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順位
名前
ポイント

1日目

6回戦

7回戦

8回戦
9回戦
10回戦
1
逢川 恵夢
186.5
78.4
79.0
-47.4
66.1
26.4
-16.0
2
水瀬 千尋
18.9
71.7
20.3
9.5
2.2
-37.7
-47.1
3
朝倉 ゆかり
4.3
-94.6
-3.3
54.8
-51.3
91.1
7.6
4
中月 裕子
-212.7
-56.5
-97.0
-16.9
-18.0
-79.8
55.5

1日目観戦記【2日目観戦記】3日目観戦記

≪女流雀王決定戦2日目観戦記≫

女流雀王決定戦、全15回戦3日間の、二日目の対局。
今日は6回戦から10回戦の中盤戦であり、今日の結果が最終日の戦い方に大きく影響を与えることは明らかである。


<6回戦>

東2局。
現在トータル微差で首位の北家逢川、まずは先手でこのリーチ。
当然ではあるが、逢川は、朝倉などに比べると経験がまだ浅い。
決めきれない選択に迷う場面がやや多く、それを読まれて踏み込まれることもよくあった。
先手でついばんでみて、すぐ引くような――、そんな攻め方も相まって、逢川には幼い雛鳥のような印象を持っていた。

さてそのすぐ下家、一発目の東家朝倉は、

この手。ダブ東対子のイーシャンテンで、が現物。
ただドラ表示牌のに頼るのは、先行く逢川を捕らえる網としては心もとないだろう。
女王はゆったり、いつものようにを落としていった。

そしてカンで追いつくも、リーチはせず。確実に、堅固に網の目を編んでいく。

を引いて盤石とし、メンタンピンでの追いかけリーチ。
朝倉にとっては王道の攻めである。先手に怯まず、じわじわと好形高打点を仕上げて、無防備になった先行者を討ち取る。逢川も身震いしたはずだ。
しかしこのとき、南家中月も、自風のドラをポンしてテンパイを入れていた。
中月はたじろぐことはなかったであろう。何せ自身はドラポンだ。
しかし、朝倉の餌食となったのは中月であった。

このは止めようがなく、朝倉へ裏1の12000。
先頭で跳ねる雛鳥を朝倉がどう追い詰めていくのか、今日の見所はまずそこにあった。
しかし、この中盤戦。
結果を先に言うと、異常な回数で当たり牌を掴んだのが、ファイターの中月だった。
もちろん本人の攻める姿勢に一因もあったが、中月は誰よりもリーチ棒を投げ、そして誰よりも放銃した日になってしまった。

それを象徴するような一局。

東4局、南家逢川の配牌はこれ。何を切るのが普通であろう。

燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや、という言葉がある。
燕雀は小さな鳥、鴻鵠は大きな鳥だ。
大きな鳥は、小さな鳥の思いもよらぬことを考えているという意味である。

逢川は、なんとを切った。
そして終盤、リーチをかけた北家中月が、逢川への当たり牌を掴んだ。

奇しくも、その牌は鳳凰であった。
逢川の配牌では、想定するのがはばかられるほどの大役。
雛鳥は、初手から大きな志を持って、そのくちばしと鉤爪を研ぎ澄ましていたのである。


<7回戦>

逢川がトータルで頭一つ抜け出した。
対しこの回は朝倉がリードして、オーラス待望のトップ目。
朝倉はここまでノートップ、△97.9pのスコアであり、まずは最初の1勝というところであった。

西家逢川はダンラス目である。
ここで避けたいのはトータル2位の東家水瀬が、南家朝倉をまくってトップになることだ。
自身の着順アップが厳しい以上、こうなるとラス確で自然に安手をアガるのではないか。
解説もそのように予想していた。

しかし、逢川はまたも大望を両翼に乗せて羽ばたこうとする。
この配牌から、打
そして着々と手を進め、道中をもツモ切ってを引き返す。
浮かせたを重ね、ペンをも引き入れる。

満を持してリーチ。をツモればバイマン、2着まで駆け上がる。
再び強い意志をもって大物手を作り上げた逢川に、新たな女王の片鱗を感じざるを得なかった。

しかし。
この局、北家中月がドラポンをしており、3フーロ目のテンパイ打牌が安めのであった。
逢川は一瞬迷う。
自身のマンガン放銃を恐れたか、水瀬の現状2着を次善手と思ったか。逢川はその牌でラス確の終局を選んだ。
本人も、さすがに微妙な表情は隠せない。だが残り3枚のツモに賭ける胆力は、ここではなかった。

今はまだ、幼鳥であろう。
しかし確かに逢川は、その小さな翼を広げつつある。
鴻鵠となるのは、すぐそこの未来かもしれない。


<8回戦>

ここまで水瀬の着順は、1・1・2・4・3・2・2。
逢川とほぼ並びの+101.5pで好位置ではあるが、本人としてはおそらく不満の結果である。
最初の連勝以降、あともう少しのトップが届かない。
押し引きのバランスも、アガリ形を見据える構想力も優れているが、あと一歩成果に結びつかない。

東2局1本場、北家水瀬がをポン、をチーしてこの形。

--待ち。この巡目の3メンチャンテンパイが、なんとここから全員の手に1枚も行かないまま、15巡まで経過する。
東家朝倉はソーズのチンイツテンパイ、南家中月は4枚残りの-待ちリーチをしている。
(どうなってるの・・・?)
そんな風に水瀬が首を傾げた頃か、西家逢川が追いついて、--待ちでリーチ。
一発で水瀬が掴んで8000となる。

目下ライバルの逢川への痛い放銃であるが、水瀬は無論あきらめない。
ここからも、意地の追い上げを見せる。

東3局、さらに畳みかける南家逢川の早いリーチを受けて、西家水瀬この形。

前巡に安全牌でを切った後の、ツモである。
こうなってはリーチには戦えない、そう思う人がほとんどではないだろうか。
しかし水瀬は今通ったを頼って打。本来その前に切りたかった牌であるが、フリテン含みの三色手で立ち向かう。

今度は使いにくいドラを引いてしまうが、ソーズの上を払ってまだ粘る。

そしてやっと追いついてリーチ。
ここまでの勝負所での負けように、鬱積したものがあったかもしれない。
現状のライバルに、何度もこの道を明け渡すわけにはいかない。
結果は逢川が一発でを掴んで、水瀬が5200のアガリ。

これを足掛かりに、水瀬は南1局の親番で6000オールをツモり、一気にトップ目に立つ。

南2局、東3局時点では全く逆のトップラスであった逢川・水瀬であるが、今やこの点数状況。

西家逢川、ここから狙ったのは、やはり乾坤一擲の大物手である。

リーヅモチートイツドラドラの3000・6000で、水瀬に肉迫した。

水瀬と逢川は、共に関西出身の10期生である。
付き合いは長く、打ち筋もよく知る間柄であろう。
関西在住の選手が東京の対局に参加することの苦労、今日までの切磋琢磨の日々、この決定戦にかける思いの強さも、お互いがわかっている。
だからこそ、それぞれが負けられない。同じように、ここまで頑張ってきたのだから。

南3局は、南家逢川が早いリーチ。
しかし西家水瀬が仕掛けて押し切ってアガる。
もうこの半荘こそは、逢川の後塵を拝するわけにはいかない。

オーラス、東家逢川が長考に入る。
ここからを切ってリーチと行くが、この決定戦、逢川の長考や迷いは何度かあった。
水瀬はそれを見逃さなかった。

追いついた水瀬。
(逢川、愚形安手でしょう?)
それがわかっているかのように、一瞬の迷いもなくこの手を切りで追いかけた。
相手はオーラスの親リーチ、そして自分はトップ目、カンチャン待ちである。
それでも、水瀬は曲げた。
いい加減、自分でもぎ取りに行くと。
自らの強気の意志を確かに見せた。

しかし、西家朝倉にテンパイが入る。押し出された牌は、。逢川の当たり牌である。
朝倉もうなだれた。そして水瀬も、苦しい表情をした。
このライバルは、何度水瀬のアガリを阻んでくるのか。

南4局1本場、またもや東家逢川がリーチ、その宣言牌を仕掛けて水瀬はクイタンのテンパイ。

--の3メンチャン。逢川の河にもがある。
今度こそ、今度こそアガれると。水瀬は信じて全部押していく。
しかし、これが出ない。
そういえば。
東2局の3メンチャンも、逢川の3メンチャンに負けた記憶がよぎる。
(どうなってるの・・・?)
水瀬が再び、そう思った瞬間だろうか。

逢川もまた3メンチャンで、そして大きすぎる6000オール。
水瀬の肩が落ちた。
最善を尽くしつつも、アガリ運には恵まれなかった。
水瀬はこれで3連続の2着となる。トップの重要な協会ルールでは、精神的にもこたえる展開であろう。

水瀬はこの日を振り返り、
「最後に絶対勝つから落ち込まない」
と語っていた。
最終日も、何度も逢川とのめくり合いがあるだろう。
しかし、あきらめずに人事を尽くした者のみにその結果を受け入れる資格がある。
水瀬はそれができる選手である。
素晴らしい勝負を、きっと次も見せてくれるはずである。


<9回戦>

6回戦で国士無双を掴み、大きなラスを引いた中月であったが、
苦難の半荘は、再びここで訪れた。

東1局、朝倉へリーチ負けの8000。
東3局、朝倉へリーチ負けの12000。
南1局、逢川へリーチ負けの12000。
南1局2本場、朝倉へリーチ負けの8000。

もちろんこういう不運は誰しもいつか降りかかることはある。
しかし、この15回戦という限られた戦いで、国士放銃の△97.0のラス、そして今回結局△79.8のラスを食らっては、厳しすぎる状況になることは間違いない。
ましてや、この半荘終了後は、あと6回しか戦える機会がない。
不運のツケを返済するだけの期間が、圧倒的に足りないのである。
結局9回戦は、王者の麻雀を遺憾なく発揮して中月のポイントをさらった朝倉が、大きなトップになる。


<10回戦>

ここまでで、首位の逢川が+202.5p、対して4位の中月は△268.2pである。
痛恨の二日目となってしまった中月が、最終日に前を向いて立てるかどうか。
全てはこの、本日最後の半荘にかかっている。

南2局、全員が平たい状況で北家中月がこの手牌。
は2枚切れでどう捌いていくか。
中月は生牌のを切り飛ばし、小三元かドラを使った打点を追った。
そのを東家水瀬がポン。
西家朝倉から9巡目にリーチが入って、まず水瀬が選択。

ドラ表示牌のを勝負して、ドラ単騎に取った。
そしてすぐ朝倉がをツモ切り。
下家の中月も飛びついて、

ここからを勝負。
中月はもう、トップしか許されない。
何連勝が必要か。5か、6か。
条件とも言えぬ条件を、ひたすらに追うしかないのである。
さらに朝倉のツモ切ったをチーして、水瀬と同じドラ単騎テンパイ。
愚直なファイターたる中月は、何度斬られようとも、こうして折れずに戦ってきた。

そうして満身創痍の中月は、勝利を手繰り寄せた。
今日何度もこの斬り合いに身を投じてきたのも、
それをくぐり抜けた先にこそ勝利があることを、今までの優勝経験からわかっているからである。

中月が最後のトップで、上下は約400p差となった。
3日目、15回戦目にこれが首位と100p程度の差にまで縮めることができれば、まだ可能性はある。
目標すら失いかねなかった中月だが、本当に最後に踏ん張った。

水瀬・朝倉は逢川までの差はほとんど変わらない。
水瀬はよく知る相手への対処法を今一度確認してくるだろう。
朝倉は熟練のゲームメイクで、ゆっくりと、堅実にその差を詰めてくるだろう。

そして逢川は、
まだ危ういバランスで、しかし確かに頂を目指して飛び立とうとしている。
今日、今の逢川はまだ雛鳥でも。
天翔ける鴻鵠の姿を、来たるべきその日に、私たちの頭上に輝かしく見せてくれるのか。

女流雀王決定戦最終日は、12月23日(日)。
1日目…ニコニコ生放送 FRESH!
2日目…ニコニコ生放送 FRESH!
最終日…ニコニコ生放送 FRESH!

(文・須田 良規)

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