ってると分かりやすかった。ツイていた」と笑顔で、しかし謙虚に語った。

自身がアガるだけでなく、他家の動向に目を配り、時には形式テンパイで粘り込む。「西村雄一郎は、こうしてA1リーグを戦ってきたのだ」と、視聴者に向けての名刺代わりに、ちょうどいい試合になったのではないだろうか。

2回戦トップは、西村雄一郎。ずっと橘を追う2着目だったが、南3局・南4局で力勝負に持ち込み、見事に競り勝った。

2着は、橘哲也。西村に西村の事情があったように、橘には橘の勝ちたい理由がある。1回戦3着、2回戦2着と、戦えているので、3回戦の抜け番でリフレッシュし、4回戦・5回戦でトップをもぎ取りたい。

3着になったのは、仲林圭。1回戦で700点差のトップを勝ち取り、2回戦は4着目から3着に浮上して終局。手放しで喜ぶことはできないものの、3回戦から先も、アグレッシブな選択を続けて、雀王三連覇を見据える。

無念の4着になったのは、矢島亨。最下位からのスタートとなったものの、これが1回戦だったのが、不幸中の幸いと言えよう。今後必ずやってくるチャンスを確実にとらえるべく、今は早く次の試合がやりたい。