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TOTAL
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1日目
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2日目
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3日目
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崎見 百合 |
234.1
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147.8
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-83.8
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170.1
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上田 唯 |
146.5
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68.6
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13.9
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64.0
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眞崎 雪菜 |
-90.0
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-104.0
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58.8
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-44.8
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櫻井 はるか |
-291.6
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-112.4
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10.1
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-189.3
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|1日目観戦記|2日目観戦記|
【最終日観戦記】
協会の女流選手ナンバーワンを決める女流雀王戦は、ついに最終日を迎えた。
15戦中10戦を消化し、新人上田、続いて崎見が抜け、三連覇に挑む眞崎と櫻井がそれを追いかける構図だ。
2節(10回戦)まで
上田 +82.5
崎見 +64.0
眞崎 −45.2
櫻井 −102.3 供託 +1.0
11回戦
この日の戦いは、これまでも好調を保っている上田の300・500から幕は開く。
今期から女流雀王戦参加の上田は、新人らしい前に突き進むストレートな打ち回しで決定戦まで駆け上がってきた。
そして次局、親番を迎えた上田。
初戦を決定づける、6000オールを引きあがる。
ツモ ドラ 裏
他者からの追撃にやや苦しみながらもアドバンテージを守り切り、
結局上田、櫻井、崎見、眞崎の順に終了―
11回戦終了時
上田 +137.6 崎見 +45.1 眞崎 −90.3 櫻井 −93.4 供託 +1.0
12回戦
起家、上田。
リーチ攻勢で先制し、東場をトップ目で折り返す。
南1局の親番でも加点し独走態勢。
一方、三連覇のかかっている眞崎は、くすぶっていた。
相手の当たり牌を止めながらの、我慢の麻雀。
内容は良いのだが、展開が向かない。
焦る気持ちとは裏腹に、上田とのポイントは開く一方。
南3局、親の櫻井のリーチを受けた眞崎、ここも丁寧に打ち回して追いつく。
ドラ
櫻井がドラをツモ切った直後にテンパイ、崎見から8000の出あがりとなる。
女王の反撃がはじまった―
オーラス
親・眞崎
トップ上田との差は18000。
背中が見えてきた。サイコロボタンを押す指にも力が入るが…
ドラ
ドラはトイツであるものの、形は遠い。
しかしこれが、北家櫻井のアシストもあって12巡目にテンパイ。
すでにハコを割っていた櫻井だが、この回も上田がトップなら自分の優勝の目はない。
僅かな可能性でしかないが、ここで諦めるわけにはいかない。
2年連続の決勝進出の櫻井が多少なりとも意地を見せた。
ドラの、急所のと鳴けた眞崎、
「ロン」
チー ポン ロン ドラ
放銃したのは終盤手詰まった崎見。
自分が上田を追いかける立場であった崎見にとって、8000と12000のダメージは大きい。
が、こうなれば後は眞崎を信頼して、上田のトップを捲らせるしかない。
櫻井、崎見の思惑がシンクロする―
1本場
上田にリーチで攻められながらも、なんとか持ちこたえ流局。
4000差に詰め寄る。
2本場
この局上田は早々にダマで役有りテンパイを果たしていたが、
眞崎が櫻井から存分に仕掛け倒した結果、ことごとくあがり牌は崎見と櫻井に流れていった。
無論、崎見と櫻井はオリに入って打たない。
崎見、櫻井の想いを背負った眞崎、17巡目にそれを成就させた。
「ツモ!4000は4200オール!」
ツモ チー チー ポン ドラ
苦しみぬいた末に、連合軍が連勝阻止に成功―
12回戦終了時
上田 +164.9 崎見 +18.8 眞崎 -13.0 櫻井 -171.7 供託 +1.0
13回戦
見事な連携で僅かに望みを繋いだ櫻井だが、残り3戦全てトップをとるのが絶対条件。
さらに上田を3着以下にしなければならない。
しかし、起家の上田が2600オールでスタート。
同2本場では、崎見が3000−6000
こうなると、崎見も自身のトップを守りにくるので、連合軍は解散。
ここでラスを引いた櫻井の決定戦は、事実上の終戦である。
―『はるるん先生』櫻井はるか
終始後手に回る苦しい展開だったが、
2年連続の決勝進出は安定した実力の証である。
雪辱を胸に、来期も頑張ってほしい。
13回戦終了時
上田 +168.5 崎見 +92.6 眞崎 -38.8 櫻井 -223.3 供託 +1.0
14回戦
全16局中、流局6局。
最高打点は5800である。
とても重い場だった。
見ているだけでも息が詰まるような…
対局している当人のそれは比ではないだろうけど。
連勝が条件の眞崎、もはや攻めるしかないのだが、リーチはかかるが、あがりに結び付かない。
が、そんな眞崎よりも、攻撃的な者がいた―
眞崎の3本に対して、6本のリーチ棒を出し、放銃が四者中最多の5回。
トータルトップらしからぬ打ち筋だが、このやり方でここまで勝ち上がってきたのだ。
たしかに放銃も多かったが、圧倒的な攻撃力でカバーしてきた。
そして、この決定戦も彼女を中心に動いていた。
ところがここにきて、歯車が狂い始めたようだ。
今まできわどくすり抜けてきた勝負牌は捕まり、リーチはしっかり受け切られて流局。
少しずつ上田の点棒が削られていく―
それでも攻撃の手を休めようとはしない上田。
攻防はオーラスまで持ち込まれた。
オーラス
眞崎27500
崎見25500
上田23400
櫻井22600
まず動き出したのは崎見。
1巡目、櫻井から出た自風のをポンしてこの形。
ポン ドラ
1本場でリーチ棒が1本出ているので、1000点でもあがればトップ。
上田から直撃できれば、絶好のトップラスで終わらせられる。
順調に手が進んで、6巡目に以下のテンパイが入る。
ポン
しかし、上田も着々と手を進めていた。
崎見がテンパイした2巡後に次のイーシャンテン。
親の上田は2900以上をあがれば暫定トップになれる。
上田のトップはすなわち、この決定戦の勝者を決定する。
次巡崎見がツモってきたのはドラの。当然ツモ切り。
これを上田がチーしてテンパイ。
チー
山にはが3枚。も3枚。
眞崎は手が遅く、2人の応酬を見て撤退したので、お互い差しのめくり合い。
最終戦を前にして今日一番の勝負所。
しかし、変化の利く形の崎見に分があった。と連続で引いて、決着。
ポン ツモ
トータルで崎見が上田に10ポイント差と迫り、二人の決着は最終戦にもつれ込んでいく…
惜しむらくは、ここでの女王の戦線離脱である。
この回のトップが必須であったにも関わらず、
最後まで冷静に対応した彼女の打ちまわしが印象的だった。
―『天女羽衣打法』眞崎雪菜
ポイント差を考えれば、誰もが切ってしまいそうな放銃牌を何度も止めていた。
押し引きのバランスは協会の女流ではナンバーワンだろう。
一昨年の逆転劇や男勝りの摸打から打撃系の印象が強いが、実は繊細な打ち手。
今回は展開が悪すぎたが、逆境の中の丁寧な打牌は抜きん出ていたように思う。
14回戦終了時
上田 +151.2 崎見 +140.8 眞崎 -31.8 櫻井 -261.2 供託 +1.0
最終戦 起家・崎見、ラス親・上田
一年間の戦いの決着がつくときがきた。
最終戦は上田と崎見の一騎討ちの着順勝負。
東1局
崎見・16巡目テンパイ
ドラ
「リーチ」
勝つんだという意志が溢れるような発声。
「ツモ!4000オール」
最後のツモでラス牌をツモりあげ上田を突き放す。
実は上田は7巡目にテンパイを入れていた。
ドラ
手放しにリーチを打てる形ではない。
しかし、これまでの上田の戦いぶりからすると、違和感があるダマテン。
もしリーチといっていたなら、崎見はテンパイを組めていなかっただろう。
初めての大舞台にも、緊張しているようには見えなかった上田だが、
ここにきてプレッシャーを感じていたのだろうか?
そして自分の手で勝利をつかみに行った崎見に軍配が上がったのだとしたら…
―やっぱり麻雀の神様っているのだと思う。
―『惑わしのキャッツアイ』上田唯
若くして端麗な容姿に、強気の打風でこの対局を盛り上げた立役者である。
参戦1年目の堂々とした戦いぶりは、未来の女流中心選手としての息吹きを十分に感じさせてくれた。
南場に入ってから、崎見は
南1局0本場 4000オール
1本場 一人テンパイ
2本場 7700を眞崎から出アガリ
3本場 1500を上田から
4本場 一人テンパイ
と4連荘。
5本場で親番が終わったときには、持ち点は65700。
上田との圧倒的な差ができた。
そしてオーラスの2本場
チートイツのテンパイをいれていた上田をかわして、
ロン ドラ
第6期女流雀王決定の瞬間―
―『役満クイーン』崎見百合
第3期に続く2度目の戴冠。
初日に首位に立ったものの、2日目で上田に捲られる。
が、その後慌てることなく、引き離されないようについていき、最後に逆転。
まさに決勝15回戦の戦い方を熟知した横綱相撲であった。
彼女の麻雀は、私たち女流のよいお手本であり、
母として妻としてプロとしての生き方は、私たち皆の憧れである。
最終成績
崎見 +234.1 上田 +146.5 眞崎 -90.0 櫻井 -291.6 供託 +1.0
終戦後の崎見のコメント
「今まで何度も決勝の席に座ることがあったけれど、いつも最後に余力をもてなくて、
勝ち切れなかったことがありました。
勝負所の自分の打ち方についていろいろ悩んできましたが、
ここ数年でいろいろな引き出し(勝ちパターン)を持てるようになってきました。
今回勝てたことでその成果に自信が持てたと思います」
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改めて…
崎見さんおめでとうございます!
私ももっと自分を磨いて来期こそは女流雀王に…!
文:大澤ふみな
あとがき
第6期女流雀王戦は崎見の3年振り2度目の優勝で幕を閉じた。
私は今回の決定戦での彼女の勝因として「ゲーム回しの巧さ」があったと思う。半荘15回戦で「1位」になるための戦い方、である。
「まくり方は知ってるよ」
これは彼女が3年前に初優勝を飾った際にコメントした言葉である。
思えば、この初優勝を飾った女流雀王決定戦の直前、彼女は雀王決定戦にも出場していた。
最終戦を迎えて圧倒的なリードをしていたにもかかわらず、大逆転で優勝を逃し、それを糧に女流では逆転で優勝した。
大舞台での様々な経験が今の崎見の巧みなゲーム回し、リードされても落ち着いて勝負を続けられる精神力を培ってきているのだろう。
もっとも今の彼女の強さの根源はそれだけではない。
私と彼女はほぼ同じ時期に、この競技麻雀の世界に足を踏み入れた。
私が見てきた限り、彼女はデビュー当初から「プロとしてできないことがあるのは恥ずかしい」と麻雀に関する様々なことに取り組み、努力を惜しまない人だった。
諸先輩方が主宰する研究会には複数に参加し、出られる限りのタイトル戦に参戦し、はたまた採譜などの記録係もしっかりとこなした(彼女の記録した用紙の正確さ、読みやすさは私が整理した中で1.2を争う優れたものである)。
自分を「ヘタっぴ」と言い、わからない、納得がいかないことは納得するまで教えを請い、時にはくやしくて人前で涙することもはばからなかった。
今回の優勝にあたり、一生懸命取り組むことの大切さを改めて教えられた気がする。
デビューから早十年。
後輩の女流選手が続々と現れ、いつのまにかベテランと称されることもでてきた彼女は、女流選手の課題といえる「結婚、出産、育児と競技生活の両立」をもこなしている。
麻雀への取り組みだけでなく、そういった部分でも先駆者の1人として、後輩達の良き見本として頑張ってほしいと心から思う。
文:二見大輔
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