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順位
名前
ポイント

1日目

2日目

11回戦

12回戦
13回戦
14回戦
15回戦
1
逢川 恵夢
245.4
78.4
108.1
-57.2
16.1
-20.5
64.5
56.0
2
水瀬 千尋
7.4
71.7
-52.8
-13.4
65.8
15.5
-61.0
-18.4
3
朝倉 ゆかり
-86.5
-94.6
98.9
9.0
-16.7
-58.9
-26.3
2.1
4
中月 裕子
-169.3
-56.5
-156.2
61.6
-65.2
63.9
22.8
-39.7

1日目観戦記2日目観戦記【3日目観戦記】

≪女流雀王決定戦3日目観戦記≫


競技麻雀プロにとって自団体のチャンピオンを決めるタイトル戦は、他のタイトル戦よりも少しばかり重みが違う。
女流雀王も例外ではない。決定戦に進出するまでを予選期間と捉えるならば、中月は5年、水瀬と逢川は8年の歳月を経て、初めて本選に勝ち進んだということになる。
会えない時間が長ければ長いほど、思いは焦がれ、気持ちが募るのは自然の摂理といっても良いだろう。
女流雀王戦決定戦最終日、選ばれるのはたったの1人、4人の権利者にとって今年最も長い1日が始まった。

【11回戦】

逢川だけにはトップを獲らせるわけにはいかない―― 朝倉、水瀬、中月にとって、それだけは絶対不変の共通見解である。
東2局、その逢川の先制リーチを受けて

逢川から離れること約400ポイント。3人の内、中月だけは「放銃・即・敗退」の可能性を突きつけられた背水の陣だ。
親番ドラ2の勝負手ながら、余剰牌のも逢川のリーチに対してド無筋である。
しかしながら中月は、怯むことなく逢川のリーチ宣言牌に喰らいつき
ポン ロン ドラ 
値千金の12000点を逢川から直撃する。これが決定打となり11回戦は中月のトップ、逢川がラスで終了した。
中月にとって最高の立ち上がり、朝倉、水瀬にとっても一息つける結果となった。

(11回戦終了時スコア)
逢川+129.3  朝倉+13.3 水瀬+5.5  中月▲151.1


【12回戦】
水瀬が東2局1本場に5800点、東2局2本場に2600オールと加点する。


続く3本場、中月がドラ表示牌のを2巡目にカンチャンでチー、遠くにジュンチャン三色ドラ1のマンガンを狙った仕掛けを入れる。


それを受けた3巡目、水瀬はこのテンパイを即リーチ。
普段なら待ちそうな巡目、牌姿ではあるが、中月の仕掛けの質を考察し、中月の押し引き傾向を予測すると、待たずに即リーチが良しと判断する。
目論見通り中月からを討ち取り、12回戦は水瀬がこのリードを守り切ってトップで終了。
首位逢川にワントップ圏内まで詰め寄った。一方ラスを引いた中月は、この半荘で敗退が濃厚となってしまった。

(12回戦終了時スコア)
逢川+145.4  水瀬+71.3 朝倉▲3.4 中月▲216.3


【13回戦】


朝倉ゆかり――
女流雀王を4度戴冠、名実共にプロ協会女流NO.1雀士であり、現女流雀王である。
首位まで約150ポイント差で迎えた13回戦、ここでトップを獲ることができれば、朝倉も十分争覇圏内に復帰することができる。


東3局、朝倉はこの牌姿から場に1枚切れのを残し、を打ち出した。確かにはドラ表示牌かつ場に1枚切れ、はチートイツの待ちとなれば絶好の牌である。
しかし後がないこの半荘、まだ早いこの巡目、そしてドラ2含みの勝負手をもらい、この牌姿からメンツ手を見切るのは容易な決断ではない。
筆者には「私はこうして勝ってきたんだ」という現女流雀王の確固たる信念、強い自己主張にも見えた。

ツモドラ

6巡目にを重ね、予定通りといわんばかりの単騎テンパイ。
これをハネマンに仕上げると、次局の親番でもまた
6巡目にドラのを重ね再びチートイツのリーチ。
遅れてやってきた主役の登場、ここから一気に逢川まで並びかける未来を想像した人も多かったのではないだろうか。
しかしこの結果は予想だにもしなかった中月への国士無双放銃となった。


朝倉「決定戦が始まる前はやりにくい相手だなーと思っていました。終わった後もやりにくかったなーという感想です」

朝倉のいうやりにくさとは―― つまりこういうことだ。

朝倉「今回の3人は私には無い強さをそれぞれに持っていて、それがやりにくくて本当に強かったです。素直に完敗でした」

敗戦の弁をこう語っていたが、それを言うなら他3人、いや多くの女性プロに無い強さを持ち合わせているのは、間違いなく朝倉のほうだろう。
待ち牌のも山にまだ眠っていた。しかし無慈悲な抽選結果により、朝倉はこの半荘をもって敗退が濃厚となってしまった。

これで俄然有利になったのがトータル首位の逢川。しかしこのまま簡単に終わらないのが決定戦の醍醐味でもある。この後南場の親番を迎えた水瀬が驚異的な猛チャージを見せる。


南2局、朝倉の先制リーチを受けた親番の水瀬。
ここで放銃してしまうとライバルである2着目逢川との点差がかなり開くばかりか、最悪ラス落ちまで見えてくるような点数状況。
手牌は全て無筋である。さて、みなさんは何を選びますか? 


水瀬の選択はだった。だって?? 次ツモ時には現物が2枚増えていたのだが、少しの躊躇もなく無筋のを打ち抜いた。
放銃したら致命傷にもなりかねないこの状況で、負けたらこの1年が無になってしまうかもしれないこの舞台で――

チー ドラ
水瀬は渾身の形式テンパイを入れると、維持した親権を活かし1本場で3900は4200、2本場で1500は2100、3本場で4000は4300オールと3局連続加点に成功し、ライバル逢川を完全に置き去りにする。
惜しくもトップ逆転までは成らなかったものの――

(13回戦終了時スコア)
逢川+124.9 水瀬+86.8 朝倉▲62.3 中月▲152.4

首位逢川と38.1ポイントまで肉薄する。残すところ後2半荘、第17期女流雀王決定戦の勝者は、いよいよもってこの2人に絞られた。


【14回戦】

南1局、トップ目は水瀬。この時点で既に逢川は水瀬を追う立場になっていた。7巡目にダブを仕掛けたホンイツテンパイ。
このテンパイに持ってきたトイツのを、逢川はなるべく早めにツモ切りした。


逢川「私の仕掛けには割と被せてくることが多いので――」

基本はを切らずに打
そうすればドラ引き変化でハネマンも狙えるし、誰かのリーチ後に-を引かされた時も、安全なを打ってテンパイを維持することができる。

逢川「少しでも相手に警戒されないよう北はツモ切りにしました」

この選択が功を奏したか、イーシャンテンだった水瀬から会心のマンガンを直撃し、この半荘の着順をまるっとひっくり返すと、
ツモ ドラ 裏ドラ
続く南2局の親番で、中月のリーチに競り勝ち4000オール。

ツモ ポン
南3局も積極的に仕掛け、水瀬の親番を流す値千金のアガリを決めた。
大事な大事な対局で、勝負も大詰めといった切迫した状況下で、南入後の逢川のアガリは、水瀬の心をへし折るに足る十分な破壊力があったのは間違いない。


南4局1本場、水瀬は高めタンピンドラ1のリーチをかける。
狙いは自身の2着浮上、朝倉から高め直撃か、あるいは高めのツモアガリでその条件を満たす。

逢川+186.2 vs 水瀬+91.8

ツモアガリで条件を満たせば最終戦は94.4ポイント差、裏ドラがのれば89.4ポイント差、水瀬は与えられた素材から考え得る最善策を選択した。

ところが水瀬のリーチにを打ち込んだのは逢川だった。
逢川は水瀬に放銃してもこの半荘をトップで終えることができる。
しかし水瀬のリーチが安いはずがなく、もしもハネマンだとしたら、ライバルの着順アップに協力することになり、逢川にとってかなり痛手となるはずなのだが、

(水瀬、ハネマンはないでしょう?)

決定戦2日目、【8回戦】を思い出してほしい。あの時は逢川がリーチ時に小考した傷を水瀬が突く好判断があったのだが、今回は逢川がまるっきり同じことを水瀬にやり返す格好となった。
確かに水瀬にしては珍しく判断に時間をかけたリーチだった。
ハネマン確定のリーチであれば、点数状況的に悩む道理がないとも推測できる。

同じ関西出身、第10期前期入会の同期対決。
水瀬が逢川の打ち筋をよく研究しているように、逢川もまた水瀬の打ち筋をしっかりと研究してきたことがはっきりとわかるシーンだった。

逢川+180 VS 水瀬+73.3

で水瀬がアガると最終戦は106.7ポイント差でスタートする。
逢川は誰がどう見てもテンパイだ。ここで見逃すリスクはそれなりに高い。
この辺りを妥協点とし、手打ちにしたとしても全く不思議ではない。

それでもだ、水瀬はその未来を断固として拒絶した。

日本プロ麻雀協会主催のタイトル戦決勝では、ポイントシステム上、通常では考えにくいような大逆転劇がたびたび起こる。
しかしいづれの逆転劇も、最終戦前までにかなり差を詰めたか、あるいは道中で一旦逆転しているケースがほとんどである。
106.7ポイント差を1半荘で捲るとしたら、水瀬がトップ、かつ逢川がラス、かつ26700点差が必要となる。

通常の対局なら起こり得るかもしれないが、決定戦の最終戦に限っていえば全く現実的ではない。
なぜなら朝倉、中月の両者は、持ちポイント的にアガリに自主制限を課してくる可能性が高いからだ。
水瀬は心が折られたわけでもなく、ヤケになって無茶をしているわけでもない。見逃しの判断は本当に大英断だったと思う。

「1時間15分――」これは14回戦の南4局に4人が費やした時間である。
誰が1番苦しかったとか、誰が1番辛かったとか、そういった感想を述べる人がいるが、筆者はその感想を全否定したい。
4者4様、それぞれの「1時間15分」が、このオーラスにはあったのだから。


「朝まで連荘するつもりでした」とは中月談。
絶対に放銃するわけにはいかないし、絶対にノーテンは許されない。いつまで繰り返せば報われるのかもわからない。
それでも諦めるわけにはいかない。途中途切れそうになるも何とか堪え、7本積んだ頃には33000点あった逢川との点差を一旦まくるまで粘り続けた。

「中月の1時間15分」が苦しくなかったわけがないじゃないか。


朝倉にはこの半荘トップになるアガリしか許されていなかった。最初は倍満ツモ、次はハネマン直撃、その次は3倍満ツモ・・・・当然そんな手が簡単に入るわけもなく、執拗に仕掛ける逢川の上家に座して、簡単に鳴かれる牌をおろすわけにもいかなかった。

「朝倉の1時間15分」が辛くなかったわけがないじゃないか。



もしもあのでアガっていたら――
水瀬は今でもその世界線を経験したかったと思うだろうか? いや、筆者はそんなことはないと思う。
水瀬はこの決定戦、己の意志の強さを拠り所に戦ってきた。
たとえ報われなかったとしても、その結果は堂々と受け止めて良いと思う。

耐えに耐え忍んで入れた6本場のテンパイは本当に美しかった。
仕掛けている親番中月の現物待ち、高め直撃ならば逢川をトップから引きずり下ろすことができる。
しかし渾身のテンパイは陽の目を浴びることなく卓内に流れていった。

「水瀬の1時間15分」が切なくなかったわけがないじゃないか。


この17回戦の南4局は全8局だった。逢川はその内7局を仕掛け、終局時には5度テンパイを果たしている。
自分がアガらなければこのオーラスは終わることがない。
だからガムシャラに、何度もリスクを負って終わらせようとした。
会心のテンパイも空を切った。それでもなお立ち上がっては、再び前のめりに攻め込んでいった。

3万点以上の差もまくられた。たった1回のアガリがこんなにも遠かった。
アガリ牌のが放たれた瞬間、決着をつけた時には完全に放心した。2着中月との点差はたった1700点だった。1度でも手を緩めていたらこの半荘のトップはなかったかもしれない。

「逢川の1時間15分」は、彼女の麻雀人生で最も長いオーラスだった。これが苦しくなかったわけが、これが辛くなかったわけがないじゃないか。



第17期女流雀王、逢川恵夢の話をしよう。

4年前、住み慣れた地元関西から、女流リーグ戦で戦うためだけに上京を決意した。
その甲斐あって今期念願のAリーグ入りを果たすも、家庭の事情で介護を手伝うことになり、止む無く実家に戻ることにした。
麻雀の話が大好きで、アドバイスをくれる先輩方には本当に感謝をしていた。それでも今回の決定戦は、今までの麻雀を貫こうと最初から決めていた。
いつか自分の麻雀が変わるときが来るかもしれない。もしもそうなったら、その時こそいつかのアドバイスは役立てようと思っていた。
決して今の麻雀が良いと思っている訳ではない。せっかくの晴れ舞台だ。
自分の思うように思い切ってやってみようと。悔いだけは残さない、今の自分にできる精一杯を、それが今回の結果に繋がったのだ。



逢川と筆者は今まではほとんど面識がなかった。断片的な情報はSNS等で流れてくるのを見かけるだけだ。
たぶん・・・いや、きっと逢川は、真面目な自分を他人に見せるのが照れくさくて、わざとおバカキャラを演じているのではないだろうか。
これから1年間、日本プロ麻雀協会の代表として様々な舞台に上がることになる。
きっと不安もあることだろうし、プレッシャーもかかることだろう。

そんな逢川に、先輩としてひとつだけアドバイスを贈って今回の観戦記を締めたいと思う。




当代表がネタキャラだと思われないために、そろそろバレバレの年齢詐称を止めてみてはいかがだろうか?



1日目…ニコニコ生放送 FRESH!
2日目…ニコニコ生放送 FRESH!
最終日…ニコニコ生放送 FRESH!

(文・木原 浩一)

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