第20回オータムチャンピオンシップ観戦記(5回戦)

【担当記者:五十嵐 毅】
4連覇の懸かる矢島が首位。しかし、2位の富永とは26.9P差、3位の茨城とは31.3P差と、非常に心許ないリードである。
座順・武中-茨城-富永-矢島
東1局、南家の茨城が自風アンコ、ドラを使った手でリーチ。ツモってまず満貫のリード。

東2局、親の茨城が6巡目にピンフ–
待ちリーチ。これを富永が
–
待ちピンフで追いかける。ともにドラの
はない。4回戦までならヤミテンだっただろう。
11巡目に茨城がをツモって1300オール。
東3局、矢島がをポンして一色手に。ドラ
トイツの武中も
をポンして遠いホンイツ狙いから
をアンコにしてトイトイ狙いに方向転換。それでも遠い。
7巡目、茨城がを重ねる。これで武中のアガリは難しくなった。
10巡目、茨城がテンパイ。待ちはタンキ。

これは武中や富永ならば打たない。しかし、矢島は–
待ちですでにチンイツを張っていた。矢島が
を掴んで放銃。

この6400直撃は大きすぎる。
東ラス、矢島がダブポンの
–
待ち。これに茨城が飛び込む。茨城はドラ
トイツのイーシャンテンで「決め」に行く気満々だったので後悔はないだろう。
1本場、茨城がアンコでドラのペン
待ちテンパイ。これが
を引いてシャンポンになってからのツモアガリで、ドラ待ちをツモるより高い三暗刻の満貫。2900放銃での5800差を倍返し。

東場を終えての点棒状況は、
茨城55100 武中24000 富永22200 矢島18700
南1局1本場、矢島がポン、
チーで
–
ノベタン。ドラ
をツモれば反撃の狼煙になる。
もう後がない最後の親番武中が同じく–
待ちリーチ。こちらはドラで18000の手。

矢島はをツモってアンコの
を打ち
–
–
に変化。待ちは良くなったが打点は落ちた――と思われたが、
を持ってきて加カンすると、なんと嶺上開花で1300・2600。

矢島はこれで2着にまで浮上。茨城53700、矢島25200とその差27500。1着順差なので37.5P差だが、開始前は31.3P差だったのでわずか6.2P差に詰まった。やはり矢島か、4連覇なのか?
南2局、矢島の6巡目、
ツモ
ドラ
七対子のイーシャンテンでもあるが、待ちの広さ、打点から見てもそうは打たない。を切ってピンフイーペーコーのイーシャンテンに。
だが、その後のツモがよれて、テンパイは結局七対子。

仮テンのタンキ、その後
タンキに変えるが、待ち頃となる牌を持ってこない。
そこに茨城がタンピンを張ってリーチ。イーペーコーとならない安目のだったが、2600オールツモ。
矢島はを切らなければ七対子をアガっていた? それは先述したとおり、そうは打てない。しかし、最初の
タンキで待ちを選ばず即リーチの手はあったと思う。アガる、アガらないの話をしているのではない。
武中は親が終わって戦線離脱、富永はラス前の親番に賭けるためにそうそう無理はするまい。そうなると、茨城が来るかどうかだけで、ドラの見えていない茨城がわずか+6.2Pとはいえリードを保とうとするかどうかだ。肚をくくって押し返せば同じ結果だが、2600オールを防いで矢島がテンパイ料を手にする別世界があったかもしれない。
その観点で観返すと、仮想の矢島がリーチと来る巡目の茨城はこのイーシャンテン。

現実は受けを強くする切りとしているが、矢島の現物は
のみ。なので
切りとするだろう。次巡、
ツモ。こうなれば
勝負か。リーチ後にドラを引いたりすることを考慮してヤミテンの可能性はあるが、次巡即ツモとなる茨城のアガリは動かない。
ラス前、茨城にと自風
がトイツ、ドラ
トイツの手が入り、親富永の第1打
をポン。
は武中と持ち持ちだったが、3巡目に
をアンコにしてイーシャンテン。
の形にドラをアンコにしてカン
テンパイ。さらに
を引いてリャンメンとなって引きアガり、決定打となった。

富永の親も終わり、あとはオーラス、親の矢島がどこまで粘れるかとなったが、矢島の手はイーシャンテンになったあと、–
–
の3メンチャンが引けず、上家が打つこともなく、ピクリとも動かなかった。
矢島亨、前人未踏のオータム3連覇、さらに4連覇にチャレンジ。1回戦の通常の2.5倍の大トップで、「この男にこんなリードを持たせたら決まりだ。去年より楽勝だろう」と思って見ていたが、そうはならなかった。メンツがベテラン揃いで一筋縄でいかなかった点もあるだろう。来期はベスト16よりさらに下のシードとなるが、それでも決勝に勝ち進んでくるような気がする。
その下のシードから勝ち上がって2年連続決勝となった富永修。過去2回は最終戦は終戦処理のような感じだったが、「今回は最終戦まで楽しめた」と話していた。次は「終わったときが一番楽しい」となるように。
最終戦は一人マイナスで終戦処理となった武中。打ち上げの席で愚痴っていたが、これは負けたときの彼の通常営業。BGMだと思いながら対面で適当に聞いていた。次は愚痴らないで済むといいね。
優勝は茨城啓太。8期前期入会で、同期からは女流雀王2人(大崎初音、冨本智美)、新人王2人(小川裕之、黄河のん)、が出ているが、茨城が2人目のオータム覇者となった。もう1人は第15回の千貫陽祐だが、来期はA1リーグで2人の対決が見られるだろう。
天鳳で培った守備力で失点を最小におさえ、常に首位走者をマークする位置にいたことが最終戦の爆発につながったように思う。連覇およびA1リーグでの活躍に期待したい。

