順位 |
名前 |
ポイント |
1回戦 |
2回戦 |
3回戦 |
4回戦 |
5回戦 |
1 |
鈴木 たろう |
122.0 |
51.8 |
61.1 |
-56.7 |
6.2 |
59.6 |
2 |
角谷 ヨウスケ |
17.4 |
-50.0 |
17.5 |
11.1 |
58.8 |
-20.0 |
3 |
木原 浩一 |
-16.2 |
9.5 |
-52.0 |
57.4 |
-45.8 |
14.7 |
4 |
小川 裕之 |
-125.2 |
-13.3 |
-26.6 |
-11.8 |
-19.2 |
-54.3 |
【1日目観戦記】 | 2日目観戦記 | 3日目観戦記 | 最終日観戦記 |
今年もこの時期がやってきた。
過去に例を見ないほどの高いボーダーのAリーグを突破した3名が現雀王の木原 浩一に挑む。
その3名は鈴木 たろう、小川 裕之、角谷 ヨウスケ。
決定戦常連の木原・たろうに対して、初の雀王決定戦進出の小川・角谷の戦いとなった。
鈴木 たろう Aリーグ1位
もはや説明不要の協会が誇るモンスター。
Aリーグを当然のように1位で突破し、7年連続での雀王決定戦進出を果たした。
その戦術は大胆かつ繊細で見るものを引き込む。
点数がない時に無茶な攻めも見せるが、
「点数がない時は細い道を通さないと勝てないでしょ」
「ギャンブルに出るときは勝っておいしいギャンブルに出るべき」
と語るたろうが王者へと返り咲くことができるか。
小川 裕之 Aリーグ2位
小川の麻雀を一言で表現するならば「繊細」。
しかし、以前まではその繊細さ故に押しきれない場面も多々あった。
今年はその繊細な守備力に攻撃力もプラスしてこの舞台にやってきた。
「協会に入って木原さんの背中を常に追いかけてきた」
雀王になることで木原に恩返しすることができるか。
角谷 ヨウスケ Aリーグ3位
角谷の麻雀の特徴は貪欲なまでのアガリにある。
「ほっといたらアガられちゃうじゃないですか」
「親リー来たらラッキーだと思わないですか?」
これらの言葉は角谷の麻雀をよく表している。
前年のAリーグでの角谷はなんでもありのスピードタイプといった印象だったが、
「今年はアガリ巡目を以前より遅めに設定したのがはまった」
休まない麻雀+New角谷スタイルで卓上を暴れまわる。
木原 浩一 現雀王
前回の決定戦で木原が見せた執念のようなアガリの連発は見るものに衝撃を与え、
決定戦の新しい戦い方の定義を示したように思う。
「去年とは同じやり方はしないつもり」
と語る木原だが、今年の相手をどのように捉え、王者の麻雀を見せつけるか期待したい。
★1回戦(木原-角谷-小川-たろう)
東1局、木原が角谷から一発でを打ち取り12000。
角谷はドラのが浮いているがそれでも勝負に出た。
この放銃に関して、
「東一局は僕は降りないんで」と角谷は語っていた。
なるほど、この放銃は角谷なりの宣戦布告なのだろう。
12000を放銃して、
「よし、平常運転だ。これでいける」
とコメントに書かれるのは角谷くらいではないだろうか。
東1局1本場
いきなりたろうが魅せる。
ドラ
ここからを切りテンパイをとると、
7巡目ツモ→打
8巡目ツモ→ツモ切り
9巡目ツモ→打のフリテンリーチ
この手をハネ満にできる人間が何人いるだろうか。
まさに神の選択といえるような手順でたろうがハネ満ツモ。
これをフリテンリーチした男が東3局では、
南家・たろう 7巡目
ドラ
この手をダマテンにしてくるのだから、対局者としては掴みどころが難しい。
この2局はたろうの神髄である大胆さと繊細さが見られた。
南場に入って点棒状況は以下の通り。
木原 31000
角谷 4800
小川 28900
たろう35300
角谷はここまで押すか仕掛けるかアガるか放銃するかと全く休んでいない。
まさに有言実行である。さらに親番では新しい角谷のスタイルを見せる。
南2局 親・角谷
ドラ
ここからのトイツを払いホンイツに一直線
字牌を重ねにいった結果、小川に余り牌で放銃したが以前の角谷とは違い打点を狙いにいく姿が見られた。
オーラス
小川の手に注目していただきたい。
<単騎でリーチ>
・ツモれば無条件でトップ
・たろう以外からは裏ドラが必要
<フリテンの待ちでリーチ>
・700・1300ツモで3着→2着
・一発か裏ドラでトップ
皆さんならどちらを選択するだろうか。
小川の選択は単騎。をツモった時に後悔しない選択である。
木原も高めツモでトップのリーチを打つが流局。(裏ドラは)
ハネ満ツモのリードを守り切ったたろうがトップで終了。
1回戦スコア
たろう+51.8
木原 +9.5
小川 ▲13.3
角谷 ▲50.0
★2回戦(小川-たろう-木原-角谷)
たろうが3者の勝負手を悉く潰して迎えた南3局。
親の木原が高目12000のリーチ。
カンのテンパイを外したたろうだが、木原のリーチを受けカンでテンパイを組みなおし追いかけリーチ。
程なくツモアガり2000・4000。
ちなみに親リーチが入らなかった場合はを切ってもう一度テンパイを外していたとのこと。
高い手だからこそリーチで蓋をせずアガリ率を上げる選択である。
オーラスに角谷が一度たろうより上に立つが、場況を読み切り角谷から2600を直撃し2連勝を飾る。
まだ序盤とはいえ、たろうが2連勝では3者の心中は穏やかではない。
第11期雀王戦の初日のたろう5連勝を思い出したのは私だけではないだろう。
他の3者はたろうをマークせざるを得ない。
しかし、リードした後に相手の心情を加味した上での手牌進行ができるのもまた、鈴木たろうなのだ。
2回戦スコア ()内はトータル
たろう+61.1(+112.9)
角谷 +17.5(▲32.5)
小川 ▲26.6(▲39.9)
木原 ▲52.0(▲41.5)
★3回戦(角谷-木原-たろう-小川)
東3局
いわゆる遠くて高い仕掛けで、西家の角谷がたろうから8000。
ロン ポン ポン ドラ
東4局
マンズに手をかける選択もあるが仕掛けている角谷の手がドラドラ以上でテンパイと読みここから打。
実際角谷は、
ポン ドラ
の満貫のテンパイ。
地味に見えるが小川はこういった場面で無駄な放銃はほとんどしない。
我慢の展開は続いているがこの丁寧なアガリを見てまだまだ問題ないと感じた。
すぐにをツモり500オール。
トップが偉い協会ルールではやはりラフなリーチや仕掛けが増える印象があるが、その中で小川の麻雀は異才を放っている。
・・・そういえばここまで我慢を重ねている男がもう一人。
南1局
ここで現雀王の木原がついに牙を剥く。
5200の愚形テンパイではあるが、親の角谷が役牌を加カンしており、まだテンパイしていなさそう。
「角谷くん、どうせ降りないんでしょ?」
と言わんばかりに思い切ってリーチとでた。
それが功を奏し見事一発でハネ満をツモアガる。
南2局
小川のリーチに対しドラを切って角谷が追いかけリーチ。
このリーチを打つ・・いや打てる人間がどれだけいるだろうか。
少なくとも協会のAリーグでこのリーチを打てるのは角谷しかいないだろう。
勝負どころでアガる算段があれば返り討ち覚悟で道を切り開く。
それが角谷の麻雀なのである。
たろうがツモればハネ満のリーチで3軒目で追いかけるが、角谷がリーチ棒2本をかっさらうアガりを決めた。
オーラスは親の小川が5巡目でイーシャンテンとなっていたが、まさかの一人ノーテンとなり終局。
3回戦スコア ()内はトータル
木原 +57.4(+14.9)
角谷 +11.1(▲21.4)
小川 ▲11.8(▲51.7)
たろう▲56.7(+56.2)
★4回戦(小川-木原-たろう-角谷)
南1局
木原に何か気になった局はあったかと聞いた時に真っ先に出てきたのがこの局。
あくまで門前ならば上の3色もみて打だろうか。
ドラドラということもあり、タンヤオも見て木原の打牌は。
特に違和感のある打牌ではないがもっと門前にこだわっても良かったと木原は語る。
6巡目 ツモ→打 (手牌:)
7巡目 ツモ→打 (手牌:)
9巡目 ツモ→が2枚枯れているためを先打ち (手牌:)
11巡目 ツモ→打 (手牌:)
13巡目 ツモ→-が薄くなったため打でダブルフリテン残し (手牌:)
角谷からリーチが入るも、
15巡目 ツモ→打でフリテンリーチ
南家・木原 15巡目
ドラ
-には相当手ごたえがあったと思うがここは流局。
木原の構想の中に9を残す手順もあっただけに悔しい流局となってしまった。
オーラス
ここでのたろうの選択が面白い。
通常ならばを切ってリーチだと思うが、たろうの選択は切りリーチ。
自分からが3枚見えていたので裏ドラ枚数の確率かと思ってたろうに聞いたところ
以下の回答が返ってきた。
「角谷くんにはは鳴かれそうだと思ったんだけど、
むしろを鳴かせて土俵に上げて直撃チャンスを増やそうと思ったんだよね」
たろうは今期のリーグ戦でも親リーに降りてるかと思えば、いきなり生牌の役牌を切り他家を動かしたりといったこともしていた。
この時はこの局の思考とは異なり、
「ただ降りてるだけでは自分が損しかしないから放銃し合って欲しい」
といったことだったが、こういった戦略の幅の広さがたろうの強さである。
もちろんリターンを得る選択にはリスクも伴う。角谷にを鳴かれた後に5800の放銃となってしまった。
最後はたろうが2着を決めるアガリで終局。
4回戦スコア ()内はトータル
角谷 +58.8(+37.4)
たろう+6.2(+62.4)
小川 ▲19.2(▲70.9)
木原 ▲45.8(▲30.9)
★5回戦(小川-たろう-角谷-木原)
ここまで4連続3着の小川、苦しい展開が続く。
なんとか最後にトップをとりこの日を終わりたいところだが・・・
この半荘は敢えて小川に注目してみよう。
東1局
本日初めてと思えるような一人旅になり、小川の一人テンパイ。
東1局1本場
角谷にリーチ・一発・ドラ1の5200放銃。
ロン ドラ 裏ドラ
東3局
高め456の3色に仕上げるも不発。
南1局
このテンパイを外すと同巡に角谷からカンが入りをツモ。ピンズの好形変化を狙って--のフリテンに受ける。
角谷からリーチが入るが当然全て勝負する。
と思ったが・・・フリテンのツモではツモるしかなく1300オール。
仕方ないことではあるがハネ満以上が見える手だけに本人も不服だろう。
南1局1本場
を仕掛けた小川だが木原からリーチを受けてを掴んでしまう。
この手、を押す人が多いのではないだろうか。小川の選択はトイツ落とし。
これには解説の鈴木達也でさえも
「この我慢はできない」
と言っていたほどの胆力を見せた。
しかし、手が伸びて、
ポン ドラ
となる。
この形になればとをプッシュ。
これは木原の当たり牌。さらに裏裏・・・
南2局
ダマテンにしていた親のたろうに2900の放銃。
ロン ドラ
南2局1本場
山3のチートイドラドラの単騎を曲げるが、たろうが3枚とも吸収。
これはドラのがトイツにも関わらず、チートイの可能性を読みを止めたたろうが素晴らしいが、
そこに3枚ともいかなくてもと思わずにはいられなかった。
オーラス
ドラドラのイーシャンテンから持ってきた役牌がたろうに捕まる。
ロン ポン ドラ
たろうがトップで終局。
小川にとってはあまりにも巡り合わせが悪く、悪夢のような半荘となってしまった。
しかし、苦心しながらも随所に粘りと光るプレーを見せた。
5回戦スコア ()内はトータル
たろう+59.6(+122.0)
木原 +14.7(▲62.4)
角谷 ▲19.2(+17.4)
小川 ▲45.8(▲125.2)
終わって見ればたろうが3勝と差をつけた。
たろうはリードしているときは憎らしいほどに隙がない。
1半荘目のフリテンリーチに代表されるようにトリッキーな選択や大胆な攻めが注目されるが、
この辺りのゲーム展開を読む能力の高さにも是非注目していただきたい。
木原は全体的には大人しかったが虎視眈々と勝負の時を窺っている。
この日は従来のオーソドックスな打ち手という印象を受けたが、この先に前回の決定戦のような思い切った戦略を取るのか、
または王者としてどっしりと構えた麻雀を打つのだろうか。木原の選択に注目したい。
角谷は取り上げていない局でも多くの場面で暴れ回っていた。
角谷を見ていると無謀だと思える場面が多いかもしれないが、それは1局という単位でしかない。
トップラスでもプラスになるルールでは放銃が罪なのではなく、トップを取り逃すことが1番の罪だと彼は考える。
だから押す。そして最終的にはスコアをプラスに持っていく。
麻雀というゲームに対してのバランスの取り方が人と違うだけである。
この先も暴れ回り、きれいに打つだけが麻雀ではないという姿を見せていって欲しい。
小川は恵まれない展開が続いていたが、今日は我慢のしどころだった。
むしろ小川だったからこそ、この程度のマイナスで済んだと考えるべきだろう。
Aリーグ在籍以前から彼らの打ち筋を研究してきた成果とAリーグ2年間で磨いてきた力を発揮することを期待したい。
全くタイプの違うこの4名がこれから先どんな戦いを生み出してくれるのだろうか。
残すは15半荘、全員の見据える先はただ一つ。
(文・浅井 堂岐)
▲このページのトップへ
|