第23期女流雀王決定戦観戦記1日目(3回戦)

【担当記者:五十嵐毅】
第23期女流雀王決定戦3回戦
座順・奥村-夏目―りんの―澄川
今回の顔ぶれで唯一女流雀王決定戦初出場の夏目。この3回戦は彼女の半荘だった。
東1局は夏目が親の奥村に3900を放銃。
1本場はりんのがメンタンピン三色を一発ツモでハネ満。

迎えた東2局、夏目の親番。ここで、西家・澄川がなんと3巡目にリーチ。捨て牌にはしかない。

夏目、これではまっすぐ行くしかない。
しかし、分岐点が訪れる。8巡目、ツモ。これはドラだ。もちろんション牌。
この時点で夏目の手――
ツモ
ドラ
と
が通っているが、これを切ったらこの手はほぼ終わり。ラス目だが、18000点持ち。まだあせる必要はないと、慎重策を選んでもおかしくない。
あるいはだけは出て行かないように端っこの
を「1枚通れば2枚通る」と落として戦う道もある。
しかし、夏目は無スジのをブンッ!
こう打つ以上、テンパイしたらドラは勝負か、と思って見ていると、次巡ツモのイーシャンテンで手放した。
次巡ツモ。
切りリーチ。シャンポンを選んだので、ロン牌が出ていかない。
この勝負、1枚、
1枚、
1枚と、お互い2枚残りだったが、脇に流れて流局。
「これはもう夏目の勝ちです。親権維持できたんだから」と、木原浩一が解説したが、勝ちも勝ったり、まさかあんなことになろうとは!
以下、夏目のアガリコレクション。
東2局1本場、ドラカンドラ
9の三色同刻、チャンタをテンパイしていた奥村からロン。12000+300+2000(供託)。
2本場、ドラ
喰いタンのテンパイを入れたりんのからロン。捨て牌はホンイツには見えない。18000+600。
ハネ満をアガっていたりんのからなので、ここで断トツになる。
3本場、7巡目にピンフリーチ。一人テンパイ。
4本場、ドラ
北家・奥村が234三色と北バックで仕掛けていたが、終盤掴んだ中張牌で回ろうとしてのトイツ落としで放銃。5800+1200+1000(供託)。
5本場、ドラ
ダブ東トイツ、234三色も狙える手だったが、結局が雀頭のまま
–
マチリーチのみ。澄川が
で放銃。2000+1500。
6本場、ドラ
ここに奥村がリーチ。夏目、ツモ。ノータイムで3枚持ちの
勝負。枚数は奥村の
–
が圧倒的に多かったが
を掴んで放銃。5800+1800+1000(奥村のリーチ棒)。
7本場でようやく澄川が奥村から満貫をアガって夏目の親が終わった。
持ち点は7万点を超えていた夏目だが、台風が吹く間、ほとんど無傷だった澄川が台頭してきたために意外に詰め寄られる。しかし、終わらせ方が素晴らしかった。
オーラス、澄川が親を迎えたところで、持ち点は、
夏目59700 澄川46600 りんの24600 奥村△30900
澄川が親満をツモると捲られる点差である。
澄川が9巡目にをポンして
–
待ちテンパイ。

すぐにアガれると思われたが、意外と長引き、14巡目りんのからリーチが入る。123三色のペン待ち。

夏目もをリャンメンでチーしてイーシャンテンまで進めたが、最終手番でテンパイできなかったところで選んだのは
だった。それもノータイムで。

安全に終わらすならばが3人に通るが、ノーテン罰符で点差を縮められてもう1局となるのを嫌って終わらせに行ったのである。
それにしてもよくを選べたと思うが、これに対しては夏目は明確に答えている。
次の画像はりんのと澄川の捨て牌である。

「私の手牌の中で澄川さんに通っていてりんのさんに通ってないのはだけなんです。2枚切れの
は苦しい待ちですが、りんのさんの(着順が上がりも下がりもしない)立場だと、安ければヤミテン、打点があれば待ちの良し悪し関係なくリーチと思っていました。私はハネ満まで打てるので」
澄川が切った2枚目のは奥村がカンチャンでチーしているので捨て牌から消えている。りんのの捨て牌を見れば
–
待ちが濃そうだが、喰いタンドラ2のテンパイを入れた奥村が直前に
を切ったのでこの待ちはない。
りんののリーチまでの捨て牌にはから上が多く、下は
リーチ打牌の
のみで、ドラが
であることからも、打点がある手作りをしているならば123三色の可能性は高い。
りんのの点数申告に「はい」と答える夏目。その返事の後には心の中で「喜んで!」と続いていたにちがいない。

決定戦初出場でこのが選べるとは!
これは本当に平成生まれの女流雀王が誕生するかもしれない。(あっ、あの人は令和生まれか……)
