【第7期雀王決定戦ポイント結果】
順位
|
名前 |
TOTAL
|
1日目
|
2日目
|
3日目
|
最終日
|
1
|
小倉 孝 |
188.5
|
209.2
|
45.5
|
50.6
|
-116.8
|
2
|
鈴木 達也 |
155.3
|
-39.5
|
116.9
|
-99.6
|
177.5
|
3
|
鈴木 たろう |
62.4
|
8.0
|
-46.7
|
118.4
|
-17.3
|
4
|
赤坂 げんき |
-409.2
|
-177.7
|
-115.7
|
-71.4
|
-44.4
|
【最終日観戦記】
|1日目観戦記|2日目観戦記|3日目観戦記|最終日観戦記
いよいよこの日、第7期雀王が決定する。
このまま小倉がAリーグ1年目にして雀王の載冠の快挙を成し遂げるのか。
トータル2位に登りつめたたろうが、第15期最強戦で見せた四暗刻ツモのような大逆転劇を見せるのか。
はたまた、昨期オーラスでの厳しいハネツモ条件をクリアした達也の追い上げはあるのか。
赤坂は実質目無しだったが、前日のオーラスに小倉から親のハネマンを直撃したことで俄然勝負は面白くなってきた。
対局開始となる11時の1時間ほど前に神楽坂に到着すると、B2リーグに所属する田幸浩と遭遇した。 リーグが異なると、人によっては会う機会も少なくなる。
阿賀「田幸久しぶり。今も長野に住んでいるんだっけ?」
田幸「はい、新幹線に乗って観戦に来ました」
この田幸は、長野県内でホテルマンとして働きながら、週末の対局の度に上京してくる。
団体のトップを決める大会といっても、わざわざ新幹線に乗ってまで観戦に来るとは恐れ入る。
いつかはこの場所で――。
雀王戦リーグに参加している一員として、彼も数年後の自分をこの場所に思い描いているのだろう。
決勝戦の最終日と言えば観戦者も増える。その中には第5期雀王に輝いた須田良規や、發王位石野豊の顔も朝一からあった。
いやがうえにも、決勝ムードが高まってくる。
会場入りして、ポイントの書かれたボードを眺める赤坂に声をかけた。
赤坂「670差かー」
阿賀「1半荘あたり140ポイントとして、60000点差のトップ・ラスを5回やれば優勝だよ」
赤坂「阿賀さん、(離れすぎているから)俺の条件とか書かないで下さいね。まー、やれることはやってみるけど」
全ての半荘で役満を直撃するような条件。普通に考えたら、どう転んでも無理だ。
しかし、サンドバックのように叩かれていた2日目までとは違い、やっと場に参加できるようになったと表情も生き生きしていた。
3日目までの成績
小倉 孝 +305.3
鈴木 たろう +79.7
鈴木 達也 △22.2
赤坂 げんき △364.8
16回戦 赤坂−達也−たろう−小倉
それでは各家の配牌を見てみよう。
東家赤坂 ドラ
南家達也
西家たろう
北家小倉
まず、目に付くのが南家達也。すでに2メンツが完成し、ハッキリとドラ入りの純チャンが見える。
スピードで言うと、北家小倉に翻牌がトイツで入っているので、追いつく可能性がある。
メンツこそないが、東家赤坂も両面ターツが3つに雀頭があるので、勝負に行ける配牌だろう。
この中ではたろうの配牌が一番厳しそうだ。
まずは南家達也がいきなりと引き、2巡目にしてハネマンが見えるイーシャンテンになる。
南家達也2巡目
ドラ
一方、最初のツモでを引いた北家小倉。2巡目に西家たろうからが放たれるが、微動だにせず。
今までの戦いでは、仕掛けてホンイツに寄せて行くことの多かった小倉が、1枚目をスルーしたことは意外に感じた。 優勝がかかった最終日、慎重に進めるつもりなのか?
西家たろうはいつも通り手役を見て進める。6巡目にドラに絶好のがくっついたところ。
西家たろう6巡目
ツモ ドラ
ここから打と出る。手なりで打とし、ピンフを見つつその後のツモで純チャンに渡る手もあるのだが、 この手で決めてやろうというたろうの意志を感じる一打だ。
南家達也がイーシャンテンで止まっている間に、門前で進めていた北家小倉にテンパイが入る。
10巡目に場を見渡して打でリーチ。
慎重に進めるなんてとんでもない。リーチで押さえつけるのが小倉の麻雀だ。
北家小倉10巡目リーチ
ドラ
シャンポンとカンチャンの選択。関連牌で場に見えているのは、とが1枚ずつ。リーチの是非は別にして、
が翻牌なだけにシャンポンに受ける人が多数だろう。
このリーチに対し、イーシャンテンの南家達也が手出しで。シャンポンに受けていれば一発のアガリだったのだ。
結果、アガリ逃しという形になったがこれがどう出るか?
親で行くしかない東家赤坂も頑張る。11巡目に高めとなるを引き入れ、12巡目にはを引き、ドラのを勝負する。
東家赤坂12巡目
ツモ ドラ
そして赤坂、14巡目に西家たろうがツモ切ったをポンしてテンパイを入れると、赤坂に入るはずだったがたろうに流れる。 結果、東家赤坂は鳴かずともテンパイを入れることが出来たのだが、この鳴きで北家小倉のツモ牌も流れて二人テンパイで流局。
小倉はアガリ逃しをする形になった局だったが、読み通りは山に3枚眠っていた。
同1本場、南家達也の配牌。
南家達也1巡目
ドラ
ドラがトイツで入っているのだが、形だけ見れば最悪の部類だ。翻牌でも重ねない限り、アガリは遠い。
6巡目でピンフのイーシャンテンになったのは北家小倉。
次巡、タンヤオへの変化を見て残したが暗刻になり打とする。
北家小倉7巡目
ツモ ドラ
そして南家達也、7巡目にを重ねると、9巡目に北家小倉から出たをポン。それでもまだリャンシャンテン。
南家達也9巡目
ポン ドラ
すると、次巡小倉に入るはずだったを食い取り暗刻にする。
さらに、小倉がツモ、打で345の三色に寄せると、このもポンして打。
南家達也11巡目
ポン ポン ドラ
13巡目、2連続でを引き、残り1枚ずつだがトイトイテンパイ。
南家達也13巡目
ポン ポン ドラ
同巡、北家小倉もを仕掛けテンパイ。タンヤオで動けるようにしたのが生きた形だ。
北家小倉13巡目
チー ドラ
14巡目にチートイツのテンパイを果たした東家赤坂。次巡、待ち頃のを引くと、残りわずかだがリーチと出る。
東家赤坂15巡目
ドラ
ソウズの出具合を見れば明らかに良い待ちで、実際山に眠っていたのは3枚全て。残り枚数を考えればかなり確率が良い。
しかし、アガリ牌のが流れた場所は、オリ気味に進めていた西家たろうのところで、当然のように止まってしまう。
16巡目に値千金の300/500は400/600をツモったのが、北家小倉。
北家小倉16巡目
チー ツモ ドラ
苦心のテンパイを果たした達也、赤坂の手を蹴り飛ばす。
東2局、ここまで手になりそうでならなかった南家たろう。配牌は以下の通り。
南家たろう1巡目
ドラ
2巡目からと引き4巡目でテンパイ。
南家たろう4巡目
ツモ ドラ
しかし、マンズの一色手が見える手で、この巡目。ノミ手のテンパイを取ることに何も価値はない。当然のようにピンズを払っていく。
東1局同様、を1鳴きしなかったのが西家小倉。仕掛ける手もあるが、4巡目に以下の牌姿では少し厳しいか。
西家小倉4巡目
ドラ
しかし、と引いてトイツが4つとなり、7巡目に今度は初牌のから仕掛ける。
西家小倉7巡目
ポン ドラ
一方、南家たろう、道中引いたドラのを取っておき、9巡目にくっついたで渋々リーチ。
南家たろう9巡目
ドラ
同巡、を暗刻にし、中スジのを切った小倉。さらにをポンして10巡目にテンパイ。
たろうの現物のならこぼれてくる可能性もある。
西家小倉10巡目
ポン ポン ドラ
11巡目、東家達也にが流れるが、全員の現物のを打って回避。その後オリに回る。
東家達也11巡目
ツモ ドラ
14巡目、たろうがツモ切ったを小倉は鳴けたのだが、ここは動かず。
たろうに手出しでの落としがあったが、は切れなかったか。
終盤、小倉がを引くもスジのを切りフリコミ回避。二人テンパイで流局。
東3局1本場、先行リーチは南家小倉。を切っていわゆるモロヒのリーチ。
南家小倉9巡目リーチ
ドラ
それにしても小倉はよくリーチをかける。ノミ手の愚形。ドラを引いたらとか追っかけが入ったらとかそういったことは眼中にないのだろう。
このリーチに東家たろうがを引いて、小倉のリーチを咎めるべく追っかけリーチ。
東家たろう10巡目
ドラ
こちらのリーチは愚形は愚形でも役が絡んで打点もある。また、西家赤坂の1打目が、南家小倉の3打目が。
北家達也も6巡目から7巡目にかけてをトイツ落としをしていることからがいい待ちに見える。
実際のところ、たろうの待ちは山に4枚、小倉の待ちは山に2枚で、たろうに分がある。
ドラを暗刻にした北家達也が11巡目に仕掛けると、当たり牌のが東家たろうに流れて裏なしの1300は1600を小倉に放銃。
南家小倉12巡目
リーチロン ドラ 裏
これで小倉は34000点持ちとなる。やはり小倉の優勝で決まりなのか?
達也、たろう二人テンパイで流局後の南1局1本場、東家赤坂の配牌。
東家赤坂1巡目
ドラ
すでに4メンツが見えており、ここは確実にアガっておきたいところ。
1打目にを切ると、3巡目のツモは。
4巡目のツモがでのカブリがなければここでリーチだったところ。 打とする。すると次巡のツモは。
いつもは冷静な赤坂だが打牌が強くなる。
傍から見ても痛そうなのがわかる。すると、と引き入れ7巡目に打点が上がってリーチ。
東家赤坂7巡目リーチ
ドラ
一人旅で悠々とをツモり、4000は4100オールで小倉を捲ってトップ目に立つ。
東家赤坂11巡目
ツモ ドラ 裏
同2本場、東家赤坂の快進撃は続く。
北家小倉が点差を縮めようと9巡目に先行リーチを打つ。
北家小倉9巡目リーチ
ドラ
これを待ち構えていたのが東家赤坂。 9巡目テンパイを果たしていたが、小倉のリーチに合わせて、ツモ切りで渾身の追っかけリーチと出る。
東家赤坂10巡目リーチ
ドラ
高めのは南家達也と西家たろうが1枚ずつ切っており、小倉の手牌と合わせると残りは1枚。
たった1枚のを、神の悪戯か一発で小倉が掴む。裏が乗らずとも18600点。
東家赤坂10巡目
リーチロン ドラ 裏
後で赤坂から聞いたのだが、闇に構えていたのは、小倉以外からは見逃そうとしたとのこと。 1半荘で140ポイントも詰めなければいけないのだから、それぐらいしなければ難しいか。
これで小倉は8800点持ちとなり、達也、たろうとは10000点ほど離れたラス目となる。
同3本場、今度は南家達也の出番。
配牌でドラ3の手が3面張でテンパイしたのは早5巡目である。
ダントツトップ目の赤坂との差も詰めたいところだが、これをグッと我慢で小倉から闇で討ち取り、8000は8900のアガリ。
南家達也10巡目
ドラ
小倉、包囲網の現状を悟ったかのようにうなずき、点棒を借りる。
東家達也2000点のアガリで連荘後の南2局1本場。西家小倉、東場とは違い、2巡目にを仕掛ける。
西家小倉2巡目
ポン ドラ
東場でを鳴かなかった手牌よりもはるかに悪いが、ここはマンズに寄せて打点を作っていく。
12巡目にリーチは南家たろう。
南家たろう12巡目リーチ
ドラ
このリーチに14巡目、ホンイツテンパイとなり飛び込んでしまったのがやはり小倉。
西家小倉14巡目
ツモ チー ポン ドラ
これが高めで裏が乗りマンガンとなってしまう。
南家たろう14巡目
リーチロン ドラ 裏
南3局、この半荘何をやってもうまく行く西家赤坂。9巡目にリーチで一発ツモ。2000/4000で加点する。
西家赤坂10巡目
リーチツモ(一発) ドラ 裏
オーラスを迎えての点棒状況。
東家小倉 △10400点
南家赤坂 60800点
西家達也 27900点
北家たろう 20700点
南4局、小倉の親とはいえ、簡単に流される局面である。
まずは、南家赤坂がさらに素点を上乗せさせようとリーチ。
南家赤坂10巡目リーチ
ドラ
13巡目東家小倉もをポンしてテンパイを入れ、打でカン待ちとする。
東家小倉13巡目
ポン ドラ
しかし、このが鳴いてテンパイを入れていた西家達也に当たって終了。
西家達也13巡目
ロン ポン ドラ
16回戦終了時ポイント
小倉 +233.9
たろう +60.4
達也 △12.3
赤坂 △284.0
赤坂、この半荘で150ほどポイントを詰め、一度とて無理だと思われたノルマはひとまず達成。 たろう、達也は現実的に逆転可能なポイントになった。
17回戦 小倉−たろう−達也−赤坂
東1局、起家を引いた小倉。配牌でドラがトイツで入る。何としてもここで決めておきたいところ。
東家小倉1巡目
ドラ
そしてのトイツ落としで11巡目に愚形の小倉リーチ。略してオグリー。
東家小倉11巡目リーチ
ドラ
このリーチは西家達也がダマで小倉から当たり1300点で流す。
西家達也13巡目
ロン ドラ
続く東2局、今度は親のたろうにドラトイツが入る。5巡目にドラを暗刻にして、6巡目にはイーシャンテン。
東家たろう6巡目
ドラ
たろうがイーシャンテンで止まっている間、先制リーチは先ほど小倉のリーチをかわした南家達也。
南家達也12巡目リーチ
ドラ
達也の河には、1打目にが捨てられているものの、ツモ切り後の切りリーチ。さすがに−待ちが濃い。
5巡目に下の牌姿からを仕掛けていたのが北家小倉。 ピンフに三色が見え、もったいような気もするが親がトータル2着目のたろうということもあり、かわしに行ったのか。
北家小倉5巡目
ドラ
リーチを受けて北家小倉。手が進んでいなかったのだが、初牌のを引き、中スジを頼りに打とした。
北家小倉12巡目
ポン ツモ ドラ
南家達也への振り込みは回避したが、このが同巡にテンパイを入れていた西家赤坂に当たり1300点の放銃。
西家赤坂12巡目
ドラ
場が静かに進む。
東3局、安手ながら連続放銃となった西家小倉。9巡目に初牌の単騎チートイツでリーチをかけると、 ほどなくイーシャンテンの東家達也から討ち取り、3200点のアガリで点棒を戻す。
西家小倉11巡目
リーチロン ドラ 裏
東4局、赤坂の親で場が動く。
東家赤坂に配牌でがトイツで入り、4巡目にポン。7巡目にテンパイを果たす。
東家赤坂7巡目
チー ポン ドラ
すると、6巡目にはドラ入りのイーシャンテンになった南家小倉が、8巡目にをツモ切って5800点の放銃。
南家小倉8巡目
ツモ ドラ
同1本場も東家赤坂に手が入る。
東家赤坂1巡目
ドラ
明らかにマンズの一色手につき1打目は打。しかし、5巡目にドラそばのを引き、2枚切れのを離す。すると次巡のツモは。
ドラとイーペーコーがつけば打点は十分だが、うれしいのか微妙なツモだ。
東家赤坂6巡目
ドラ
門前手が見えてしまったばかりに、7巡目に南家小倉から出たはスルー。
結果的には、を叩けば次巡のツモはで最速テンパイを逃してしまう。
8巡目にを引くとこれをツモ切り。すると次巡のツモは。11巡目にを引き、リーチをするも、2巡後にツモッたのは。
東家赤坂13巡目
ツモ ドラ 裏
安め・安めときて裏は乗らずの1000は1100オール。
3者がマンズを使えないこの状況、山に待ちが4枚残りの下記の牌姿の結末を見てみたかったが・・・。
ドラ
同2本場も東家赤坂が西家たろうから2000は2600をアガリ、3本場。今度は北家達也の配牌。
北家達也1巡目
ドラ
これが9巡目には大物手に育った。
北家達也9巡目
ドラ
仮テンだがこれにで飛び込んだのが、配牌からドラがトイツでチートイツイーシャンテンの東家赤坂。8000は8900の放銃。
北家達也のテンパイ打牌はドラのであるが、字牌すらまだ余っていないこの状況では仕方がないか。
それにしても、ソウズのほとんどで手替わりするだけに、仮テンに飛び込んでしまったのはツキがない。 コツコツと貯めた点棒を戻してしまう。
南入時点棒状況
東家小倉 17700点
南家たろう 21300点
西家達也 30900点
北家赤坂 30100点
南1局、親が現在ラス目の小倉につき、西家達也がさらりと流し500/1000。
西家達也13巡目
チー ポン ツモ ドラ
南2局、東家たろう配牌。
東家たろう1巡目
ドラ
ピンズの山を引き当て、10巡目にテンパイし7700点のダマテン。
東家たろう10巡目
ドラ
4巡目に、5巡目にと切ってあり、ピンズで染まっている気配はまったくない。
一方、2着目の西家赤坂、捨て牌にはピンズを並べており、11巡目に北家小倉からをポンし、ドラの切りとする。
西家赤坂11巡目
ポン ドラ
さらにこのドラを北家小倉が仕掛けテンパイ。
北家小倉11巡目
チー ドラ
急に場が煮詰まり、が南家達也に流れる。
南家達也12巡目
ツモ ドラ
西家赤坂の河には、2巡前にが捨てられており、トイトイの可能性が高い。
また、タンヤオ仕掛けの北家小倉の河にはマンズが目立ち、テンパイならピンズ待ちが濃厚だ。
初牌のもも打てないとみるや、を落としてオリに回る。
その後、をポンした西家赤坂が16巡目に安めとなるを北家小倉からアガリ2600点。
西家赤坂16巡目
ポン ポン ロン ドラ
ここはを絞り切り、ロン牌も止めた南家達也のファインプレーだろう。
これがMJならば、評価ポイントがとについているはずだ。
南3局、8巡目にラス目の西家小倉のリーチが入り、全員ベタオリで一人テンパイ。
西家小倉8巡目リーチ
ドラ
オーラスを迎えての点棒状況。
東家赤坂 31200点
南家小倉 16100点
西家たろう 19800点
北家達也 31900点
供託 1000点
親が流れての南4局1本場。
東家赤坂は素点を稼ぐべくひたすらアガるのみ。
南家小倉はまず3着狙い。また北家達也にトップを取られるぐらいなら、東家赤坂に頑張ってもらったほうがいいだろう。
西家たろうは、リーチ棒がさらに1本出ればマンツモトップだが、小倉が下にいるだけに最悪3着確定のアガリもありうる。
北家達也はアガリトップ。トップを取ることが絶対条件だが、小倉をラスのままにしておくことが理想だ。
南家小倉が早い。と引いた2巡目にはを切り以下の形。
南家小倉2巡目
ドラ
が重なれば、チャンタ三色が見える。しかし、5巡目に2枚切れのドラを引くと打で次巡がかぶってしまう。
西家たろうは8巡目にターツ選択を強いられる。
西家たろう8巡目
ツモ ドラ
ここでたろうは打。これならば、三色がついてのハネマンツモが見える。
次巡、を引き、打。逆転トップが見えるイーシャンテン。
しかし、11巡目に引いたのは、期待を裏切る。手替わりを待ち切りのダマテンに構える。 西家たろう11巡目
ドラ
雀頭が出来ないまま進んだ南家小倉。西家たろうがテンパイする直前にテンパイを入れるが、ここでは仮テンの打
南家小倉11巡目
ツモ ドラ
次巡、を引いたところでを切ると、これが間に合わず、たろうに1000は1300点の放銃で終了。
トップから、達也−赤坂−たろう−小倉の並びとなり、前日から小倉まさかの3連続ラス。
たろう、達也の2人が並走して追う形になり、小倉150ポイントリードも残り3回戦ではわからない。
17回戦終了時ポイント
小倉 +188.7
たろう +42.5
達也 +39.6
赤坂 △272.8
18回戦 達也−赤坂−小倉−たろう
東1局、北家たろうの配牌にトイトイが見える。翻牌がトイツで入り、暗刻が1つ出来ているのならば、 狙いはチートイツではなくトイトイが本線だろう。
北家たろう1巡目
ドラ
3巡目までにと仕掛けイーシャンテンに。しかし、思惑とは裏腹に11巡目でのテンパイは1000点の手。
北家たろう11巡目
ポン ポン ドラ
しかし次巡、場に放たれた当然のポンで単騎待ちに受ける。そして場に1枚切れで待ち頃のに受け変え、 南家赤坂がそれをツモ切って5200点。小倉追撃への臨戦態勢を整える。
北家たろう14巡目
ポン ポン ポン ロン ドラ
赤坂、小倉の二人テンパイで流局し、東2局1本場。アガリが出たのは北家達也。 ピンフ・イーペーコーを曲げて、1400/2700のツモアガリ。
北家達也11巡目
リーチツモ ドラ 裏
この日、達也は2着・トップときて出来が良い。小倉を捕らえるのはやはりこの男か?
東3局、親の小倉に8巡目のリーチが入る。
東家小倉8巡目リーチ
ドラ
高めで決まれば優勝もグッと近づく。小倉がツモってきたのは。裏も乗らずで1300オールの収入。 今日の小倉の出来はこんなところか?
しかし、予想とは裏腹に1本場でもオグリーが冴え渡る。12巡目にカンで曲げると残り1枚をツモって2100オール。
東家小倉14巡目
ドラ 裏
この手7巡目に戻って、一通と三色狙いの打ではなく、打のシャンテン戻しの雀頭固定のくっつきとしたところが印象的だ。
小倉は役なしのダマテンに取ることがホントに嫌いなのだろう。
東家小倉7巡目
ツモ ドラ
2本場は、7巡目にカン3を引き入れた南家たろうが会心のリーチと出る。
南家たろう7巡目
ドラ
高めでツモれば、ハネマンの手。小倉の前局にアガった2100オールを帳消しに出来る。
しかし、は北家赤坂に暗刻で入っており、この3面張も、残るはとが1枚ずつのみ。
ドラが暗刻の赤坂も8巡目にテンパイし、ダマ。
北家赤坂8巡目
ドラ
このテンパイも残るはが1枚のみ。
リーチを受けての西家達也の手。9巡目にを引かされ、通ったばかりののトイツ落としでオリに回る。
西家達也9巡目
ツモ ドラ
を落としてトイツが2つのこの手、11巡目から何とと引き、無スジのを通してテンパイとなる。
西家達也14巡目
ドラ
チートイツのみのテンパイを果たしたが、と落としており、字牌もほとんど枯れていては、ホンイツチートイにはなりにくい。
ところが、達也の次のツモは。さらに無スジのを勝負し大物手と化ける。
これを掴んだのが、悠々と3面張でリーチをかけていたたろう。8600点の痛い出費となった。
西家達也16巡目
ドラ
東4局、たろうの親は小倉が簡単に300/500で流す。
北家小倉6巡目
ポン ツモ ドラ
南入時点棒状況
東家達也 34900点
南家赤坂 14900点
西家小倉 36400点
北家たろう 16400点
南1局、親は達也。小倉まであと少しと迫った。親番で逆転したいところである。
8巡目に配牌から入っていたを仕掛けてドラ切り。次巡を引き入れテンパイ一番乗りとなる。
東家達也9巡目
ポン ドラ
ドラを離しているので明らかに安そうな仕掛け。
当面のライバルが親であるため、西家小倉も13巡目にをリャンメンで仕掛け、達也から討ち取る。
西家小倉16巡目
チー ロン ドラ
4巡目にタンピンのイーシャンテンが、鳴いて1000点のアガリとなったが、達也の親を落とすことが出来たのは大きい。
達也を除く3人がテンパイで連荘となった、南2局1本場。親は赤坂。
3巡目の南家小倉のポンに呼応されるかのように空中戦となる。
南家小倉3巡目
ポン ドラ
これに東家赤坂も5巡目までにと続けて仕掛ける。
東家赤坂5巡目
チー チー ドラ
苦しい仕掛けだが、連荘するためには仕方がない。次巡、を引いてイーシャンテンになったところでを離し、 これを鳴いた小倉がテンパイ。
南家小倉6巡目
チー ポン
配牌でドラが暗刻で入っていたのが西家たろう。これまた7巡目に遅れを取るまいと仕掛ける。
西家たろう7巡目
チー ドラ
8巡目にを引くと打。しかし、11巡目に掴んだのは。赤坂、小倉ともにマンズ・ピンズと仕掛け、ソウズ待ちが大本線。 しかも暗刻スジである。
放銃を覚悟の上ツモ切ると、当然のように「ロン」の声。
ここは南家小倉のアガリではなく、を入れてテンパイを入れていた東家赤坂の頭ハネ。三色がついて2900は3200のアガリ。
東家赤坂11巡目
チー チー ロン
二人の大本線だったが、これを切るのがたろうなのである。
同3本場、7巡目に南家小倉が場を見渡し、切りでリーチ。
南家小倉7巡目リーチ
ドラ
シャンポンかペンチャンの選択――。
場には、直前に東家赤坂がとペンチャンのターツ落としをしており、が1枚見えているだけ。とは1枚も見えていない。
まず、赤坂はを持っていないだろう。また西家たろうの2打目にはがあり、トイツ以上で持っていることは考えづらい。
点棒を持っていてもリーのみの愚形で曲げるところが小倉らしい。いくら山にいそうと思っても、中々曲げられない。
行くしかない東家赤坂は必ず真っ直ぐ向かってくる。私ならピヨピヨしてしまいそうである。
この小倉のリーチに対し、北家達也がチャンスとばかり追っかけた。
北家達也7巡目リーチ
ドラ
が場に1枚出ているだけではいい待ちに見えるだろう。しかし、小倉が4枚使っているため、実際は山に3枚のみ。 対して、小倉のリーチは打点こそないがやはり4枚丸々生きていた。
しかしこの対決は、真っ直ぐ行くしかない赤坂がイーシャンテンからを放銃し、達也に軍配。 3本場は4500点のアガリで、小倉にその差1000点と迫る。
北家達也11巡目
リーチロン ドラ 裏
南3局は、南家たろうが大物手でリーチをするが、北家達也との二人テンパイで流局。
南家たろう13巡目リーチ
ドラ
オーラスでの点棒状況
東家たろう 12100点
南家達也 37900点
西家赤坂 13100点
北家小倉 35900点
供託 1000点
南4局1本場。テンパイ・ノーテンで達也が小倉を2000点上回ったが、1本場で供託が1000点。 1000点のアガリでも小倉はトップを捲ることが出来る。
まず、動いたのは東家たろう。
東家たろう6巡目
ポン ドラ
かなり苦しいところからの仕掛けだが、ラス目の親では最悪テンパイを入れなければならない。必然のポンであろう。
この仕掛けで、南家達也にテンパイが入る。
南家達也6巡目
ドラ
接戦のアガリトップで役なしとあれば、リーチの一手か。
しかし予想を裏切り、達也はダマを選択する。これがオーラスのこの状況でなければ、
チンイツまで持っていきたいところだが、テンパイを外している間にアガリ逃しをする可能性がある。
すると、北家小倉がツモ切ったに東家たろうが2つ目を仕掛ける。
さすがに南家達也は1巡置いてのツモ切りリーチと出た。
しかし、2巡後ツモってきたに小倉から声が。
北家小倉9巡目
ロン ドラ
2000は2300のアガリで、本日小倉2ラス後、待望のトップ。
ここで達也がテンパイを入れた6巡目に小倉の手牌を見てみよう。
北家小倉6巡目
ツモ ドラ
達也が即リーと行っていたならば、小倉の打牌は達也の現物のとなるはずだ。 小倉本来のツモは、場に2枚切れの、現物のと続くので、まだこの段階ではが打たれることはなかっただろう。
そうなると、この段階で小倉にテンパイが入るを引くこともなく、での打ち込みもなかった。
結末はどうなるかはわからないが、達也4枚のアガリ牌に対し、小倉残り3枚ずつのイーシャンテンでは達也に分があっただろう。
たった1巡の拙攻――。
牌の巡り合わせとは恐ろしいものだ。
18回戦終了後に達也は、「九連見ちゃったんだよね」との弁。小倉と離れたポイント差がそうさせたか?
18回戦終了時ポイント
小倉 +248.9
達也 +54.2
たろう △5.4
赤坂 △299.7
小倉と達也とは、その差190ポイントほど。順位点がトップと2着で40ポイント差がある協会ルールでは、 逆の順位ならば100ポイントほどの差に縮まっていたはずだ。
トップ・ラスで100ポイント程度と言っても、残り2戦続けることは至難の業だろう。
1日5回戦ある決定戦では、その日の3回戦目が終わると30分ほどの休憩に入る。外出した達也は戻ってくるなり小倉を捕まえて、
達也「いろいろ作戦考えたんだけど、もう無理だ。小倉、お前の優勝で決まりだ」
その微笑の裏には何か企んでいる様子が伺える。小倉に優勝を意識させ、プレッシャーをかける陽動作戦か?
どちらにしても、達也が優勝を諦めている訳がない。その真意が19回戦目の闘牌に表れる。
19回戦 たろう−小倉−達也−赤坂
2局連続で流局した後の東1局1本場。配牌9種は西家達也。4巡目までにと引き、何とこの巡目で11種。 リャンシャンテンだが、雀頭が簡単に出来ることを考えれば、実質的には国士イーシャンテンみたいなものである。
西家達也4巡目
ドラ
字牌からの切り出し後、ペンチャンを2つ払ったのが東家たろう。8巡目にをカンチャンで仕掛ける。
東家たろう8巡目
チー ドラ
さらに10巡目に出たをポンすると次巡のツモは。待ちが悪いながらも大物手をテンパイする。
東家たろう11巡目
ポン チー ドラ
さらに2巡後を引き、場に1枚切れの単騎に受け変える。
たろうの捨て牌にはとが切られているぐらいで中ほどの牌が1枚も切られておらず、タンヤオ仕掛けにも見える。
また、が3枚、が4枚見えており、国士の達也に1枚あったとしてもかなり優秀な待ちではある。
東家たろう13巡目
ポン チー ドラ
たろうが大物手をテンパイする中、西家達也もラス牌のを引き入れ、何とテンパイを入れていた。残りはが山に2枚。
西家達也12巡目
ドラ
万が一だが、小倉から直撃するようなことがあれば、素点で64ポイント、都合144ポイントも縮めることが出来、最終戦はわからなくなる
しかし、いくら攻め屋の小倉でも、トップ・ラスの並びさえ作らなければいいので直撃は難しいか・・・。
すると小倉14巡目にテンパイを入れ、待ち取りを考える。
南家小倉14巡目
ツモ ドラ
各家の捨て牌は以下の通り
東家たろう
南家小倉
西家達也
北家赤坂 (空欄はポン抜け)
打では3メンチャンだが、自分の手牌と照らし合わせると、が2枚、が3枚、が3枚で残り4枚だが、
国士の達也がを使っていることも考え合わせると、ほとんど山にいないか。
対して、打では、待ちの亜リャンメンだが、場には北家赤坂が切っただけで残り5枚。山にありそうな感じはある。
ここは、今たろうが切ったを合わせ、達也の万が一に備えダマか・・・。
「リーチ!」
えっ?が曲がっている。まさか万が一があるのでは・・・
当然のように西家達也、東家たろうともに押す。
その小倉が一発で持ってきた牌が指の下からかすかに見えた。
萬子。
すごいことが起きるのでは?
「ツモ!」
南家小倉15巡目
ツモ ドラ
「2000/4000は2200/4200」
1回あるかないかのチャンスを潰され、小倉にトップ目に立たれては達也の心も折れるだろう。
南1局、たろうのリーチを受け1000オールでかわした東家小倉。同1本場も好調とばかりリーチで押す。三色出来合いの大物手だ。
東家小倉9巡目リーチ
ドラ
それを受けて北家たろうもぶつけて行くしかない。同巡に追っかけリーチ。
北家たろう9巡目リーチ
ドラ
小倉の待ちは西家赤坂が4枚固めており、山に1枚ずつのめくり合いに。
この勝負は小倉がを掴み、裏が乗って5200は5500の放銃となる。
北家たろう12巡目
ロン ドラ 裏
東3局、親は達也。9巡目にドラのと1枚切れののシャンポンでテンパイするもダマを選択。
そして11巡目にを引くとリャンメンに変えてリーチ。
東家達也11巡目リーチ
ドラ
競技麻雀の基本通りの進行。切り後のが宣言牌では出る牌ではないが、
が1枚切られているだけとあっては手に力が入る。しかし、アガリ牌は他家に流れ、一人テンパイで流局。
同1本場はマンズで染めた西家たろうが1100/2100をアガリトップ目に立つ。
達也、親を流されて苦しいか?
東4局、東家赤坂と北家達也の二人テンパイで1本場。
ここまでの点棒状況
東家赤坂 18700点
南家たろう 32600点
西家小倉 25000点
北家達也 23700点
配牌でがトイツで入っていた東家赤坂。ようやく鳴けてテンパイが入ったのは、巡目も深い12巡目。
東家赤坂12巡目
ポン ドラ
ここで虎視眈々と大物手を作っていたのは北家達也。が流れてきて、ピンフこそつかないものの、高めハネマンのテンパイ。
北家達也12巡目
ドラ
そして小倉も13巡目にテンパイを入れ追いつく。待ちが場に5枚切られているとあっては、さすがにダマ。
西家小倉13巡目
ドラ
達也の高めとなるを掴んでしまったのが、トイトイで進めていた南家たろう。
南家たろう13巡目
ポン ツモ ドラ
これをツモ切るが、なんと達也は何事もなかったかのように見逃す。
小倉がを切っており、直撃出来るかも知れないが、上家にいては同巡で合わせられる可能性もある。
巡目が深いこともあり、トップ目のたろうから当たって、トップを確実にし並びを作るという考えもある。
しかし、当たるなら小倉からのみという信念を持って、現雀王はこれを拒否した。
そして2巡後・・・
小倉が掴んだのは。安めで8300のアガリだが、大きな大きな直撃となった。
北家達也16巡目
ロン ドラ
達也、追撃の手をやっと成就させる。一旦はトップ目だった小倉だが、結局20000点ほど減らし、ラス目まで落ちてしまった。
南1局・南2局と軽く動いて南3局。親は達也。小倉をラスに蹴落としたものの、依然としてたろうは捲れず2着のままである。
ここまでの点棒状況
東家達也 31000点
南家赤坂 20300点
西家たろう 33100点
北家小倉 15600点
その東家達也の配牌。
東家達也1巡目
ドラ
ここから、とソウズを引き寄せ、なんとここでも12巡目に高めハネマンの手が入る。
東家達也12巡目
ドラ
当然のダマ。南家赤坂以外からは当たることが出来る。たろうから高めが出たら、小倉より500点下になるが、それでも問題ないだろう。
13巡目、北家小倉にが回るも、手が進んでおらず手の内に。続いて達也のツモは。
4000オールでトップを決める値千金のアガリ。
東家達也14巡目
ツモ ドラ
同1本場、さらに東家達也が加点する。リーチで表示牌のカンチャンをツモリ、裏も乗って4100オール。
東家達也14巡目
リーチツモ ドラ 裏
さらに2本場、3本場とテンパイで積み棒を増やすが、4本場、北家小倉のリーチに達也、スジを追ってで放銃してしまう。
北家小倉10巡目
リーチロン ドラ 裏
点数こそ1300は2500と大きくないが、これで小倉が赤坂を交わして3着目。
オーラスを迎えての点棒状況
東家赤坂 9700点
南家たろう 22500点
西家小倉 11500点
北家達也 56300点
南4局、東家赤坂も最後の踏ん張りを見せ、13巡目にリーチと出る。
東家赤坂13巡目
ドラ
しかし、このリーチは西家小倉がしっかりと1000点で流し、3着キープでラスト。
西家小倉15巡目
チー ドラ
19回戦終了時ポイント
小倉 +222.4
達也 +130.5
たろう △3.9
赤坂 △351.0
小倉と達也の差は、91.9ポイント。達也トップ、小倉ラスなら、11900点の差をつければ逆転となる。(同点は現雀王優勝)
小倉独走で終わるかと思われたこの第7期雀王決定戦も最終戦までわからなくなった。 ギャラリーとしては面白い展開だが、小倉としては胃が痛くなるような思いだろう。
最終戦の場決めをして、北家を引いたのが達也。これには達也が行けるぞという雰囲気を醸し出した。
決定戦では北家有利。
優勝以外価値がない決定戦では、親番が落ち、優勝の目がないものはアガリに来ない。
つまり、小倉がアガリ切って優勝を決めない以外は、自分がテンパイを続けている限り終わらない。
最終戦が長引くことがあるのはこれが原因だが、兎にも角にも達也にとっては雀王連覇に向けての追い風となっているのは間違いない。
最終20回戦 たろう−赤坂−小倉−達也
東1局、起家を引いたのがトータル3位のたろう。 小倉との差が226.3ポイントで、優勝には、トップ・ラスで15万点近くの差が必要だ。
並びを作る以前に、それだけの素点を叩き出さなければならない。それゆえ、2回しかない親番は重要になってくる。
まず、仕掛けたのは北家達也。5巡目に重ねたばかりのをポンして打、8巡目にをチーしてテンパイ。
北家達也8巡目
チー ポン ドラ
これに遅れを取るまいと東家たろうも達也のテンパイ打牌をリャンメンからチーしてイーシャンテン。
さらに西家小倉が切ったをポンして、広く受ける。
東家たろう10巡目
ポン チー ドラ
頼みの手よりははるかに広い。
さらに達也、11巡目にツモってきたを加カンし、14巡目にを引いて打。リャンメンの待ちに変わる。
北家達也14巡目
チー 加カン ドラカンドラ
たろうも負けずとをチーして苦しいながらにもテンパイに取る。流局が見えてはテンパイが取れただけでも良しだろう。
東家たろう15巡目
チー ポン チー ドラ カンドラ
残りわずかとなった18巡目。たろうがツモってきたのは。達也はピンズを仕掛け、ソウズがほぼ通るとあっては、マンズが大本線である。
二者択一だが、たろうはツモ切りを選択。達也に5200点の放銃となる。
北家達也18巡目
ロン チー 加カン ドラカンドラ
達也加カン後の手出しをどう見るかだが、の出来メンツからと入れ替えてののリャンメン待ちは考えづらい。
その前のテンパイ形がの3メンチャンということになり、はをポンした際に自分で切っているからだ。
ここは打としたほうが良かったかもしれない。
たろう、あとは南場の親番に大連荘をかけるのみ。優勝争いには加われないか・・・。
東2局、7巡目に先制リーチは南家小倉。当面のライバル達也に先行されているとあっては、ここらでアガって楽に進めたいところだ。
南家小倉7巡目
ドラ
カンツモの打でリーチだが、その前巡にが2枚見えていることもありを切っている。 最悪ドラを離すつもりがあったのだろう。これが最速テンパイとなる。
しかし、ピンズは場に高くリーチの時点ですでに空。
リーチを受けて北家たろう。
北家たろう7巡目
ツモ ドラ
メンホンのイーシャンテンだが、とりあえず安全牌の切り。
そして12巡目にを暗刻にしてテンパイ。闇に構える。さらに14巡目にを引き、暗カンするがここでもリーチはしない。
カン待ちも山には残っていない。
そして16巡目にを引き、待ちが変わるとここでリーチと出る。
北家たろう16巡目
カンドラ カンドラ
山にはが1枚残っていたのだが、王牌に。二人テンパイで流局。
東3局1本場、東家小倉の配牌。
東家小倉1巡目
1打目に続いて、2巡目には早々とのトイツ落としをする。がトイツで入っており、を引いたところで雀頭は別にできるだろう。
しかし、目論みとは裏腹にメンツばかり出来て雀頭が出来ない。10巡目にテンパイとなる。
東家小倉10巡目
ツモ ドラ
ここはを切って、とりあえずの単騎、手替わりを待ってダマ。
と引くがツモ切り。そして13巡目に入れ替え、切りリーチ。少なくともノベタンにはなったか?
小倉の手牌を覗くと何と単騎。が場に2枚出ており、
また、小倉の1打目が、もツモ切っていることから出アガリも期待は出来るが・・・
何とも危なっかしいリーチである。
すると、同巡に西家たろうが追いつき、ドラを勝負しての追っかけリーチ。
西家たろう13巡目リーチ
ドラ
さらにドラを重ねた北家赤坂も続く。
北家赤坂13巡目リーチ
ドラ
こちらは出アガリ倍マンで、小倉、たろうがそれぞれ山に1枚、0枚に対し、山に2枚。誰が掴むのか? そう見ていると、何とツモったのは小倉。裏も乗って2100オールにリーチ棒4本の収入で35800点に。 これでかなり安泰の位置に来た。
東家小倉16巡目
リーチ ツモ ドラ 裏
リャンメンで曲げても中々成就しないが、愚形をいとも簡単にアガる。ホントに不思議だ。
達也、たろうの二人テンパイで流局後の東4局3本場。東家達也が3巡目にポンから入る。2枚目の鳴き。
東家達也3巡目
ポン ドラ
かなり遠いところからの仕掛けだが、小倉に走られているとあってはなりふり構ってはいられない。
この仕掛けにより、南家たろうにと流れ、4巡目にして大物手が見える。
南家たろう4巡目
ドラ
1打目に始まり、のリャンメンターツも払っているので、中途半端な手は狙っていないということだ。 四暗刻に大三元のおまけもつくかも知れない。
北家小倉にも好牌が寄り、8巡目にテンパイ。点棒を持っているので局を流すことが優先だ。 常にリーチで押す小倉だがここはダマテン。
安めピンフのみの手。達也の親とあっては当然の選択だろう。 小倉のリーチが入っては字牌をアシストされるかも知れぬ。 次巡、あっさりと高めをツモって700/1300は1000/1600の収入。何と山には7枚もアガリ牌が残っていた。
北家小倉9巡目
ツモ ドラ
協会の牌譜では、リーチがなくても裏ドラを記録することになっている。
裏ドラをめくると裏ドラは。タラレバだが、小倉がいつものようにリーチをしていれば、一発に裏がついてハネマンだったのだ。
理ではダマで局面を進めるのが当然だが、小倉も嫌な感じがしたのではないか?
南入時の点棒状況
東家たろう 16700点
南家赤坂 17900点
西家小倉 38900点
北家達也 26500点
達也がトップでも小倉は3着に潜りこめば、31900点差つけられなければ大丈夫。 たろう、赤坂は親番が落ちればアガリに来ないだろうから、小倉にとっては楽な展開である。
南1局はたろうが最後の踏ん張りを見せる。流局後の1本場、東家たろう。メンタンピンを一発でツモってさらに裏も乗り6100オール。
東家たろう10巡目
リーチ ツモ ドラ 裏
これでたろう36500点となり、小倉を捲りトップ目に。
この後、たろうの親が中々落ちない。1500点とノーテン罰符での収入しかないのだが、9本場まで積む。
ここで点棒を減らしたのが達也。ノーテンが続き、手になりそうだとたろうの1500点に捕まる。 達也と赤坂は箱割れ寸前である。
東家たろう 52700点
南家赤坂 6300点
西家小倉 33300点
北家達也 7700点
長かった南1局は9本場まで。あっさりとたろうの親が落ちる。
3巡目リーチはジリ貧の北家達也。捨て牌には、と並んでいるだけ。ヒントの少ないリーチである。
東家たろう、南家赤坂と現物の字牌を切るが、西家小倉には安牌がない。西家小倉は以下の牌姿。
西家小倉4巡目
ツモ ドラ
小倉が選んだのは打。一番通りそうに見える。が、これが達也に一発で御用となる。8000点に9本場がついて10700点。
北家達也4巡目
リーチ ロン ドラ 裏
南2局、調子が出てきたのが西家達也。5巡目にをポンしてホンイツのテンパイ。
西家達也5巡目
ポン ドラ
さらに次巡を引き変則3メンチャンに。北家たろうからが出て軽く3900点のアガリ。
西家達也8巡目
ポン ロン ドラ
これでもまだ小倉2着、達也3着。
南3局にファンタジスタ達也の真骨頂が炸裂する。
配牌は冴えない感じだ。
南家達也1巡目
ドラ
これが、と引き、6巡目に最速のテンパイ。かの初牌同士の選択だが、を曲げてリーチ。
南家達也6巡目リーチ
ドラ
すると、2巡後にをツモリ3000/6000。
南家達也8巡目
リーチツモ ドラ 裏
一時は箱割れ寸前だった達也だが、このアガリでまさかの大逆転があるかも知れない。
オーラスを迎えての点棒状況。
東家達也 34300点
南家たろう 45800点
西家赤坂 3300点
北家小倉 16600点
優勝条件を確認しよう。
19回戦終了時ポイント
小倉 +222.4
達也 +130.5
たろう △3.9
赤坂 △351.0
達也と小倉の差は、現在17700点。達也トップ・小倉3着ならば31900点差で達也優勝。 4000オールを引けば、親は続くもののトータルトップ目に立てる。
たろうは小倉との差が226.4ポイント。トップ・ラスで146500点差が必要。(同点はリーグ戦の結果から小倉が優勝)
現在の差が29200点差なので、小倉からダブル役マン直で小倉を捲る。
しかし、達也との差は136.5ポイントなので、トップ・2着なら96600点差が必要で、現在の11500点差に64000点を足しても届かない。
小倉からトリプル役マンをアガることが条件となる。(ツモなら4倍役満条件)
南4局、自身のアガリか達也ノーテンで優勝の決まる北家小倉。達也の上家とあっては絞ることも出来る。
その小倉、まだ手が整わない5巡目にをポンする。
北家小倉5巡目
ポン ドラ
絶対にテンパイをしなければいけない状況ならばまだしも、達也がアガッたところでもう1局はある。かなり危ない仕掛けと映った。
この時すでに東家達也はイーシャンテン。
東家達也5巡目
ドラ
しかし、小倉の仕掛けにより、7巡目、8巡目と達也に入るはずだったが流れてしまう。一発ツモを逃した形だ。
達也10巡目にを引いてピンフのみだがリーチ。
東家達也10巡目リーチ
ドラ
安牌がない北家小倉、あっさりとをツモ切り、一発に裏がついて何と12000の移動。
北家小倉10巡目
ポン
東家達也10巡目
リーチロン ドラ 裏
言わんこっちゃない。そう思ったのだが、を仕掛けていなければ6000オール。 達也と小倉との点差は24000点で同じだが、達也のトップが確定的になるだけに、小倉としては助かった形だ。
しかし、たろうに流れたは知る由もないか。
1回戦東1局から続いてきた小倉の首位が、今初めて捲られた形になる。
現在の点棒状況。
東家達也 46300点
南家たろう 45800点
西家赤坂 3300点
北家小倉 4600点
優勝条件を再度確認しよう。
捲られた小倉の場合。
この半荘現在トップの達也と小倉の点棒は41700点差と広がった。 トップ・3着なら31900点差がリミットなので、小倉は出アガリなら12000点必要。
しかし、達也とたろうは500点しか差がない。
達也とたろうが同点トップの場合、順位点を30ずつに分けるので、達也のポイントを20ポイントつまり20000点分減らせることが出来る。 こちらのほうが簡単で、達也から1000点直撃して2着に落とすか、500/1000のツモアガリで条件を満たす。
たろうの条件は先ほどと変わらず小倉からのトリプル役マン直。
可能性があるといっても、条件としては不可能と言って良いだろう。
字一色は絶対で、大三元や小四喜、大四喜のいずれかに、さらに四暗刻か四槓子の単騎待ちとなる。
実質、この1回の勝負で決まる。小倉が条件をクリアするか達也が凌ぎきるか・・・。
南4局1本場、ドラはとなる。このドラが大きな意味を占める。
本来500/1000か1000点直撃条件では、ドラを1枚絡めてタンヤオや役牌で動きたいところだ。
しかし、ドラがとあってはそうもいかない。ホンイツやチャンタなどで動けば手役がわかりやすくなり、2つ目は鳴けないだろう。
各家の配牌を見てみよう。
東家達也 ドラ
南家たろう
西家赤坂
北家小倉
東家達也、アガリに行けそうといえば行けそうな配牌である。北家小倉のアガリ条件は楽なようでいて厳しい。
と孤立牌を切った後、3巡目にはを抜き、オリる体制を作る。
南家たろうと西家赤坂は、予想通り中張牌から離していく。
一方、北家小倉。条件はおろかテンパイすら厳しい配牌。最初のツモでを引き、カンチャンターツが出来る
3巡目に出たはさすがに仕掛けなかったものの、を重ね4巡目にラス牌となるを仕掛ける。
北家小倉4巡目
チー ドラ
かなり苦しいところからの仕掛けだということが他家からも見て取れる。は手出しが入っているものの明らかに二鳴きだ。
頼みの綱、は達也と赤坂に入っており、出ては来ない。山越しで達也直撃というのも難しいだろう。
、と引いた小倉、9巡目に形テンとなるに食いつく。
北家小倉9巡目
ポン チー ドラ
この鳴きでドラのが回ったのが南家たろう。トリプル役マンの種、字牌は他にない。
南家たろう11巡目
ツモ ドラ
小倉の仕掛けは明らかに役牌頼みだ。序盤に、と切っているので、可能性はドラの、、の3種類。
特には鳴かれれば、500/1000の条件を簡単に満たしてしまう。 ホンイツ仕掛けには見えないが、これで振り込めば12000点で逆転という可能性もある。
これだけは万が一にも打ってはいけない牌である。
少考したたろう、何とこのをツモ切り。
見ていた私には、西家赤坂がを2枚抱えていたことを知っていたのだが、何がやりたいのかまったくわからなかった。
次巡、たろうはを引きイーシャンテン。15巡目にを引くと、打。 残りわずかだが、テンパイ・ノーテンでまさかの小倉優勝があるのか?
小倉も16巡目にを持ってきて達也からだけは直撃出来るテンパイに変わる。
北家小倉16巡目
ポン チー ドラ
すると、たろうが17巡目に持ってきたのは。これでテンパイとなるのだが、テンパイがこんなに嫌そうな顔を見たことがない。
を切りテンパイに取る。
たろう最後のツモ番、達也が切ったにも関わらず、中々ツモりに行こうとしない。何か苦悩と闘っているようだった。
そして、ようやくツモるとツモ切りリーチに!
海底が回るのは達也だから、ツモ番のないリーチである。先にも書いたが協会ではこれが認められている。
どちらにしても条件をまったく満たしていない為、アガることはない。
これに思わず反応してしまったのが達也。
「えっ?」
対局中の私語は当然禁止だが、思わぬ出来事にビックリしてしまったようだ。
手を崩していた達也。テンパイを取れるはずもなく、たろう、小倉の二人テンパイで流局。
達也、ノーテン罰符による降着でまさかの準優勝。
「もしかして優勝は小倉?」
呆然とするギャラリー。
その混乱を遮るかのように、一人の人間が拍手を始めると、他のギャラリーも一斉に拍手を送った。
確認したわけではないのだが、あのテンポの早い拍手のリズム感は五十嵐代表だろう。
対局が終わると、たろうは目を真っ赤にして謝っていた。
「ホントにごめん、どちらを優勝させていいのか――、俺には決められなかった」
「達也にテンパイを取らせれば、俺の優勝の可能性は続くから。今までこうやって、決勝を戦ってきたんだ」
達也にも言い分はある。
「俺が伏せたら、その時点で終わりだから、伏せればいい。あのリーチはない」
通常、親から開けていくテンパイ宣言。リーチが入ったときのみリーチ者が先だ。
達也がノーテン宣言をした後に、たろうが開けるか伏せるかで優勝者が決まる。 それゆえにリーチ宣言をして、強制的に開けることを選択したのだ。
小倉が優勝後、言っていた一言も興味深い。
「たろうさんならテンパイを取ると思っていました」
確かにそれがなければ、形テンの仕掛けは出来ない。B2リーグから一緒に戦ってきて、たろうのことを良く知っていた小倉。 一方、たろうとはなかなか対局する機会がなかった達也。
この差が最後に出てしまったのか?
|
第4位、赤坂げんき。
「楽しかった」と赤坂。その顔は4人の中で一番晴れ晴れとしている。
早々と優勝争いからは脱落してしまったものの、赤坂の頑張りがなければ、
優勝争いがこんなにも白熱したものとはならなかった。
この決定戦での経験が次に生きてくるだろう。 |
|
第3位、鈴木たろう。
最後の最後でギリシア神話の神ゼウスは難問を与えた。
正解だったのか、間違いだったのか?賛否両論あるだろう。
しかし、あの鈴木たろうがこんなにも辛い表情をするのを初めて見た。
結果こそ出なかったが優勝への執念には目を見張るものがあっただろう。 |
|
第2位、鈴木達也。
雀王初の2連覇がかかったこの戦い。優勝と2位では大きな違いだが、麻雀に審判員がいたならば、判定でどうなったかはわからない。
伝説に残る大逆転劇は見られなかったが、優勝に匹敵する戦いだった。
この悔しさをバネに雀王の座を取り返して欲しい。 |
優勝、小倉孝。
最後は薄氷の勝利だったが、常に戦いの中心にいたのが小倉。
1年目での雀竜位、ほぼストレートでの雀王と、この男はまったく底を見せない。
来期、まだ誰も成しえていない雀王連覇は小倉にしか権利がない。
第7期雀王は小倉孝に決定。
文:阿賀 寿直
|1日目観戦記|2日目観戦記| 3日目観戦記|最終日観戦記
▲このページトップへ
|