

順位 |
名前 |
TOTAL |
1日目 |
2日目 |
最終日 |
1
|
伊達 直樹 |
150.8 |
89.3 |
98.2 |
-36.7 |
2
|
中林 啓 |
111.7 |
4.4 |
16.2 |
91.1 |
3
|
福田 聡 |
-23.6 |
-71.2 |
21.2 |
26.4 |
4
|
中里 修樹 |
-238.9 |
-22.5 |
-135.6 |
-80.8 |
【3日目観戦記】
|1日目観戦記|2日目観戦記|
★第11回戦★(福田→中林→大脇→中里)
トータルポイント下位の福田・中里はトップを重ねないと苦しい。

中里は1巡目から役牌の を一鳴き。
打点よりも自分のペースで場を回しアガリを重ねようとする。
対照的に福田は2巡目の を鳴かずメンゼンで手を進める。
カン とはいえども積極的にリーチ。
とにかく打点を叩き出すことを選び見事満貫のツモアガリ。
そして次局の東3局、福田の配牌がイーシャンテン。 
1巡目のツモが前局アガリ牌の でテンパイ。カン でダブルリーチにいく。
この局の親番はトータルトップ大脇。
そのため、中里・中林共にベタオリで福田のツモアガリを待つ…。
だがおとなしく福田のリーチを受ける大脇ではなかった。
9枚連続危険牌を切り飛ばしてのアガリには貫禄すら漂う。
しかも注目は1巡目の大脇の手牌である。
             ドラ
ここから第1打を として、ダブリーへの放銃を回避している。
指運か天運か。ともあれこの切り出しでないと、大脇のアガリの目はまずなかった。
南1局2本場、ここにきて大脇が先手を取り、4巡目にリーチ。

13巡目に親の福田が追いつく。
            ドラ
2枚切れのカン をヤミテンに構えるが16巡目にツモ で長考に入る。
大脇にマンズがほとんど通っておらず、流局狙いで比較的安全度の高い方の を切るが、不幸にも のほうが大脇の当たり牌となった。
南3局、大脇がトータルトップの勢いを見せつけんばかりの6000オールを炸裂させる。

ドラ3のヤミテンから4枚目の をツモっての暗カンリーチ。
リーチの時点でこの は山に5枚いただけにツモるのは時間の問題だった。
南3局1本場、北家・中林がツモリ三暗刻・ドラ3のリーチ。

親カブリで大脇に大ダメージを与えることのできる最終形である。
この時、大脇は以下の手牌。
            出る ドラ
リーチ宣言牌の をチー。ドラの を切ればテンパイだが…、切ったのは現物の であった。
この鳴きで南家・中里にもテンパイが入って2件目リーチ。
そして中林が一発で中里の当たり牌を掴んでしまう。
恐るべきは大脇の鳴き仕掛け。局面を180度変えて無傷で終わらせるとは…。
さて南4局を迎え、トップ目大脇42700に対し、追いかける親の中里が34700。
さすがに福田・中林ともに、このまま半荘を終わらせることはできない。
そのため必然的に中里の連荘を待ち、長い南4局となる…。
まず南4局0本場から4連続流局。そして同4本場にようやく親番・中里がアガる。

点数は安いとはいえ大脇からの直撃、さらに本場や供託リーチ棒などがありトップ逆転。
だが、トータルラスの中里の立場だと、これくらいの点数で終わらせるわけにはいかず、さらにアガリを狙いにいく。
6本場では5巡目に以下の手牌から仕掛ける中里。
            出る ドラ
2枚目の をポンして打 。
ソーズの1メンツ落としでピンズのホンイツに寄せる手筋は、これまでの中里には見られなかった。

だが確かに仕掛けた方がメンゼンで手を進めるより早いし高い。
結果は大脇のリーチをかわして5800のアガリ。
ここまでくると、中林・福田としてはアガって終わらすよりも、 大脇が中里に放銃するのを期待して軽いアガリに向かわなくなり、さらに場は重くなる。
7本場、8本場と進みそして9本場には…、意外な展開となる。
なんと大脇が配牌テンパイ。
第1ツモに力を込め、空振るも「リーチ」の宣言。

中里だけがギリギリまで押すもなかなかテンパイが入らず。
14巡目に大脇が高目の をツモって3000・6000の9本付け。
軽く終わらせたくなかったのは実は大脇も一緒だった。
トータルで当面のライバルは中林。
中林がまともなアガリに向かっていない以上、大脇にとっては全く焦る必要はなく、高くて早い手がくるのを待ってるだけでよかったのである。
(11回戦終了)
中里+80.3 大脇+22.7 福田▲31.9 中林▲71.1
11回戦終了時トータル
大脇+210.2
中林▲50.5
中里▲77.8
福田▲81.9
★第12回戦★(中里→中林→福田→大脇)
大脇以外の3人にとっては残り4回で260〜290Pの差を捲くらなければならない。
普通に打っていたら到底追いつかない数字。
ここで福田・中林が今まで以上の共闘の構えを見せる。
それは…大脇をラスにするために他家からの見逃しを行ったのである。
例えば東2局の福田はチートイツのリーチを流局間際に中里から見逃している。

また中林も南1局、確定満貫のメンタンピンを福田から見逃す。

大脇からの出アガリかさもなくばツモアガリか…。
こういう姿勢を表に出し合うことで、絶対に大脇をラスにするという意思表示を見せているのである。
こういった努力はいつかは報われる。
南2局、親番の中林にわずか3巡目で高目789の三色テンパイが入る。
            ドラ

中林はダントツ、他3人は2万点付近で団子である。
ヤミテンに構え、当然大脇以外からは見逃す姿勢。
すると同巡の大脇。
             
切りでテンパイだったが…。ここから が出る。
好形・手役を求めた一手が、最悪の放銃となった。
オーラスは親番・大脇がリーチをかけるが、中林もポンテンでツモアガリ。

まずは大脇にラスを押し付けることに成功。
(12回戦終了)
中林+74.3 福田+19.3 中里▲34.2 大脇▲59.4
12回戦終了時トータル
大脇+150.8
中林+23.8
福田▲62.6
中里▲112.0
★第13回戦★(中林→福田→大脇→中里)
大脇とのラストップをを成し遂げ、テンションの上がる中林。
この13回戦でも起家で開局早々の2000オールで先制。

ただこの局は南家・福田に微妙な逸機があった。
             
3巡目のここから雀頭を固定して打 。
次巡に を引いて打 としている。
すぐ を引いて、 を外す。
            
結局ここで安牌を抱えないのなら、5巡目の時点で
             
こうなって搭子を選択できた方が良い。
この瞬間、目に見える枚数は ‐ の方が1枚多い。
もし打 と行ければ、7巡目にこの形で先制リーチが出来ていた。
            
東2局、中林が5メンチャンリーチをツモアガリ。
            ツモ ドラ

この局、中林のリーチに対し、尻に火のついた親番の福田は  と真っ向勝負する。
しかし、
            
イーシャンテンの形がこれでは、どうやっても中林への放銃であった。
もっとも、中林が福田からアガると大脇のラスが遠くなってしまうため、先にツモれたのは幸運だった。
東3局、大脇の親番は当然ながら3人ががりで蹴りに行く。

福田は初手から と切り飛ばして真っ直ぐ進める。
中里は、9巡目、
            ドラ アガリは遠そうだが、ここから を鳴いて積極的に局を潰しにかかる。
結果はリーチの福田から中里が1000点のアガリ。
   ロン チー  ポン  チー  
その後大きな点数移動もなく、微差ながらも大脇をラスにしたままオーラスをむかえる。

親番・中里が苦しい形ながらも押さえつけのリーチ。
そして14巡目、福田もドラアンコだが2枚切れのカン 待ち。
リーチ棒を出すと瞬間4着に落ちるが意を決してリーチに。
大脇も粘ってテンパイを入れるが、流局寸前にラス が福田の手元で踊った。
リーヅモドラ3で2000-4000。
裏ドラが乗れば親カブリで中里がラスに落ちるところだったが、結果は大脇がラスのまま。
(13回戦終了)
中林+62.9 福田+6.7 中里▲24.4 大脇▲45.2
13回戦終了時トータル
大脇+105.6
中林+86.7
福田▲55.9
中里▲136.4
★第14回戦★(福田→中里→中林→大脇)
トップラスの連続で、ついに中林が大脇をとらえる。
しかし、大脇・中林の一騎打ちに割って入ったのが、ディフェンディングの福田。

東1局では起親で12000のスタート。
ドラのカン 待ちにもかかわらず の加カンは是が非でも大トップを取ろうとする姿勢を見せている。
東4局でも福田がド高目のドラの をツモって3000-6000のアガリ。

5巡目にカン のテンパイでリーチをしなかったのが結果的には吉と出た。
南1局でも福田のアガリは続く。
リーチ攻勢で3本場まで積んで50000を超えたが、ここまで眠っていた大脇がついに目を覚ます。

2件リーチからでも4フーロして最終的に の裸タンキで小三元のアガリ。
福田の残り4枚の はどこへ行ったのだろう?
オーラスは中林が無理にトップを狙わず、2着で十分と大脇のラス親を蹴りにいく。

このままの順位で終わらせて、最終戦は着順勝負に…と考えたのだろう。
そして奇しくも大脇も同じことを考えいてた。
17巡目で中林が を切った時の大脇の手牌は以下のとおり。
            ドラ
ポンして打 で形式テンパイであるが、大脇は鳴かずにオリてノーテンを選択。
続行すれば次局に中里にアガられて3着を捲くられたり、中林にトップを取られたりする可能性が残る。
それよりは…と、決着を最終戦に持ち越したのである。
ここに来てついに、やっと中林がトータル首位に立つ。
(14回戦終了)
福田+60.3 中林+17.0 大脇▲25.4 中里▲51.9
14回戦終了時トータル
中林+103.7
大脇+80.2
福田+4.4
中里▲188.3
★第15回戦(最終戦)★(中里→福田→大脇→中林)
偶然にも下位からのトータルポイントの座順。
となるとラス親を引いた中林が相当有利となる。
東1局は、ほぼ優勝が絶望的な中里の親番。
2連続流局の後の同2本場、中林がチャンタ・ドラ1のヤミテン5200をアガって先制する。

東2局の親番は福田。
それほど非常識でもない条件の福田の親番を舐めてはいけない…と中林は感じ、
わずか3巡目から王手飛車の仕掛けを行う。

ここまで中林が優勢だが、大脇も虎視眈々と反撃の機会をうかがっている。
この局も5巡目に大脇は以下の手牌。
            ツモ ドラ
大脇は を落としてドラを雀頭に固定している。
結果は中林のアガリだったが、一発でも決まれば俄然ペースは大脇のモノになるだろう…。
東3局、中林にとって最大の難関である大脇の親番。
当然ながら打点よりもアガってこの局を流すべく積極的に仕掛けるが…

大脇がドラアンコでリーチ。
カン を力強くツモって4000オールのアガリとなる。

この時点で完全に大脇・中林のマッチレース。
お互いのリーチに対して、オリてツモられるくらいなら真っ直ぐ潰しにいく、ノーガードの戦いがここから繰り広げられる。
同2本場、大脇が急所を仕掛けてタンヤオのチーテン。
そして同巡に中林にテンパイが入ってリーチ。

アガリ牌以外すべてツモ切る大脇。
その結果18巡目の が放銃となって1300。
オリて微差で逃げ切ろうとはせず、あくまで親番でアガリ倒して決着をつける姿勢である。
南1局1本場、今度は大脇の先制リーチに中林が真っ向勝負。

直撃でほぼ並びだった点差が5400になる。
だが中林がラス親なだけに、多少の点差など一発でひっくり返ってしまう。
大脇としてもどこかで大きくアガっておきたい…となるとやはり勝負所は親番の南3局。
1万点リードといえど到底安全圏とはいえない。
当然ながら積極的にリードを広げにいく。
2巡目で大脇は以下の形で をチー。
            ドラ
この仕掛けでズバリ と重ねて11巡目に のポンテン。
      ポン  チー  ドラ
19巡目に をツモって4000オール。

親番が続く限り叩き続けるのが大脇流。
南3局1本場も アンコでリーチ。

だが最後の親番に望みをつなげる中林が何とか蹴って大脇の親番を落とす。
さてオーラス。
中林は、着順勝負の大脇との点差が23300。
大きなアガリが欲しいが、ツモがかみ合わず、テンパイが入ったのはようやく17巡目。

残り1巡のリーチも、むなしく流局する。
そして同1本場は大脇がわずか3巡目にピンフのテンパイ。

5巡目に中林が、ドラの を残して のトイツ落としをするが、その成果を見る間もなく同巡に中里が を切って終了。
(15回戦終了)
大脇+70.6 中林+8.0 福田▲28.0 中里▲50.6
15回戦終了時トータル(最終成績)
大脇+150.8
中林+111.7
福田▲23.6
中里▲238.9
麻雀は運に左右されやすいゲーム。当然ながら好調な場合もあれば不調の時もある。
場面に応じてどれだけ打ち方を変えることができるかが、勝負の分かれ目になるといえる。
例えば好調時は誰もが簡単に先制テンパイ、リーチ・ヅモの連続で勝つことができる。
だが不調時、他家がアガって自分だけアガれないことが続く場合…ほとんどの打ち手は、ただ良い手が来るのを待ってるだけである。
だけど大脇の場合、そんな場面でも工夫を凝らして這い上がろうとする姿勢がみられる。
●初日5回戦の東4局。

中里のリーチの同巡、以下の手牌から  での仕掛け。
            出る ドラ
●2日目8回戦の南1局1本場。

中林のリーチに対し、 を出来メンツからチー。
         チー  出る ドラ
●12回戦東2局2本場。

3巡目にオタ風の を以下の手牌からポン。
            出る ドラ
そして最終的にチャンタでのアガリ。
●13回戦南2局。

極めつけは1巡目から チーして結果的にツモリ三暗刻のテンパイ。
など、一見普通では考えられない仕掛けを繰り出している。
もちろん失敗して放銃している局も中にはあるが…。
仕掛けというのは、たった一つ入るだけでツモはもちろん他家の対応も入るために、局面がガラリと変わってしまうものである。
大脇の場合、自分の調子が悪いからこそ余計に、仕掛けることによって何かをねじ曲げ、不調から脱出しようとしているのかもしれない。
第8期雀竜位に輝いた大脇貴久。
第4期新人王からタイトルと縁がなかったが、ここに来てAリーグ昇級と雀竜位戴冠の戴冠で、協会を代表する選手となったといってよいだろう。
今後の活躍に大きな期待が寄せられる。
(文・ケネス徳田)
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