第20回オータムチャンピオンシップ観戦記(4回戦)

【担当記者:坪川 義昭】

未だに首位は三連覇中の矢島だが、その後ろには茨城がピッタリと付けている。
この一戦でどれだけ差を広げられるかがポイントだ。
富永もトップを取れば三つ巴の最終戦に持ち込める。
ただ一人、武中だけが遥か彼方から三者の勝負を見届ける格好になったが、可能性はゼロではない。
日本プロ麻雀協会のタイトル戦における代表的な逆転劇は2つあり、第4期女流雀王決定戦で381.4pの差を逆転した眞崎雪菜。
そして、第13期雀竜位決定戦で410.0pを逆転した武中進である。
第13期雀竜位決定戦観戦記
どんな窮地に立たされたとしても、成功体験のある武中が勝負を諦めることはない。
東1局

南家の矢島がを仕掛けて手を止めた。
を切れば2,000点のテンパイだが、安い点棒は拾う気がない。
三元役を見据えて切りとする。

攻めるしかない武中がメンタンピンのリーチを放つ。

も仕掛けた矢島はドラの
単騎に受けて、全軍突撃の構えをみせた。

ここから手を曲げることはない。
持ってくる無筋を躊躇なく連打していく。

肝を冷やした武中だったが、を引き寄せて1,300-2,600で先制点を取った。
東3局

親番を迎えた武中が2巡目にダブをアンコにする。
ここからの親番は攻める以外の選択肢が残らない。

丁寧な手順で–
のリーチを放つ。
立ち向かおうとする者はいない。

これをあと何回繰り返せば勝利が見えてくるのだろうか。
それでも、やっと一歩目が踏み出せた。
南1局

南家の矢島がペンのチーから発進する。
ダブ・チャンタが本線だろうか。

受け気味の進行をしていた茨城が、上家から放たれたに止まった。
絶好の急所ではあるが、矢島の仕掛けにが切りきれるかが最大のポイントである。

微差ではあるが、ビハインドを背負っていることも加味して前に出る。

このテンパイが入ったならば、十分勝負に見合う。
躊躇なくを切り捨てた。


既にをアンコにしていた矢島から声がかかることはなく、イーシャンテンになった富永の
を捉えて5,200点。
南2局1本場

またもや矢島がをポンして、次はチンイツに向かって突き進む。

無造作に矢島が切り出したドラのを武中が叩き、一気に場が引き締まる。

をトイツ落としして、三色まで見たかった富永だが、この緊急事態で方針変更。
を仕掛けて捌きに出た。


矢島のチンイツが形になりかけていたが、を捉えて1,000点で捌くことに成功。
トータル首位の矢島を自由にはさせない。
南3局

微差ではあるが、矢島をラス目に落とした富永はこの差を維持するためにバック仕掛けを入れる。

ところが、ドラのが重なったところで本手に化けた。
これさえ決めることができれば、2着は固くなる。

仕掛けを受けた茨城の手が難しい。
効率を考えるならばを切りたいが、手牌は四暗刻のイーシャンテンである。

2着以下が微差なこともあり、アガリ最優先として夢は追わなかった。

更にを引いたところで、またもや分岐点。
は1枚切れで縦は弱く、ツモ切りが本命か。
はたまた、タンヤオを確定させておく切りもあるだろう。これならば夢を追うことができる。

が絡むアガリは不要で、高打点と仕掛けのバランスを取り
切りとした。

ここにリーチをぶつけてきたのは、やはりこの男。
矢島である。
絶好のカンを引き入れると、ありったけの力を込めて
を叩き付けた。


この点差でのアガリの価値は絶大である。
ポンテンを入れた茨城は現物のを切らず、捲り合いを有利に進めるためにリャンメンでの勝負を選んだ。

矢島の開かれた手を見つめながら、絶望感に苛まれる。
南4局

矢島に2着順差を付けられてしまった親の茨城が先制リーチを放った。

ここに追い付いたのが富永。
ツモアガリを決めれば矢島を捲るリーチである。

更に矢島も4メンチャンのテンパイを果たしたならば、捲り合い上等で3軒目のリーチを敢行。


武中が切ったに声を掛けたのは富永。
矢島からリーチ棒が出たならば、ツモらずとも2着へ浮上である。

矢島の牙城は崩れなかったが、三者に可能性が残る最終戦となった。
果たして、矢島の四連覇は達成されるのか。
新たな王者の誕生か。
運命の一戦が始まる————