第19回オータムチャンピオンシップ観戦記(5回戦)
【担当記者:五十嵐毅】
5回戦
座順・富永―小早川―菊地―矢島
東1局、菊地がタンヤオ678三色の5200点を和了。
小早川がソーズのホンイツで攻めており、とのシャンポンでテンパイしたときにドラのを打ち出してテンパイを明確にしていた。これを受けていた富永がピンズの上を払い、菊地のヤミテンに放銃してしまった。
東2局、優勝争いに向けて大きなアガリが出る。
第1ツモをツモってイーシャンテンだった矢島、一通が確定するを持ってきてリーチ。
これはリーチ時点で全ヤマ。2枚富永に流れたが、9巡目にツモアガった。
親は小早川、11800差が付いた。
矢島、菊地が浮いたまま南場へ。
南1局、親の富永がリーチ。
この手で切りは不自然だが、が4枚出、うち2枚を自分で切っているフリテンなので、こうならざるを得ない。
このリーチを受けて回っていた小早川だが、ドラをアンコにしてテンパイ。こうなればリーチだが、の形からどう受けるか?
富永にはともに通っていない。場には、(矢島3巡目)(菊地8巡目)が1枚ずつ切られており、菊地はも切っているのでのほうがありそうだ。
単純な引っ掛けというわけではなく、これらを考慮して切りリーチを選んだが、これで3900放銃。
矢島との点差は18300と広がる。
1本場の富永は、悪い部類の配牌をうまく七対子にまとめてタンキリーチ。これにドラ入りタンピン三色イーシャンテンの菊地が放銃。矢島、小早川の点差は動かず。
2本場、ここが疑問符の付く局となった。
小早川の配牌、ドラがアンコのチャンス手。
素直にオタ風から行くかと思われたが、カンを拒絶する切り。次巡を引いてカンができるが無視してツモ切り。次巡ツモ、このリャンメンは採用するかと思われたが、切り。マンズのホンイツに決め打ち、迷いを断ち切るかのような打ち方を見せる。
ドラアンコならばテンパイさえすれば満貫は保証されている。私(五十嵐)は解説しながらも、強引な手順に感じられた。
小早川から見れば、18900差は満貫をツモってもまだ満貫差が残る。だがハネマンツモならば、もうひとアガリの差になる。ホンイツ決め打ちにはそんな意図もあっただろう。
結局、この局は小早川がチーから仕掛け、最終的にはテンパイまで。親の富永のピンフリーチが入ったが、マチの–は薄く、流局。2人テンパイで終わった。
解説席に座りながら、私は小早川がメンゼンでリーチ手順を踏んでいたらどうなったかがずっと気になっていた。
いま、観戦記を書きながらツモ牌を追ってみた。小早川がメンゼンだった場合、
ドラ
ドラ
このどちらかの牌姿でイーシャンテン止まり。
がうまいタイミングで出ればアガれるかもしれないが、はリードする矢島が序盤から押さえ、チーの後にトイツにした。チーがなければ菊地に入るが、親の富永ではなく菊地である。ドラも何もないここが中盤のション牌を簡単に打つはずはなく、小早川のアガリはどのみちなかったようだ。ならば、仕掛けで矢島を降ろし、テンパイを入れられて点差を3000点縮められたこのほうがマシか。
3本場も富永リーチで流局。矢島の1人ノーテンでさらに4000点差詰まって11300差。ここが、小早川が一番勝利に近付いた瞬間だった。
4本場、矢島がカンをチーしてタンヤオ。
のテンパイを入れる。マチはとドラのシャンポン。
16巡目、親の富永がテンパイを入れるがノーリーチ。そのテンパイ打牌をポンしてテンパイの小早川。
が矢島に通っているが、が4枚見えノーチャンスでもあり、自分のアガリを取りに行くのならば出ていくのはに決まっている。
3900+4本場の直撃、供託棒の2000点もかっさらわれて、その差は一気に23500と開いた。
そして、小早川にこの点差を捲る余力はもうなかった。
南2局の小早川、自身の親番はペンチー、789三色で仕掛け、終盤はなんとか形テンでもと、必死の手組にするが、有効牌を引けないままイーシャンテン止まりで終了。
ラス前は親の菊地が七対子タンキでリーチするも、現物の–マチで矢島がピンフをテンパイ。これに小早川が放銃。
オーラス、矢島の親番は流局で終了がお決まりのところだが、678三色の狙える好配牌。これを3巡目にテンパイ。
6巡目に小早川から高目で5800をアガった。これで小早川は役満出アガリすら不可になった(ツモ直はOK)。
1本場は流局で終了である。
矢島亨3連覇。前年度チャンピオンが決勝シードとなる雀王戦や雀竜戦とちがってベスト16シードでしかないオータムでの3連覇はいったいどれぐらいの確率なのか。偉業といっていいと思う。
ベスト16から立会人をやって見ていた私の感想は、「とにかく強い、他と比べて別格」である。
同時に、このルールでの打ち方が身にしみついているといっていいくらい、リードしているときの安定感、押し引きのメリハリが完璧だった。
これは、協会内ではどのタイトルでも達成されていない4連覇に期待が持てそうである。