第23期雀王決定戦観戦記 2日目(6回戦)

【担当記者:武中進】
全選手敬称略

初日5戦を終えて首位は堀慎吾で+56.2p。
しかし最下位の橘ですら-52.5pで差は100p程度、トップラスで最低でも80p差が生じる協会ルールであることを考えるとまだまだ4日目の途中敗退や優勝に向けた何か特別な戦術が求めらる段階ではない。
2日目の初戦となる6回戦、座順は仲林・田幸・吉田・堀(抜け番 橘)
その東1局、田幸にいきなりのビッグチャンス。

ここから切り。前巡の
切りといい、縦を強く意識した進行。
そしてこの決断とツモが噛合い、わずか2巡後に役満テンパイ。

しかし自模れずの流局。
一方で開始早々の役満親被りを回避し、テンパイ連荘もはたした仲林、次局は吉田から3900は4200をアガり一歩リード。このまま仲林が順調に加点をしていく展開か?
と思いきや次局の東1局1本場では堀が8000は8300を仲林からアガり一歩リード。

ここからは田幸、吉田のツモアガリ等で平たい点棒状況で進行。
そして場が大きく動いたのは東4局2本場だった。
仲林が第1ツモで自風のをアンコにするチャンス手。

ここから切り、そして次巡は
切りとピンズ染め手を強く意識した思い切った進行。
それにツモもはまって8巡目には盤石のイーシャンテンとなった。

ところが次巡、その状況を激変させたのが堀による仲林のキー牌であるのカン。

しかもめくれた新ドラ表示牌が、これにより両面
–
がほぼすべて消失し、仲林のチャンス手は一瞬で水泡に帰した、、かと思いきやここからの方針転換がお見事だった。
直後に堀が切ったをチーしてピンズのメンツをほぼカラの両面ではなく
,
のシャンポンと上側のペン
で再構築しにいく。

次巡には見事に新ドラのを引いて聴牌し、田幸から
をアガリ、12000は12600となった。
自身のキー牌がつぶされた直後、そこに通常であればチーしないであろうに即反応し、きっちりアガリに結びつける、この的確な状況判断と反応速度はさすが仲林というべき1局。

これによりトップ目になり南場へ。
しかし次局は田幸の反撃、5200を仲林からアガり返す。

場に2枚見えのドラ表示牌である待ち、ただし自身が
を切っており他家が切る可能性は十分あるのでこれをリーチした事自体はそこまで驚く事ではない。しかしリーチ宣言牌の
は仲林の超危険牌、特に彼が
,
と手出し後に
をポンしている点から、役牌がからんだトイトイだったのはほぼ明白であり、
での放銃率は5割を超えると言っても過言でもないレベルである。
実際に中林の手は以下のシャンポン待ちだった。

これを点棒状況を加味し腹をくくって攻めきれるのが田幸の大きな強み、この決断力で彼は今期のA1リーグを勝ち切ってきたのである。
さて東場にリードを得た、仲林と堀、それに押されながらも懸命にあがく田幸、しかしこの半荘を制したのはこの誰でもなく吉田だった。
実際、彼は東場の2000オールがこの半荘の最高打点で、南2局以降に3回のアガリで他家との競り合いを制し、29200点でのトップとなった。
吉田の選択で特に印象的だったのが南2局。
以下手牌で切り、次巡も
を切ってチャンタ一直線。

これが6巡目テンパイ。

しかし次巡の堀のリーチを受けた直後に以下の選択

両面に受ければ確かに待ちはふえるが打点は半減どころではない。
少々苦しい点棒状況も考えるとさすがにを切ってのダマあたりか?と考えていたが、吉田の決断は
を切っての両面リーチ、そしてこれを見事に
でアガリきった。

要所要所のシビアな選択、それが勝負どころの競り勝ちにつながり、派手さは無くとも実を結んだというべきか。
吉田はこのトップでトータルポイントプラスへ、まだ先は長いが悲願の雀王に向けてまずは好スタートをきった2日目である。
