第23期雀王決定戦観戦記 2日目(7回戦)

【担当記者:中島由矩】
(田幸-橘-堀-仲林)
そのLINEを改めて見返してみたら、2021年12月8日と書いてあった。今からちょうど3年前の話ということになる。

(LINEのスクショ※橘さんの許可はいただいています)
筆者が、第20期女流雀王決定戦で初めての観戦記を書いて、提出した相手こそが、この7回戦の主役となる橘哲也だったのだ。
橘は、17年も後輩の駆け出し観戦記者である筆者に対し、
■書き方のルールは、正しく守られていたよ。
■牌姿を出すときは、なるべくスクショを使おう。
■余分な文を減らし、ストーリーの中心を読みやすくするといいよ。
と、優しく分かりやすく説いてくれたのだった。
自分の不甲斐なさを恥じたと同時に、橘の優しさと豊富な知識の一端に触れ、温かい気持ちになったあの日のことを、今でも昨日のことのように思い出す。
──いつか橘さんの観戦記を書きたい。できれば雀王決定戦がいいな。
あの日から、ちょうど3年。ついに念願がかなった。
橘さん、読んでくれていますか。何か気になる部分があったら、また指摘してくださいね。

さて、ここから7回戦の内容に入る。
東1局0本場、先制リーチは親の田幸。ドラのを雀頭にしたイーシャンテンから、選択肢が残る方のカン
を引き入れると、迷うことなく
を曲げた。
が堀と仲林の河に1枚ずつ走っている。

田幸はこのを一発でツモり上げ、4000オールを先取した。
雀王決定戦初日が行われた10月26日から1ヶ月以上ものインターバルをはさんだことを、名作漫画・スラムダンクに出てくるセリフを引用し、
「試合はまだですか…、監督…。みたいな気持ちです」
と語った田幸。待ち焦がれた思いの丈を、牌にぶつけた結果だった。

「思いの丈を牌にぶつける」と言えば、何もガムシャラにリーチ・リーチと攻め立てるばかりじゃあない。
続く東1局1本場に、堀が見せた選択は柔軟だった。

打として
–
待ちのリーチを打ちたくなるところだが、堀は打
でイーシャンテンに戻し、打点アップをねらう。

結果こそ、橘のドラ3リーチに一発で放銃する形になったものの、負けてなお強しの印象を残した。

田幸vs橘のトップ争いは、さらに激化する。
続く東2局0本場は、両者の間で直撃があった。

マンズに向かう田幸は、ペンチーから発進すると、ここで
よりも
を先に打ち出し、マンズのにおいを消しながら、チャンタを装い、橘から
を引き出した。



3900という打点よりも、読みが外されて、橘も思わず渋い顔。
田幸の攻勢はなおも続く。南1局1本場は、田幸の親番だ。

仲林からの先制リーチを気に留める様子もなく、田幸はを横に曲げた。ツモリ四暗刻のリーチ。出アガリで最低でも、リーチ・タンヤオ・三暗刻・トイトイ・ドラドラで24000という大きな加点になる。

しかし、ここは堀がツモアガリで、田幸の勝負手は泡となって消えた。
南2局0本場、今度は橘に大物手が入る。

親の橘はここから打とし、東・チャンタ・ドラ1のダマテンに構える。ドラ表示牌に1枚見えているカン
待ちに不満があるのかと思いきや、

こんなに嬉しい手替わりが待っていた。を暗刻にすると、打
で、東・發・チャンタ・三暗刻のダマテン18000に。

仲林からのリーチに全面対決し、

堀のダマテンをかいくぐって、仲林がツモ切ったにロンの声をかけた。

トップ目の田幸まで1500点差に迫った南2局1本場、ついに橘がとらえた。
ドラドラの手牌を、丁寧にタンヤオ方面に導くと、

をポンしてテンパイ。

薄い–
を、こともなげにツモって見せた。2000は2100オールで逆転トップ目に。
橘はこの後も点棒を高々と積み上げ、終わってみれば59700点の大トップ。まだ7回戦とはいえ、トータル5位から2位にランクアップした。
7回戦トップは橘哲也。昨年惜しくも決定戦進出を逃した苦い経験を糧にし、大勢のファンを巻き込んで、今後も進軍を止めないだろう。
2着になったのは田幸浩。要所で鋭い踏み込みを見せたものの、南2局で橘に連荘があった時、自身にはすでに親番がなく、なす術がなかった。橘同様、田幸もまた、今期のA1リーグを戦う中で、多くのファンの目に留まっている。その期待を一身に背負い、上を見る。
3着には堀慎吾。トータル首位だが、この7回戦は足踏みした印象だ。下がカットラインをめぐる攻防を繰り広げている間に、しっかりとしたリードを築きたい。
無念の4着になったのは、現雀王の仲林圭。△14600点という大きな箱下ラスを喫し、トータル順位も4位から5位に下げた。残る3戦での巻き返しに期待したい。
