第23期女流雀王決定戦観戦記1日目（2回戦）

【担当記者：中島矩由】

2回戦（逢川－りんの－奥村－澄川）抜け番：夏目

逢川恵夢はこの第23期女流雀王決定戦に勝つと、永世女流雀王の称号を手にすることになる。

この【永世称号】は、将棋の世界では【連続または通算して規定の回数以上タイトルを獲得した棋士に与えられる称号】と定義されている。

逢川はここまで通算4期の女流雀王を戴冠しており、今期戴冠すれば、それはすなわち5期目ということになる。

インタビュー時にフレームアウトするほど元気だった逢川が、1回戦で箱下の4着に沈んだことは衝撃的だったが、麻雀というゲームはそういうものだし、前向きに考えれば「1回戦で良かった」と考えることもできる。現女流雀王が、最後方からの巻き返しを誓い、再び卓につく。

東1局を親番で迎えた逢川は、さっそく先制のチャンスをもらった。字牌・端牌を切っているうちに、タンヤオ・ドラ3のイーシャンテン。仕掛けてよし、門前のダマテンにしてよし、リーチをかけて6000オールや18000をねらうのもよし。逢川の「ガオー！」が出るのは時間の問題かと思われた。

しかし最終盤、奥村はこのを打たずに、4枚目のを河に置くことで、逢川のポンテンを未然に防ぎ、

ならば、と門前テンパイを入れたものの、アガリを取ることはかなわなかった。この局は逢川の一軒テンパイで流局。1回戦の悪い流れを断ち切れない、暗雲立ち込める開局となった。

逢川は東2局3本場でも、自風のを暗刻にして4巡目に先制リーチを放つが、

ツモ切ったが、先にを仕掛けていた奥村につかまる。逢川の周りに不穏な空気が立ち込めた。

エンジンのかからない逢川を尻目に、東3局0本場は、4着目になっている澄川が頑張る。
9巡目にして、三暗刻・ドラ3のテンパイ。澄川はこれをダマテンとし、ツモはもちろんのこと、ツモやツモをとらえての四暗刻を目指した。しかし、あえなく流局に。

もし筆者が、7回戦を1分間のショート動画にまとめるなら、南1局を選ぶと思う。

まず、二副露して先手を取ったのは、トップ目の奥村。待ち牌を選択できるところ、奥村はカンにした。2000点で逢川の親を落としにかかる。

続いて、2着目のりんのが先制リーチ。待ちはドラのペンと苦しいが、ツモれば1300・2600でトップ目の奥村に肉薄できる。下家の奥村が仕掛けて前に出る中、足を止める意味でも、リーチで押さえつけるのは有効な手段だった。

そこに「みなさん、お待たせしました」とやってきたのは、4着目の親・逢川恵夢だ。
安全牌を1枚も持たない夢と希望に満ちたイーシャンテンから、ツモを引き入れて、追いかけリーチを宣言すると、

奥村にを掴んでテンパイ外し。

見事に高めのをツモアガリ。裏ドラを1枚乗せて6000オールを手にし、一気にトップ目に立った。

逢川はその後も攻撃の手を緩めず、

南2局にはタンキの役なしダマテンから手替りすると、即リーチを決断。

テンパイを入れていた親番りんのから8000を打ち取った。

2回戦トップは逢川恵夢。1回戦の借金をほぼ帳消しにし、抜け番の3回戦でリフレッシュし、4・5回戦での巻き返しを誓う。

2着になった奥村は、1回戦が抜け番で、この2回戦が初戦だった。プラスポイントをスコア表に刻み、気分良く後半戦へと向かう。

1回戦に続いての3着は澄川。雌伏の時を耐え、いざ自分の番が来たときにライバルを射程圏内にとらえておきたい。

無念の4着は、1回戦トップのりんの。貯金を吐き出したものの、しかしトータル首位の座は明け渡していない。3回戦が踏ん張りどころになるだろう。

1回戦のトップラスと2回戦のトップラスが、ちょうどひっくり返る形になった2回戦だった。まだまだ上下の詰まった混戦状態だ。上にも下にも、抜け出すのは誰か。目が離せない展開が続く。