【ポイント成績】
順位 |
名前 |
TOTAL |
1日目 |
6回戦 |
7回戦 |
8回戦 |
9回戦 |
10回戦 |
1 |
大崎 初音 |
144.1
|
61.8
|
66.2
|
-14.4
|
60.8
|
9.3
|
-39.6 |
2 |
福山 理子 |
119.6 |
74.0
|
-18.7 |
62.5 |
-54.6
|
52.6
|
3.8 |
3 |
水崎 ともみ |
-88.7
|
6.4
|
-55.0
|
15.0
|
8.9
|
-45.3
|
-18.7 |
4 |
豊後 葵 |
-179.0 |
-145.2
|
7.5 |
-63.1 |
-15.1
|
-16.6
|
53.5 |
【2日目観戦記】
|1日目観戦記|2日目観戦記|3日目観戦記|
当時協会2年目であった新鋭大崎初音が女流雀王を戴冠したのは、ちょうど1年前のこと。
ベテランの崎見百合、実力者の朝倉ゆかり・杉村えみを抑えての優勝は、それなりに注目を浴びた。
容姿が端麗で、明るく華やかなキャラクターの大崎。
この1年間で、麻雀荘ゲストの依頼が増えた。時には大会のシード枠も辞退して、北へ南へ奔走した。
夕暮れ時、ゲストが終わって電車に乗ると大崎はいつも、つま先をじっと見つめた。
――私なんかが女流雀王を名乗っても良いのだろうか。
頂点に立った者がそんな事を考えてはいけないことは、わかっている。
ただ、自分がまだまだ未完成であることを、1番知っているのは自分だ。
少しでも実戦経験を積むために、スケジュール帳はいつも麻雀の予定で一杯にした。
しかしこの1年間、様々な土地でたくさんの人に出会った。
「大丈夫、大崎は強いよ。自信を持って」
そう、言ってくれる人もいた。
自分が強いとか弱いとかよりも、そうして温かい言葉を掛けてくれるその気持ちが、とても嬉しかった。
いつまでも『女流雀王』の肩書が持つプレッシャーに負けている場合じゃない。
くじけそうになる度に、方々で出会ったファンの方と、自身が担当している麻雀教室の生徒さんの顔が浮んだ。
自分が色んな人の期待を背負っていることも、この一年間で感じた。
そう
「私なんかが…」いつまでもそんな事を考えていたら、厳しいリーグ戦を勝ち上がってきた3人に足元を掬われてしまう。
豊後葵・水崎ともみ・福山理子にしたって、日常を麻雀の傍に置く、紛れもない強者である。
あれから1年、自分にできる事は全てこなしてきた。
気持ちで負けたくないなんて、誰も一緒。
私は、私にできることをするしかない。
生徒さんにいつも教えているリーチが打てるように。
第10期女流雀王決定戦2日目。
大崎は、静かにサイコロを振った。
★6回戦★ (福山→大崎→水崎→豊後)
初日を終えて、大崎、福山、水崎が1トップ差以内でほぼ並んでいる。
豊後が多少出遅れた形だが、2日目の出来次第ではまだわからない。
東1局、最初の和了は初日トータルトップの福山だった。
11巡目に大崎のを叩き、ドラを離す。
11巡目 福山(東家)
ポン→打 ドラ
大崎、水崎がかわし手を入れるが、単騎をツモって、1000オール。
東1局1本場
さっそくの追撃は大崎。
11巡目 大崎(南家)
ドラ
大崎は、対局中に気を付けていることがたくさんある。
良く通る発声。嫌みの無い和了の宣言。
丁寧な点棒の受け渡し。
その全ての動きが綺麗で、無駄が無い。
麻雀教室の先生ということもあるが、普段から意識していないとこうはできない。
この局も、通る声でリーチを宣言。
数巡後に、ドラ表示牌のをツモると、裏ドラにもがいて2000・4000となった。
初日1位2位の福山・大崎が、2日目も幸先の良いスタートを切った。
東2局
福山の配牌が軽い。
1巡目 福山(北家)
ドラ
大崎が3巡目にダブを仕掛けるが、7巡目にあっさりと福山のリーチがかかる。
7巡目 福山(北家)
ドラ
役牌からの切出し、カンチャンを内側から外してのリーチ。
他家から見れば、タンヤオが絡む良形待ちが本線だろう。
しかし他家も安全牌が少なく、このリーチに誰もオリない。
リャンメン待ちでなければ福山も心許無かったに違いない。
10巡目、前巡に無スジを押した大崎の手が止まった。
10巡目 大崎(東家)
ポン ツモ ドラ
ピンズは打ちづらい。だが、ダブ東ドラドラを簡単にオリたくもない。
ピンズの形に柔軟性もあることから打とし、通りそうなソーズを並べて様子を窺う。
この辺りの対応が、1年前の大崎とは別人であった。
後手を引いた時の手順が、より丁寧になっている。
福山のが先にいるか、大崎が回りきって12000点を和了るか。
11巡目にを押した水崎にもこっそりタンヤオのテンパイが入っている。
と突然、全員に無筋のが横になって、場に躍り出た。
「リーチ」
豊後だ。
13巡目 豊後(西家)
ドラ
福山のリーチの時点で愚形含みのリャンシャンテンだった豊後だが、終盤ドラドラで追いついた。
決して良い形とは言えないが、初日1人離された豊後は、少ない材料から4メンツ1雀頭を掻き集めて得点を叩こうと必死にもがいていた。
お願い、1枚で良いから山にいて。
しかしそんな豊後の願いも空しく、この時点で待ちのは全て大崎が抱えていて、純カラ。
直後に福山がをツモり、1000・2000の和了となった。
ちなみに余談だがこの局の福山は、配牌とツモを合わせた25枚で、なんと6面子1雀頭1リャンメンができていた。
もちろんそれだけで「福山は好調」などと言うつもりはないが。
東3局
これまで手の入らなかった豊後だが、久しぶりに打点・スピードが見込める配牌をもらった。
1巡目 豊後(南家)
ドラ
この手を8巡目にリーチ、一発ツモ。
8巡目 豊後(南家)
リーチ一発ツモ ドラ 裏ドラ
2000・4000。
昨年の女流リーグは、あと一歩のところで決定戦を逃した豊後。
今期はトップを直走り、昨年の雪辱を晴らして見事決定戦の椅子を勝ち取った。
しかし、トータルポイントが書かれているホワイトボードには、初日が終わった今、豊後1人だけ▲がついている。
苦労した2年間を、たった1日の不出来で終わらす訳にはいかない。
いつもニコニコ顔の豊後だが、どこかで逆転のきっかけを探そうと真剣な表情で摸打を繰り返していた。
南2局
各家の点棒は以下の通り。
大崎(東家)34700
水崎(南家)13300
豊後(西家)24700
福山(北家)27300
2着目の福山、親番が残っている水崎、豊後全員にチャンスがある。
親番を迎えている大崎としては、ここで半荘の趨勢を決めたい。
4巡目に大崎が、ドラのをツモったところで少考する。
4巡目 大崎(東家)
ドラ ツモ
手拍子でを切る人もいると思うが、大崎はそれをしない。
打。
ドラドラの手を確実に和了りきる為に、4メンツ目のくっつき候補である全てを残し、目一杯に構えた。
7巡目にをツモって打。9巡目にをツモってリーチを宣言する。
9巡目 大崎(東家)
ドラ
4巡目の時点でを離すと、このテンパイは組めていない。
各家とも早い段階でソーズの上が切られており、カンはそこまで悪くない。
事実、リーチをかけた時点で山に3枚残っている。
しかし、直後に豊後がを横にしてリーチ棒を置いた。
ドラ
女流雀王2連覇を狙う大崎。初日不調だったものの、粘り強く何度もカウンターを狙う豊後。
協会女流プロの中でも、元気印を代表する大崎と豊後のリーチが、対面同士で火花を散らす。
行方を見守る福山と水崎。力が籠る大崎と豊後。
2巡後、静かにが大崎の手元に置かれた。
ツモ ドラ 裏ドラ
この4000オールが決め手となり、この半荘は大崎がトップを取った。
6回戦スコア 大崎+66.2 豊後+7.0 福山▲18.7 水崎▲54.5
(6回戦終了時)
大崎 +128.0
福山 +55.3
水崎 ▲48.1
豊後 ▲138.2
★7回戦★ (豊後→水崎→大崎→福山)
東1局は、水崎が豊後からホンイツ対々の8000点を和了。
続く東2局には、大崎がをポンしてドラドラの1000・2000をツモ和了った。
東3局
大崎の6巡目、チートイツのイーシャンテン選択。
6巡目 大崎(東家)
ツモ ドラ
下家の福山が自風のを仕掛けており、ドラ側のは下ろしたくない。打とする。
9巡目にを重ねて9600点テンパイ。
これまで絞ってきたを切ると、福山がカンチャンでチーして打とした。
ここから大崎は、福山の現物の、水崎が通したばかりの、自身の捨牌から考えて強いと、臨機応変に単騎を変えていく。
トータル2着目の福山をこの9600点で刺せれば、この後が少し楽になる。
ただ、つかんだ水崎は不運としか言いようがない。
12巡目 大崎(東家)
ロン ドラ
ちなみに水崎は、3巡目のこの形から全く動かず、7巡目以外ツモ切りを繰り返していた。
大崎の奇妙な手出しを見ていればチートイツには気付けるかもしれないが、での放銃を責める事はできないだろう。
東4局1本場
水崎の8巡目。
8巡目 水崎(西家)
ドラ
何を切る。巷でよく見る牌姿ではある。
ドラ頭固定の打か、メンツ優先の打か。ソーズの下は良さそうだ。
ちなみに、3巡目にを切っている。
水崎の選択は打。現状のテンパイ枚数は一番多いが、ソーズの単騎になった時はありがたくない。
と、思っている側からをツモり、打でとりあえず仮テン。直後に引いてきたを手元に置き、打でリーチをかけた。
10巡目 水崎(西家)
ドラ
これに対し、豊後と大崎がそれぞれかわし手を入れる。
豊後(南家)
ドラ
大崎(北家)
ドラ
結果は、15巡目にを持ってきた大崎が、空切って豊後に放銃。
大崎は、豊後が押していることが明白だったので降りることもできたが、手役が絡まなければで豊後に打っても大したことはないだろう。
勝負手ならラス目の豊後はぶつけてくるはずだ。そう踏んだのかもしれない。
南1局
起家マークを裏返して、僅か20秒程の出来事。
2巡目 水崎(南家)
(リーチ)
南家の水崎がをノータイムで曲げた。
2巡目 水崎(南家)
ドラ
ドラ入りチートイツ。ダブだが、直前に親の豊後が切っており、比較的警戒も薄い。
良い単騎を探して派手になっていく河を見つめるより、さっさとリーチを掛けて正解だと思う。
押している豊後、福山は止まらないだろうし、オリている大崎も安牌に窮したら出るだろう。
山にあるを皆で掘り当てるゲームだった。
しかし水崎が山と戦っているうちに、親の豊後が追いついてリーチとなり、さらには福山までリーチで割って入ってきた。
が、オリている大崎に配られていないだろうか。
うっかり福山に重なっていないだろうか。
しても仕方のない心配だが、水崎の頭から不安が消えない。
結局、豊後のつかんだに福山の手が開かれた。
ドラ 裏ドラ
メンタンドラの5200。放銃した豊後以上に、陰で唇を噛む水崎。
ツモれば倍満だった水崎のチートイツだが、は全て山の中であった。
しかしここから、水崎が猛攻を見せる。
水崎は、真の麻雀好きだ。朝も夜も麻雀荘で働き、セットに参加しては反省点を周りに聞く。
牌捌きは長年メンバー業に身を窶している者のそれであり、
「打てる女流」として周囲の評価も高い。
南2局の親番で、1人テンパイ、4000オール、2000オールと、先程までの不遇が嘘のように一気にトップに躍り出た。
オーラスを迎える。
南4局
福山(東家)30500
豊後(南家)3800
水崎(西家)39000
大崎(北家)26700
水崎がトップ目。トータルポイントを考えると、できれば大崎には3着のままでいてもらいたい。
配牌を開ける水崎。
しかし、そんなちっぽけな考えは、この後、親番福山の手により3分で覆されることとなる。
福山は、このメンバーの中では一番のベテランだ。
普段はタレント活動を行っており、大舞台やカメラにも慣れている。
しかし福山は、それを偉そうに鼻にかけたりはしない。
なぜなら、自分の麻雀がまだまだ未熟である事を知っているからだ。
この局は、そうした福山の未熟さとか、麻雀感とか、そういったもの全て含めて生まれた奇跡の1局だと思う。
ここからは、全てタラレバであることを承知の上で述べる。
少し麻雀に自信のある人は、試しに下記の全体牌譜から福山の配牌、ツモ、場況で打ってみてほしい。
福山はこの手を4000オールに仕上げた。
ちなみに筆者は、13巡目で下記のリーチがかかる。
ドラ
もしくはこう。
ドラ
しかしそうすると、既に追いついている水崎にで放銃してしまうかもしれない。
さらに、7は山に2枚しかいない為、和了れていたかどうかも怪しい。
大きなポイントは、9巡目のツモだと思う。大体の人はかに手がかかるのではないだろうか。
福山は、対局前に語っていた。
「麻雀は自分らしさが大事だよね。私は楽しんでやるよ」
そう、本当に楽しむようにが福山の手から放たれた。
9巡目 福山(東家)
ツモ→打 ドラ
ここからリャンメンを外すと、完全に頼みの手になる。
字牌は、ダメ元ホンイツの豊後が抱えているかもしれない。
また、を先に引かなければ、最終形も弱い。
そうした一般的な考えの遥か向こう側で、即座にが福山の元に吸い込まれた。
「リーチ」
牌譜用紙には小さく「天才!」と書かれている。
この捨牌層からはわからないが、は4枚生きている。
南2局から完璧にゲームを回してきた水崎の顔が曇るのに、そう時間はかからなかった。
13巡目 福山(東家)
リーチツモ ドラ
7回戦スコア 福山+62.5 水崎+15.0 大崎▲14.4 豊後▲63.1
(7回戦終了時)
福山 +117.8
大崎 +113.6
水崎 ▲33.1
豊後 ▲201.3
★8回戦★ (大崎→豊後→福山→水崎)
大崎と福山が二人で拮抗しており、水崎がその隙を窺っている。
豊後はここでトップが取れないと厳しい。
東1局は福山の2000・4000でスタート。
福山の手が、相変わらず落ちない。
東2局、ここまで殆ど手が入らず我慢を強いられてきた豊後に、ようやくチャンス手が入った。
1巡目 豊後(東家)
ドラ
配牌からドラトイツ、打。
次巡を引いたところでを放ち、ドラを固定した。
しかし5巡目に福山が豊後のを叩き、水崎ものポンテンを入れる。
自分の捨てた牌が次々と福山・水崎に吸収される中で、自分の欲しい牌だけ場に出てこない。
大崎もイーシャンテンで背後に迫っている。
初日から置いてけぼりにされた豊後にとって、苦しい展開が続く。
手が入らない。勝負手は放銃。そして良い配牌をもらった時はそう、横移動である。
8巡目 水崎(西家)
ポン ロン ドラ
既に3900点テンパイを入れている福山の放銃。
1000点を受け取る水崎の裏で豊後が苦しんでいることなど、知る由もない。
東4局1本場
大崎の配牌。
ドラ
萬子の形がまだ頼りないが、ホンイツが一番早そう。
3巡目にを重ね、5、6巡目にを立続けに仕掛ける。
その後、辺を引き入れてテンパイ。しかし溢れたと手出しのを見て、誰もマンズを打たない。
流局か、と思われた直前、ハイテイにがいて3000・6000。
19巡目 大崎(南家)
ポン ポン ツモ ドラ
南1局
豊後の手に、ピンズが集まる。
9巡目 豊後(南家)
ドラ
しかし、あと一歩のところで親の大崎からリーチの声。
大崎捨牌
(リーチ)
と以外全て手出しのリーチ。やや奇妙な捨て牌だが、途中にの対子落としを挟んでいる為、チートイツも無い。
一発目に引かされたに息を止める豊後。
生牌だが、とりあえずを切る。
これで手が進んだら、また打ってしまうかもしれない。
これまでの放銃パターンが豊後の頭をよぎる。
現物は4枚あるし、オリるのには困らない。
大崎の手は実際にはカン待ち足止めリーチなのだが、得点を持った大崎のリーチは脅威に映る。
しかし次巡豊後の手から、ほぼノータイムでが放たれた。
考えるより先に、体が押す。
これからトップとの300ポイント差を詰めるのに、無スジの1つや2つでオリてなんかいられない。
残り7回戦、全部トップ取ればいいんでしょう。
豊後は本気で、そう考えていた。
豊後がようやくテンパイしたのは15巡目。
巡目も深いのだが、ここでも無スジのを切り飛ばしあくまで打点を追及する。
脇2人からはもう出ないだろう。予想外の反撃に驚いたのは大崎かもしれない。
しかし豊後がテンパイした直後、オリている北家水崎の手に最後のが入った。
大崎のリーチも王牌に殺されそのまま流局。
1牌ずれてを親の大崎がつかんでいたら。
そう考えても仕方が無いが、一生懸命押した豊後の手は、テンパイ料1500点となって卓内に吸い込まれた。
南4局
各家の点棒は以下の通り。
水崎(東家)28900
大崎(南家)40800
豊後(西家)16900
福山(北家)13400
前局に福山から8,000点を和了った水崎が、大崎の背後まで迫っている。
水崎がここでトップを取ると、最終日が面白くなる。
しかし、大崎の配牌が良い。
1巡目 大崎(南家)
ドラ
5巡目にを入れ、手広いイーシャンテンとなる。
その直後、水崎もピンフのイーシャンテンとなった。
6巡目 水崎(東家)
ドラ
今水崎にリーチが入れば大崎も安牌が少なく、面白くなる。
しかしこのが入らないまま、3着目の豊後のリーチが背後から襲いかかる。
10巡目 豊後(西家)
ドラ
ツモると倍満まである豊後の手。
ここにラス目の福山がで飛びこんで8000点。
トップは逃したが、ほっと胸を撫で下ろす水崎。
福山がラスで終了し、大崎にとっては理想の展開となった。
8回戦スコア 大崎+60.8 水崎+8.9 豊後▲15.1 福山▲54.6
(8回戦終了時)
大崎 +174.4
福山 +63.2
水崎 ▲24.2
豊後 ▲216.4
★9回戦★ (福山→水崎→豊後→大崎)
そろそろ大崎を止めないとまずい。
ここで大崎がトップを取ると最終日を待たずしてほぼ優勝が決まってしまう。
大きな動きのない東3局。
水崎がドラ暗刻のリーチを放つ。
7巡目 水崎(北家)
ドラ
が3枚切れなのがややネックか。
その後親の豊後から追いかけリーチが入るも、をツモって2000・4000。
南2局1本場
点棒状況は平たく、28900点の大崎がトップ目。
その大崎の配牌。
1巡目 大崎(西家)
ドラ
ホンイツが目の前に見えている。
しかし2巡目にをツモったところで、大崎は、落ち着いて打とした。
トータルポイントを考えると、確かに今必要なのは混一ではない。
6巡目に単騎をツモって700・1300
6巡目 大崎(西家)
ポン ツモ ドラ
南4局
各家の点棒は以下の通り。
大崎(東家)31900
福山(南家)30000
水崎(西家)14700
豊後(北家)23400
福山は2000点出和了か、400・700のツモ和了で良い。
水崎は1人離れているが、大崎がトップを取るくらいならまだ福山にトップを取ってもらった方が良いだろう。
豊後は細かい着順操作より、まずは自身のトップが優先される。
僅差で競っている、大崎と福山の配牌。
1巡目 大崎(東家)
ドラ
1巡目 福山(南家)
ドラ
共に悪くはない。
大崎は流局して伏せる事もできず、親番であるため和了もある程度の打点を備えている事が望ましい。
福山はタンヤオかピンフを絡める必要がある。もちろんリーチ棒が出れば問題ない。
先に福山が手を纏め、10巡目にリーチ。
福山捨牌
(リーチ)
この時点で、大崎はまだイーシャンテン。
11巡目 大崎(東家)
ドラ
次巡を持ってきて打。
福山に満貫を打っても2着にはなる。
大崎はテンパイしないわけにもいかないため、次々と無スジを押す。
そして15巡目、ついに大崎にもテンパイが入った。
15巡目 大崎(東家)
ツモ ドラ
ここで大長考に入る大崎。を打ちたいが、捨牌のが光り過ぎている。
もう少し巡目が早ければ、通りそうなソーズを打ってテンパイを組み直すのだが、この巡目ではもうテンパイは崩したくない。
大崎にしては珍しい程の長考。
大崎と福山の間で見ているギャラリーには、なんとなく結果がわかる。
大崎を応援しているファンは、を打たないで、と張詰めた空気で表現するが、一生懸命顎に手を当てている大崎に伝わるはずもない。
「は物凄く怖い。でもテンパイは取りたい。
ただ当たっても当たらなくても、これを押せなくちゃ優勝できない!そう思ったんです」
後に大崎は、そう語ってくれた。
自分が女流雀王であることに、どこかで自信を持てなかった昨年の今頃。
1年前の自分なら、深く考えずを切って後悔していたかもしれない。
でも今は違う。
1年間、自分にできることは全てしてきた。
これが私の一打だ。
女流雀王の一打だ。
そう自信を持って言える。
永遠とも思える長考の末、大崎の出した答に、福山の手が開かれた。
リーチロン ドラ 裏ドラ
願ってもないところから出て、安堵の表情を浮かべる福山。
しかし打った大崎には、不思議と焦りや後悔の色は無かった。
9回戦スコア 福山+52.6 大崎+9.3 豊後▲16.6 水崎▲45.3
(9回戦終了時)
大崎 +183.7
福山 +115.8
水崎 ▲69.5
豊後 ▲233.0
★10回戦★ (水崎→豊後→大崎→福山)
この半荘の結果次第で、最終日の各人の戦い方が変わってくる。
豊後と水崎は、自身のトップと大崎の着順落としを両方狙っていきたい。
東1局は、豊後のピンフ一発ツモでスタート。
東2局は福山がタンピンドラをダマに構え、水崎から3900。
東3局
水崎の配牌にドラが暗刻。
1巡目 水崎(東家)
ドラ
役牌もセットで付いており、スピードも申し分ない。
1巡目の大崎のを叩き、6巡目には加カンする。
できれば大崎、もしくは福山から当たりたい。しかしどうしても、つかむのは豊後。
まだ警戒薄であった大崎、福山は、胸を撫で下ろしたに違いない。
6巡目 水崎(西家)
追カン ロン ドラ カンドラ
南2局2本場
この日一番の豊後の配牌。
1巡目 豊後(東家)
ドラ
6巡目に12000点のテンパイ。
6巡目 豊後(東家)
ドラ
できればを引きたい。ぽろっと大崎が出せば、言う事はない。
その後、9巡目に引いてきた1枚切れに受け変えてリーチ。
13巡目に、福山がトイツ落としでつかまって12000。
確かに豊後の捨牌はチートイツには見えないが、自分の手から4枚見えて絶対当たらない打の方が良かったのではないだろうか。
福山は前半荘から、こうしたほんの小さなミスが放銃に繋がるケースが増えてきている。
このままでは、最終日につかまってしまう可能性は十分にある。
南2局3本場
トップ目は39300点の豊後。
大崎が21200点の3着、福山が12500点のラス目である。
追いかける豊後や水崎にとっては、理想の並びである。
しかし福山も、簡単には落ちていかない。
5巡目に、ドラを切ってリーチ。
5巡目 福山(西家)
ドラ
場況を見てもらうと判るが、ソーズ待ちは鉄板である。
こんなすぐに和了れそうな立直も珍しい。
程無くしてをツモり、裏ドラで2000・4000。
大崎とラスを入れ替わった。
南4局
各家の点棒は以下の通り。
福山(東家)25300
水崎(南家)20800
豊後(西家)35000
大崎(北家)18900
豊後にとって、理想の並びとなる。水崎は、できれば福山をまくりたい。
どちらにしても、大崎にはラスのままでいてもらうしかない。
10巡目、水崎からリーチが入る。
10巡目 水崎(南家)
ドラ
標的の福山とは、4500点差。
現状ドラもなく、条件だらけのリーチだが、与えられた材料の中では最高の手組みである。
福山、豊後はすぐにダウン。
13巡目、大崎がリーチの間四ケンのをさらっとツモ切った。
大崎も、福山が2着であれば最悪水崎には打っても構わないと考えているのかもしれない。
そう思いながら、大崎の手牌を覗き込む。
13巡目 大崎(北家)
ドラ
恐ろしい。リーチの中スジ待ちの一気通貫聴牌が入っている。
豊後から出れば、トップである。
幸いリーチ後の水崎と大崎の河が派手になり、豊後は現物に困る事がなかったが、大崎は最後まで魅せてくれた。
10回戦スコア 豊後+53.5 福山+3.8 水崎▲18.7 大崎▲39.6
(10回戦終了時)
大崎 +144.1
福山 +119.6
水崎 ▲88.2
豊後 ▲179.5
2日目が終了して、大崎がトップ。好位置に、福山がつけている。
水崎は全員の着順を意識する必要があるが、まだまだわからない。
豊後はかなり厳しくなってしまったが、逆に腹を括って今まで通り攻めるしかない。
余談だが、第9期女流雀王・大崎初音が心掛けていることは、他にもある。
『対局会場には誰よりも先に着くこと』
『休憩の後には、一番に卓に着くこと』
「崎見さんがそうされているんです」
大崎は、真面目に答える。
競技選手の心構えとして、本当に素晴らしい事だと思う。
8回戦東4局でハイテイにいたは、たぶん神様のプレゼントだと思います!」
そう無邪気に、笑った。
(文・藤原 哲史)
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