

順位 |
名前 |
TOTAL |
1日目 |
2日目 |
11回戦 |
12回戦 |
13回戦 |
14回戦 |
15回戦 |
1 |
江崎 文郎 |
135.0 |
63.7 |
88.0 |
-22.9 |
14.2 |
17.5 |
21.3 |
-46.8 |
2 |
斎藤 俊 |
-2.2 |
-63.0 |
61.4 |
77.8 |
-55.4 |
-19.4 |
-55.2 |
51.6 |
3 |
坪川 義昭 |
-27.7 |
10.1 |
-78.4 |
-61.6 |
66.7 |
57.6 |
-31.2 |
9.1 |
4 |
ヨンス |
-108.1 |
-11.8 |
-72.0 |
6.7 |
-25.5 |
-55.7 |
65.1 |
-14.9 |
|1日目観戦記|2日目観戦記|最終日観戦記|
【雀竜位決定戦 3日目観戦記】
★13回戦オーラス★
この手牌をもらったら倍満ツモもしくはポイントリーダーから出アガリしか狙わないのが斎藤流。
途中で出る や を引いての 待ちを全て拒否して江崎からの直撃にかける。
しかし、斎藤の想定通りにはいかずここは江崎への放銃となってしまった。
会場に私が着くと。
「浅井さん、今日なんでいるんですかー!?」
相変わらずうるさいなと思いつつ。
「観戦記者だったけど、解説の木原さんが体調不良で代わりに解説になったから早めにきたんだよね」
「あっそうなんすか! じゃオレのかっこいいとこ見せるんでちゃんと解説してくださいね!」
声の主は斎藤俊。
対人ゲームとしての麻雀の捉え方が非常に優れた選手である。
大胆でトリッキーなプレーは非常に魅力的だ。
かっこいいとこを見せようとしたからかは分からないが1回戦目は斉藤が絶好調。
東2局から6連続のアガリで一時は70000点オーバーで一気に首位の江崎を追い詰めた。
特にこの場面ではペン を仕掛けることで苦しそうな印象を与え、江崎から をつり出すことに成功している。
しかし、今回の決定戦は斎藤の想定通りにことが進まない。
初戦トップの後は、ラス→3着→ ラスとなってしまった。
後日飲み会の場でこのままじゃ斎藤さん忘れられちゃいますよ。
なんて冗談めかして話していると、
「来年雀竜もリーグ戦も全て勝つんで見ててください」
実は今回斎藤が優勝した場合に書こうと思った言葉があったがそれはまた斎藤が頂点に立つまでとっておくことにしよう。
斎藤俊
―2位で終了
さてこの手牌、このポイントと点棒状況でみなさんはどうするだろうか?
13回戦頃からヨンスは苦悩していた。
このアガリに意味があるのか。
この選択をすることでゲームを壊してしまうことになるのではないか。
―競技の優勝は一人である。自分に我儘に打ってよい。
もちろんその通りだ。
しかし、4人で作りあげてきた決勝の舞台を自分の判断で壊したくないと考えるプレーヤーがいるのも当然だと思える。
話しを戻そう。
長考の末、ヨンスが選んだのは 単騎でのリーチ。
この長考にはヨンスの苦悩が見てとれた。
一旦ドラ単騎でダマにして
を引いたら 切りリーチ
を引いたら の出アガリを拒否して をカンしてリーチという選択肢もある。
多くの可能性を残す手だけに判断を下すのは難しかった。
しかし、他の局ではヨンスは本当に一年目かと思うほどの
打点に対する意識と手組が見られた。
11回戦の南一局には
ドラ受けと三色の天秤にかけ 切り。
13回戦のオーラスには
この手牌から を切り三色と一盃口を見る。

見事に を引きリーチ
- は4枚山にいたがここは江崎に軍配が上がる。
解説のRMU代表の多井プロが最後に総評で話した。
「あなたが将来大きな大会で優勝する時、今日のことをきっと思い出す。
あの時の決勝で負けたことで今があるんだと―」
小倉、斎藤に続く1年目での雀竜位獲得は叶わなかった。
しかし、実力の片鱗は見せることはできた。
ヨンスが協会を代表する打ち手となる、
それは遠くない未来かもしれない。
ヨンス
―4位で終了
11回戦
坪川はここから一色手を目指して索子のメンツを落とす。

9巡目にはこの形
直後に上家から放たれる場に3枚目の を鳴いてテンパイは拒否。
結果は実らなかったが見ている者にも勝負をかける意気込みが伝わった。
11回戦こそ箱下のラスだったがその後は2連勝。
首位の江崎に迫った。
坪川は状況に応じた押し引きを正確に素早く繰り返している為に、淡々と優勝までの任務を遂行しているような印象を受けた。
坪川に対して一つあげるならばこの場面。

坪川は1枚目の をポンといった。
これが通常のリーグ戦だったら鳴くのは問題ない。
しかし、このビハインドを背負った決定戦においては一考の余地があると思う。
この手ならば0か100かのギャンブルに打ってでるべきではなかったか。
最後のインタビューで
「ついてないと言われましたが自分ではただ優勝するための実力がなかったと思ってます」
彼はそう言った。
リーグ戦もB1に昇級し、雀竜位戦も決勝まできた。
それでもまだ足りないものがある。
決勝という舞台を経験したことは一つの殻を破ることになるかもしれない。
この悔しさがもっと彼を強くしてくれるはずだ。
坪川義昭
―3位で終了
江崎のスタイルを2つ紹介しよう
【1】

ドラ使いか234の三色に必要のない 切り
そして江崎はこのままの形では東を鳴く気がない。
鳴くならばドラか発が重なった時のみ、ならば最終形に は必要ないということだ。
【2】

江崎の主張は 切り
ドラ無しオタ風暗刻ならば、456の三色かホンイツ。
ならば自分の構想の中に は入らない
「押し返している間は期待値はプラスである」
麻雀はベタオリをしない限りは得点を重ねる可能性が残せるということである。
そのために打点を意識して序盤から終盤までの手牌構想力を練り上げ、中盤以降の細かい判断を強いられる局面を極力少なくする。
それが江崎がこの一年磨いてきたスタイルだ。
優勝を決めたのはこの局であろうか。
狙われる立場の親なので安牌が欲しいところ。
ならば を残すかと思ったが、 を切ってこの局は勝負に出た。
ヨンスのところでも触れたがラス目のヨンスからリーチ
           
ドラ
直後に江崎にテンパイが入る。

放銃すればラスまであるが を勝負
ヨンスの次のツモが河に放たれた時に江崎の手が開かれた。
最終15回戦、坪川がリーチ

これを受けた江崎が一発でドラの を掴む
を切ってもいい。
を1枚外して萬子を引いたらリーチという人もいるだろう。
放銃しても優勝は揺るがない。
ただこの日の江崎は を選んだ。
そして が江崎の手牌に手繰り寄せられた時に勝負は決した。
江崎は最終戦時に嗚咽を漏らしていたという。
もうほぼ優勝なのに―である。
安定した戦いは見てる方には分かるが、当然江崎は見えない手牌の重圧と戦っていた。
休憩中も多くを語ることなく控え室の隅に佇んでいた。
幾度か声を掛けようと思ったがその姿を見て話すのを思いとどまった。
優勝が決まり会場から出てきた時、初めて声をかけた。
勝利を称えるとたった一言
「ありがとうございます!」」
それは彼がやっと重圧から解放された瞬間だったのかもしれない。。
江崎文郎
―第16期雀竜位戴冠
第15期・16期連覇
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いかがでしたでしょうか。
最後に江崎に来年の目標は?と尋ねると以下の回答が返ってきたので、そのまま載せて締めくくりたいと思います。
本人は性格的に恥ずかしがるかもしれませんが・・・
「雀竜決勝終わった後に決勝メンツに他団体の人に負けないでくださいねって言われた言葉がずっと心に残り続けていて。
あぁ、また3人分背負ったんだなって思いました。
決勝メンツのためにもこれからの対局は無様な結果に終わることは出来ないなと。
まぁ3人だけじゃなく協会の雀竜位の看板背負ってるんで違うかもしれませんが、大事な対局の前にはこの事を思い出して、身を引き締めていこうと思ってます。
そして雀竜位だから出れる放送対局やシードを貰ったオープン大会で今年こそ勝ちを納めることが雀竜位としての使命だと思ってます」
相変わらず真面目だなと思いましたが、彼の人間性がよく表れていますね。
これから出場する舞台での勝利を期待しています。
江崎、おめでとう!
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(文・浅井
堂岐)
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