【ポイント成績】
順位 |
名前 |
TOTAL |
1日目 |
2日目 |
11回戦 |
12回戦 |
13回戦 |
14回戦 |
15回戦 |
1 |
大崎 初音 |
218.6
|
61.8
|
82.3
|
13.1
|
-45.9
|
58.2
|
51.5
|
-2.4 |
2 |
水崎 ともみ |
69.1 |
6.4
|
-95.1 |
58.9 |
-19.5
|
-19.1
|
8.9
|
128.6 |
3 |
福山 理子 |
-48.9
|
74.0
|
45.6
|
-50.3
|
62.3
|
-52.5
|
-46.3
|
-81.7 |
4 |
豊後 葵 |
-242.8 |
-145.2
|
-33.8 |
-21.7 |
3.1
|
13.4
|
-14.1
|
-44.5 |
【3日目観戦記】
|1日目観戦記|2日目観戦記|3日目観戦記|
女流雀王決定戦最終日は12月24日、クリスマス・イブの日に行われた。
そして、先に行われた雀王決定戦と同じく「ニコ生」で配信されている。
ちなみに、放送時の解説は先輩女流雀王の眞崎雪菜、朝倉ゆかり、そして蔵美里、綱川隆晃、渋川難波、私・五十嵐が交代で務めている。
2日目を終えてのポイントは、
大崎初音 +144.1
福山理子 +119.6
水崎ともみ △88.7
豊後 葵 △179.0
となっていた。
2日間を通して大崎、福山が調子いい。
水崎は好調者2人に挟まれ、出て行ける局が少ない。
そして豊後にいたってはまったく手が入らず、たまにテンパイが入っても横移動、または自らの放銃でケリがつくことが多いといった印象である。
しかし、豊後は2日目最終の10回戦で初トップ。
これがトップ走者の大崎をラスにするという最高の形で、カスカスながらも可能性を残して最終日を迎えている。
放映直前までクリスマスの飾り付けを行っていた「アルバンスタジオ」で始まった11回戦、
座順は、大崎-豊後-水崎-福山。
東1局は親の大崎がダブをポン。
ポン ドラ
ポツンとあるがドラなので引っ張っていると、絶好のツモ。
でもでもなく、リャンメンとなるである。
やはり本日も好調だ。
場を見渡してワンズを払う。ツモでテンパイ。ほどなく水崎がツモ切りので放銃。7700点。
1本場は水崎が、
ドラ
から生牌のドラをとめてトイツ落とし。を引き入れたあとを重ねて待ちリーチ。
しかし、このとき豊後はすでに、
と、七対子ドラドラを張って待ちを探っていた。
リーチを受けてすぐに持ってきたに待ち替え。リーチに対して無スジのを勝負するだけに追っ掛けると思われたがヤミテン。
これに福山がハマッた。
6400は6700のリーチ棒込みで大崎と並び。ここはリーチで単独トップ目になってもらいたかった。
いま録画を観ると、
眞崎は「リーチでいいんじゃない」
朝倉も「私もいろいろ考えてリーチするなぁ」と解説している。
私もリーチに踏み切るが、なにより豊後らしくないと思った。
メンゼンテンパイは手変わり待たずになんでもリーチ、変化球ナシの剛速球一本やりで女流Aリーグをぶっちぎった豊後の姿ではなかった。
すでに脇役になることを自覚していたのだろうか?
次局は水崎が喰い仕掛けの2000点を大崎の親からアガり、東3局の親を迎える。
水崎、6巡目にカンチャン、ドラ待ちの役ありリーチを慣行。
ドラ
これを、大崎が7巡目に追っ掛ける。
ドラ
勝負あったの感だが、3巡後に大崎がなんとを持ってきてしまう。ウラは乗らずに7700。
大崎はポイントでリードしているのだからヤミテンが正解だったのだろうか?
いや、それはない。
それは最終戦の打ち方だ。まだ5回戦を残すここでは当然のリーチだろう。
失敗はリーチ後にを持ってきたという不可抗力だけ。
11回戦終了後に、大崎も
「あの局、あの形は何度やってもリーチ!」と振り返っている。
昨年までの彼女なら、このセリフを言えただろうか?
水崎連チャンの1本場、疑問手が出る。
イーシャンテンの9巡目、
解説席で「カン、カン!」「行けー!四暗刻」の絶叫が飛ぶ中、
水崎が迷った末に摘んだのはだった。そしてをツモってテンパイとなった11巡目、
眞崎「それでヤミテンとか、意味わかんな〜い!」
おそらく、この局に関しては水崎もいろいろ言われただろう。
自分でもなぜあのように打ったのか疑問視しているに違いない。生放映の緊張がなせる業か?
ともかく、福山のリーチも手伝って、結果的にこの半荘トップ目だった豊後からのデバサイでトップを不動にした水崎。
次局は大崎がリーヅモオモウラで水崎の親を流すとともに、2着に浮上。
その後は大きなアガリが出ずにこのままの並びで進み、オーラスも水崎がクイタンで締めた。
11回戦結果 水崎+58.9 大崎+13.1 豊後△21.7 福山△50.3
11回戦終了時トータル
大崎+157.2
福山+69.3
水崎△29.8
豊後△200.7
大崎は2着だったが、当面の敵・福山がラスだったので文句なしの展開。
逆に福山からすれば、12回戦にこの逆をやらねば独走を許してしまうことになる。
もちろんトップ・ラスが一番望ましい。
そして12回戦、山場は東パツにいきなり訪れた。
豊後が軽快に、をポンして5巡目にテンパイ。
カンチャン待ちだが、このはヤマに3枚の絶テン。
1枚浮かせている福山はこの時点でまだ3シャンテンだ。
しかし、このがどこにも顔を見せないまま親の大崎が追いつき、を暗カンしてリンシャンをツモ切りリーチ。
ドラとのシャンポン、なんと4枚生きである。
直後にそのを引き入れてイーシャンテンになった福山だが、大崎のリーチがポツリのを打ちづらくして豊後のアガりを消す。
次巡そのにをくっつけた福山はのトイツ落とし。そして次巡を入れてテンパイする。
長考の末、福山の下した決断はリーチだった。
は残り2枚、一番分の悪いところだったが、後方一気のテンパイ、驚愕の一発ツモ・ウラ2枚、
解説席大絶叫(おそらく視聴者のほとんども)のハネ満に化けてしまう。
「トイツ落としまでは弱気だった。テンパイしたらどうするかは決めかねていた。
だが、愚形とはいえテンパイなら勝ち目はある。だからリーチ」これが福山が長考の間に巡り巡っていた思考だろう。
だが、普通に考えれば、これがでツモるパターンは次の2通りだと思う。
(1)イーシャンテン取りで強気にを勝負し、テンパイで切りの待ちリャンメンリーチ。
(2)のトイツ落としで弱気になった以上リーチせず、従って500・1000のツモ。
しかし、福山はどちらでもない3番目の方法でハネ満をものにした。
これは想像以上に、相手3人の心を折ったようだ。
仮に(1)の形でのハネ満和了なら、リャンメンでの一発ツモ。これほどの衝撃を与えられただろうか。
親ッカブリでいきなりラスに落とされた大崎は南場の親で白・チャンタ・ドラ1
ロン ポン ポン ドラ
5800を福山から打ち取るが、1本場で、
ドラ 裏ドラ
この福山のメンピン・ドラ1リーチにマンズのメンホンイーシャンテンからツモ切りで3900は4200を打ち返してしまう。
そしてラス前、
ドラ
親の豊後の7巡目リーチに、大崎はドラ暗刻のイーシャンテンからをツモ切りで一発放銃。
ここまでノー和了でラス目だった豊後への7700献上でラスに落とされる。
これは大崎以外の3人にとっては願ってもない展開なのだ。
なおかつ、自分がトップが望みだが……。
特にトータルポイントが一番離されている豊後はその感を強くしていたに違いない。
連チャンの1本場、
ドラ
9巡目に渾身の高目三色ピンフリーチを打つが、5巡後に持ってきたで、すでにポンのテンパイを入れていた福山に放銃してしまう。
それでもあきらめない豊後。
最後に賭けた勝負がオーラスのリーチ後見逃しである。
持ち点は福山40300点、豊後25100点、その差15200点。
ハネツモ以上、満直未満だから、ヤミテンで福山からのデバサイのみアガる――
これがセオリーだが、豊後はツモの勢いに押されるように「リーチ」と言った。
一発でツモって裏が乗れば倍満なのだ(実際に裏は乗っていた)。
結果、9巡目に出たを見逃し。
大崎を3着にすくい上げてしまう水崎からの出アガリ拒否はリーチ宣言時に織り込み済みだったはずである。
対して、を打った水崎、これは暴牌ではない。
「豊後さん、私からはアガらないでしょ」とわかった上での打牌である。
その上でのラス親、豊後のリーチがあるなしに拘らず手順はまったく変わらないはずである。
「もし、豊後がヤミテンにしていたら?」
福山の14巡目のツモ切りを見て、
「あ〜あ」と思った方も多かったと思う。
しかし、それはかなわぬ願いであった。
もう一度、牌譜をじっくり見てもらいたい。
福山は11巡目にリーチに通ってないを掴んで最初のテンパイを外している。
リーチがなければの暗刻落としなどせず、
ドラ
この形のまま13巡目のでツモっていたはずだ。
ただし、最初のイーシャンテンが4巡目で、
ドラ
ここで三色も見てを打っている。
豊後がヤミなら、現物の落としなどしないだろうから、6、7巡目のが手にとどまらず、9巡目のがツモ切りされて放銃?
――いや、水崎は先に述べた理由で打牌順序が変わらないので、福山は同巡で助かるのだ。
しかし、その場合はのメンツが拾えず、のカンチャンが埋まっていない。
ドラ
このイーシャンテンのまま14巡目のでの放銃があったのでは?
――それもおそらくない。
なぜなら、豊後のリーチがなければ、大崎が、
ドラ
この形になる12巡目にを切るだろう。
すると、福山はチーテン。豊後は喰い流れたで即放銃となるのだ。
つまり、この局は豊後ひとりがどう頑張っても、福山からトップを奪うことはできなかったのである。
ミラクルなハネ満で始まった福山のショーはミラクルな局で締め括られた。
12回戦結果 福山+62.3 豊後+3.1 水崎△19.5 大崎△45.9 そして、このシリーズ何度目だろうか。またも首位が入れ替わった。
12回戦終了時トータル
福山+131.6
大崎+111.3
水崎△49.3
豊後△197.6
13回戦、座順は福山-大崎-水崎-豊後。
東1局は水崎が待ちのリーチを打つが、これにスジの暗刻落としを挟んで丁寧に回っていた豊後が終盤に追いつき、
ヤミでタンピンの2000点を水崎からアガる。
次局は豊後のマンズホンイツと水崎のピンズホンイツがぶつかり合い、豊後が勝って西・ホンイツ・ドラ1の満貫を水崎から。
ここに来てやっとアガりが出だした豊後だが、どうにも取りたい2人から、点棒を奪うことができない。
そして、流局を挟んだ東3局1本場に、大崎に決定打が出る。
福山はなぜ水崎、豊後が切った13巡目にを合わせ打たなかったのだろうか?
豊後、大崎の現物で水崎にはスジ、かつ暗刻にしているワンチャンスのなど後回しにしてもいい。
水崎、豊後がソーズを高くしているので、ソーズとドラの、生牌のは打てないが、
という完全安全牌(放銃時にツモったが4枚目、かつは2枚出ている)が2枚手にあるのだ。
を合わせ打ち、次巡、あとはと捨てながら3巡の間に安全牌を1枚引けば、
終局17巡目まで打ちつなげるのだから、明らかなボーンヘッドと言わざるを得ない。
立て続けに打たれるにたまらず大崎がチーテンを取ってアガれるかもしれないが、その場合は2000点。決定打にはならない。
これが効いて、福山はノー和了で終わる。大崎、トップ・ラスの仕返しである。
13回戦結果 大崎+58.2 豊後+13.4 水崎△19.1 福山△52.5
13回戦終了時トータル
大崎+169.5
福山+79.1
水崎△68.4
豊後△169.5
またも大崎が首位の座を奪い返したが、いままでと違うところがある。
それはもう2回戦しか残されていないということ。
福山はトップ・ラスで再び並ぶが、それをやった上でなお、残る1回を大崎より下の着順となることはできない。
水崎は4万点以上差をつけたトップ・ラスを2回。その間、福山を3着に縛り付けておかなければならない。
豊後にいたっては……。
常識的に逆転優勝の可能性を残すのは福山だが、結果を先に述べると、福山にその力は残されていなかった。
14回戦、座順は、福山-水崎-豊後-大崎。
起家を引いた福山だったが、大崎のリーチの前にテンパイを組むこともできず、みすみす親を流してしまう(大崎、水崎の2人テンパイ)。
次局は大崎が水崎の親リーをかいくぐって中・ドラ3の満貫をツモ。
ラスさえ引かなければゴールが確実に近づく大崎にとっては十分な加点である。
東3局は福山リーチで1人テンパイ。
東4局1本場は2軒リーチで、福山が水崎から出アガり。
リーのみだが。積み棒とリー棒で3600の収入。これで27000持ちと、トップ目大崎まで7800差の2着につけるが……。
南1局、水崎がリーチ・ツモ・發・ドラ3・ハイテイのハネ満ツモアガり。
この親ッカブリは、福山には相当こたえたようだ。
南2局、水崎の500オールツモ後の1本場、福山に引導を渡すアガりが大崎に出る。
じっくり手を作った大技の純チャン。他家の進行が遅いのも手伝って、唯一ドラのを掴まなかった大崎が福山からのデバサイを取る。
これで豊後と僅差のラス目に落とされた福山、ラス前に豊後のリーチヅモ・ドラ3の4000オールでひとり大きく離されてしまう。
そしてオーラス。
持ち点は大崎32800、水崎29600、豊後26600、福山11000。
福山は倍満をツモればトップになり、親ッカブリの大崎を3着に落とすことまでできる。
役満ツモなら大崎をラスにまで。
しかし、そうしたウルトラCを別にすれば、3900のヤミテンを入れて大崎から直って2着に引きずり下ろす、6400なら3着にまで落とせる。
そうでなければ、水崎や豊後のアガりをアシストする。
差し込んでも福山が失うのは素点だけだが、大崎はトップと2着の順位点の差40ポイントを失うことになるのだから。
しかし、福山はもっともやってはいけないことをやってしまった。
平凡なピンフリーチ・ツモ。これでは2700点の素点だけの意味しかない。
それだけではない。
リーチによってドラが打ち辛くなり、水崎と豊後が前に出ずらくなるというマイナス要因をも引き起こしている。
この局、福山がどう打つべきだったかと問われれば、9巡目にテンパイ取らずの打か。
2巡後のツモでこのテンパイ。
ドラ
無論ヤミテン。アガるのは大崎がを放ったときだけ。
ツモッたらのトイツ落としでテンパイ維持である。
するとどうなるか?
以下は仮説だが――
大崎がまっすぐ行っていると、14巡目のツモで、
ドラ
となる。ここでのテンパイ打牌でを選べば、福山の仕事成功となる。
あるいは唯一テンパイ料で順位入れ替わりの可能性がある水崎が、
福山のツモ切る13巡目のをチーしてを切る覚悟をすれば、次巡を引き入れ、
チー ドラ
のテンパイが組めていた。
大崎14巡目のは喰い流れるのでテンパイは入らない。
17、18巡目のツモは不明なのでこの後大崎がテンパイする可能性はあるが、
いずれにせよ、大崎がテンパイ表明するなら福山もテンパイ宣言してもう1局。
大崎がノーテンなら福山も伏せて水崎ひとりにテンパイ料を集めてトップを入れ替えるという道があっただけに、
淡白に終わったオーラスが悔やまれる。
14回戦結果 大崎+51.5 水崎+8.9 豊後△14.1 福山△46.3
最終戦を迎えてのポイントは、
14回戦終了時トータル
大崎+221.0
福山+32.8
水崎△59.5
豊後△198.3
2番手につけている福山でさえ約11万点差のトップ・ラスという苦しい条件が突きつけられていた。
その15回戦、起家を引いた大崎が、
ドラ
この4メンチャンリーチをでツモ。
裏ドラの6000オール。もはや、この15回戦は大崎のウイニング・ランでしかなかった。
それもじっくりと時間を掛けた……。
実際、得点推移表を見ると、大崎はこの後点棒は出っ放しである。
放銃はない。
東場のうちにハネ満2回、親満2回とアガった水崎の猛攻の前に当面の敵・福山がハコを割り、無理をする必要がなくなったからだ。
いや、福山は当面の敵だった、と過去形にすべきだろう。
この時点でトータル2番手は水崎になっていたからだ。しかも、水崎は最後まで粘れるラス親である。
水崎はオーラスも2本積んで、この時点で10万点の大台を超えるトップとなるが、それでもまだ道なかば。
大崎が2着目のままでは、まだ14万点稼がねばならない。
奇跡が起こるとしたら、クリスマス・イブから「イブ」が取れるまで連チャンを続けられたときだろう。
しかし、女王はイブのうちに決まった。
3本場、中張牌の多い配牌から仕掛けのゴーサインを出した大崎がしっかりとタンヤオをアガって、
女流雀王戦史上3人目の連覇を成し遂げた。
最終戦から、2点牌譜を紹介しよう。
まず、オーラスの豊後に注目してもらいたい。
綱川「か、悲しい。せめて道中でこの手が入っていれば……」
と、解説陣がため息をつき続けた手である。
ダブル役満まで狙える手だが、たとえそこまで育っても、豊後にはすでに優勝条件はなかった。
淡々と、普段の豊後からは信じられない冷静さで押し寄せる字牌を局面に影響を与えない安牌として使い続けた。
結果、捨て牌17枚のうち12枚字牌が並ぶという牌譜を残した。
辛かっただろうと思う。
いつも強気の発言ばかりで打ち筋も強気だが、
これほど自分自身の手を客観的に、そして俯瞰的に見ることを強いられたのは初めてだっただろう。
今回の決定戦はまったくと言っていいほど見せ場はなかったが、
精神的にもっとも成長したのは豊後だったと思う。
この牌譜がそれを証明している。
同じくオーラス2本場である。
福山の優勝条件は大崎からのトリプル役満直撃まで難易度が上がっており、国士無双では決着権を持たない。
本来なら大崎が仕掛けた時点で身構える。そうでなくても水崎からのリーチで勝負を譲るべきだろう。
しかし、リャンシャンテンからのゴリ押しでテンパイを入れた以上はリーチも致し方なしか。
もしも大崎がを持ってくれば、最終戦最終局に役満を放銃して優勝という希譜を残せたのだが、
さすがの大崎もそこまでのスター性は持ち合わせていなかったようだ。
水崎は、最後の猛攻で可能性を感じさせてくれた。
手が入るのがもう少し早ければ、福山以上に大崎を苦しめる存在になっていたと思う。
来期に期待したい。
最後に大崎初音。
デビュー以前から知る者にとっては3年間で、正直これほどの成長を遂げるとは思わなかった。
第9期に勝ったときはフロックの評がつきまとい、女流雀王の名前が重くのしかかっていたようである。
タイトルを取った3ヶ月後、勤めていた雀荘を辞めた。
以後、麻雀教室の講師を中心にする生活にシフトした。
それだけでは収入が減るので、週末は雀荘のゲストで稼ぐ。
女流プロとして艶やかな衣装を纏いながらも、初心者とともに麻雀に真摯に向き合うしっかりとした裏生地をも身に着ける――
それが1年ぶりに決定戦にあらわれた大崎の姿だった。
教わるほうよりも教えるほうが学ぶことが多いものである。
彼女が講師として何を考え、何を得ているかを知りたければ、
「近代麻雀モバイル」で連載されている「麻雀人口増加計画」を読んでもらいたい。
決定戦での大崎の戦いぶりは内容もさることながら、フォーム、対局マナー、すべてにおいて高みをめざして打っていた。
それは観戦に来た方々が一様に感じていたことだと思う。
女流プロとしての理想形に向かってしっかりと歩いている彼女にいまさら呈す苦言などないが、
あるとすれば――
「飲み過ぎに注意しましょう!」
(文・五十嵐 毅)
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