第24期雀王決定戦観戦記 1日目(12回戦)

【担当記者:坪川義昭】

11回戦で仲林がトップを取ったことにより、首位を独走していた西村に並んだ。
先の長い決定戦とはいえ、二人の勝負になっていくような空気が流れはじめている。

東2局

北家の西村がイーシャンテンになったところで、ドラの麻雀牌:九萬を手放す。
タンヤオやピンフ、更に三色も見えるような手でカン麻雀牌:八筒には拘りたくない。
ドラ重なりか、手役を追い求めて麻雀牌:九筒切りがマジョリティだろう。

すぐに麻雀牌:八筒を引き入れて先制リーチ。
ドラをワンテンポ早めに見切り、先手を取る機会を損失しないようにするプレイヤーは現在のA1リーグで稀有な存在だ。
そして、西村はその精度が非常に優れている。

すぐにチートイツで千貫が追い付くが、リーチの圧力に屈してテンパイを取れない。
やはり、先制リーチは偉大である。

南家の仲林にテンパイが入った。
ドラも役もないカン麻雀牌:三萬に価値はなく、ヤミテンに構える。

雀頭の麻雀牌:七筒がアンコになり、話が変わった。
これならば麻雀牌:四萬麻雀牌:七萬リーチも悪くない。
しかし、仲林はここでもヤミテンを選択する。

というも、形は変化しているが待ちの枚数は、たった1枚増えただけなのだ。

変化を目の前にするとリーチといきたくなるものだが、仲林はそんな誘いには乗らない。

上家から放たれた麻雀牌:四筒をカンチャンでチーして麻雀牌:一筒を切り、役を付けていく。
地味なプレーだが抜かりない。

残りツモ1回で西村の当たり牌を掴んだ。
ワンチャンスにもなっていない無筋。

それ程時間を使うことなく、麻雀牌:二索を場に放ち2,000点の放銃となった。
淡白な放銃に見えるだろか?

ドラが既に3枚飛んでいることから、放銃したとしても高打点が出てくる可能性は非常に低い。

流局時に1,000点の支払いが1,500点の収入になれば差し引き2,500点。
十分見合う勝負なのだ。

東4局

南家の西村が配牌で手を止める。
ドラが麻雀牌:二索でなければ迷うことはないのだが、タンヤオを目指して麻雀牌:東のトイツ落としが良さそうだ。

やはり西村はブレない。
1巡目だろうが、ドライな選択をし続ける。

北家の仲林にも選択が訪れた。
麻雀牌:八索を切ればリャンメンとリャンカンのイーシャンテンだが、橘がソーズの染め模様である。

ならば、こうしておいた方がピンズの伸びをキャッチできる。
千貫もピンズに染めている可能性があり、この段階では捉える色を決めにくい。

西村がイーシャンテンになった。
マンズのホンイツに渡りたいところだが、麻雀牌:四萬が枯れてしまいポンテンを取らざる得ない形になっている。

予想通り、橘はソーズのホンイツに向かっていた。
この巡目にしてメンツがないことで、ホンイツ・チートイツのルートを選ぶだろう。

千貫もピンズ染めで、三者が別色のホンイツと珍しい偏りが生じていた。

西村が役牌の麻雀牌:東を叩いてテンパイを入れる。

仲林も絶好の麻雀牌:六筒をアンコにしてリーチ。
残った麻雀牌:五萬麻雀牌:八萬の景色は最高だ。

実際は西村が3枚持っていたが、力強くラス牌の麻雀牌:五萬を引き寄せて仲林が2,000-4,000を決めた。

南1局

苦しい展開が続いている千貫に、久々の先制テンパイが入る。
自信を持てる待ちではないものの、リーチで相手を押さえつけながらツモりにいきたいところだ。

同巡に追い付いた親番の西村がドラを切って追っかけリーチ。
こうなると、千貫も肝が冷える。

更に仲林も追い付き、リーチを敢行。
打点は安いが待ちは一級品だ。

千貫が一発で西村に12,000点を打ち上げる。
何度目の競り負けだろうか。
観ているこちらも、胸が痛くなるような放銃である。

南1局1本場

橘はドラの麻雀牌:東をギリギリまで引っ張る手順を踏む。
麻雀牌:四萬をトイツ落とししながらドラ重なりか、ジュンチャンを目指し、最速テンパイへの寄り道は考えない。

イーシャンテンになったところで、ドラの麻雀牌:東をリリース。
仕掛けて2,000点にする気は毛頭ない。

ジュンチャンが確定する麻雀牌:九萬を引いたなら、リーチだ。
これまでの鬱憤を晴らすようなアガリを決めたいところ。

しかし、橘も千貫同様に一人旅をさせてもらいない。
仲林が追い付いて牌を横に曲げる。

またもや一発でツモアガリを決めて2,000-4,000。

何度チャレンジしても跳ね除けられてしまう。
橘の表情からも、その苦しさが滲み出ていた。

南4局1本場

トップ目でオーラスを迎えた仲林が役牌の麻雀牌:北をポン。
残された手牌もリャンメンだらけで、ゴールは目前だ。

これ以上負債を増やすわけにいかない橘にも軽い手が入り、すぐにテンパイ。
ヤミテンに構えてゲームを終わらせにいく。

リーチをかけてハネツモが決まれば、2着浮上だ。
しかし、リーチ棒を出した後に1,000点でも放銃すればラスに転落する。

リスクとリターンが見合わない。
ヤミテンを続行し、ドラの麻雀牌:五萬を引き入れた時に勝負をかけよう。

その考えが甘いのかはわからない。
たった一言、リーチと言えていたらならば————

現雀王の仲林が連勝を決めて、遂に西村を追い抜いた。
二人のデットヒートはまだまだ続く。