トップページ
日本プロ麻雀協会について
日本プロ麻雀協会 競技規定
タイトル戦/公式戦情報
チャンピオンロード
関西協会プロアマシリーズ
過去の観戦記
協会スケジュール
対局会場 案内
協会員名簿

や・ら・わ
日本プロ麻雀協会 プロテスト
協会チャンネル
ゲスト/メディア情報
協会員ブログ
日本プロ麻雀協会 麻雀教室
お問い合わせ
ゲスト/麻雀教室 の依頼
日本プロ麻雀協会公式HP プライバシーポリシーお問い合わせよくあるご質問リンクサイトマップ

順位
名前
ポイント

1回戦

2回戦

3回戦

4回戦
5回戦
1
逢川 恵夢
78.4
7.6
8.9
-53.4
56.2
59.1
2
水瀬 千尋
71.7
62.0
67.1
10.1
-47.3
-20.2
3
中月 裕子
-56.5
-46.2
-25.2
57.6
7.8
-50.5
4
朝倉 ゆかり
-94.6
-23.4
-51.8
-14.3
-16.7
11.6

【1日目観戦記】2日目観戦記3日目観戦記

≪女流雀王決定戦1日目観戦記≫

第17期女流雀王決定戦の開幕である。
現女流雀王朝倉ゆかり(3期・前期入会)に挑戦するのは、中月裕子(13期・前)、水瀬千尋(10期・前)、逢川恵夢(10期・前)の3名。
それぞれタイトル経験もある十分な実力者たちだが、女流雀王の決定戦進出は全員初。
対し朝倉は、第7・8・15・16期と、4度の戴冠。
さらに今年は9月に行われた第13回オータムチャンピオンシップ、第12期RMUクラウンと、2週続けて優勝ととんでもない成績を残している。
その絶対強者の朝倉に、次世代を担う立場の三者がどう立ち向かっていくのか。


<1回戦>

開局は、西家水瀬がメンタンピンツモイーペーコードラ裏2のバイツモからスタート。
いきなりの大きなアガリ。
姉妹選手としても人気で、妹の夏海と共に実力と結果で名を馳せている。今の協会を代表する女流選手の一人であることは間違いない。

水瀬の横で、朝倉は少し微笑んでいた。
挑戦者の生き生きとしたアガリを嬉しく思ったのか、それとも今日の戦いもやはり楽にはいかないか、という自分の運命を嗤ったのか。

朝倉は、王者の風格を持っている。
ママ雀士としても有名で、聖母のような落ち着きも兼ね備えている。
東2局1本場、朝倉は親番で7巡目にこのテンパイ。

ここからを切ってダマに構える。
打点か、形か。満足のいく状況まではゆっくりとそのときを待つのが朝倉だ。
そこに西家中月が-待ちのリーチ。

朝倉がダマにした結果、このように相手を土俵に上げてしまうこともある。
しかし、朝倉はそういう状況を生んでも困惑することがあまりないように思う。
そうなることが分かっていたように、子供が次に何をして、それにどう対応すればいいかを用意している母のように、ゆとりをもって大局を見つめている気がする。

当たり牌のを吸収し、自然と切りの追いかけリーチ。
しかし朝倉は、さらに続けてを掴んでしまい、中月へ2000は2300の放銃となった。

さて、東3局1本場に西家逢川が南家中月より2フーロのドラ暗刻手をアガる。

逢川はフーロが多いタイプで、打点の幅が広い。
中月もこれは仕方ない放銃であるが、逢川は打点のわかりやすいときもあり、それに被せられる場合もある。


たとえばこの南1局、東家逢川が序盤にカンを仕掛けている。
2900である可能性が高く、朝倉は慌てる子をなだめるように、ゆっくりとを落としていった。
この局はこのまま終盤までもつれ、朝倉の手は進まなかったが、逢川の最終手番前。

北家中月が、をポンしていてまずここが本手。
西家水瀬は、今をポンして打としたところ。
は生牌で打てない。は中月の現物だが、次に打てる牌がない。
ただし今を通せば、もう1巡しのげば親権は保てる。
逢川は、を選び、ノーテンで親を流した。

全15回戦の決定戦。親権のためにどう終盤押すかは難しい判断だと思う。
逢川は仕掛けを厭わないが、勝負をするのは好まない方である。
長期的には安定するが、15回戦の短期戦。この戦い方でいくのか、多少は変化させていくのか。
今回逢川はそれ以上の追撃をできず、初戦は最初のリードを守り切った水瀬がトップであった。


<2回戦>

1回戦の南1局終了時、選手たちがトイレに立って休憩を挟んだことがあった。
もちろん対局が長引いた場合はよくあることなのだが、2回戦が始まる前に、朝倉がみんなにやさしく声をかけた。
「みんなちゃんとトイレに行っとこうねー」
母性とか、慈愛とか。普段から朝倉の物腰の端々にそれを感じる。
麻雀にも、その余裕が表れているのだろうか。
私は朝倉が入会時、十代の派手な様子の頃から知っている。3期ということは、14年くらいの付き合いになる。
麻雀の勝負スタイルも、人生観も、大抵の人は色んな影響を受けて変化していくものだとは思う。朝倉は最初から強かった。それでも、経験を重ね、人生の悲喜交々を通過し、今の慈母のようなたたずまいがあるような気はする。

さて逢川がトップ目で迎えた南1局、東家中月の-待ちリーチを受けて西家逢川はこの手。切りテンパイで、ピンズの場況は悪くない。

このとき北家水瀬が、親リーチ後にをポンしてを勝負している。
明らかにここも本手である。
逢川は中月に無筋、水瀬には現物のを切れば-待ちテンパイ。
しかし、ここも守備意識の強い逢川は、オリを選択。
水瀬がをツモ切り、中月がをツモ切った。
そして水瀬が、ドラをツモ。

マンガンのツモアガリでトップを逆転。逢川にとって痛恨。
水瀬はミスが少なく、安定したバランスの選手である。逢川のアガリ逃しの間隙を縫って、見事に押し勝った。

朝倉は完成された堅固な打ち手ではあるが、母虎の牙を剥くことも無論ある。
対して逢川はやや消極的寄りの守備で、タイプは異なると思う。
ここでの経験が、逢川にどんな影響を与えていくのか、それもこれから楽しみではある。

そしてオーラス、朝倉が置いていかれた三つ巴の点棒状況。
北家逢川が3フーロでテンパイ、東家水瀬も2フーロでテンパイ。
それを受けての南家中月。

中月は、1000・2000か5200でトップ。
このイーシャンテン、二人テンパイがいる場面だが、中月はのチーテン、のポンテンをスルーした。
もちろんテンパイを取れば限定のアガリになるが、確実にアガった牌でトップになりたい。そう思って中月は耐えた。
この中では最も攻撃的で、チャンスを決して無駄にしない意志の強い選手である。
第7回μレディースオープン、第16期新人王、第19期女流名人。過去3度タイトル戦決勝進出経験があり、その全てで優勝している。
しかしここは成就せず。テンパイかなわず水瀬への放銃となり、水瀬は2勝目を飾る。


<3回戦>

水瀬に大きくリードされた三者。
2 回戦のオーラスに苦汁をなめたファイターの中月がようやく反撃。
南2局1本場ドラ。東家でこの配牌。

1

南家逢川のドラシャンポンリーチをかいくぐって4000オール。

中月は、良い意味で変わらない、そしてそれが合う選手だと思う。
リーチへ押す胆力もあるし、伸び伸びとした攻めが持ち味で、攻撃力がある。複数タイトルの実績からも、攻め時の見極めがしっかりしている様子がうかがえる。

そして南3局、南家水瀬に注目したい。

このときすでに東家逢川がカンを仕掛けている。
それを受けての水瀬、この手を切りダマ。東家が安手を匂わせる仕掛けで、リーチをしても問題ないようにも思えるが。
水瀬は、こういうダマをしない選手だった。水瀬を知る者はそれがわかっていた。
「変わってきたんですよ、私」
対局後に水瀬が語っていた。
そこに北家中月がドラのを打つ。続けて東家逢川が切り。
水瀬がポンだ。

を切ってドラ単騎。
そしてすぐに西家朝倉がドラを掴んでしまう。

跨ぎで2000なら、朝倉はトップでオーラスを迎えられる。これが単騎で当たると中月を100点下回ってしまう。
(ペンで曲げる子だったよね――?)
そんな風に水瀬に朝倉が問いかけたかどうかはわからないが、朝倉はこれを放銃した。
朝倉がここまで長い道のりを歩んできて今の朝倉になったように、水瀬も経験を経て、自分の最終形を変化させていく途中なのだ。

南4局は東家水瀬が粘り、2本場になってこの状況。

西家中月がをポンしてドラ暗刻、-待ちのマンガンテンパイ。
さすがにこれはどこからでもすぐアガれそうだったが、

その瞬間の水瀬。手拍子でを打ってしまうかと思われたが、水瀬はここからしっかりとを止めてオリ。
確かに、そして着実に、水瀬は人生を積んできていると思った。
今日まで決して楽な麻雀を打ってきたのではないと、静かに水瀬は主張していた。
中月がアガれぬまま11巡目、今度は現女流雀王が鉄槌を振り下ろす。

神々しくさえ見える、朝倉が中月の当たり牌単騎でリーチ。
この簡単なポンテンさえも、中月はどれだけ遠く感じたことだろう。

麻雀に人生をなぞらえることは仰々しいという意見もあるだろう。
しかしその人が打つ内容には、確かに本人の体感してきた辛苦、成果が表れている。
変化を見せた水瀬、真っすぐなファイター中月、控えめに機会をうかがう逢川。
そして海千山千のマリア様。彼女は、どう挑戦者たちを見ているだろうか。

この回は、辛くも中月がを引き勝ってトップ。


<4回戦>

水瀬がトップ、トップ、2着とポイントを伸ばしている。
しかし、今回は朝倉に8000、逢川に12000と放銃し、目下ラス目になる。
その水瀬が南3局、西家でこの手牌。

もちろん点棒状況のせいもあるのだが、水瀬はここからテンパイ取らずのアンカン。
リンシャンからツモで、切りの-待ちリーチ。
一発でそのを掴んだのが東家朝倉。

が現物なのだが、が3枚切れでマンズのリャンメンが弱い。
(メンツからアンカンして、片アガリのリャンメンなんて当たる子だった――?)
そんな風に朝倉が思ったかどうかはわからないが、切りで一発の6400放銃になってしまった。
こういうアンカンも、水瀬はほとんどしたことがないらしい。水瀬の変化が、朝倉のレアな放銃を生んでいる。


<5回戦>

開局東家の水瀬、2巡目切りで取らず、そしてこのも考えた末、切りで取らなかった。
解説も、今までの水瀬とは明らかに変わっていると話していた。
この局は、長引いた結果西家逢川へ北家朝倉が8000の放銃。
朝倉は今日、手牌も展開も恵まれていないが、やはり淡々と澄ました表情で打ち続けている。
これくらいの逆境は、経験のうちなのだと思う。

比較的平たくなっての南2局、南家逢川が3巡目にこの手。


場にはがすでに2枚出ている。
ここまでの朝倉と水瀬のテンパイ外しやダマを見ていると、こういう手はどうするのか興味深いが、逢川は先手で攻めるタイプであり、後手は引くことが多い。
後手でも攻められるのが中月であり、それはそれぞれのこれまでの経験と人生が形成したスタイルである。
単騎が良く見えること。その機を逃さずしっかりとリーチしたのは良かったと思う。


逢川、この単騎を一発ツモ裏2で3000・6000。

逢川が最後に連勝で首位。堅実なヒットアンドアウェイで、少ない勝負手をものにしてきている。
水瀬はそれまでのリーチバランスをシフトさせながら、ミスを少なくまとめて好位置。
中月はやはり勝負に向かう姿勢が清々しい。トップ取りを強く意識している様子がわかる。

そして朝倉だけが初日ノートップ。
それでもなんというか、朝倉は前を競って走る子らをゆっくり追いかけるような、ゆとりと安心を感じてしまう。
もちろん朝倉も本心は苦しいはずだ。しかし、今までも人生や麻雀で色んなことがあって、傷も勲章もその身に刻んで来たのである。
「今度勝てば、3連覇?そう――?」
きっとそんな風に、気負わず、驕らず、次もいつもの落ち着いた麻雀を見せてくれるのだと思う。

女流雀王決定戦二日目は、12月8日(土)。

(文・須田 良規)

▲このページトップへ

 

当サイト掲載の記事、写真、イラスト等(npmのロゴ)の無断掲載を禁止します。(c) 日本プロ麻雀協会. ALL Rights Reserved. 管理メニュー