順位 |
名前 |
TOTAL |
1日目 |
6回戦 |
7回戦 |
8回戦 |
9回戦 |
10回戦 |
1 |
江崎 文郎 |
151.7 |
63.7 |
-52.7 |
54.9 |
-43.2 |
66.0 |
63.0 |
2 |
斎藤 俊 |
-1.6 |
-63.0 |
79.0 |
-20.5 |
9.3 |
-27.8 |
21.4 |
3 |
坪川 義昭 |
-68.3 |
10.1 |
-28.9 |
8.1 |
55.7 |
-51.2 |
-62.1 |
4 |
ヨンス |
-83.8 |
-11.8 |
2.6 |
-42.5 |
-21.8 |
13.0 |
-23.3 |
|1日目観戦記|2日目観戦記|最終日観戦記|
【雀竜位決定戦 2日目観戦記】
おっと! そういえば初日の配信現場は少し慌ただしくて、選手の写真を取り忘れていたではないか!
『対局前に申し訳ないんだけど、選手全員写真を数枚撮らせてくれない?』
筆者は現場の運営も兼ねていたので、会場に到着した選手へ順番に声を掛けていく。
最初にカメラの前に立ってくれたのはこの人。
斎藤俊。
人一倍負けず嫌いで、野心家である。
とは思えない。
人前ではこうやっておどけた感じを出しているが、実は根は真面目。
またこういう風に書いてしまうと、『僕のキャラを崩壊させるようなことは書かないで下さいよ!』と言われるかもしれないので、このまま
『ただただチャラい選手』としておこう。
★6回戦
初日の斎藤は損な役回りが多かった。
とにかく手が入らない。戦いたくても戦えない。ひたすら我慢を強いられる展開。
東1局0本場、7巡目に坪川からリーチ。
全員が安全牌を模索しつつ手配を進行させる中、最終的にドラの単騎待ちとなった斎藤が最後の1牌を手元に手繰り寄せる。
開局早々に気持ちの良いこのアガリで、
(そりゃまぁ、今日からは俺のターンになってもらわないとねぇ・・・)
と気分を一気に高揚させたに違いない。
続く東2局0本場、江崎の七対子リーチに追っかけリーチを放ち一発ツモ。
連続となる満貫ツモ。ここで一人抜け出して、そこからは局を危なげなく消化し迎えた南場の親番。
南3局1本場、先制リーチを放つと坪川の追っかけリーチを物ともせずにツモアガリ。トップを盤石のものにした。
1日目トータル首位に立っていた江崎は一時箱を割り、大きくつまずいてしまった形となった。
この半荘ラスとなってしまうのだが、オーラスの親番で満貫をアガって気持ちは切らさない。
この気持ちを切らさないよう冷静にやるべきことを着実に遂行していく江崎に、この後様々な恩恵がもたらされることになる。
6回戦終了時スコア ※()内は6回戦のスコア
斎藤 +16.6(+79.0)
江崎 +11.0(▲52.7)
ヨンス ▲9.2(+2.6)
坪川 ▲18.8(▲28.9)
いつも表情が硬い。
対局前の控室では、ただ一人緊張した面持ちで待っていたので、写真を撮る前に『表情が硬いなぁ!』と声を掛けると少し笑顔を覗かせたが、相当なプレッシャーを感じているように見えた。
今期は雀竜位として、様々な対局のチャンスをもらい配信対局も多く経験した。
とはいえ、ここから更なるステップアップを考えたら、自分の中でまだまだこれからと思う部分が多いのかもしれない。
皆様の思っている通り、真面目を絵に描いたような人である。
★7回戦
東3局0本場、序盤からヨンスが軽快に仕掛けて、ホンイツ一直線の3副露。
そこへスピードを合わせるように役牌を仕掛けた斎藤が7巡目にテンパイ。
この二人の勝負かと思われたのだが、親の江崎が対子をうまく増やしつつ前に出る。
最後にドラを重ねて単騎の七対子テンパイ。
これが直後に掴んでしまったヨンスからすぐに放たれて、12000点のアガリ。
最後に生牌のを切って、場に放たれ安い単騎でアガリ切るまでの進行は解説者をもうならせる見事な進行だった。
このリードを最後まで守りきった江崎がこの半荘はトップとなり、再びトータル首位へ舞い戻る。
7回戦終了時スコア ※()内は7回戦のスコア
江崎 +54.9(+65.9)
斎藤 ▲4.5(▲20.5)
坪川 ▲10.7(+8.1)
坪川 ▲51.7(▲42.5)
選手全員が30代前半の同世代ということで、この決定戦は次世代のリーダーを占う戦いといっても過言ではないだろう。
4人の年齢は近いのだが、プロ歴だけでいえばこの中で坪川が断トツで長い。
10代で協会に入会し今年で12年目。
北海道から上京し、麻雀店で働きながら真摯に日々麻雀と向き合ってきた。ときには、アニメとアイドルとも向き合ってきた。
今回が初のビッグタイトルの決勝戦、他の三人より何倍もの時間をかけてここまで辿りついたのだ。想いは他の3人よりさらに何十倍も強い。
★8回戦
実力伯仲という言葉が相応しい展開はまだまだ続く。
斎藤が東1局、東2局とリーチ攻勢をかけ、再び主導権を握ろうとすると、東2局1本場は江崎が技ありの七対子で攻め返す。
この二人を勢いづかせないように、親番を迎えた坪川が先制リーチをかけると、見事一発ツモ。
この4000オールで勢いがついたかに見えたが、
続く1本場は斎藤のリーチに追いついた坪川のテンパイ打牌が一発放銃となり再び斎藤がリード。
7回戦まで流局の多い重たい雰囲気だった場の空気が徐々に荒れ始めた。
南1局0本場。
親のヨンスの先制リーチではあるが、12巡目と巡目が深いこともありすでに全員イーシャンテン。
続く13巡目。フリテン3面待ちの部分を引き入れてピンフ・ドラ2テンパイで斎藤が勝負!
と行くかに思えたが、ここは無スジのを切らず打として迂回。
自信はトップ目、現状ラス目の親リーチ。下手に飛び込んでしまうと大怪我となりかねない。
巡目が深いということもあって、ここは勝負所ではないと踏んだのであろう。
つくづく親の抑え込みが偉大なルールだなと感じる。
と思いきや、
ピンフ高目三色のテンパイの坪川は堂々と被せていく。
宣言牌は。まさに紙一重の攻防。
すると江崎までもが参戦。
ふと思う。親の抑え込みって何?
一気に修羅場と化したこの局を制したのは坪川。
江崎から高めのを出アガリ、リーチ棒2本付きの8000点。
続く南2局もリーチ・ピンフ・タンヤオ・ドラをツモアガリ。
このリードを守りきった坪川がトータル首位に躍り出た。
8回戦終了時スコア ※()内は8回戦のスコア
坪川 +45.0(+55.7)
江崎 +22.7(▲43.2)
斎藤 +4.8(+9.3)
ヨンス ▲73.5(▲21.8)
当協会を代表する鈴木達也のプロデュースする麻雀店に勤務し、そこで常に好成績を収めているという鳴り物入りで入会。
それからわずか半年、一番下のD級予選から怒涛の勢いで勝ち進み、この大舞台に立ってきた。
新人らしく謙虚で何とも好感が持てる。
が、実は結構やんちゃで・・・いやこれ以上はやめておこう。
半分を終えトータル最下位。
控室でも他の選手とあれこれ会話をしているが、思い通りの展開にならない歯がゆさを押し殺しているような硬い表情だった。
★9回戦
開局早々、江崎がリーチ・ツモ・ピンフ・タンヤオ・ドラ・裏1の3000・6000のツモアガリ。
実はこういうチャンス手を悉く成就させているのは江崎だけで、他の三人の攻撃は思うように実らない。
流局が続くまごまごとした展開の中、三人が一番望んでいなかった江崎の大物手が再び成就する。
宣言牌のをヨンスが親権維持の為にチーをし、流れてきた牌でツモアガリ。
おまけに残した暗刻のが裏ドラ。
リーチ・ツモ・タンヤオ・三色・裏3の4000・8000。点棒を5万点代に乗せ、逃げ切りを謀る江崎。
しかし、これに待ったをかけたのがヨンス。
リーチ・ツモ・ピンフ・ドラ2の2000・4000をツモアガって食い下がると、
江崎のリーチをうまく掻い潜って發・三暗刻の6400を直撃。その差を7000点まで詰めてきた。
自分に海底牌が回ってくる最後の巡目、リーチと打っていけなかったのは経験の差なのであろうか。
斎藤であれば、坪川であれば、また今後の展開が少し違ったかもしれない。
結局、オーラスの親番でヨンスは江崎を捕えることができなかった。
タラレバの話ではあるし、結果は変わらなかったかもしれない。
しかし、ここで正面から戦う姿勢を見せることで、そして少しでも差を詰めることで、他の二人に協力しやすい状況を作れたかもしれないし、
もっと江崎に危機感を募らせることもできたかもしれない。
辛い書き方をしてしまったので、ヨンスには申し訳ないが、私はこれがこの先の戦いを大きく左右するポイントなのではないのかと感じてしまった。
9回戦終了時スコア ※()内は9回戦のスコア
江崎 +88.7(+66.0)
坪川 ▲6.2(▲51.2)
斎藤 ▲23.0(▲27.8)
ヨンス ▲60.5(+13.0)
★10回戦
またも開局から江崎の七対子が炸裂する。しっかり場を見極めた単騎。
しかし、このとき斎藤にはチンイツ七対子テンパイ、坪川には国士無双のイーシャンテンの手が入っていた。
江崎のアガリの点数も大きいが、この二人の大物手をつぶしたことも同様いやそれ以上に大きい。
しかし、あきらめない斎藤とヨンスは必至に食い下がり、江崎との点差を徐々に詰めていくと、
斎藤が意地の一発ツモで6000オール。この半荘、逆転で勝負を決めた。
かに思えたが、
オーラス江崎の親番の牌牌がこれである。
3巡目にを引き入れて三色確定のテンパイを入れると、次巡に出た坪川のを見逃し。
逃げ切りを謀ってを仕掛けた斎藤が前巡にツモ切ったを引き入れると、間髪入れずにリーチ。
見事な4000オール。
再逆転で江崎がこの半荘を制した。
10回戦終了時スコア ※()内は10回戦のスコア
江崎 +151.7(+63.0)
斎藤 ▲1.6(+21.4)
坪川 ▲68.3(▲62.1)
ヨンス ▲83.8(▲23.3)
9回戦、10回戦と江崎が連勝し、一人浮きの状態で最終日を迎えることとなった。
長い対局の終了後、選手には疲れているところ大変申し訳なかったのだが、インタビュー動画を撮らせてもらった。
(FRESH!日本プロ麻雀協会チャンネルのダイジェスト番組のアーカイブをご覧いただけると幸いです)
番組URL https://freshlive.tv/npm2001/190348
いわゆる協会ルールと言われる、オカあり10-30のルールであれば、逆転可能な点差である。
各選手も自分が勝つ為の手段を最終日までに必死でイメージして模索してくるだろう。
誰がどこで勝負を仕掛けるのか、そしてどこまで我慢をするのか。
インタビューでも全員相当疲れていた様子であったが、最終日に向けての高揚感が様々な期待感を持たせてくれた。
(文・大窪 貴大)
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