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順位
名前
TOTAL
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
1
水崎 ともみ
122.9
60.0
47.8
-39.3
-18.0
72.4
2
大崎 初音
71.9
18.8
-16.9
1.7
54.5
13.8
3
冨本 智美
-52.6
-22.7
-37.2
56.0
5.9
-54.6
4
眞崎 雪菜
-142.2
-56.1
6.3
-18.4
-42.4
-31.6

|1日目観戦記|2日目観戦記3日目観戦記

 

「リーチ!」
誰よりも速く、誰よりも美しく。その姿はどこか、しなやかな女豹を思わせる。
彼女の所作は、綺麗でいて隙がない。

迷った仕草をしてからのリーチを打ちたくない、という冨本。
上記のような、一瞬リーチを打つことをためらってしまいそうな牌姿でも、彼女はノータイムで牌を横に曲げる。
がポンされているので、嬉しい手替わりはくらい。
それならもうこれは、ほぼこの手の最終形と見越してリーチを打ってしまった方が得だと思うが、
役アリ愚形テンパイなので、ダマテンを選択する人もいると思うし、
リーチをするにしても逡巡してしまう人が多いだろう。
積極果敢なリーチ、打点やスピードが伴った仕掛け。とにかく、手数が多い。
多彩な攻撃パターンで昨年女流雀王というタイトルを獲得した冨本。
女流雀王戦はディフェンディングのため一年お休みしたが、その間も色々な大会や勉強会に出て、更に技術を磨いてきた。

 

「チー!」
待ってました!とばかりに上家が合わせたに声が掛かる。

トップ目の大崎とは2400点差。水崎の手はドラもなく、じっくりとタンピン系の手に仕上げていた。
しかし、大崎がリーチ棒を出したため、どこからでもアガればトップという状況になった。
後は何も恐れることはない。条件を満たし押し切って、見事にトップをものにした。
当たり前のことを当たり前にこなす。それは、麻雀という競技においては殊更難しい。
クレバーな麻雀を打つイメージのある水崎。その一つ一つの正確さと精度の高さ故、周りからの評価も高い。
しかし 勝った時、いつも彼女はこう言うのだ。
「私、ツイてたわー♪」
それは間違いなく、自身の力でものにした勝利だというのに。

 

「ロン。8000」

手役作りというのは、なんだか芸術に似ている。
敢えて効率を無視したり、受け入れ枚数を減らしたり。
しかし、これが上手くいった時は、素晴らしい手が出来上がる。
大崎のこの手順。一見簡単そうに見えるが、実は何箇所も選択を迫られている。
6巡目のツモ
大崎(北家)
 ツモ ドラ
ここでテンパイチャンスだけを考えたら切り。
しかし大崎は打の受け入れをなくす代わりに、ドラ受けと三色目を残した。
次巡のもツモ切り。そしてと引き入れ、見事に三色を完成させた。
彼女は、スピードでは他に劣るかもしれない。
しかしそれを補い余り有る打点力を持っている。

 

「ロン!」
まるで、針の穴を通すようなアガり。

「他から出ても、アガるつもりはなかった」
そう強く言い切った眞崎。
着順アップのためにはハネ満ツモ、もしくは冨本から満貫直撃。決して楽な条件ではない。
しかし、決定戦という短期決戦では、一着順上げるということがどれだけ大事か、
眞崎は今までの経験からわかっている。
親の冨本が、このまま指を咥えて三着を受け入れるような戦い方はしないだろうと読んでいたのかもしれない。
彼女はこの中では間違いなく一番経験豊富。もう自分の麻雀は体に染み付いていることだろう。
臨機応変に対応する力、押し引きバランス、決定戦の戦い方…眞崎が優位な要素はたくさんある。

 

 

≪女流雀王決定戦初日≫

★1回戦★(冨本-水崎-眞崎-大崎)

大きく場が動いたのは、東2局1本場。
冨本がをポンして、7巡目に以下のテンパイ。
冨本(北家) 
  ドラ
ここに、国士リャンシャンテンの眞崎がを掴んで飛び込む。
無論放銃のリスクは充分承知で打った牌だが、まさかここまで高いとは…といった表情。

そして東4局。
水崎(西家) 5巡目
 ドラ
リーチは打たず、を切って手替わり待ち。
9巡目にを持ってきたところで、空切りリーチといく。
次巡、仕掛けてホンイツに向かっていた冨本にもテンパイが入る。
冨本(南家)
 チー
この時点で、は山に二枚。は眞崎に二枚持たれていて、は山に二枚。どちらに軍配が上がるか。
二人の勝負かと思われたが13巡目、眞崎がを掴んで放銃。
眞崎(北家)

ここからが止まる筈もない。
倒された水崎の手を見てホッとしたのもつかの間、裏ドラを捲るとそこにはがいた。
眞崎にとっては不運な展開が続く。

南2局。ここまで全く出番のなかった大崎が、ようやく先制リーチ。
大崎(西家) 10巡目
 ドラ
冨本が追いつくも、ここは大崎が自力でツモり上げる。をツモって裏ドラは乗らず1000・2000。

南3局は冨本が700・1300をアガり、オーラスを迎える。
水崎42500。
大崎23500・冨本23400、この差はわずか100点と拮抗。
眞崎が10600と少し置いていかれた形になる。
まずは親の大崎一人テンパイで流局。

南4局1本場。
大崎(東家) 1巡目
 ドラ
この形から、南家冨本の第一打をスルー。
ターツが足りているので仕掛けていく人も多いとは思うが、大崎はこのような仕掛けをするイメージはあまりない。
そして8巡目にテンパイが入り、リーチ。
大崎(東家)

両方一枚場に出ているので、残り二枚。
同巡、冨本も追いつく。

が大崎の現物だったこともあり、を切ってリーチ宣言。
冨本のアガリ牌は、残りが一枚。
「ツモ!」
大崎の手元に置かれた、高めの
裏ドラがで、大きな4000は4100オールのアガりとなる。

先程のアガりで一気にトップ目に躍り出た大崎。二着目水崎との差は2400点。
大崎(東家) 11巡目
 ドラ
が一枚切れ、は生牌。
ここで大崎はリーチにいく。
安めので2000点のアガリでも、アガれば次局は流局で伏せてもトップで終了できる。
残りたった一枚のでさえ、アガりを逃すのは勿体無い。
しかし、大崎がリーチ棒を出したことにより、水崎がどこからでもアガればトップという条件になってしまう。
水崎(西家) 17巡目
 チー ロン
この勝負は、水崎が制した。

1回戦結果 水崎+60.0 大崎+18.8 冨本▲22.7 眞崎▲56.1

 

★2回戦★(冨本-眞崎-大崎-水崎)

東1局。大崎が先制リーチ。
大崎(西家) 7巡目
 ドラ
眞崎が追いつき、追っかけリーチ。
眞崎(南家) 9巡目

ここに、丁寧に手を進めていた水崎が、危険牌を切ることなく11巡目にピンフテンパイ。-は二人の現物。
これにを落としていた冨本が、三枚目で掴まってしまう。
1000点だが、この二人の本手をかわせたことは大きい。親の冨本もオリていただけに、ノーテン罰符を払うより安いこの放銃はラッキーか。

東2局。眞崎と冨本のリーチを掻い潜り、水崎が満貫をアガる。
水崎(西家) 15巡目
 暗カン ロン ドラ

東3局。

親の大崎が3巡目に、以下の形でドラのをリリース。
大崎(東家) 3巡目
 ドラ
しかしこのは、北家眞崎に鳴かれてしまう。
6巡目、大崎はから、眞崎から出るをチーしてテンパイを入れる。
眞崎の捨て牌を見て、早そうだと読んだか。
9巡目には、冨本がテンパイ。
冨本(西家) 9巡目

一通が出来ていればリーチでぶつけたかもしれないが、がドラをポンしている眞崎の現物ということもありダマテン。
程なくしてをツモる。400・700。

東4局は、冒頭でも取り上げたように大崎が彼女らしい手順で三色をアガる。
大崎(北家) 13巡目
 ロン ドラ

南3局1本場。
ここまで厳しい展開に見舞われていた眞崎。
眞崎(北家) 12巡目
 暗カン リーチツモ ドラ 裏ドラ
ようやく本手が実る。2000・4000は2100・4100のアガりで、一気にトップ争いに名乗りを挙げた。

オーラスを迎えて大接戦。
水崎29800・眞崎27300・大崎24100・冨本18800。
親が水崎なので、ラス目の冨本でも満貫ツモアガリでトップになる。
その冨本、4巡目にテンパイ。
冨本(南家) 4巡目
 ドラ
一発ツモもしくはツモって裏ドラが一枚乗ればトップ。
しかし、まだ巡目が早く、ピンフがつけばツモで裏ドラが乗らなくても三着浮上のため、テンパイ取らずの打
次巡、を持ってきて打
しかしその次に持ってくる牌は、
なかなか、良い形でテンパイし直せない。このはツモ切る。
そして、次に持ってきた牌は…
痺れを切らしたように、冨本はリーチをかける。
冨本(南家) 8巡目

14巡目にをツモるも、裏ドラは乗らず。着順は変わらず終了となった。

2回戦結果 水崎+47.8 眞崎+6.3 大崎▲16.9 冨本▲37.2

(2回戦終了時トータルスコア)
水崎 +107.8
大崎 +1.9
眞崎 ▲49.8
冨本 ▲59.9

水崎が二連勝で良いスタートダッシュを決めた。

 

★3回戦★(水崎-冨本-大崎-眞崎)

東2局1本場、冨本がリーチ。
冨本(東家) 11巡目
 ドラ
大崎も追いつく。
大崎(南家) 14巡目

-が冨本のリーチの現物ということもあり、ダマテンに構える。
16巡目にを持ってきた大崎。冨本の河には、4巡目にがある。
少考して、に手を掛けた。しかしこれは三色の高めの方にクリティカルヒット。
冨本12000は12300の大きなアガりとなった。

しかし次局、大崎がお返しとばかりにハネ満ツモ!

水崎のリーチと、冨本と眞崎の仕掛けを受けながら、危険な牌を切ることなく上手く打ちまわし、七対子テンパイ。
点棒もなかったため、ここはドラ単騎リーチで勝負!
ラス牌のをツモり、一気にビハインドをなくした。

南1局。静かに場が進行する中、15巡目に冨本がツモ切ったに、ロンの声がかかる。
大崎(西家) 15巡目
 ドラ
今日の大崎は一段とアガリ打点が高い。

南2局は、打って変わって空中戦。
冨本、眞崎はピンズのホンイツ仕掛け。水崎はトイトイも見据えた仕掛け。
ここまで「ポン」の声が飛び交う局も珍しい。

結果、眞崎がテンパイから水崎に打ち込み。

オーラスは二着争いが熾烈。
冨本34000・眞崎23600・大崎21700・水崎20700
親の眞崎はトップを狙える位置に居るが、大崎と水崎は満貫ツモでもトップに届かない。余程の手が来ない限り、二着をとりにいくだろう。
しかしここは、トップ目の冨本がをポンして自力で決めにいく!
8巡目に眞崎が切ったに、冨本からロンの声がかかる。
三人の心の声が聞こえてくる。

眞崎『1000点!!』
大崎『2000点以上!!』
水崎『3900点以上!!』

冨本「…2000」
この放銃で大崎と眞崎の順位が入れ替わり、3回戦は幕を閉じた。

3回戦結果 冨本+56.0 大崎+1.7 眞崎▲18.4 水崎▲39.3

(3回戦終了時トータルスコア)
水崎 +68.5
大崎 +3.6
冨本 ▲3.9
眞崎 ▲68.2

 

★4回戦★(大崎-眞崎-冨本-水崎)

東1局。冨本が以下の形でリーチ。
冨本(西家) 9巡目
 ドラ
既に場に二枚、一枚、一枚切れていたので、これが最終形と言ってもよいだろう。
水崎が果敢に立ち向かい、14巡目
水崎(北家) 14巡目

ドラのが通ったばかりで、もちろんダマテン。
しかし次巡、親の大崎も追いつき、リーチ。
大崎(東家) 15巡目

三者の間に火花が散る。
これは水崎がを掴んでしまい、大崎に3900の放銃。

次局は、水崎が早いリーチ。
水崎(北家) 4巡目
 ドラ
このリーチの一発目に、眞崎の手牌。
眞崎(南家) 5巡目

現物はのみ。しかしそれを打ったらこの手は終わってしまう。
そこそこの打点も期待できる形なので、ここはのトイツを落とすところだろう。
選んで眞崎が手に取ったのは、
これは、水崎の当たり牌の方だった。5200は5500。
眞崎、どうにも噛み合わないまま、点棒が削られていく。

東3局。大崎が9巡目に七対子テンパイ。ドラ単騎のダマテンに受ける。
ドラがで比較的使いにくい牌のため、息を潜めていれば、ポロッと出てくる可能性がある。
目論見通りに、次巡親の冨本のリーチ宣言牌を大崎が捕らえ、6400のアガり。

南1局。
冨本(西家) 7巡目
 リーチ一発ツモ ドラ 裏ドラ
一発裏ドラありのルールの恩恵を存分に受けた満貫ツモ。

オーラスはラス目の眞崎、親で三着目の水崎のリーチ合戦が流局。
供託三本となったところで、大崎が1000点をアガり、見事トップをものにした。

4回戦結果 大崎+54.5 冨本+5.9 水崎▲18.0 眞崎▲42.4

(4回戦終了時トータルスコア)
大崎 +58.1
水崎 +50.5
冨本 +2.0
眞崎 ▲110.6

★5回戦★(水崎-大崎-眞崎-冨本)

女流雀王決定戦初日の最終半荘を迎えた。

東1局。
水崎(東家) 10巡目
 ドラ
上記の手でリーチ!
同巡、大崎にもテンパイが入る。
大崎(南家) 10巡目
 チー ポン
どちらが出ても満貫確定!
ここは大崎が、水崎の高めのを掴んでしまう。
裏ドラが一枚乗って12000点。痛恨の一撃だ。

次局は大崎がドラドラの-待ちリーチを打つが、不発。
粘って最後はフリテンをチーしてテンパイをとった冨本と二人テンパイで流局。

東2局2本場。
水崎がアッサリと満貫をツモり、これで46100点持ちのトップ目に立つ。

次局も、冨本がドラのをポンして立ち向かおうとするも、水崎が1000点で流す。

更に南1局1本場、水崎親番の時には、12000は12300を眞崎からアガる。
これで6万点近くのトップ独走状態に。

しかし、これに待ったをかけたのが大崎。
南1局2本場。
大崎(南家) 7巡目
 ドラ
ここからを切ってリーチ。
大崎は3巡目にを切っていて、は比較的当たらなそうに見える。
とはいえ、大崎がこのようなリーチを打つのは珍しい。
愚形のリーチのみにならないような手順を踏むか、こうなってしまったらトイツ落としをしてタンヤオをつけにいくかと思ったが、
そのままリーチにいった。それ程水崎の親番を流したかったのだろう。
を打った冨本も、大崎の打ち筋は熟知している。カンチャンもしくはペンチャン待ちということは、手役の可能性がある。
大崎だからこそ、尚更。

―――しまった…!!

一瞬そんな表情を浮かべたが、開かれた手を見て、少し安堵したような表情に変わる。
この手に関しては皆「意外だ」と言っていたが、いつでも同じようなスタイルで打っているのではなく、
臨機応変に色々やるんだよ!というところを見せておくと、それは後々恐怖になる。
「何をやってくるかわからない」、「戦いにくい」、「読み辛い」
対局者にそう思われていた方が、麻雀というゲームに関しては有利であろう。

次局は大崎の親番。

眞崎は2巡目にしてこのイーシャンテン。
眞崎(南家) 2巡目
 ドラ
しかし大崎が5巡目に先制リーチ。
大崎(東家) 5巡目

眞崎は持ってきたと危険牌をツモ切るが、一向にテンパイしない。
他の二人は眞崎が勝負にいっているのを見て、ベタオリ。
その後、ドラのを持ってきて、現物のを切る。ワンチャンスになったも勝負するが、結局14巡目になってもテンパイせず。
そして大崎が安めだがツモ。裏ドラが二枚乗り、6000オールのアガり!
冨本と眞崎に差をつけた。

オーラス。
水崎52400・大崎33800・冨本14400・眞崎▲600
全員、かなりの差がついてしまっている。
親の冨本はとにかく連荘したい。
大崎は、二着キープも止む無しか。
眞崎はハネ満ツモもしくは冨本から満貫直撃で三着浮上。

「リーチ!」
眞崎(北家) 7巡目
 ドラ
ツモか冨本から出れば無条件で三着浮上。ツモだと裏2条件。
冨本から直撃は裏1条件。
大崎、水崎からだと、高めのが出ても着順は変わらない。
…決して、楽な条件ではない。

9巡目、冨本が追いつく。
冨本(東家) 9巡目

2巡後、冨本がを河に置く。
「ロン」
静かに捲られた裏ドラには、
なかなか思うようにいかず、報われなかった眞崎だが、諦めることなく明日につながる見事な三着取り。
冨本の判断も、決して悪くはない。
8000直撃で捲くられてしまう点差とはいえ、ここでオリていたら、三着を受け入れることになる。
眞崎にツモられても、ラスになる可能性がある。
女流雀王決定戦という舞台は、たった15半荘しかない。
上とは少し離れているが、それでも親でアガりを重ねていけば追いつけるかもしれない。
一局単位で考えたら、この点棒状況でドラなしの愚形で追いかけるのは、少し不利な選択かもしれない。
しかし「決定戦」という戦い全体で考えたら、ここでのリーチはむしろ当然と言えるだろう。

5回戦結果 水崎+72.4 大崎+13.8 眞崎▲31.6 冨本▲54.6

(5回戦終了時トータルスコア)
水崎 +122.9
大崎 +71.9
冨本 ▲52.6
眞崎 ▲142.2

まだ初日が終わったばかり。
12月22日(日)、女流雀王決定戦最終日はニコニコ生放送で放送される。
女達の熱き闘牌「第12期女流雀王決定戦」最終日 (番組ID:lv158644664)

皆様にも是非この四人の戦いを見て頂きたい。
また、この日は協会道場パレットでパブリックビューイングも行う予定だ。

第12期女流雀王は誰の手に。

(文・水城 恵利)

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