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順位
名前
TOTAL
1日目
6回戦
7回戦
8回戦
9回戦
10回戦
1
江崎 文郎
103.5
57.3
59.9
-56.2
51.8
11.0
-20.3
2
山崎 逸朗
97.8
4.6
-45.7
17.0
11.0
51.3
59.6
3
吉田 基成
92.8
131.7
-18.5
64.2
-50.6
-48.4
14.4
4
大浜 岳
-294.1
-193.6
4.3
-25.0
-12.2
-13.9
-53.7

1日目観戦記|2日目観戦記|最終日観戦記

【雀竜位決定戦 2日目観戦記】

 ドラ
6回戦東3局1本場。江崎は3巡目、この牌姿から1枚目のをスルーするとを引き入れ、次巡に打たれた2枚目のもスルー。
絶好のを引き入れると、ここからリャンシャンテン戻しとなるのトイツ落とし。


ソーズの縦重なりから雀頭振り替えも視野に入れ、ここでドラをリリース。
ドラは当面のライバル吉田に鳴かれるも、すぐさまを引き入れ当然のリーチ。
 リーチツモ ドラ 裏ドラ
ハネマンのツモアガリとなった。
江崎の構想は門前でドラのを重ねるか、メンタンピンクラスの手牌に育った場合に限りドラをリリースするといった実にシンプルなものである。言うは易く行うは難し。この構想がしっかり練れていなければ、道中リャンシャンテン時に役牌が打たれるとアガリ欲しさに迷いが生じてしまったり、を2枚スルーした後もなんとなくイーシャンテンを維持して打としてしまうだろう。それが特別不自然な選択には見えないからなおさらだ。
江崎自身もかつてはそのような選択をしていた時期もあったのではないだろうか。

江崎は麻雀の放送対局を熱心に視聴し、協会Aリーガーである矢島の主催する研究会にも毎度顔を出している。
観る、聞く、参加するだけではなく、これは!と思ったものを実戦で試し、幾度の試行錯誤の上で成功体験を積み重ね、自分の戦略に取り込んできたのであろう。そういった練習を数多くこなさなければ、今までのフォームは簡単に変えられるものではない。

手牌の構想力、構想通りに遂行する決断力。江崎の選択にはそのレベルの高さが随所に垣間見える。
2日目を終えてわずかではあるがトータル首位に立った江崎。決してフロックではないことは彼の麻雀を見ていただければわかるかと思う。

7回戦南4局0本場、トップの吉田と18400点離れた親の山崎。
 リーチ一発ツモ ドラ 裏ドラ

このアガリで一気に吉田をまくると続く5600点差で迎えた1本場は、
12000確定のを引くと迷わずリーチといった。
この時吉田のトップを良しとしないダンラスの江崎が既に2フーロー。
トップだけを目指すのであればダマテンの加点でも磐石。江崎のアガリでもトップは確定なので、ここは江崎を抑止せず自分と江崎の二段構えのアガリでこの半荘を決めにいったほうが良さそうだ。
流局となった際もノーテン宣言することにより自身のトップを確定させる選択肢も残すことができる。

しかしこのリーチの意図はよくわかる。リーチ棒を出せば吉田の条件が2600直撃、3900出アガリまでに緩和する。
いわばこれは「人参作戦」だ。
3着以下と点差のある吉田がここで向かって来ないはずがない。山崎は現状2人に150ポイント以上遅れをとっているトータル3位。
江崎はこの半荘で完全に射程に捉えた。ならば一気に返す刀で吉田までをも叩き斬る腹積もりだ。
最終的な目的は雀竜位戴冠、その手段がトップを獲ること。手段が目的となってはならない。
山崎の大上段の構えは結果的に空を切ったが、そのように考えると正に英断だったと思う。

次局2本場も山崎は4巡目リーチ。
 ドラ

吉田の条件は3200以上の直撃、1000・2000以上のツモ、5200以上の出アガリ。
前局は6000オール、前局は12000以上確定だった山崎のリーチ。これを連続で見せつけられた後も吉田の闘争心は全く衰えることがない。
 ドラ
この牌姿から一発無スジを押すと、次巡当たり牌のを暗刻にして追撃のリーチ。をツモりあげ見事にトップを捲り返したのだった。
ここで向かってこないはずがない―――山崎の予測は間違いなかった。
ただこの結果だけを見ると、協会ルールにおける大罪ともいえる痛恨のトップ逃しをしてしまった格好となった。

しかし山崎は持ち前のリーチ攻勢で9回戦、10回戦を連続トップで決めると、首位江崎にわずか5.7ポイント差に詰め寄るトータル2位で2日目をフィニッシュする。痛恨の逆転劇を許した後もなお果敢に攻めつづけた結果である。

吉田「最終日だけは少し意識するかもしれませんが、道中は着順操作的なことはほとんど意識しませんでした」

吉田のコメントは裏を返せば「特別意識せずとも、普段通りの麻雀を打てば結果は必ずついてくる」といった自信の現れだ。
もしかしたら吉田はただ勝つだけではなく、勝ち方にも少しこだわっていたのかもしれない。

吉田は7回戦こそトップは捲ったものの8回戦はラスを引く。

9回戦ラス目の親番で渾身の小四喜テンパイも空振りに終わるとそのまま連続でラスを引いた。


去年の麻雀プロ団体日本一決定戦で、オータムチャンピオンシップの決勝で、スリアロチャンネルのエキシビションマッチで、吉田の麻雀は数多く見てきた。10回戦東4局1本場3巡目、トップと6900点離れた3着目の吉田の選択。こんなものは打だ。理由をここで書くまでもない。
少なくとも私の知っている吉田がここで以外を選ぶはずがない。そう確信していたのだが―――本当に信じられないものを見た。
吉田はを打つと次巡にをツモ。ここで3者から1枚ずつ打たれたを選択。を暗刻にするとそのまま-待ちでリーチといった。

この打牌が間違いと主張するわけではない。確かにこの巡目にして山崎が既に2フーロー。親の大浜も1フーロー。
テンパイ速度を合わせることを意識すると内側の牌を残すのは定石中の定石なのだ。

他の3人がこのように打ったとしてもさして驚かない。ただ吉田のことをよく知っているからこそ、あの吉田がこの手順を踏んだことに驚いたのだ。
たとえ打としてもツモで場況を一瞥し、のくっつきにも手応えを感じて涼しい顔でツモ切りするのが私の知っている吉田の麻雀だったのだ。

決定戦の舞台には魔物が住んでいる。魔物の正体はプレッシャーだ。
痛恨の連ラスを引いたことで本来のスイングができず、少しだけ当てにいこうとする意識が芽生えてしまったのかしれない。
それにしてもプレッシャーとは無縁そうなあの吉田が・・・・これだから本当に決定戦はわからない。
吉田は初日のポイントを少し減らして首位と10.7ポイント差の3着で2日目をフィニッシュ。2日目の出来には本人も全く納得していないだろう。

南家・吉田
 ポン ポン ドラ
吉田の仕掛けに対して大浜11巡目の選択。現状首位と300ポイント以上離れた最下位。
ソーズの染めとはいえ通っているソーズは1枚だけ。この半荘トップも十分狙える点数状況、好牌姿で迎えた最後の親番。
このを押したくなる理由はいくらでもあった。しかし大浜はほぼノータイムでを抜いた。吉田の手牌が読めているわけではない。
なるほど、これはそういうことだ。


3者が僅差で迎えたオーラス。親番で形式テンパイを入れていた大浜がを引いて小考する。

南家・山崎
 チー チー ポン ドラ
山崎は明らかなホンイツテンパイ。しかし6回戦で迂回した状況とは全く違う。
400近く離れたポイント差、テンパイを組み直す猶予はたった2巡、ノーテンになってしまうと更に負債を積み重ねることが確定なのだ。
しかし大浜はここでもを打たずに迂回することを選択した。

ここ数年最も決定戦に参加している男は誰か?といえば間違いなく大浜である。
ただし選手としての参加ではなく立会人、裏方としての参加ということ。決定戦における勝者はたった1人。
光の影には3人の敗者が必ず存在する。ビハインドを負うと取り返そうと無茶をする。当たり前だが無茶な勝負は成功率が低い。
そうやって傷口を広げ最後まで立っていることができなかった敗者の姿を誰よりも多く見てきたのだ。
ここを落としたら後7半荘しかない。いやまだ7半荘もある!捉え方は人それぞれだが、大浜は後がないこの状況下においても、なんとか粘りこむことによって最後まで立っていようとする姿勢を貫いたのだ。

結果的に大浜の粘りは報われることがなかった。
最終日は自分のために、少なからずいるファンのためにも全力の闘牌を見せて欲しいと願うばかりである。

(文・木原 浩一)

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