第20回オータムチャンピオンシップ観戦記(1回戦)

【担当記者:五十嵐 毅】
決勝戦、注目はもちろんオータムチャンピオンシップでは前人未踏の3連覇を成し遂げた矢島亨がさらに4連覇となるかである。
ディフェンディング制ではなく、前年度覇者もベスト16シードでしかないこの難関を、矢島は今年も当たり前のように勝ち進んで決勝の卓に座っている。もはや確率の外にいるといえる存在だ。
しかし、今回のメンツは濃い。
富永修、第19期雀竜位。そしてオータムはこれが3度目の決勝。17回はサイコロ太郎の前に敗れ、昨年は矢島の前に敗れた。それだけに今期は期するものがあるだろう。そもそも2年連続決勝進出が相当の難易度なのだ。
武中進、年齢は矢島より下だが、2期から協会に在籍する古株である。こちらも雀竜位経験者(第13期)。
茨城啓太、協会内ではノンタイトルだが、第19代天鳳位。決勝進出は第10期の新人王戦以来。当時23歳、協会入りわずか1カ月の逢川恵夢に敗れたが、そのころとは登録名も経験値もちがう。現在雀王戦A2リーグぶっちぎりの首位で、A1リーグ入りが確実視されている。
1回戦
座順・茨城-矢島-富永-竹中
東1局、親の茨城、メンゼンツモのみ500オールのあとにピンフ3メンチャンリーチ。高目タンヤオで2600オール。このルールではでかい。

しかし、これを矢島があっさりかわす。
東2局、3本場で流れてきた親番でをポンしてソーズホンイツ仕掛け。テンパイは最高の
を引いて
切り。茨城の3メンチャンの上を行く4メンチャン。

でツモって4000オール。
流局連荘を挟んだ5本場、メンタンピン三色の高目をツモって6000オール。

2600オールをツモっていた茨城でさえ配給原点を割った。他2人にいたっては……。
この親を流したのが武中。リーチツモアンコで1000・2000(+6本場)
東3局は茨城がリーチピンフドラ1を富永から。
東4局は武中が2900を富永から。
1本場は親武中の仕掛けに全員が慎重になった結果、全員ノーテン。
南1局は武中がカンリーチ。(ドラ
)
これを富永が–
待ちリーチで追っ掛け、竹中が
を掴む。ここで3着4着が入れ替わる。
南2局、再び矢島の親番。この局が凄かった。
武中がソーズを仕掛ける。上家富永はドラを切れば
–
のピンフ高目イーペーコーのテンパイが入る手だったが、ドラを打たずに雀頭の
を切って回る。

武中は–
–
待ち。
をツモ切る。

その瞬間、矢島がこの手をテンパイ。三暗刻出来合いの–
待ち。

このタイミングでヤミテンを入れられては、なす術無し。富永が「いま通ったはず」のを切って放銃。4800は少なくない加点だ。
1本場は茨城がヤミテンのままツモ。3メンチャンとはいえ、このルールでドラも何もない手ではリーチと行けるはずがない。
南3局、親の富永がドラ2枚使いのこの手をテンパイ。カン
のイ―ペコーには受けず
を切って
–
・
待ちヤミテンに。

このに喰いテンを入れたのが武中。そしてこのカン
をすぐに掴んで放銃したのが矢島。

じつはこの半荘、矢島の放銃はこの1000点一回だけなのだが、親の大物手を未然に防いでの最少失点。放銃さえもパーフェクト。
オーラスは3着武中と4着富永が僅差の争い。親の武中はドラトイツで手を進めていく。
矢島は123三色やピンズ一通が狙える手から、高目、高目へと進めて行き、この手をテンパイ。

高目のは場に1枚出ていたが、このラス牌を武中が掴む。
武中は何を打ってもラス落ちだったが、予想以上に高い手。なにしろドラは自分が持っているのだ。解説の浅井堂岐はこのアガリを「オーバーキル」と評した。
矢島は73500点持ち、+58.5ポイント。通常のトップ2回分以上の大トップだ。
80年前、圧倒的物量差に負けた日本の首都・東京は一面の焼け野原だった。そんな情景を思い起こす。
いや、待て。最初の2600オール以降、失点を最小限で耐えていた1軒だけ、掘っ立て小屋ながらも焼け残っている。
