第23期雀王決定戦観戦記 4日目(19回戦)

【担当記者:中島由矩】
19回戦(田幸-仲林-吉田-橘)抜け番:堀

あと1枚が、引けない。
最後の1牌に、巡り会えない。
もちろん麻雀だから、そういうこともあるだろう。
しかし、その選手が最も勝ちたい対局で、こんな状態になった場合、「麻雀だからしょうがない」ですむものなのだろうか。「次は頑張ろう」と、切り替えられるものなのだろうか。来期、激戦必至のA1リーグを勝って、決定戦に進めるという確約もないままに。

東1局0本場、橘は、仲林から先制リーチを受けると、むしろ歓迎とばかりに大物手をぶつける。ドラのを引き入れ、ピンフ・高めリャンペーコー・ドラドラの追いかけリーチだ。

しかし、結果は仲林の勝ち。リーチのみの1300点だが、橘としては出ていく点棒の多寡(たか)よりも、高めツモ倍満のテンパイを伏せて卓の中に沈めることの方が惜しい。

東2局1本場、橘は、ジュンチャン・ドラ1の先制リーチを放つ。

ここは、吉田がドラのを切って追いかけリーチを打つと、

橘の待ち牌であるカンは、田幸がキャッチし、

吉田の待ち牌である–
は、橘のところにやってきた。

東3局1本場、橘は、ドラ色であるソーズのホンイツに向かい、

今までのリーチ攻勢から一転し、場風のをポンして、高め8000のテンパイに。

しかし、これまた吉田の2000点にかわされる。橘、なす術がない。

東3局2本場、橘は、ひとつ工夫を凝らす。ジュンチャンのイーシャンテンにツモを引き入れると、
を雀頭に決めて、
→
と外していき、

今度は、三色同順・ドラ1に仕上げてリーチ。

しかしここは、一軒テンパイで流局となった。

東4局は、橘の親番だ。10巡目に親リーチをかけて、子方に対応を迫ったものの、

ドラのを暗刻にした仲林が二副露して追いつき、田幸から8000を召し取った。

(そうか、ドラ3か。)
と、橘が思ったかどうかは定かではないものの、南1局0本場、吉田からの先制リーチに対し、ドラで場風のを暗刻にして、追いかけリーチ。
がリーチ者吉田の河にあり、現物になっているものの、トップ必須のこの19回戦、3000/6000以上を引きにいった。

しかし、田幸の打に手牌を倒したのは、吉田だった。リーチ・裏ドラ1は2600の加点。

東1局から数えて、実に5回のテンパイを取り、4本のリーチ棒を投げ続けた橘に、ついに麻雀の神様が微笑む。
南2局1本場、–
・
–
–
のイーシャンテンに、唯一一気通貫がつくツモ
をとらえると、即リーチ。

橘と同じく、この19回戦で1牌の後先に悪戦苦闘していた田幸から8000点をアガった。
橘哲也、「次こそは」の気迫を会場に残し、この舞台を降りる。
19回戦トップは、仲林圭。トータル首位で臨んだこの19回戦だったが、守りに入ることなく手牌を前に進め、特に東2局0本場のトイトイ・三暗刻・ドラドラの6000オールは圧巻だった。思えば、昨年の第22期雀王決定戦は、最終戦の直前まで堀の後塵を拝し、今よりもっと苦しい状況を打開したのだった。それに比べれば、今期はまだ恵まれている、と感じているだろうか。

2着は、吉田基成。オーラスは、上家・仲林のアシストを受けながら、2000点をアガって幕を引いた。20回戦での敗退がほぼなくなった今、この19回戦で雀王戴冠に向けてのポイント差が開いたことは、マイナスだととらえているかもしれない。

3着になったのは、橘哲也。麻雀は何が起こるか分からず、抜け番の20回戦も固唾を飲んで見守ることにはなるが、実質今期の雀王決定戦を戦い終えたことになる。
無念の4着になったのは、田幸浩。20回戦〜25回戦までの6半荘は、途中敗退に怯える必要がない。今期A1リーグを勝ってきた豪腕で、初の雀王戴冠に向け、上だけを見て、橘の分も戦ってほしい。
