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順位
名前
TOTAL
第1節
6回戦
7回戦
8回戦
9回戦
10回戦
1
木原 浩一
186.3
152.5
-51.2
-29.7
72.3
52.1
-9.7
2
鍛冶田 良一
131.5
-2.4
9.5
82.9
-22.9
8.0
56.4
3
阿賀 寿直
-35.6
16.5
-23.4
-3.7
5.8
-42.7
11.9
4
鈴木 たろう
-283.2
-166.6
65.1
-50.5
-55.2
-17.4
-58.6

【2日目観戦記】  | 1日目観戦記 | 3日目観戦記 | 最終日観戦記 | 

“絶対王者”
まさにこの3年間の鈴木たろうの雀王決定戦における戦いはその言葉のようだった。
初日に5連勝して、貯金をうまく使って逃げ切った11期。
2日目に爆発して、そこからは影も踏ませなかった12期。
挑戦者達を均等に突き放し、王者の才を見せつけた13期。

しかしそんなたろうが初日に大きな負債を背負ってしまう。
後方から追いかける姿は今まで見ることができなかったものだ。
今までは逃げ切りを図るために繰り出されるゼウスの選択を数々見せてきたが、
今回は追うための手練手管をみせてくれるはずという思いを持っている人が多いのではないだろうか。

そして決定戦2日目の幕が開ける。

★6回戦★(鍛冶田→木原→阿賀→たろう)

たろうが軽く2000点をアガって迎えた東2局にまずは局面が動く。
東2局、まずは木原が4巡目に先制リーチ。
 ドラ
と形、打点ともに申し分ない先制を果たす。

だが、早いのは木原だけではなかった。
その次巡のたろう
 ツモ
というこちらも申し分ない手牌からをチョイス。そこから

で追いつき、当然の追いかけリーチ。
 ツモ
となった阿賀から一発での出アガリ。
ドラドラとはいえ2軒リーチを受けて巡目とトータルトップの木原からたろうが直撃するチャンスと考えると自重する手もあったか。

だが、次局にきっちりと2600オールをツモあがりあっさりと2着目に浮上。
たろうにとって最高に近い並びで南入する。

南1局、木原20100 鍛冶田19100 阿賀26100 たろう34000
親の木原の3巡目。
 ツモ ドラ
ここからは何も考えずにを打つ人がほとんどではないだろうか。
木原も初めて雀王決定戦に残った4年前まではこの打牌を選択していただろう。
だが、今の木原の選択は
そしてイーシャンテンまでは構想通りに手牌が伸びる。

しかし8巡目にツモってきたのは
普段からノータイムで打牌する木原にしては珍しく打牌が止まる。そしてを縦に置く。
次巡にを持ってきて切りリーチ。
この選択を見て驚きを隠せなかった視聴者の方は多いと思う。

この木原の選択の意図はこう。
次巡、ツモ切りリーチをするつもり(他3人の読みを外すため)だったのが、ツモってしまった(700オールではを切った意味がない)ので最高形を見たリーチ!あわよくば一発でをツモって裏が乗れば・・・

だが、木原のツモ山にこの意図を汲みとった牌達はいなかった。
うまくテンパイを組んだたろうと二人テンパイに終わる。

そして、策に溺れた木原を気まぐれな麻雀の神様がここから苦しめることになろうとは・・・

次局、たろうに2000は2300を放銃。
鍛冶田の1300オールを挟んで、南2局1本場には阿賀のこのテンパイに捕まる。
 ロン ドラ
そしてこれはまだ6巡目。さらには木原のペンチャン落としを狙ってのアガリ。
逃げる木原包囲網が着々と完成していく。

そしてオーラスを迎えた時には、
たろう44600 木原10300 鍛冶田21500 阿賀23600
着順アップのためには、ハネマン以上の出アガリ、もしくは6400以上を阿賀、鍛冶田からの直撃という条件を突きつけられる。

まず最初のテンパイはたろうの3巡目、
 ツモ ドラ
からを切ってのヤミテンに構える。現状の並びがいいので闇雲にリーチといかず、ヤミテンに構えるところが憎らしい。
そしてに受け変え、6巡目にテンパイ時に切っているを持ってくると空切りリーチといく。
これはのトイツ落としを見せることで、「単騎じゃないですよ」というアピール。
この時点で1枚切れのをトイツで持っている人間がいれば、まさに格好の餌食というわけだ。
これで着順アップには2000点でよくなった鍛冶田の手牌がこう。

トップまではハネマン直撃条件。アガれば2着という状況で2巡後に出る3枚目のをスルーばかりか12巡目に出るも鳴かない。
そしてその12巡目に4枚目のもチーせずに自らを引いてリーチ。(のシャンポン待ち)
一発か裏ドラで直撃トップの手を作り上げる。
これに肝を冷やしたのはたろう。一発目に持ってきたをいつもよりオーバーアクションで河に投げ捨てていた。
だが、結果は流局。
これを見て衝撃を受けた視聴者の方も多かったのではないだろうか?
私もその一人なのだが、決定戦ってこんなにも普段の麻雀と違うのだろうか?
それとも普段からこんな麻雀を打たないとこの場所にたどり着けないのだろうか?
という思いを抱かずにはいられない出来事であった。
少なくとも画面越しに見える鍛冶田の背中がいつもよりも大きく見えた。

次局は鍛冶田が5200は5500をアガって2着を奪取。
結果的にはたろうの完勝で、初日と逆の並びで6回戦を終える。

6回戦結果
たろう+65.1 鍛冶田+9.5 阿賀△23.4 木原△51.2

6回戦終了時
木原+101.3
鍛冶田+7.1
阿賀△6.9
たろう△101.5

 

★7回戦★(鍛冶田−木原−たろう−阿賀)

破壊王と呼ばれ、協会で唯一第1期からAリーグを守り続ける鍛冶田。
今年で42歳を迎え、二児の父として、そして協会の副代表として協会員の父としての顔を普段は見せるが、
麻雀となると、驚異的な胆力と子供のような冒険心を思いっきり発揮してくる。

東3局でも3巡目にここからを切って大冒険を始める。
 ツモ ドラ
国士無双かメンホンチートイツを本線に見た切り出し。
前巡にはなんとを一枚外しているという規格外の打牌を繰り出してくる。

これが実ったのが南1局の親番1本場。  
 ドラ
という苦しい配牌からソーズのホンイツへ向かう。
対するは木原。5巡で今すぐにアガれそうなこのテンパイ。

ここではまだこの形だった鍛冶田だったが、
 ポン
アガったのは鍛冶田。しかも当面の敵である木原からの直撃というおまけつき。
 ロン ポン ポン ポン

逆に放銃した木原は東場で4万点あったところから東4局にも鍛冶田にリーチ勝負で負けて8000点を失ったことに続き、この放銃。
気まぐれな麻雀の神様から見放されたようにも思えたのではあるが・・・

南4局を迎え鍛冶田がさらにアガリを重ね点棒状況はこう。
阿賀17300 鍛冶田63900 木原8300 たろう10500

木原にラスを押しつけたい3者であったが、2着を狙ったたろうがテンパイを取れずに流局。
木原にとっては不幸中の幸い、たろうにとっては初戦のトップを帳消しにする痛いラスになってしまった。

7回戦結果
鍛冶田+82.9 阿賀△3.7 木原△29.7 たろう△50.5

7回戦終了時
鍛冶田+90.0
木原+71.6
阿賀△10.6
たろう△152.0

 

★8回戦★(阿賀−たろう−木原−鍛冶田)

開始2半荘で150ポイント差の逆転が起きた。
これがトップとラスで80ポイント+素点分の差がつく日本プロ麻雀協会ルールの醍醐味でもある。
トップを取るために大振りするだけではいけないし、ラスを怖がって際どいボールを見送っていてもポイントは増えない。
リーグ戦ではこのあたりのバランスの良さが成績に直結してくるのだが、ここは決定戦の舞台。
優勝しか意味のない場所で4者がどう打つのかということをじっくり見ていただきたい。

ここまでは木原による会心の一撃を繰り出そうとする大振りが目立ったが、特定の相手を狙った小技が繰り出される段階になってきている。

しかしこの半荘は木原のアガリ力が目立つゲームとなった。

東2局
 リーチツモ ドラ 裏ドラ

南3局
 リーチツモ ドラ 裏ドラ

南3局1本場
 リーチロン ドラ 裏ドラ

南3局2本場
 ツモ ドラ

南3局3本場
 ツモ ポン ドラ

南4局
 リーチロン ドラ 裏ドラ

このほとんどが、他家の先制リーチや仕掛けを受けてのアガリ。
木原のアガリ精度がいかに高いかということがこのアガリ回数だけでもわかるだろう。

8回戦結果
木原+72.3 阿賀+5.8 鍛冶田△22.9 たろう△55.2

8回戦終了時
木原+143.9
鍛冶田+67.1
阿賀△4.8
たろう△207.2

 

★9回戦★(阿賀−木原−たろう−鍛冶田)

再び木原と300P以上の差がついて、いよいよ後がなくなってきたたろう。
このまま終わるわけにはいかないたろうが先制して迎えた南3局。
ここでたろうの真骨頂を見ることができる。

まずは点棒状況から
たろう38300 鍛冶田14700 阿賀20400 木原26600

この半荘の最高の形は自分がトップを取り、木原にラスを引かせること。
できれば2着は阿賀にとってもらいたい。
そして木原にトップをまくられることは連覇の終わりに直結するというぐらいの崖っぷちまできている。

そこにまずは2着目の木原からの8巡目先制リーチを受ける。
木原
 ドラ

そのときのたろうの牌姿はこう。
たろう

お話にもならない。
普通の人であれば木原につもられない事を祈りながら、ただべた降りを選択する手牌だ。

しかし11巡目に阿賀がドラまたぎのをふわっと打ったのを見逃さない。
次巡に生牌のを打ち出す。
ホンイツっぽい阿賀の河と木原の三元牌からの切り出しをみて阿賀に鳴かせにいった一打。
ここでこの牌を選択できる人が何人いるだろうか?
見ていて思わず寒気がした「ゼウスの一打」。

阿賀が木原からアガれば最高のゲームプランに近づくし、阿賀から木原への横移動なら最悪の結果はとりあえずは回避できる。
そして思惑通り阿賀がポンして徹底抗戦を見せる。
終盤に鍛冶田にもテンパイが入り、一人ノーテンという結果に終わったのだが、
それはあくまで結果であって自分の最善を尽くすという見本のような選択であった。

次局オーラス1本場は、鍛冶田が4000は4100オールをアガるが、その2本場に事件が起きる。

鍛冶田29000 阿賀17300 木原22500 たろう31200

常人が考える4者の思考としては、
鍛冶田「トップを取りたいけど木原にトップを取られるぐらいならこのままで終わってもいいや」

阿賀「ハネマンツモが最高でマンガンツモでもいいかな。でも木原か鍛冶田にトップ取られるくらいならたろうにトップを取らせよう」

木原「トップは取りたいけど鍛冶田にトップは取られたくないなー。トップが見えない手ならこのまま終わらせよう」

たろう「ここはみんなそこまで無理してトップ取りにこないかも。だって俺トップのほう他の人に取られるよりいいでしょ」

こんな感じを想像するのではないだろうか。

まず最初のテンパイ者は7巡目の木原。
 ツモ ドラ
からを切ってヤミテンに構える。これは見ていてすごく自然な一打。
ツモの場合は打でリーチ、この決定戦を見ているとツモの場合だけフリテンリーチを打つ選択をしそうだなと思っていた。
手変わり前の出アガリはするだろうなと。

しかし11巡目の阿賀のを見逃し。
親の鍛冶田がすぐリーチとくる。

それを受けて木原がを切ってツモ切りリーチといく。

補足だが鍛冶田の宣言牌はなので1枚切れのと振替えることはできた。
ほとんど当たらない牌とはいえ自分のアガリ確率を最大限高めるためにツモ切りを見せたのである。

そしてそれを受けたたろうの手牌。
 ツモ
共通安全牌はゼロ。皆さん何を切りますか。

ここでトップをまくられるようだとこの雀王決定戦が終戦になってしまうかもしれないこと。
木原のの順の切り出しと直前にが通っていること。
がワンチャンスになっていること。
二軒リーチだけど危ないのは鍛冶田だけのはずという思いで鈴木たろうに選ばせたのはテンパイを取るだった。

きっちり裏ドラも乗り木原がたろうから8000は8600をアガる。
なぜならたろうの思考には木原が見逃すはずがないという大前提があるから。

たろうの思考から外れたことをやるぐらい、今回の決定戦での木原の執念はすさまじいものがある。
まさに雀王戴冠へ木原の執念を見た。

9回戦結果
木原+52.1 鍛冶田+8.0 たろう△17.4 阿賀△42.7

9回戦終了時
木原+196.1
鍛冶田+75.1
阿賀△47.5
たろう△224.6

 

★10回戦★(たろう−阿賀−鍛冶田−木原)

ここまでほとんどいい意味でも悪い意味でも見せ場のあまりない阿賀。
最高打点が6回戦にアガった2600オールで、たまに入った勝負手も空振りばかり。
今年は序盤からAリーグでポイントを積み重ね、配信卓でも高打点のアガリを決めていただけに、
「ミスターMJ」阿賀ファンの方は不満が多かったのではないだろうか。

この半荘はいい意味でも悪い意味でも阿賀らしさが出た半荘だった。

まずは東3局1本場(供託2.0)、最初のテンパイは12巡目の阿賀。
 ドラ
これをヤミテンに構えるとすぐに鍛冶田が追いつく。

当然のリーチ。

そして同巡のたろう。
 ツモ
からドラのを切ってこちらもリーチ。

阿賀もここでツモ切ってリーチといくかなと思っていたのだが、ここはヤミテンのままプッシュ。
供託リーチ棒の合計が4本もあり、もう折り返しの10回戦でここはかなりアガリの価値が大きい。

鍛冶田の現物でたろうのスジなのだが、を切っているたろうが直前にを手出している。
場況的にはよく見えるが、これがかなりの不安材料。
通常のリーグ戦であればもちろん勝負の局面なのだが・・・

トータル2着目の親の鍛冶田のリーチにたろうがドラを切って追いかけているこの状況。
自分が優勝するためにもたろうには点棒を持ってもらったほうがいいので、
ここはたろうに任せるか自分もリーチして打点を上げて勝負という選択をしてもらいたかったが・・・
結果阿賀から鍛冶田にで痛い7700の放銃。
鍛冶田にはアガられたくない局面でもありここはやむなしか。

南1局3本場にも鍛冶田のこのヤミテンに捕まってしまう。
 ロン ドラ

南2局の親番を迎えて点棒はこう
阿賀8100 鍛冶田41400 木原31500 たろう19000

気持ち的にもポイント的にもここにきての2ラスは大きいし、上位二人対下位二人になると勝負も厳しくなるが、ここで阿賀が本領発揮。
 ドラ
という配牌をうまくまとめてリーチ。
 リーチツモ ドラ 裏ドラ
ツモ裏で本日初のマンガンをアガる。

そして南3局。

最低でも木原の上にいきたい。
雀王への道を残したいという強い思いが阿賀にこの手を入れたのか。
まさに打点王阿賀の倍満
 リーチ一発ツモ ドラ 裏ドラ

しかしオーラスに鍛冶田渾身の七対子リーチが成就しこの半荘は2着でフィニッシュ。
だがこのゲームは阿賀らしさが満載の半荘だった。
そして鍛冶田にとっては大きな大きなトップ奪取で木原との差を一気に詰めた。

10回戦結果
鍛冶田+56.4 阿賀+11.9 木原△9.7 たろう△58.6

10回戦終了時
木原+186.3
鍛冶田+131.5
阿賀△35.6
たろう△283.2

これで2日目が終わったがそれぞれに「らしさ」が見えた2日目だった。
たろうは負けはしたが、リードしている局面では存分にゼウスらしさを発揮し、阿賀も持ち前の打点力と漢らしさを見せた。
鍛冶田は破壊力ある冒険心と鉄壁の守備を見せ、木原は執念を見せつけた。

決定戦は普通の麻雀とは違うということをあらためて実感した一日だった。
そしてこのことを視聴していただいている皆様に届けるためにも、解説ももっと上手くできるようにならなければとも思う。
皆様によりよい対局配信をお届けできるように協会員一同精進いたします。

最終日もニコニコ生放送で放映です。ぜひご視聴をお願いいたします。
第14期雀王決定戦 最終日

(文・小川 裕之)

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