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TOTAL
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1日目
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2日目
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3日目
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崎見 百合 |
234.1
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147.8
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-83.8
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170.1
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上田 唯 |
146.5
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68.6
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13.9
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64.0
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眞崎 雪菜 |
-90.0
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-104.0
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58.8
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-44.8
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櫻井 はるか |
-291.6
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-112.4
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10.1
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-189.3
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|1日目観戦記|最終日観戦記 | 【2日目観戦記】
麻雀も他の勝負事にもれず、「観る」ということがその楽しみ方の一つの方法である。
「巷で行われる麻雀」と「競技で行われる麻雀」の相違点はいくつかあるが、(我々「競技選手」においては特に)「観られる」ことを前提として競技すること、ということがあるだろう。
その意識がない(もしくは持とうという気がない)のであれば、競技で麻雀をする必要などないし、資格すらないと考える。
「観られる」という立場で、己の性格や考え方を闘いの中で「表現」していく。
その「表現」こそが、選手の評価の対象であり、応援の対象なのではないだろうか?
私が麻雀を観戦するにあたり重要視しているのはその「選手の表現」である。
「どんな考え方の選手なのか」「その考えに見合った打牌選択ができているか」「押すか引くかの選択ではどうか」。
今回の決定戦の席につく4者の今現在の「表現」を推測しながら観ていくことにする。
6回戦 崎見→眞崎→櫻井→上田
初日に頭一つリードした崎見。「リードしているのは苦手」とは本人の弁だが、リードしている者に集中砲火を浴びせるのは追うもの達の当然の義務。3者がそう考えていたかは定かではないが、これに崎見がことごとく捕まっていく。
東1局に上田が1000・2000で先行すると、東2局に櫻井が崎見から8,000。
ロン
東3局の上田の1,300・2,600をはさんで、東4局に今度は眞崎が崎見から8,000。
リーチ ロン
東場を終えて持ち点は5,700。なんとかラスは回避したいが3着目ですら28,400も持っている。
そんな崎見に南1局にチャンス到来。9巡目に下記のテンパイ。
ポン
河はホンイツをほぼ否定していて、ドラの九も打ち出してある。
三元牌にはケアがあって当然だが、シャンポンの片割れまでケアを広げても、
は場に1枚出ているのでちょっと止まりにくい。
当然、対々和のケアからもはずれやすく、高い手の危険牌には見えにくい。
崎見の和了濃厚に見えたが、3人の気合いがか?この手を和了させなかった。
配牌から中を持たされていた櫻井は、ドラがトイツになろうとも慎重に打ちまわし、中をも重ねて七対子へ。
比較的自由に打ち進めていた上田もいつのまにやらを使いつぶしてメンチンのテンパイ。
そしてあがりきったのは眞崎。警戒をしつつタンヤオでさばききった。
ポン ツモ
唯一、崎見に安全なマンズから仕掛けるのは危険な感じであったが、結果は大成功。
崎見は結局このままこのゲームのラスを引かされる。
崎見のラスが決定的となり、他の3者は是が非でもトップがほしい。
特に初日にふるわなかった女王眞崎とすれば、
南2局の親番4巡目にこんな牌姿を手にしていれば、強くそう思っていただろう。
4巡ほど空振りが続き、暗雲が立ち込めてきはじめた8巡目、上田から「リーチ」。
↓ ↓ ↓
(リーチ)
リーチのかかった瞬間の第一感は、自分なら「だいたいほとんど押す」であり、眞崎もそうだったと思う。
しかし、リーチの一発目に眞崎のもとに訪れたのはドラの。
「くっ」とでも声が聞こえてきそうな間があった後、眞崎の選んだ打牌は。
この後の眞崎の手牌がどうなるか興味津々であったが、結局上田が一発でツモ和了。
ツモ(一発) 結果として通っていたとかではなく、眞崎らしい選択と思われる。
トップをあきらめないからこそ、このタイミングに訪れたドラを見て、丁寧に打つことを選択したのであろう。
だが、効果的なこの一撃が決勝点となりこのゲームは上田がトップで終了する。 上田129.5 崎見99.0 眞崎▲96.9 櫻井▲131.6
7回戦 眞崎→櫻井→上田→崎見 初日にふるわなかったのがもう一人、櫻井。思えば昨年の決定戦でも初日に大ブレーキであったが、その内容は大きく違う。
昨年は攻撃力だけが目立つタイプで、その攻めっ気がことごとく裏目に出た形の負け。
それが彼女の中でどう生かされたか、今年一年の女流リーグでの闘いでは、守りも考慮し「弱気」とは違った「我慢」を表現できるタイプとなった。 しかしこの決定戦の初日はちょっとバランスが悪かった。リーグ戦とは逆に「我慢」ではなく「弱気」と見えた。
その辺りがどう修正できているかが残り2日間10回戦での課題。 東2局の親11巡目にこんな牌姿
ドラ
まだどこからも仕掛けのない状態。ターツが出揃っているし切りもありうる局面だが、櫻井の選択は打。
そして2巡後崎見からリーチがかかり、その対応をした結果、櫻井は下記のテンパイをはたす。
即リーチとした結果、崎見が一発でつかんで12,000。
実はこの手牌、一度「テンパイ取らず」をしている。崎見からリーチがかかった一発目に下記のテンパイをはずしている。
そして実はこの、崎見の手にトイツ。しかも、リーチする以前は下記の牌姿でシャンポンの当たり牌。
ここにを引いてリャンメンに待ち換えでのリーチであった。
11巡目の段階で崎見のロン牌であったを、崎見からの和了牌と変えた櫻井。
11巡目の選択は「我慢」と言ってよいが、13巡目の選択はどうだろう?
「我慢」なのか「弱気」なのか微妙な1局であるが、続く1本場も12,000を上田から和了し、7戦目にしてようやく初トップをとることができた。 崎見112.7 上田74.0 櫻井▲72.3 眞崎▲115.4 8回戦 眞崎→崎見→上田→櫻井 東1局、初トップをとったばかりの櫻井が8,000を和了。
3巡目に
ドラ こんなイーシャンテンとすると、親の眞崎のリーチに臆することなく応戦。眞崎がツモ切ったをポンして上田から討ち取った。 ここで問題なのは上田。別に放銃が悪いとは微塵も思わないが、ドラポンの仕掛けへの放銃が多いのは何か考えるところがあってもいいだろう(実は7回戦の櫻井への12,000もドラポンに向かっての放銃)。
特に7回戦での放銃は、この決定戦での当面のライバルである崎見が12,000を放銃し、トータルラス目の櫻井がアガった直後。
15回戦というスパンで1位を取るゲームの戦い方としてはいささか疑問である。
もっとも、上田はデビュー間もない新人であるし、余計な?ことは考えずストレートに打っているからこその和了も多々あったのであり、ひいてはこのリードはそこから生まれたのであるから、今はこれでいいのかもしれないが…。
今回の決定戦での経験がどのように生かされるか、今後に注目したい。 ようやく自分が主役を張れる展開になってきた、そう櫻井は思っていたであろう東2局、櫻井には衝撃的な出来事が起きる。
9巡目に親の崎見がこんな河でリーチ。
↓ ↓
↓ ↓
(リーチ) ドラ
これを受けての櫻井の手牌
ツモ
打牌選択候補は、とりあえずかであろうか。は2枚切れ、は1枚切れ。 だが、私が見ていて推測した櫻井の打牌はこのどちらでもない。打を想像していた。親リーチが入って、自分の手牌はリャンシャンテン。
この決定戦で櫻井はそんな感じの局面で、惜しげもなく現物を抜いていたと思う。
辛抱から少し解放され、ちょっと気を緩めた所にやってきたこの局面。櫻井の打に崎見からロンの声がかかる。 ツモ切りリーチの一発目につかんだラス牌の、ちょっとした気の緩みの打。
ただでさえ衝撃的なこの放銃の失点は、なんと裏ドラがで24,000。 当協会のルールでは「一回ぐらいの24,000放銃なんて取り返しが利く」と思われる方もいると思われるが、
それはせいぜいリーグ戦のようなシステムでの話。
決定戦のような短期戦の「頭取り」ゲームでは、なかなかそうはいかない。
ましてや、櫻井は大きなビハインドからようやく浮上しかけたところなのだ。
点数以上に精神的に叩きのめされたことは想像に難くない。
今年の櫻井の決定戦はここで終わっていたように思う。 一方の崎見。高いテンパイとはいえ待ち牌が1枚しかない手をリーチとしたのは「流局でも構わないから他家を止める」意味が大きかったのではないか?
その結果、望外の収穫を得、さらなる加点に多少前のめりとなったか、続く1本場に眞崎へ8,000の放銃。
リーチ ロン(一発) ドラ この時、崎見はテンパイをはたしていたが、待ちは悪く、持ち点にはゆとりがあったので自重する選択肢もあったかもしれない。
もっともそれはこのゲームの結末が眞崎がトップで崎見が2着であったことがそう思わせてしまうだけかもしれないが。 崎見126.5 上田54.7 眞崎▲54.2 櫻井▲128.0 9回戦 櫻井→眞崎→崎見→上田 結果から書くと、このゲームのトップは櫻井。
8回戦で「今年の決定戦はここで終わっていた」と書いておきながらどういうことか。
このゲームを先行したのは崎見、東1局に3.000・6,000。
その崎見の親の東3局。西家櫻井が下記のリーチ。
カン ドラ
場にはが3枚出ている。ちょっとやりすぎ感が否めないリーチだったが、あっさりとをツモ。
表だけでも3,000・6,000だが、裏ドラはなんととで6,000・12,000。 しかし、櫻井の得点はこの1局のみ。あとは崎見の猛攻に手がでなかっただけと言ってよかった。
東1局の3,000・6,000の分を払わされた崎見であるが、「そんなこともある」程度に考えられていたように見え、冷静に拾える和了を確実にものにしていく。 南2局には2,000・4,000で櫻井に2,900差まで肉薄。
チー ツモ ドラ 南3局が流局し(供託2,000)、いよいよ「和了すればトップ」というところまで追い詰めテンパイとしたが、ここに立ちはだかったのは、
この日再三にわたって崎見の和了を阻止し続けていた眞崎(西家)。
ポン ポン ツモ ドラ 崎見と眞崎の点差は8,800(供託2,000、1本場)。ツモか直撃でないと崎見をかわせないところでのツモ和了。
きっちりと100点だけ崎見をかわしての2着浮上は、眞崎の3連覇に向けての強い気持ちの現れと感じ取れた。 崎見114.4 上田8.0 眞崎▲46.2 櫻井▲77.2 10回戦 櫻井→崎見→眞崎→上田 2日目の開始時点に比べ、随分と上下の差が少なくなった。
最終日に向け、眞崎、櫻井としては自分がトップを取れるのがベストだが「崎見にトップを取られない」というのが次善の目標だろう。
下位二人の思惑はそんなところだったと思われるが、そんなこととは関係なく第10回戦は進んでいく。 全14局だったこのゲーム。実に7局で和了したのが上田。
残りの局のうち3局はテンパイしていて、リーチした局は6局を数えた。まさに猛攻。
それでも、安手の和了は取れたものの、東4局メンピンドラドラ(荘家)などの高い手は和了を阻まれ、
それほど楽な展開ではなかった。 勝負が決まったように見えたのは次の1局。
南1局1本場 ドラ
30,400持ちの親の崎見が4巡目に全て手出しのリーチ。 (リーチ) これを受けて、36,400持ちの西家上田、
ここから打でリーチに踏み切った。 このゲームだけで考えても、決定戦15回トータルの視点で見ても、様子を見たい局面なのだが、現物は1枚もない。
かなり難しい局面だと思ったが、上田の選択はリーチ。 この選択の結果はツモ和了。しかも和了牌のが裏ドラ。
選択の是非は考えないことにして、これは上田の「余計な事は考えずに攻められる時には攻めに徹する」スタンスが
8回戦とは逆に好結果を呼んだと言える。 ちなみに先行した崎見のリーチは次の手牌。
櫻井が白を1枚持っているだけで、残り3枚は山の中。
時間がかかれば成就の可能性も低くなかったと思われ、崎見もダメージが大きかったのではないか?
そして崎見は次局、眞崎に12,000を献上しこのゲーム、ラスとなってしまった。 さて、この決定戦ではずっと我慢の連続で来ている女王眞崎。
このゲームも2着を拾い、上田の猛攻を耐え忍んだように見えるが、1つ疑問手があった。 崎見から12,000を和了し、2着目に浮上した後の南3局1本場、3着目櫻井とは3,800差という局面。
5巡目、上家の崎見から發が打たれた時の手牌は次の通り(ドラ)
軽々しい仕掛けをしないのが眞崎のスタンスであり、それが攻守のバランスにつながっている選手であることは承知の上で、
このを仕掛けなかったのは疑問が大きい。
最悪のルートをたどっても(ほとんどないが)2,900、だいたい7,700、うっかり12,000が期待でき、そして何よりイーシャンテンになる(しかも好形)。
下家が上田なので、余裕があれば山越しして直撃まで狙ってもよいだろう。
打点、スピード、形どれを考慮しても劣るところのない手格好なだけにどうであったか?
結果は2着を拾うことが出来たが、さすがの眞崎も我慢の連続に集中力が落ちているのではないかと思わされた。 上田82.5 崎見64.0 眞崎▲45.2 櫻井▲102.3
文:二見大輔
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