順位 |
名前 |
ポイント |
1日目 |
6回戦 |
7回戦 |
8回戦 |
9回戦 |
10回戦 |
1 |
佐月 麻理子 |
176.0 |
68.7 |
-51.5 |
60.8 |
59.7 |
83.8 |
-45.5 |
2 |
朝倉 ゆかり |
-18.9 |
20.0 |
-21.9 |
14.3 |
-18.6 |
7.7 |
-20.4 |
3 |
愛内 よしえ |
-40.5 |
-103.5 |
70.9 |
-21.9 |
9.4 |
-57.1 |
61.7 |
4 |
豊後 葵 |
-116.6 |
14.8 |
2.5 |
-53.2 |
-50.5 |
-34.4 |
4.2 |
|1日目観戦記|2日目観戦記|3日目観戦記|
≪女流雀王決定戦2日目観戦記≫
1日目終了時スコア
佐月+68.7
朝倉+20.0
豊後+14.8
愛内△103.5
連日対局の唯一とも言えるメリットは、最速で前回のリベンジを果たすチャンスが訪れることである。
初日のスコアを見れば、誰が一番燃えているかは明白。
例えそれが、内に秘めた炎であっても・・・
★6回戦★(朝倉→佐月→愛内→豊後)
東3局
愛内21500 豊後23000 朝倉32500 佐月23000
この日も芳しくない出だしの愛内だったが、この親番で早くもリベンジのチャンスを得る。
高目のは3枚切れてしまっているが、ピンフドラ1なら文句のないテンパイ形であろう。
朝倉と豊後に仕掛けが入っており、一刻も早く押さえつけたい。
誰もがリーチを打つと思っていただろうこの局面で、愛内はダマテンを選択する。
すると2巡後に望外とも言えるをツモり4000オールのアガリ。
とはいえ6000オールを逃した形とも取れるこの判断だが、実は愛内がこの手をリーチとすると、朝倉が豊後に放銃しこの局は終わっていたかもしれなかった。
豊後(南家)
ポン ドラ
朝倉(西家)
ポン ドラ
これが愛内のテンパイと同巡の2人の手牌である。
愛内がリーチを打ったとすると、豊後のツモはポンされているなのでツモ切りテンパイを維持。
朝倉のツモも現物のなのでツモ切る可能性もあるが、親のリーチを受けた場合はをポンしての手出しがドラので安手が濃厚な豊後に半ば打ちにいく形で愛内の現物であるを先に打つパターンも有り得た。
神の視点を持つ者のみが、愛内の薄氷のアガリを賞賛することを許された。
愛内はこのアガリを皮切りに、昨日の鬱憤を晴らすかのようにアガリ続け、大きなトップを取る。
この6回戦の結果で、トータル首位と4位の差が60ポイントまで縮まった。
これがウマの大きい協会ルールの怖さであり、最大の魅力でもある。
6回戦結果(トータル)
愛内+70.9(△32.6)
豊後+2.5(+17.3)
朝倉△21.9(△1.9)
佐月△51.5(+17.2)
★7回戦★(豊後→愛内→佐月→朝倉)
朝倉は初日の1回戦のラス、2回戦のトップ以降はここまで2着と3着を交互に取っていた。
トップを取らないことには抜け出せないこのルールにおいてこの着順取りは明らかに劣勢なことを表していた。
しかしその朝倉がついに戦線に復帰する。
朝倉(北家)
ロン チー ポン ドラ
これをリーチをかけていた豊後から打ち取ると、
東3局にも親で攻めてきた佐月の打牌を捉え5200の出アガリ、早くもこの半荘の独走態勢に入る。
受けに関しては今回の面子で頭一つ抜けた能力を誇る朝倉を捕まえるのは容易なことではない。
朝倉の逃げ切りが濃厚かと思われたこの半荘の主役は、予兆なくその姿を現した。
そしてその人物こそ、この2日目の主役に抜擢された選手であった。
南2局
愛内27900 佐月15200 朝倉43500 豊後13400
佐月(南家)
ツモ ドラ 裏ドラ
佐月(東家)
ツモ ドラ 裏ドラ
この2つのアガリでトップを射程圏内へ入れると、オーラスに条件を満たすアガリも決め先ほどのラスを帳消しにする。
佐月(北家)
ツモ チー チー ドラ
7回戦結果(トータル)
佐月+60.8(+78.0)
朝倉+14.3(+12.4)
愛内△21.9(△54.5)
豊後△53.2(△35.9)
★8回戦★(佐月→愛内→豊後→朝倉)
起家スタートの佐月、自身の親番は安手ですぐに流されるも、
東2局・3局は先行リーチを受けながらも連続でそれを交わすアガリを見せる。
東4局も愛内の先行リーチが入るが待望の本手を決め、珍しくスローペースで進んでいた集団から1人ピッチを上げる。
南3局
豊後13800 朝倉19000 愛内25200 佐月42000
朝倉がダブを一鳴きする。
朝倉(南家)
ドラ
おそらくこの決定戦で初めてであろう、朝倉の遠くて安全度の低い仕掛けである。
ダブ南でドラターツもあるので仕掛けとしてはごく自然であるが、ネックが多く残るこの手牌。
朝倉にしては珍しいと言わざるを得ない。
しかし、上家の豊後の手牌と完全に噛み合っていたことにより本人の想像よりも早くに完成形へとたどり着くことになる。
豊後(東家)
ツモ ドラ
当然切りとなり、朝倉がこれをチー。
→と引くと自然とターツを落とすことになり、このチーでテンパイが入った。
朝倉(南家)
チー チー ポン ドラ
豊後もすぐにテンパイを入れリーチを打つも、同巡のツモでリャンメン待ちになった朝倉に押し切られ1000・2000のツモアガリ。
オーラスも愛内にピンフ・ドラ2の手が入るも、ハネマンをツモっても届かない点差となっているためダマテン。
すぐにツモアガリとなるが佐月にとっては安い通過料である。
この8回戦は終始佐月に展開が味方した結果となった。
8回戦結果(トータル)
佐月+59.7(+137.7)
愛内+9.4(△45.1)
朝倉△18.6(△6.2)
豊後△50.5(△86.4)
★9回戦★(佐月→愛内→朝倉→豊後)
6回戦終了時にはかなり平らなポイント状況にあったものの、佐月の連勝・豊後の連ラスによって少し縦長の試合展開となってきた。
この9回戦も2人の現状を露骨に表現するかのような格好となった。
東3局
朝倉20900 豊後10000 佐月48800 愛内20300
まだ東3局とはいえ、この半荘も佐月にトップを取られるようなら下とはほぼ200ポイントの差がつく。
『まだ6回ある』
『もう6回しかない』
各々考え方は異なるであろうし、協会ルールで残り6回の200ポイント差は諦めるには早い数字である。
しかし、その6回の中で「特別な何か」をやらざるを得ない局面が現れることは明白である。
そしてそれはゴールが近づくにつれ、より厳しい手法と回数を強いられることになる。
愛内(北家)
ツモ ドラ
愛内は当然リーチを打った。
そして、9巡目に親の朝倉から切られたを当然のように見逃した。
この局の結果は愛内と朝倉の2人テンパイで流局。
それと同時に、愛内の意思を他の3人に伝える大きな意味を持った局となった。
東3局4本場
朝倉30800 豊後6000 佐月44800 愛内18400
朝倉は3万点台に復帰、佐月の点棒も徐々に削られていく。
佐月包囲網が敷かれ始めた途端その効果が如実に現れる。
しかし、今日の佐月にはその程度の逆風など物ともしない力が宿っていた。
佐月(西家)
ドラ
この心許ないメンチンの待ちが何と山に2枚。
そしてその内の1枚が場に放たれた瞬間、佐月のトップは磐石のものとなった。
追い上げる朝倉からの直撃で、この連荘で積み上げた功績は一瞬で無に帰した。
3者の心の折れる音が聴こえたようにも思えたこのアガリ、しかしこの卓上に諦めの文字が脳裏を宿った選手はいなかった。
南入し迎えた佐月の親番で朝倉にチートイツ・ドラ2の手が入る。
生牌の待ちとリーチするには申し分のない待ちだが、ここはダマを選択。
同巡に佐月からリーチが入り、当然のツモ切りリーチかと思いきや、持ってくるで少考。
朝倉はこの待ちに変えてのリーチと出る。
これが最高の結果を呼び込む。
朝倉(西家)
ツモ(一発) ドラ 裏ドラ
佐月に倍満を親かぶりさせ、逆転への希望を残した。
南2局1本場
愛内16400 朝倉31600 豊後△2000 佐月54000
結果から言ってしまうと、この局は朝倉が愛内から3900は4200をアガることになる。
そしてこのアガりに対して、朝倉自身が是非を問いかけてきた。
自身のトップを目指すためには間違いなくアガった方が良いだろう。
裏ドラ1枚で佐月との点差を一アガリまで縮められ、愛内の状況的にこの親が流れると自身の着順アップよりも朝倉を押し上げる選択を強いられることも大きなメリットである。
しかし前述の見逃しやこの半荘の打ち方を踏まえると、愛内は自分からはアガらないと思っていたとも考えられる。
愛内のツモアガリパターン以外は佐月との点差を詰められ、そのパターンになったとしても親の連荘だけは歓迎しない佐月を苦しめることが出来る。
何より流局時にこの光景を見せつけることで愛内と佐月に与える印象は数値化出来るものではない。
決勝経験が豊富な朝倉は、当然そのことも理解している。
その朝倉ですら悩む局面とポイント状況であった。
結果的には佐月を捲ることは叶わず、愛内に至ってはオーラスに佐月への放銃でまさかのラスとなってしまった。
愛内の判断も朝倉の判断も、正しいかどうかはわからない。
ただその判断を下す最大にして唯一の理由は、
『私が女流雀王になるため』
であり、残酷なことにそれは15回戦が終わった時の結果でしか計れないのである。
9回戦結果(トータル)
佐月+83.8(+221.5)
朝倉+7.7(+1.5)
豊後△34.4(△120.8)
愛内△57.1(△102.2)
★10回戦★(佐月→愛内→豊後→朝倉)
昨年の雀竜位決定戦での大逆転などの例もあるとはいえ、現実的に逆転を目指せるボーダーとして
『残り5回戦で300ポイント差』
が一種のラインかと思う。
これ以上はそれこそ奇跡を祈らなければならない。
そして愛内と豊後はすでにその崖の淵まで足を踏み入れてしまっていた。
本人たちにもその見えないボーダーに対する意識があったのかも知れない。
2日目の最終戦であるこの10回戦は、そう思わざるを得ない展開で進んでいく。
東場の親で愛内が技ありの6000オールをアガると、豊後もその愛内の親で2000・4000のツモアガり。
さらに自身の親で細かいながらも加点に成功し2人が抜け出す形になった。
最終日へ望みを繋ぐために・・・しかし今日の主役は最後までその存在感を見せつけてきた。
佐月(東家)
ツモ ドラ
朝倉のリーチと、高目8000のテンパイを入れていた豊後に対して打で勝負するとすぐに豊後からが出て4800は5100と供託付き。
佐月(東家)
ツモ チー ポン ドラ
こちらは残りツモ番1回というところで安全度の高いを切るとテンパイの朝倉からすぐにが出て1500は2100。
南1局3本場
佐月21700 愛内45000 豊後26800 朝倉6500
徐々にその差を詰めてゆく佐月。
そしてこの3本場でついに本手を入れてくる。
佐月(東家)
ドラ
いよいよ本当に心の折れる音が聴こえるかもしれない。
そんな局面を打開したのはまたも朝倉のチートイツだった。
朝倉(北家)
ツモ(一発) ドラ 裏ドラ
これも生牌のと待ち選択が出来たが、1枚切れのを選び見事一発ツモ。
佐月以外の3者にとっては大きな意味を持つアガリとなった。
南3局
豊後28400 朝倉16400 佐月12500 愛内42700
是が非でもトップの欲しい豊後に4巡目にしてチャンス手が入る。
豊後(東家)
ドラ
しかしこの手がまったく動かないまま、最も起きて欲しくない現象が起きる。
佐月(西家)
ドラ
ドラのは自分の目から3枚見えており、打点が絡む場合は手役になるがそこまで絞れる河にはなっていない。
何より自身がトップになるためには絶対に落とせない親番である。
豊後の攻め方に俄然焦点がいく・・・はずだった。
大方の予想に反し、豊後はここから打でリャンシャンテン戻し、を引くと通ったを合わせ完全撤退。
ここで降りを選択するのは正直意外だった。
というより、去年の豊後だったら間違いなくこの手は押し切っていたと思う。
ここで一対一の勝負を賭けることで得るリターンはあまりにも大きい。
しかしこの手は打点こそあるものの、受け入れ自体が苦しくテンパイ時にも優秀な待ちになることは少ない。
そしてラス目の佐月のリーチは現状の点差やトータルポイントを加味しても打点か待ちの優秀さ、もしくは両方が伴っていることが多い。
この局面において、そのリスクとリターンが伴っていないと豊後は判断したのだ。
自身のトップは遠くなるかも知れない。
その分自分の2着の可能性と佐月のラスの可能性を最大限まで上げる苦渋の決断。
そしてこの判断が間違っていなかったことを、14巡目のツモと16巡目のツモが物語っていた。
この局は佐月の1人テンパイとなったものの、狙い通りこのままの着順で終えることに成功した。
10回戦結果(トータル)
愛内+61.7(△40.5)
豊後+4.2(△116.6)
朝倉△20.4(△18.9)
佐月△45.5(+176.0)
2日目を終え、トータル2位の朝倉でさえ首位の佐月とは200ポイント弱の差が開いている。
しかし全員が300ポイント以内の差であり、3者の見据えるべき方向が明確に一致していることは大きなプラス材料である。
ラスで始まりラスで終えた佐月だったが間の3連勝の大きなプラスで100以上ポイントを伸ばし独走首位となった。
今日の佐月は間違いなく一番手が入っており、展開が味方する機会も多かったと思う。
しかしそのチャンスを、その与えられた配牌とツモを自分が出来うる最善の選択で活かし切ったのは間違いなく実力と呼んでいいはずだ。
−誰よりも自分らしく輝く女王の誕生まで、あと5半荘−
(文・橘 哲也)
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