【最終ポイント結果】
順位
|
選手名
|
TOTAL
|
1日目
|
2日目
|
最終日
|
1
|
福田 聡 |
221.5 |
121.6 |
-0.9 |
100.8 |
2
|
吉田 基成 |
133.7 |
7.6 |
3.3 |
122.8 |
3
|
宮崎 信一 |
-129.4 |
-85.5 |
23.3 |
-67.2 |
4
|
山村 峰巨 |
-228.8 |
-44.7 |
-27.7 |
-156.4 |
3月1日に終了した雀竜位決定戦ですが、観戦記者の都合により現在まで観戦記がアップされていませんでした。
対局者ならびにファンの皆様に多大なる迷惑をおかけしたことを、心よりお詫び申し上げます。
今回急遽、観戦記者を変更してこの観戦記を制作いたしました。
従いまして、今回の遅延と内海プロは無関係であります。
第7期雀竜位決定戦観戦記
|2日目観戦記|最終日観戦記|
1日目
『ここに立っている』
そう、またこの場所に立っている。
昨年の第6期雀竜位決定戦から一年、第7期雀竜位決定戦の会場。
今年も雀竜位を決める戦いが始まる。
去年は、自分自身もその卓についていた。
今年は、同期の山村峰巨が戦うというので、「じゃあ、観戦記でも書くよ」と、軽い気持ちで言っていたら本当にそうなっていた。不思議な縁だ。
もとより、自分のブログのために観戦メモは取るつもりでいた。
早めに行って対局者の表情とかも見ておきたかったが、遅刻ギリギリの到着。
息を切らせながら山村の傍らにつく。
『今日はよろしくお願いします』
対局者と共に、心の中で、そう呟いた。
1回戦 吉田・宮崎・山村・福田
現雀竜位の吉田の起親から始まる。
東1局ドラ
皆の表情が硬い。石でも喰っている様な顔をしている。
去年は自分もそうだったんだなと苦笑い。
山村は5巡目にこの牌姿。
打としていく。
567、678を見据えた打牌だが、の受け入れが常に残ることによりあまり魅力的に映らない。
それよりも、素直に縦を見てのが良いのじゃないかと思った。
山村とは何度も打っているが、しっかり後ろで見るのは初めて。
これが、本来の山村の打ち筋ならいいが・・・とも思った。
最速で、テンパイを入れたのは宮崎。躊躇することなく立直。
3面張、申し分ない。
が、皆が降りに回りこの手牌は流局。宮崎のアガリはお預けとなった。
東2局1本場ドラ
親の宮崎が好調か。早い段階でドラのを置いている。
と、思う間も無く立直。宮崎は、またも三面張の--。
また流局するかに見えた最後のツモで、をツモって2000オール。
初アガリは宮崎のものとなった。
ここから、皆に火が付いたのだろうか立直が飛び交う。
道中、大きなアガリを決めたのは福田。
ツモ(一発)
世が世なら2000点の手を、一発で高めをツモりあげて3000・6000。
福田のペースのまま場は流れる。
東4局1本場ドラ
宮崎が12巡目、リャンシャンテンの形から仕掛ける。
チー
タンヤオ仕掛けなのだが、よく打てていると思った。
こういう決勝の場ではどうしても重く構えてしまう。
気兼ねなく仕掛けられるのは宮崎の強さだと思った。
山村が立直を入れるも、宮崎が1000点の出アガリ。
その宮崎が魅せる。
南3局ドラ
配牌であった役牌のとを暗刻にする。
ドラはだが、受け入れを優先してを払う。
2巡後、ツモ。裏目となったが、今度はのターツに手をかけた。
フリテン覚悟でドラを使いきりにいく。
そしてを引き戻し、-の6400テンパイ。
山村からまたも立直が入るが、宮崎ツモの2000・4000。
南4局ドラ
福田に肉薄した宮崎に、絶好の配牌が入った。
トップ目の福田とは5200点差なので、出アガリでかまわない。
を叩いて、すぐにペンのテンパイを入れる。
ラスを引きたくない山村と吉田。
その山村にテンパイが入る。
1300出アガリで3着浮上なので、どちらを切ってもいい。
場にマンズの上は安く、どっちに受けようが枚数は同じである。
場に切れている分だけ-に受けるかと思ったが、ここは打で立直とした。
宮崎と山村、二人の捲り合いで二人テンパイのまま流局。
なんとか山村は、最低限の仕事は出来たのではないだろうか。
終局後、山村がシャンポンに受けた理由を語った。
「だって宮崎さんに危ないでしょ」
確かに、宮崎の入り目は。
山村はしっかり打てている。
私の、小さな不安が杞憂に終わればいいのだけど。
1回戦 福田62.0 宮崎19.8 山村△31.0 吉田△51.8
2回戦 福田・宮崎・吉田・山村
東1局ドラ
中盤、西家吉田が役牌ポンテンのカンのテンパイを入れる。切り出したのがドラの。
その時北家山村の手牌
ツモ
ドラでなければまったく必要としない牌である。
切り出した、上家の吉田はテンパイでもおかしくないところ。
打点を求めるなら、なんて選択肢もあるが今からイーシャンテンを崩す気にもなれない。
やはり、その瞬間通ったを切るのが妥当か。
山村が選んだのは、カンに固定する打。この打牌は正直ぬるいと思った。
確かに親の上家なのでドラは切りづらいが、最終形がそのカンチャンでは苦しい。
その後、ツモ、打、のポンを入れて、結局カンでのアガリをものにするのだが。
お世辞にも、巧く打ったとは思えなかった。
東2局
皆の手が整う前に、福田が三色ドラの5200を出アガる。
打ったのは続けて吉田となる。
初戦のラスから、ツカナイなぁ、そんな事を思っていたのかもしれない。
東3局ドラ
ところが、である。
この光景は去年も見たことあるような気がする。
その時は、僕が卓についていたのかな。
同じ2回戦目、こんな牌姿だっただろうか。
ロン
そろりと、吉田が手元に牌を置く。
ツモ
重い、重い16000オール。
ここまでの展開がまるで演出であるかのように、全てを一撃でひっくり返してしまった。
俺が雀竜位と言わんばかりの、強烈なアガリ。
だが、こんなものでは終わらなかった。
東3局1本場ドラ
山村がノミ手のテンパイを入れると同時に手牌のを暗カンした。
すると新ドラがその。
元ドラのは3枚場に飛んでいて、これ以上の手はないように思う。
躊躇なく、立直。一人旅になるものだと思っていた。
が、福田がツモ切りで追っかけてきた。
捨て牌にピンズが1枚もなく、染まっているのは明白。
その2件立直に、静かに、しかし真っ直ぐに吉田は無筋を押す。
ここは、点棒の壁という理じゃない。
原点にある強さを見せつけようとしているように見えた。
雀竜位の吉田ここに在り。3人テンパイで流局となる。
東3局2本場
ここからが、吉田の本領発揮。一発で12000。
ロン ドラ 裏
続く3本場
メンタン七対子の9600。
それぞれ、福田・宮崎からの出アガリ。
傷を負っていない山村、どうにか場を流したいところ。
まだ続く4本場
吉田、一人テンパイ。
まだまだ続く5本場ドラ
吉田、を2巡目に叩く。伸び伸び打つ吉田を、誰かが咎めなければならない。
すぐに山村がこの形。
この瞬間、吉田がテンパイしていないことは明らかだ。
協会の先輩である須田良規さんは、以前こんな事を言っていた。
『ドラは、アガリがあって初めてドラになるから』
そう、鳴かれただけではただの牌と何も変わらない。
明らかにこちらの形はいい。速さは一番であろう。
自分の形を優先して、早々にドラを切り飛ばすべきだ。
ところが山村は、やはりというか打。
山村は、ドラを抱えて手狭にし過ぎる嫌いがある。
その後、吉田が-のテンパイ。
どうなるかと思って見ていると、宮崎が400・700のツモあがり。
なんとか、吉田の親を流した。
そこからは、吉田がアガリを加えながら場を廻す。
新幹線、いや、足の速い重戦車といったところか。
吉田の点箱に目を落とすと、100600の表示が。
南3局ドラ
宮崎が3巡目先制立直、だがこの半荘はそれが優位にならない。
親番の吉田、4巡目すぐに追いつき、立直。
誰が掴んでも場に打ち出しそうな1枚切れの。
すぐに山村がを掴まされるが、なんとか耐えている。
そこに追い討ちの福田の立直。
ああ、山村が放銃だと思った。
しかしそれよりも早く、宮崎が山からを掘り起こしてしまう。
すでに二人が箱を割っている状態。これをワンサイドゲームと言わないなら、なんと言うのだろうか。
流局をはさみ、
南4局2本場ドラ
序盤に吉田が自風の仕掛けを入れる。
早い段階で、ラス親の山村が立直を打てれば少しばかりの勝機が生まれるかと思っていた。
だが、中盤も過ぎた頃、やっと入ったテンパイはドラそばペンの一通。
仕掛けた吉田の河にとあるためか、それに合わせてダマにする。
結局吉田がイーシャンテンの福田から討ち取って終了。
山村の河にも吉田の待ち牌があるので、山村が立直を打っても結果は同様であろう。
『吉田の、吉田による、吉田のための半荘』
誰もが口々にこう言ってもおかしくないような半荘だった。
雀竜位強し、そう思わせるには充分過ぎた。
2回戦終了時 吉田+77.2 福田△12.1 宮崎△22.5 山村△43.6
3回戦 山村・福田・宮崎・吉田
場数というのはやはり重要で、慣れぬ状況下では普段の麻雀が打てなくなることがある。
ここまでのトップは、福田と吉田。共に前回の決勝面子でもある。
そして、宮崎は過去新人王を獲得している。
山村がただ一人、初めての決勝卓となっている。
『わからないのなら、ただがむしゃらに行けよ』
そんな言葉を飲み込んで、去年の決勝に思いを馳せた。
そのまま去年の自分にも、伝えたかった。
東1局ドラ
ストレートに手を進めて吉田がテンパイ。
ツモ
打とするがダマテンに構える。
宣言牌の筋が危険なのは今や麻雀の常識である。それを意識したのだろうか。
私なら、それが分かっていても勢いよく牌が曲がっているのだが。
そこに親の山村が追いつく。
ツモ
こちらは、同じ筋でも打で立直に踏み切る。色々な選択があるのだから麻雀は面白い。
吉田、危険牌のツモ。
雀頭のが現物だが、少し考えたあとツモ切りで立直。
利があるとすれば山村の捨て牌にもがあることぐらいか。
この立直に踏み切れるのが吉田の強い部分ということなのだろう。
勢いも劣る山村、をつかみ放銃スタートとなる。
東2局1本場ドラ
場は動き出す。
吉田がここから、宮崎の切ったをチー。
もうひとつもチー。
と、親の福田から立直の声。
濃い捨て牌で、高そうに見える。
カンのテンパイを入れた吉田は、、と無筋を押す。
上家の宮崎もこっそりと七対子ドラドラのテンパイを入れている。
それでも制したのは福田。ツモあがり4100オールとなる。
ツモ ドラ 裏
福田は守備派とも言われるように固く門前で手を進めることが多い。
点棒を守り、門前で押し返す。それが今日はよく決まっている。
ツモも噛み合って、牌の巡りにも愛されているといった印象を受ける。
逆に愛されていないのは、山村。
着順こそ3・2と食らいついてはいるが、手牌は常に重く、簡単な手は入っていない。
東3局には早くも箱を割ってしまう。
福田トップのまま、南場を迎える。
南1局ドラ
吉田が先手を取り、
の形で立直を打つ。
そこに待ち構えていたのが山村。
立直後の吉田のを鳴かず。
テンパイしているのとしていないのでは天地の差だが、ここは堪えた。
を引き込み、立直者の現物の-待ちとなる。
立直に踏み切るかとも思ったが、ダマテンのままを吉田から討ち取る。
逆に軽い気持ちで立直を打ったかも知れぬ吉田、まさかの12000放銃となった。
ここから山村にもチャンスが訪れるかと思ったが、次局はあっさり福田が流す。
福田の持つ点棒の厚みは大きく、そのままの着順で3回戦終了となった。
牌より受ける寵愛と共に、福田がこのまま駆け抜けるのだろうか。
3回戦終了時 福田+54.6 吉田+22.8 宮崎△7.3 山村△71.1
4回戦 山村・宮崎・吉田・福田
一日目も終盤、後半戦に入る。
福田が頭ひとつ抜けているがまだ初日。
トップで終えたいのは誰も同じである。
東1局ドラ
まずは福田が立直。
3回戦を彷彿させるように、同じく親の山村が三色のテンパイで追随する。
しかし、立直した時点で山村の待ちは山に0枚。
対して麻雀の神様に愛されているのは福田。アガリ牌は3枚眠っている。
掘り起こしたのは山村の方だった。
打ったが裏ドラの方で、福田に8000の献上となる。
この後も牌山は山村に与することなく、山村を一人置いた形で南3局を迎える。
南3局1本場ドラ
なんとか山村が七対子ドラドラの立直を入れる。
ドラ単騎待ちは致し方ないところだ。
が、ここで事件が起こる。2着目の親の吉田から一発でドラのが打たれた。
12000。望外の点棒が転がり込んでくる。
吉田は暗刻からの一枚の外し、同じようにタンヤオ七対子のテンパイだった。
確かに他に打てそうな牌はあるものの現物ではない。ならテンパイの方が上か。
これで気をよくしたのは、福田。あとは自分の親を流すだけである。
南4局ドラ
親から
福田37700
山村20000
宮崎20700
吉田21600
かつて無いほどに2着争いが熾烈となっている。
まず仕掛けたのは宮崎、ドラポンを入れる。
山村も愚形ながらアガれば2着の立直。
二人のどちらがアガるんだろうと思っていると、吉田が『俺もここにいる』と言わんばかりに無筋を二人に振り下ろした。
「ツモ」
ツモ
吉田が、アガり牌を引き寄せる。さきほどの放銃を帳消しにした。
が、トップはもちろん福田、高みの見物であった。
展開までも福田を後押ししているようだ。
4回戦終了時 福田+111.0 吉田+28.1 宮崎△27.3 山村△112.8
5回戦
福田に三勝されている。このままでは初日で決まりかねない。
もう福田にトップは取らせない。三者がそんな会話を目だけで交わしているようだ。
気合十分、四人が卓につく。
気持ちがそうさせたのだろうか、四人がいきなりぶつかり合う。
東2局ドラ
山村は吹っ切れたのだろう、愚形残りのイーシャンテンからをアンカン。新ドラ。
宮崎が、福田がのポンを入れる。
山村が-で、立直。
その宣言牌のドラに福田がポンの声。
ポン ポン
跳満のテンパイである。
そんな中、山村がツモ切ったに宮崎がポン。
山村のリーチ、福田のドラポンに向かって、さらにポン?
流石に、を対子以上で抱えているのだろうと分かった。
福田が先にを掴む。ここまで独走している福田。
ためらいもなく降りを選択。山村の現物、打。
それを見て宮崎、打。さっきまで福田のアガリだった牌だ。
福田が降りていると見るや、山村一人に対しては強気に出た。
ポン ポン
宮崎はここからの打ち。当然、宮崎も苦しいところ。
一難去ってまた一難、気が気じゃないのは立直を打った山村である。
追い討ちをかけるように親の吉田が、ふっと無筋のをツモ切る。
しばらく平静を装っていた吉田にも、勝負手が入っていた。
宮崎の大三元があるだけに立直は打てないが、ここはダマで押す。
が、ここで吉田の動きが止まる。引いてきたのは新ドラでもある。
現状、ピンズとマンズはほぼ通った。ソーズでいえば山村の待ちは二つに絞られる。
--か-。
一人なら、2分の1を選んだのかもしれない。
が、三元役模様の宮崎にもソーズは高く、と切り出している。
苦渋の表情で、吉田は手の内から安全牌のを抜く。
もがく三者を尻目に、あまりにもあっけなく決着はついた。
カン ツモ ドラ 裏
裏ドラが4つ。皆が決定打となる手牌を与えられながらも、最後に選ばれたのは山村だった。
初めての決勝卓という大舞台。緊張は人一倍だったであろう。
『麻雀を楽しみたいです』
対局前そう聞かせてくれた山村に、やっと安堵の表情。
ずれていた歯車がビタリとはまる。
そこからは山村らしい麻雀を見せ他を圧倒。
気づけば5万点を遙かに超え、一日目の終了の挨拶が交わされた。
5回戦終了時 福田+121.6 吉田+7.6 山村△44.7 宮崎△85.5
勝ちたいとか、苦しいとか、そうした対局者の心情は誰でも同じ。
大舞台に立った時にどこまでやれるかなんて分からない。
もうそれは四人の戦いではなく、各々の自身との戦いなのだろう。
一日目を終えた各人は、どことなくホッとした様子だった。
いくら戦いを重ねても、そこはやはり特殊な場所なのである。
山村だけではない。
決勝という踏み慣れぬ苦難の道は、四者にとって始まったばかり。
(文:内海 元)
|2日目観戦記|最終日観戦記|
▲このページトップへ
|