順位 |
名前 |
ポイント |
第1節 |
第2節 |
第3節 |
16回戦 |
17回戦 |
18回戦 |
19回戦 |
20回戦 |
1 |
木原 浩一 |
237.1 |
152.5 |
33.8 |
160.5 |
-60.1 |
-48.7 |
65.7 |
-41.4 |
-25.3 |
2 |
阿賀 寿直 |
164.0 |
16.5 |
-52.1 |
-37.7 |
77.7 |
66.3 |
-43.4 |
49.5 |
87.2 |
3 |
鍛冶田 良一 |
49.7 |
-2.4 |
133.9 |
-51.4 |
15.9 |
3.0 |
0.9 |
6.7 |
-56.9 |
4 |
鈴木 たろう |
-452.8 |
-166.6 |
-116.6 |
-72.4 |
-33.6 |
-20.6 |
-23.2 |
-14.8 |
-5.0 |
【最終日観戦記】 | 1日目観戦記 | 2日目観戦記 | 3日目観戦記 |
3日目、15回戦を終えての成績は、
木原+346.8、鍛冶田+80.1、阿賀△73.3、鈴木たろう△355.6となっている。
木原圧倒的リードである。
木原は初日から、まるで条件付きの最終日のような――
そこまでトップにこだわるか、という激しい打ち方でこのリードを築いた。
3日間のトップ回数とポイントを数えてみよう。
1日目・トップ2回・+152.5
2日目・トップ2回・+33.8
3日目・トップ3回・+160.5
トップ率46.7%と圧倒的で、2日目こそ+133.9p稼いだ鍛冶田の後塵を拝したが、初日と3日目は無論その日の勝ち頭である。
「トップが偉い協会ルール」
とみんなが口にするが、誰よりもそれを深く心に刻み込んで挑んできたのが木原だった。
決定戦の出だしからここまで徹底させた者はいままでいなかった。
11期の決定戦でたろうが初戦から5連勝しているが、リーチ後の見逃しまでするような危うい強引さは見せていない。
いくら協会ルールだといっても、そこまでするのか?
――いや、した結果が出るまであと5戦となった。
★16回戦★(座順・鍛冶田→木原→阿賀→たろう)
東1局から、大量リードしているはずの木原がリスクを顧みずフリテンリーチ。
ドラ 裏ドラ
最初のテンパイが、
であり、そのときにを切っている。
その後ツモ、打の-ノベタンからの変化だ。
フリテンとはいえ5メンチャン、しかもマンズの中ごろは他3人がほどよく切っていて、ヤマにある程度残っていそうだった。
この手は、ピンズよりソーズのを可愛がると、
となる手順があったが、それだとアガれていたかどうかはわからない。
木原好スタート。
不満は最安目のツモだったことか。
東2局は鍛冶田のリーチ→1人テンパイで木原の親はあっさり流れた。
東3局1本場は阿賀がメンピン一発ツモドラ1の親満。
そして2本場、事件が起こる。
阿賀が超ド級のテンパイ。
ドラ
このヤミテン24000に木原がで飛び込んでハコ点になってしまう。
阿賀はもちろんツモっての四暗刻が点棒的にはいいが、これ一発で木原のラスを確定できたので、ポイント的にはむしろこのほうがデカいかもしれない。
この半荘はこの1局がすべて。
阿賀がこの1回でトータルをプラスに戻すダントツを取り、木原がキッチリ箱点で終わる。
阿賀+77.7 鍛冶田+15.9 たろう△33.6 木原△60.0
トータル
木原+286.8
鍛冶田+96.0
阿賀+4.4
たろう△389.2
★17回戦★(座順・たろう→木原→鍛冶田→阿賀)
起親のたろうがメンピンツモ・表ドラ1裏ドラ1の親満でスタート。
これを阿賀がリーチタンヤオツモ三暗刻、リーチ・ドラ3(放銃・木原)の満貫2発でまくる。
どうあってもトップが欲しいたろうは、そのため南1局の親で譲れないとばかりに木原のリーチ・ドラ3に打ち上げてしまう。
なお、木原のアガリはこの半荘これ1回のみである。
たろうはその後も細かな加点を続け、
オーラスには阿賀35600、たろう31400と4200差まで詰め寄っていた。
阿賀は7巡目にピンフをテンパイすると、点差を確実なものにするためリーチと行った。
ドラ
11巡目にたろうが追いつくが、リーチ打牌が放銃だった。
ツモ→打
阿賀が裏ドラ表示牌に手を伸ばすと、親満になる唯一の牌がめくれた。
この放銃でたろうは3着に落ちた。
2着になった鍛冶田は1本場、役牌ノミ手をアガッて終了させた。
2半荘連続で阿賀トップ、鍛冶田2着、木原ラスという展開となり、たろう一人を置いてきぼりにしながらも、急激な盛り上がりを見せる。
解説、運営でスタジオにいた誰からともなく、
「雀竜戦の斎藤俊と武中進の差って、最終日始まる前は400強だったっけ?今回の阿賀と同じくらい?」
といった声が聞こえて来た。
阿賀+66.3 鍛冶田+3.0 たろう△20.6 木原△48.7
トータル
木原+238.1
鍛冶田+99.0
阿賀+70.7
たろう△409.8
休憩時間中に木原は、「慎重すぎた」と反省していた。
観戦している限り、そんな風には感じなかったが、少し時間がたってから
「ああ、そうか」と思い当たった。
今回の決定戦、木原はいつもの木原ではなかった。
トップ取りに異様に比重を置いた決定戦モードにシフトしていた。
3日目までのその戦い方に比べれば「慎重」になっていたということであり、通常モードと比較しての話ではなかったのだろう。
大量リードを持っての最終日ならば、ハイリスク・ハイリターンの打ち方をする必要はない。
木原もそう思っていたのであろうが、その結果が2連続ラスで鍛冶田や阿賀に逆転が現実的な点差に詰め寄られたため、再びシフトチェンジ。
★18回戦★(座順・木原→鍛冶田→たろう→阿賀)
殴り合いモードで行く決意で卓に着いた木原は起家となったこともあって積極的に仕掛け、十分な手格好になった。
8巡目にダブのポンテン。
ポン ドラ
これに対し、たろうは別色で攻めて追いつく。
チー
鍛冶田も追いついたがヤミテン。
その頃には、木原はを引いて-のリャンメンに待ち変えしていた。
そしてたろうがを掴んで放銃。
明らかなホンイツ狙いの捨て牌で、ソーズはリャンメン手変わりの際に切られた4巡前のがポツリとあるだけ。
たろうがリードしている立場なら、こんな牌を打つわけがない。
たろうは「麻雀はバランスのゲーム」と言い、サインを求められた際にもそう書く。
バランスの保たれているときのたろうは鋭い攻めと的確な読みで鬼神の強さを見せ、事実この3年間見せ続けたが、バランスを失ったときの脆さがこれである。敗者の悲哀がそこにあった。
木原は南1局にも親ッパネをアガる。
9巡目リーチ、11巡目ツモ。
ツモ ドラ
裏ドラ表示牌は勝利を確定させるであった。
木原+65.7 鍛冶田+0.9 たろう△23.2 阿賀△43.4
トータル
木原+303.8
鍛冶田+99.9
阿賀+27.3
たろう△433.0
木原がトップを取ったことで、事実上第14期雀王は決まった。
2ラスを引いているのでこの日の収支は△51.8であり、他者との距離が広がったわけではないが、
残り2戦とゴールが近づいた中で十分なポイント差である。
★19回戦★(座順・たろう→鍛冶田→木原→阿賀)
阿賀のハネ満ツモでスタート。
リーチ・ツモ ドラ 裏ドラ
阿賀は南1局にもハネ満をツモる。
たろうが細かく連チャンした3本場、本手が入り、高目三色のメンタンピンリーチ。
ドラ
これを阿賀が、三色が崩れるツモテンパイながらも追っ掛ける。
結果は阿賀が一発ツモ。裏ドラであった。
細かなアガリを積み重ねてトップ目にいたたろうだが、阿賀に二度目のハネ満親かぶりをさせられて勝負あり。
オーラス、ラス親の阿賀は特大トップを目指して連チャンの構えを見せたが、
そのため鍛冶田のドラ3リーチに飛び込んでしまい、結果3万点を切る小さなトップで終わってしまう。
しかし、これは意義のある放銃。
ラス目の鍛冶田を2着に押し上げ、木原にラスを押し付けたからだ。
阿賀+49.5 鍛冶田+6.7 たろう△14.8 木原△41.4
トータル
木原+262.4
鍛冶田+106.6
阿賀+76.8
たろう△447.8
最終戦を迎えて、鍛冶田と阿賀の優勝条件は、鍛冶田が木原と75900差のトップ・ラス。
阿賀が105600差のトップ・ラスである。
鍛冶田のほうがやや現実的な数字ではあったが、起家を引かされたこともあって
(座順・鍛冶田→たろう→阿賀→木原。最終戦のラス親はトータル首位者に固定。他3者の並びは場決めによって決まる)
先に終戦を迎える。手に恵まれないこともあってアガリを得られないまま13200の持ち点で南1局の親番が終了。
たろうの親番はテンパイ連チャン1回のみで、木原のタンヤオ1300であっさり流された。
そして最後のヤマ場、ラス前の阿賀の親を迎える。
阿賀はこの時点で39900のトップ目。
木原は26100の2着目である。
阿賀からすると、どこかで直撃を取って木原をラスに落とした上で、さらに92600以上、差を広げなければならない。
そして、阿賀は9本積んだ。しかし、そのうちの6回はテンパイ連チャンであり、なかなか点差は思うように広がらなかったが6本場で、
ツモ チー チー ポン ドラ
2000は2600オール。
次局7本場、
ロン チー ポン ドラ
2900は5000を木原から直撃し、木原を3着に落とした。
この時点で阿賀65700、木原9500。
木原をラスに落とせるならあと46400、3着のままなら66400点稼げば……というところまで来た。
8本場、木原は7巡目にピンフをテンパイ。
ドラ
当然のヤミ。しかしこの-は王牌に4枚も死んでおり流局(阿賀は形テン)。
9本場、木原のこの手に、
チー ポン ポン ドラ
たろうがピンフのテンパイからで打ってしまい、意地を見せた阿賀の親番が終了。
木原、ウィニングランのラス親はもちろん流局で終了させた。
阿賀+87.2 たろう△5.0 木原△25.3 鍛冶田△56.9
第14期雀王決定戦結果
木原 浩一 +237.1
阿賀 寿直 +164.0
鍛冶田良一+49.7
鈴木 たろう▲452.8
鈴木たろうは天才である。
彼に比べれば木原浩一は凡人である。本来はオーソドックスな打ち手だ。
第11期、12期とたろうに敗れた木原は、勝つためにたろう以上に徹底する打ち方で初日から戦った。
一歩間違えれば大きくバランスを崩す危険性もあったと思うが、それも覚悟の上で決定戦に臨んで来たのだろう。
そして結果を出した。地道な努力と、自分を冷静に見つめた上でのある種の開き直りで導き出した素晴らしい結果である。
さて、これで「守る」立場になったわけだ。来期は再びトップ取りに飢えたケダモノのような打ち方を見せるのか、
それとも落ち着いた王者の風格を見せるのか?
いまから楽しみである。
(文・五十嵐 毅)
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