第23期雀王決定戦観戦記 最終日(24回戦)

【担当記者:坪川義昭】

現雀王の仲林と控室で遭遇した。
『まだ終わっちゃいないよ…もっと俺を苦しめてくれよ…もっとワクワクさせて欲しい』と語りながら肩を震わせている。
並の選手ならば、早く決着して欲しい。早く解放されたいと願うものだと思う。
頂に立つ男の思考は凡人には理解し難い域に達していた。

東1局

オヤの吉田が役牌とドラを叩いて4000オールのツモアガリ。
ここから仲林とトップラスを決めることができるかどうかの勝負が始まる。

東4局

まずは堀が先制リーチを放つ。全員共通のミッションは仲林をラスに落とすことだ。

生半可な手をアガるつもりがない田幸はピンフ3メンチャンをヤミテンにして、三色の変化を待ち侘びながら堀の高めを叩き付けた。
しかし、堀はロンの発声をしない。
点棒を奪いたい相手は一人しかいないのだ。

吉田も勝負手を仕上げてリーチを放つ。
これが俗に言う包囲網というやつだろうか。

2軒リーチに挟まれながらもツモアガリを拒否して田幸はフリテンリーチを敢行する。
このくらい細い道を歩んでいかなければ、王座には辿り着けない。

三者のアガリはなく、流局して開かれた手牌を仲林は凝視した。
『これだよ。これ。決定戦はこうでなくちゃ…』
きっとそんな感情を抱いているのだろう。

南2局1本場

オヤの田幸がメンゼンでチンイツのテンパイを入れた。
待ちは現状悪いが、いくらでも手牌は変化する。

堀がリーチ・タンヤオ・ピンフ・高めイーペーコーのテンパイを外した。
トップを逆転する為には高めが薄いこともあり、妥協の1300-2600など受け入れられない。

当然待ちが良くなったとて、選択は変わらない。麻雀牌:六筒をツモ切る。

待望の三色テンパイを入れてリーチと出た。
このテンパイを組めるプレイヤーが世の中に何人いるのだろうか。

田幸も待ちを変え、リーチをする。
24000点の超大物手だ。

執念で麻雀牌:三索をツモり上げて8000オールを炸裂させる。
この一撃でラスからトップまで突き抜けた。
あとは仲林をラスに沈めるだけである。

南2局2本場

オヤの田幸のリーチに堀もすぐさま追っかけて、仲林にピンチが訪れた。

二人の共通現物はない。
形を崩さないようにオヤに通っている麻雀牌:三筒をを切ったところで堀からロンの声がかかる。

堀への8000は8600点の放銃。
これにより遂に仲林はラスへと突き落とされた。

南4局

あとは各自トップを捲るアガリを決めれば任務完了となる。
吉田がツモor田幸直撃条件のリーチを打つ。

堀も遂に逆転の手をテンパイさせた。
倍満ツモアガリで仲林とのトップラスを決めることができる。

リーチ宣言牌に吉田がロンをかける。
もしも裏ドラが乗らなかった時は、ただ仲林を三着に引き上げるだけのアガリになってしまう。

ゆっくりと捲った裏ドラ表示牌は麻雀牌:四筒

仲林への挑戦権を得たのは吉田であった。

仲林と吉田の差は144.5pとなった。
同点は仲林雀王が有利となる為、トップラスを決めた上で64600点差を付けることが条件である。

約三ヶ月に渡り行われてきた雀王決定戦も残すところ一戦となった。
いつまでも観ていたかった最高峰の戦いが終わりを告げようとしている—————