第23期女流雀王決定戦観戦記2日目(7回戦)

【担当記者:中島由矩】
7回戦(逢川-奥村-りんの-夏目)抜け番:澄川

雀王決定戦もそうだが、この女流雀王決定戦も、二段階に分かれていて、
■最終15回戦を終えてポイント最上位者が女流雀王
の手前に、
■10回戦を終えてポイント最下位者は11回戦以降に進めない
という関門がある。

この5人で撮るのは最後になるかもしれない貴重な写真を、観戦記にも残しておきたい。Xのタイムラインに流してしまうには、あまりにももったいない。
トータル5位の奥村が2000/4000をアガって先制すると、トータル首位の逢川も2000/4000をアガリ返す展開。

この7回戦でトップを取り、6回戦の4着を挽回したい奥村と、

6回戦に続いて連勝し、途中敗退ではなく女流雀王戴冠のみを見据えた戦いに切り替えたい逢川。
勝負の行方を占う天秤が大きく傾いたのは、東3局0本場だった。

親のりんのはマンズの一気通貫はもとより、ダブを重ねてのホンイツなども見える好配牌を手にする。

対する逢川も、第1ツモでを引き入れ、三色同刻がねらえるように。

ここに3人目が名乗りをあげる。南家の夏目がオタ風のポンから発進。河をソーズ一色に染め上げることで、自身の手がピンズなのかマンズなのかを分かりにくくしている。さらには、ドラの
を重ねることで、ホンイツにならずとも、
に頼った中打点も視野に入れ、トップ目の逢川・奥村を追う。
それぞれの仕掛けを時系列に並べると、夏目がポンで役を確保した後、

逢川がポン、

さらにポンでカン
待ちのテンパイを入れ、一気に夏目を追い抜いた。

そこに、奥村から先制リーチが飛んでくる。こちらの待ち牌は、場に1枚切れのとドラ表示牌の
のシャンポンだ。

ここで、親のりんのが場にションパイのを止め、2枚切れの
を打ったことで、この後の展開が大きく変化していく。

夏目はツモで、
を勝負。
で役も確保できた今、現物の
→スジの
と並べているようでは遅すぎる。

そして次の手番の逢川は、りんのが止めたを持ってきて少考に入る。自身の待ち牌であるカン
は、リーチ者奥村の河に1枚あるが、
ポンから発進している夏目から
が打たれた今、果たしてマンズは山に何枚いるのだろうか。

そもそも、リーチ宣言牌のをポンしてトイトイをつけ、8000のタンキテンパイにしていないのは、こういう
を止めて
のトイツ落としで回るためだったのではないか。
こうして、逢川はのトイツ落としを選択し、

すぐ次の手番であるリーチ者奥村が、をツモ切った。

逢川、痛恨のアガリ逃し。しかし、この繊細なバランスこそが、逢川を女流雀王たらしめている。
この局は、りんのがラス牌のをつかみ、奥村が手牌を倒した。

リーチ・裏ドラ1の2600を加点し、奥村は単独のトップ目に。対照的に、りんのは単独の4着目に後退したが、意図せず逢川のアガリだけは阻止した形になった。

南2局も、各者の思惑が卓上を交錯する。
まずは、3着目の夏目。ポンで役が確定している中、
チーでいったん親の現物である
タンキテンパイに取った後、

を引いてきてソーズに渡り、打点を1000点から5200点へと引き上げた。

この局は、4着目のりんのが先制リーチで圧をかけると、

りんののアガリ牌を暗刻にした奥村が追いかけリーチで対抗。待ち取りは、ツモり三暗刻ではなく、
–
とした。ピンズの下目は場に安く、残り1枚は山にいそうだ。

この息詰まるめくり合いは、りんのが制した。
奥村・りんの・逢川の三者が1400点差以内にひしめき合う南4局1本場(供託3000)、点数状況は以下のようになっていた。
東家・夏目ひかり 13200
南家・逢川恵夢 27200
西家・奥村知美 28600
北家・りんのなお 28000

アガリトップの逢川と、

奥村に、足かせのようなドラが、それぞれ2枚ずつ入る。お互いに鳴くことはできず、ホンイツやトイトイなどの手役も見えてはこない。

その間隙をぬって、りんのに三面張のピンフテンパイ。息を潜めてダマテンに構えると、

最後は親の夏目から打ち取って、値千金のトップを手に入れた。

7回戦トップは、りんのなお。南2局まで4着目だった試合を、勝負所のめくり合いを制して一気に差し切った。トータル首位に立てたことの意味も、決して小さくはない。
2着は、奥村知美。6回戦でラスとなった奥村にとって、この7回戦のトップはのどから手が出るほどほしかったところだが、さりとて3着になることも許されない。10回戦が抜け番で打てないことも考慮すると、続く8回戦がカギを握ることになるだろう。
3着になったのは、逢川恵夢。6回戦に続いての連勝をほぼ手中に収めたところからの3着降着は、かなり感触が悪いと推察されるが、8回戦の抜け番を利用してリフレッシュし、9回戦・10回戦で仕切り直したい。
無念の4着になったのは、夏目ひかり。仕掛けた後も手牌を安定させ、勝負所では鋭い踏み込みも見せたが、混戦の中、痛いラスを引いてしまった形だ。
トータル首位が逢川からりんのへと交代した7回戦だった。しかし、まだまだ上下の詰まった混戦状態だ。りんのと逢川の首位争いに、夏目と奥村の4位争いも加わって、まだまだ目の離せない展開が続く。

冒頭の集合写真には、別バージョンもある。1人だけ赤い衣装の奥村を中央に、タイトルは「日の丸弁当」だと言う。両サイドは、弁当箱を表しているのだろうか。そして、発案者は誰なのだろう。天真爛漫な乙女たちの戦いは、次がちょうど折り返し地点だ。ただ1人を除いては。
