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TOTAL
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1日目
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2日目
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3日目
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崎見 百合 |
234.1
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147.8
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-83.8
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170.1
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上田 唯 |
146.5
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68.6
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13.9
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64.0
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眞崎 雪菜 |
-90.0
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-104.0
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58.8
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-44.8
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櫻井 はるか |
-291.6
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-112.4
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10.1
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-189.3
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|2日目観戦記|3日目観戦記|
【1日目観戦記】
忌むべきことではあるが、昔から麻雀界では、通俗的に男は頭、女は子宮で麻雀を打つと古くから言われている。
女性の麻雀を感情的と決めつけた、男尊女卑の古臭い言葉だ。
スポーツの世界ならいざ知らず、将棋でも囲碁でも、男性と比べて頭脳スポーツの世界でも女性は弱く見られがちだ。
女性はか弱くなくてはいけない。誰が決めたのか、そんな偏った考え方を払拭するような闘いが、この舞台にはある。
麻雀の女流プロはタレントではなく、純粋に麻雀の強弱を競う勝負の世界だと言う事を、世間のファンに見せつけたい。
惜敗していった者も含めて、女流雀王戦に出場した女流プロ全員が、そんなプライドを持って闘っているのがこの女流雀王戦だ。
今回の決定戦は、昨期女流雀王を圧倒的強さで連覇し、高みから挑戦者たちを見下ろす女王眞崎雪菜と、豊富な場数を踏んでいるベテラン崎見の二人の牙城に、決定戦2回目の挑戦となる櫻井はるかと、新人の上田唯が挑むという構図である。
1回戦
スタートダッシュをかけたのは、初っ端からエンジンを全開にできる術を知っているのだろうか、
4人の中で誰よりも舞台慣れしている崎見だった。
東初、崎見の1300オールでスタートした今期の女流雀王決定戦。
ツモが素直に入る崎見は流れにまかせて他の3人の出鼻を挫くかのようにたたみかける。
東1局1本場も崎見がリーチで一人テンパイで流局。
東1局2本場で鳴いて1500をアガると、
東1局3本場も先制リーチ。
女王の意地で丁寧に打ちまわし、追っかけリーチを入れた眞崎。
だが、崎見の高目の を掴んでしまい12000。崎見が他を突き放す。
            ロン ドラ 裏
4本場まで続いた崎見の親番は、持ち点を46900点まで伸ばしたところで、他家に譲る。
他の3人にとっては最悪のスタート。
それぞれが追撃を図りたい南2局1本場では、親番の上田に勝負手が入る。
            ドラ
しかしテンパってはみたものの、この時点で 、 ともに純カラ。
次巡に手変わりの ツモ。上田は打 でペン 待ちに取る。
局が残り2巡しかなく、安全を追っての選択であろう。
もう数巡あれば、
打 での
            
か、打 での
            
と、楽しみな受けを残せたか。
結果はやはり筒子を引かずに流局。
南2局2本場
櫻井は
             ドラ
からドラ単騎でリーチ。自ら を2枚切っており、他家からすぐに が打たれ、
ワンチャンスを頼った他家から が出るも は最後まで出ず流局。
一回戦は、決して無理することなく堅く打ちまわし、東一局のリードを最後まで守りきった崎見がトップ。
眞崎からの王者奪還へ向けて、快調な滑り出しを見せた。
2回戦
東1局
眞崎とともに1回戦は影の薄かった南家櫻井が先制リーチ。
            ドラ
手変わりを待たずに積極的に攻めるも、果敢に追いかけて来たのは上田。
            ドラ
これに櫻井が で飛び込み、まずは2600の移動。
東2局
勢いに乗り、今度は上田が先制リーチで一発ツモ。
            ツモ ドラ 裏
上田優位で迎えた南3局の崎見の親番。やはり彼女は黙っていなかった。
4本場のある親番で、まず手始めに1500をアガり助走をつけると、
南3局5本場では
         ポン  ロン ドラ
で5800は7300をアガり、上田の背中を捕らえ、
南4局7本場で
         チー  ツモ ドラ
あっさり上田を抜き去る。
初めての大舞台でかなり緊張している様子だった上田。トップを手にして心をほぐしたいところだったが、簡単にはいかなかった。
崎見の連勝。他の3人にとってもっとも避けたかった展開。
女流の中では一歩抜きん出ていると言われている崎見の底力か。
三回戦
崎見の3連勝はなんとしてでもストップさせたい。そう残りの3人は考えていただろう。
その思考とは裏腹に、崎見がなおも好調だった。
小場と流局で進んだ後の東2局3本場 供託2000点の状況。
上田のリーチを受けた親番崎見の手牌
            ツモ ドラ
イーシャンテンから引かされた無筋の 。
慎重に現物 切り
次巡、ツモ から 切り(前巡に櫻井が通している)。
次巡、ツモ で、 をそっと河に捨てる。
2巡後、ベタオリしていた眞崎から、 で2900とリーチ棒4本をさらうかわし手となった。
            ロン ドラ
東2局4本場、今度は南家の櫻井からリーチが入る。
櫻井の捨て牌
     (リーチ)
それを受けた崎見の手牌
            ドラ
好形のダブル3面張だ。
ここにツモ と来て、手牌に素直にまかせてストレートにツモ切るが、5200放銃となってしまう。
            ロン ドラ 裏
しかし南2局、崎見が勝負手をしっかりダマでアガりきる。
崎見13巡目
            ツモ ドラ
会心の4000オールだ。
このまま崎見が逃げ切るかと思われたが、
南3局2本場
2着目23800点持ちの南家の上田からリーチがかかる。
上田捨て牌
     
 (リーチ)
それを受けて37700点持ち崎見の手牌
            ツモ ドラ
オリ気味に抜いた北がまさかの当たり牌。手痛い一発放銃。
            一発ロン ドラ 裏
上田へ痛恨の8000直撃で、トップが入れ替わってしまった。
このまま上田が逃げ切り、やっと挑戦者としての緊張も解けたであろう。
4回戦
上田が開局にこの好配牌。
             ドラ
3巡目にツモ と来たが、上田はツモ切りでテンパイ取らず。
次巡、ドラの を引きダマテン。
            ドラ
このまま8巡目までツモ切りを繰り返し、9巡目に ツモで、打 のリーチ。
安目ながら ツモの2000オールと、厚みのある麻雀を見せる。
            ツモ ドラ 裏
東3局、ここまで受身に回らされてきた眞崎だが、
         ポン  ドラ
ここに親の崎見からリーチが入る。
軽く力を込めて引いた一発目の牌は 。
少考後覚悟を決めてツモ切ると、やはり崎見から静かにロンの発声。
            ロン ドラ 裏
この日の崎見と眞崎の勝負は、ことごとく崎見が勝利する。
一昨年最終日に380ポイントを叩いて初優勝を決めただけに、爆発力が目立つ眞崎。
しかし本来は間隙を縫ってアガり切る実に慎重な麻雀だ。当然勝負所では前に向かうのだが、ほぼ空振り。
流れなのか、相性なのか。
続く東3局1本場には、崎見が
            ツモ ドラ
この4000オール。ベテランの底力か、あっさりまたトップに立つ。
東4局、眞崎親番で一人テンパイの後の一本場。
         ポン  ツモ ドラ
眞崎もここで4000オール。ハコを割っていた眞崎はこれで息をつくも、
南1局崎見が、
            ドラ
この配牌で
ツモ 打 、ツモ 打 と淀みなく進み、まったく悩むことなくテンパイで2巡目リーチ。
3人とも安牌もなく、皆あきらめたように眞崎打 、上田打 、櫻井打 を並べた後に、皆の苦悩を横目で見ながらツモ 。
わずか3巡で8000点を手にして、それぞれの希望を打ち砕く。
            一発ツモ ドラ 裏
南2局1本場では親番の櫻井が
            ツモ ドラ 裏
6000オールをツモり、崎見をかわしトップ目に立つも、直後崎見がダマテンでタンヤオのみの1300をアガり櫻井を再度捲る。
さらにオーラスで崎見が3巡目リーチを入れると、行くしかない眞崎が三色確定のリーチを打つが、
やはり崎見のアタリ牌を掴んでしまい、終局。
3回目のトップを奪い、崎見大有利で初日の最終半荘を迎える。
5回戦
ここまで崎見は1211と全連帯。196.6pと、2着につける64pの上田を大きく引き離す。
眞崎はここまで我慢に我慢を重ねてきた。押し引きの微妙なラインでは、苦しみながら安全牌を探り、ベタオリを続ける。
普通の両面でリーチを打つこともあったが、追っかけリーチとの勝負にはことごとく敗北。
心情を表すかのように打牌も心なしか、荒れだしたのがわかる。
イライラが募る眞崎だが、打牌そのものは常に冷静だった。
我慢の効かない者なら投げやりな打牌に流れてしまいそうな展開の中、眞崎は決してキレることなく、
オリるところではオリ、行くべきところでは躊躇なく押す。
数字的には恵まれないが、女流雀王連覇の女王は、胸を晴れる立派な闘いを重ねてきた。
結果としては流れは存在する。眞崎にとって今までは流れが悪かっただけだ。
東4局、眞崎が先制でリーチするも、最後までやはり崎見がかぶせてくる。
眞崎 東4局
            ドラ
崎見
            ドラ
この勝負は崎見が を掴んで3900を眞崎に打ち込み。今日初めて崎見とのリーチ合戦で眞崎に軍配があがる。
そして南1局、
            ツモ ドラ 裏
眞崎がマンガンツモで、今日初めて待望のトップ目に立つ。
南3局は、東家崎見の 暗カンリーチの後、眞崎のリーチ。
ドラ暗刻の勝負手をツモりあげ、5回戦の勝負を決めた。
            ツモ ドラ 裏 
結局初日の勝負は下馬評通り、崎見が一馬身抜け出した。だが、連覇した眞崎がこのまま大人しく惨敗するわけもない。
上田、櫻井も肩が温まったところで2日目からは全開でくるだろう。崎見もキツい戦いになることは必死だ。
文:藤田拓郎
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