第23期雀王決定戦観戦記 1日目(4回戦)

【担当記者:坪川義昭】

長い決定戦の中で序盤のポイントはそこまで重要ではない。
追い詰められることもなければ、安心できるリードというものもないのだ。
しかし、マイナスを背負って過ごす日々はなんとなく嫌なものである。
気分良く約3ヶ月間を過ごす為にも全員1回はトップを取っておきたいという気持ちはあるだろう。

東1局

雀王の仲林が先手を取る。

田幸もテンパイが入った。
ここで相手に背を向けないのが田幸の強さである。
一旦麻雀牌:一萬を切ってヤミテンに構えるとはせずに真っ向勝負。これぞ俗に言う田幸ファイアーである。
少しの分の悪さくらいは気持ちでカバーしてくるのだ。

流局が見えてきた終盤に掴んだ麻雀牌:二萬で負けを悟った。
これは通してくれないね。と言わずとも伝わる仕草でそっと河に置く。

裏ドラが1枚乗り、8000点のアガリで仲林が場をリードし始める。

南3局

開局以降は小場が続き、全員が決め手を欠く中で橘が先制リーチを放った。

一人取り残されたオヤの田幸も降りている余裕などない。
真っ向勝負で捲り合いに持ち込む。

意地でツモりアガったような2000オールで戦線復帰を果たす。
A1リーグをダントツで勝ち上がった男がそう簡単にやられるわけにはいかない。

南3局1本場

チーの声は仲林。
ドラの麻雀牌:一萬が対子で勝負手だが、3枚目の麻雀牌:九筒が放たれたならばチーせざるを得ない。
全員が役牌を止めてられるような点棒状況ではないのも相待って、アガリは近そうだ。

すぐにドラがアンコになり、ソーズのリャンメンを払い始めた。

これには堪らずオヤの田幸もタンヤオ仕掛けを入れる。
簡単には落とせない最後の親番だ。

なんとかテンパイを入れた次巡、1枚切れの麻雀牌:北を持ってきて長考に入る。
仲林の仕掛けは3枚目の麻雀牌:九筒をチーしていることを加味すると2000点の可能性もあれば、当然8000点の可能性もある。

役牌ならば麻雀牌:北麻雀牌:南だろう。
チャンタの可能性もあるにはあるが、本命はこの二つ。
とはいえラス目の親番につき、いつものように真っ向勝負と出ると思っていた。

なんだか意外な選択に思えた。
この親番を意地でも離さない。当たれるものなら当たってみろと麻雀牌:北を叩き付ける田幸しか想像できなかったのだ。

1000点のポンテンをスルーした堀が悠々とリーチを放つ。

宣言牌を叩いて形式テンパイを田幸がもぎ取るが、すぐに堀のツモアガリで決着。
裏ドラこそ乗らなかったものの、貴重な1000-2000となった。

南4局

一撃で橘、仲林を突き放したいオヤの堀が先制リーチと出た。

アガればトップとなる橘も追い付き、ヤミテンに構える。

橘同様にアガればトップの仲林もストレートに手を進める。
溢れた麻雀牌:七索に橘が手牌を倒してゲームセット。

4着、3着と展開の悪かった橘がトップを奪取し、ポイントを戻すことに成功した。
20年間目指し続けたこの決定戦。そう簡単に離されるわけにはいかない。