第23期雀王決定戦観戦記 1日目(3回戦)
【担当記者:坪川義昭】
高校生の頃に麻雀に出会い、麻雀のプロの存在を知った。
今から20年以上前の話である。
当時は麻雀のゲーム性に対する認識が今とは違い、当たり牌を一点で読み、ピタリと止めてアガリ切るといった漫画のような世界を想像していた。
知識が増えれば増えるほど、思考はドライになっていき、そんなことは不可能だと理解する。
仕事の合間に決定戦を視聴しようとスマホを開くと3回戦が開局。
画面の向こうには高校生の私が想像していた信じられない世界が存在していた。
東4局
親の堀が役牌のを2鳴きする。
高いケースはなく、安くて早いケースはあるだろう。周りの警戒度はそこまで高くない。
鼻息の荒い者が一人。
田幸である。
役牌のをアンカンし、即リーチと出た。
リーチ宣言牌のドラをポンして全軍突撃の構えで参戦したのは吉田だ。
無筋のを叩き付ける。
テンパイが入れば、あとは切った張ったの捲り合いである。
お互い手牌が倒れるまで勝負し続けるだろう。
この捲り合いに勝ったのは田幸だった。
無筋でも止まらないテンパイならば、後筋になっているなど止まろうはずがない。
よく理解ができなかった。
というか、私が知る麻雀ではなかった。
シンプルなリャンメンで考えるとマンズは全滅、ピンズは3筋残りだが、その内2つはワンチャンス、ソーズは1筋のみ。
田幸のリーチ後に自ら無筋を開拓し続けた結果、危険牌がかなり絞られているのはわかる。
捨て牌と見えている牌を照らし合わせると、当然以外のブロックでマンズがあるのは想像しやすい。
それでも自身が満貫のテンパイ、が通っていることで止められそうもない。
まだまだ追い付けない世界がここにはある。
なんだかスマホを持つ手が震えた。
南2局1本場
オヤの吉田が3副露の満貫テンパイを入れた。
ラス目の田幸もチートイツのヤミテンを入れていたが、これ以上待っていられないとリーチに出る。
堀の切り番で、副露しているのはと役はないのだが、この先の話にそんなものは関係しない。
あまりにもアッサリと深く考えることなく、田幸のリーチにド無筋のを放つ。
よく理解ができなかった。
ソーズは3〜8が全く通ってなく、ドラ表示牌である。
このシーンを後から改めて見直した。
4枚見えている数牌が堀の目からは、、、、で更にそれ以外もワンチャンスとなれば4面子1雀頭を作るのは難しく、田幸の手は七対子だろうという思考にはなる。
それは、改めて見直したからだ。
実際卓に着いていて、それを瞬時に判断し無筋をこの手から打てるかというと全くの別問題である。
結果は田幸のツモアガリで決着しているのだが、影に隠れながらも堀はいつも我々を魅了してくれる。
手の震えが治らないので、スマホは机の上に置いて見るようにした。
南4局
見てわかるように超絶接戦のオーラスを迎えて、最初にテンパイを入れたのはオヤの堀である。フリテンながらも勝負を決める親マンだ。
すぐに橘も喰いテンを入れる。
ツモればトップ逆転だが待ちはドラ表示と苦しい。
田幸もタンヤオ仕掛けで2000点のテンパイ。
堀からの直撃ならばトップだが、アガリ所を選んでいられる状況ではない。
最後に吉田も追い付いた。
こちらも田幸同様にトップにならずとも手牌は倒さざる得ない。
吉田が苦悶の表情を浮かべる。
残り1巡でノーテンならばラスに落ちる可能性が高いものの、切り出す牌はあまりにも危険。
熟考の後にを抜いた。
そして、次巡更にを置く。
流局。
テンパイ開示はオヤから順に行われ、堀が手牌を伏せる。
一人ノーテンならば吉田に逆転され、田幸の一人テンパイならば田幸に逆転されるのにだ。
吉田が長考してを連打したのだからノーテンに決まっている。と思う人も多いかもしれないが
・掴んだ牌の単騎待ちでのテンパイ復活
・くっ付いてテンパイ復活
・重なってテンパイ復活
のパターンがある以上、伏せるのにはリスクがある。
更に吉田がノーテンだったとしても、橘がノーテンであればトップ陥落となる。
おいそれと伏せることができるプレイヤーがそういるとは思えない。
20年前に憧れた世界が今目の前にある。
こんな次元の麻雀を見せられてしまったら、もう追い付く術はない気がしてしまう。
そっとスマホの画面を閉じて仕事を再開した——————