第24期新人王戦決勝観戦記(5回戦)

【担当記者:五十嵐毅】

最終戦開始前のポイントは、
貞徳+67.3 中村△9.7 村松△20.6 森川△37.0

貞徳以外の優勝条件は、
中村=トップラスでOK。トップ3着ならば17100差が必要。
村松=トップラスで7400差以上。貞徳3着ならばさらに2万点追加の27400差。
森川=24400差のトップラス。

3回戦ラス前までのぶっちぎりムードとはちがって、全員にチャンスのある見応えのあるポイント状況で最終戦が始まった。
座順・中村―村松―森川―貞徳
東1局。ドラ麻雀牌:四索を3枚持った西家の森川がピンフをテンパイ。

リーチせずにヤミテンとしたので、貞徳狙いかと思われたが、中村の切った麻雀牌:九筒にロンをかけた。
これは意外だったが、森川から見れば中村も捲らなければならない相手。悪くはない。
しかし、トップ3着でも現実的な点差でOKの中村とちがって、森川はトップラス必須である。疑問が残る。
東2局、ドラ麻雀牌:白を重ねた親の村松が麻雀牌:南とのシャンポンでリーチ。

これに中村が麻雀牌:南で放銃、7700。アガリは嬉しいが、これで貞徳をラスにするのが難しくなった。この時点で村松は貞徳3着で27400差のビジョンを強くしたはず。
1本場、貞徳がリーチ。これに中村が放銃。

ドラ麻雀牌:八筒が1枚あるだけのなんでもない手だったが、裏ドラが麻雀牌:六筒で満貫に。これで一息ついた格好だが、次局に試練。
まず村松がリーチ。

一通の付く麻雀牌:九筒以外では高くはないが、アガリが約束されたような4メンチャンである。

村松の先行リーチを親の森川が追っ掛ける。

リーチ打牌はなんと麻雀牌:二萬。ドラ麻雀牌:三萬を勝負すれば高目純チャン三色。しかし、ドラは切り辛い、麻雀牌:九索待ちが良さそうという理由でシャンポンリーチに踏み切った。
2軒リーチに挟まれた貞徳、このときの捨牌と自分の手はこれだ。

麻雀牌:九索は通りそうだが、ションパイで気持ち悪い。しかし、もう1枚持ってきたところで誰かが2枚持っている確率が減り、さらに1枚通れば2枚通るとなって麻雀牌:九索を切ってしまった。この親満直撃は大きい。
この後、森川と村松が交互にアガり、貞徳が耐える展開。

南1局、中村がリーチピンフツモ。裏1の2600オールで、貞徳のラスが近づく。
裏1の2600オールで、貞徳のラスが近づく。ここが一番苦しいところだっただろう。


1本場に七対子をテンパイした貞徳、1枚切れ麻雀牌:西タンキでリーチ。これをツモると裏ドラが乗ってハネ満。

やはりこの日は貞徳の日か。勝負所で裏がのる。
そして親番のなくなった中村が戦い方を制限されるだけに、ラス落ちの心配が少なくなった。貞徳にとって点数以上に大きなハネ満である。

南2局、親の村松がドラ麻雀牌:四萬アンコの配牌をもらい、6巡目にリーチ。これをツモって4000オール。

1本場は森川がリーチするも、粘って2フーロの形テンで連荘。
2本場、ここが貞徳にとって最後の難所だった。
村松が6巡目に麻雀牌:六萬をリャンメンでチー。さらにカン麻雀牌:五索もチーする。

ドラ麻雀牌:白がトイツの貞徳も呼応するようにカン麻雀牌:五索チー。

貞徳目線では親のドラアンコは否定できる。しかし、持ち持ちだった場合はともにアガれず、テンパイ連荘を許すことになりそうだ。ドラがなければ喰いタンで、点数的には問題ないが、自分の手よりはアガリの可能性が高い。ということで、けっして貞徳有利な局面ではない。
しかし、2巡後に麻雀牌:四筒をツモる。
実況席解説の佐治敏哲が叫ぶ「あっ、この麻雀牌:四筒ツモはでかい!」
これでもう一つのアガリ役234三色が見え、形成逆転。
村松がツモ切った麻雀牌:三筒にあわせ打った森川の麻雀牌:三筒をチーして村松から麻雀牌:二索を打ち取った。

この局で勝負を決した。
南3局はピンフの麻雀牌:二萬麻雀牌:五萬麻雀牌:八萬をヤミで村松からアガる。

リード者がラス親の協会規定でラス親だった貞徳はオーラスを流局させ、この半荘は3着で終了。トータルポイントは、3回戦までの怒涛の進撃からすると、かなり追い詰められた印象を受けるが、立派な逃げ切りでの優勝、そして第24期新人王である。


終わったときに私が佐治に話しかけた貞徳の感想は、「図々しいなぁ」である。彼のキャリアでこれほど主張のはっきりした麻雀が打てることを、こう表現したのであり、もちろん褒め言葉だ。精神的にも図太いのだろう。佐治も同様の感想だった。
貞徳は大学在学中の21歳。これは協会新人王の最年少記録である。将来がじつに楽しみだ。