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順位
名前
TOTAL
1日目
2日目
11回戦
12回戦
13回戦
14回戦
15回戦
1
鈴木 たろう
69.0
63.6
-60.6
12.2
11.6
70.7
11.9
-40.4
2
五十嵐 毅
14.3
76.2
-34.3
57.2
-23.1
-26.0
-20.0
-15.7
3
金 太賢
-32.0
-96.7
53.3
-60.7
56.0
-47.0
58.3
4.8
4
鈴木 達也
-51.3
-43.1
41.6
-8.7
-44.5
2.3
-50.2
51.3

【3日目観戦記】  | 1日目観戦記 | 2日目観戦記 | 最終日観戦記 | 

雀王決定戦も3日目を迎えたが、ここまでは非常に僅差の進行。

(10回戦終了時)
五十嵐 +41.9
たろう +3.0
達也 ▲1.5
金 ▲43.4

全員が初日の気分で、フラットな麻雀を打てることだろう。
細かい前書きは抜きにして、早速この日の麻雀を見ていこうと思う。

 

★11回戦★
東1局、金とたろうがさっそくぶつかる。

ここはたろうの勝ち。

「先行リーチの現物だし、ダマでもいいとは思ったけど…」

後にそう語った金に後悔があろうはずもないが、
座って一発目のリーチ、アガれないどころか放銃に回ってしまうのは気分がいいものではないだろう。

次局も五十嵐の早い仕掛けに追いついたのは金。

だが、これも結果は五十嵐に放銃。
当然の手順、当然のリーチが放銃に回ってしまう。
そこに関連性はあるはずもないが、ほとんどの人が嫌な気持ちになるはずだ。
その精神的な変化が、今度は手順上にミスを生む。
これが「流れ」と呼ばれるものの、ひとつの側面ではないだろうか。

「この局もそうだね、僕はリーチを打ってきたから…」

そう言った金、この程度ではもちろん揺らぐはずがない。
あくまで自分のスタイルを守った結果なのだ。
しかし、悪い展開には、誰しも少なからずストレスを感じるものだと思う。

牌を流す金の手が、少し震えていた。

東3局、その金のリーチを蹴った五十嵐にチャンス手が入る。

五十嵐(南家)
 ドラ

なんと1巡目で三色ドラドラのイーシャンテン。
この配牌を見て、ゆっくりとした動作でお茶を口に含む五十嵐。
好配牌を得た高揚を悟られまいとした、無意識の行動だろうか。

しかし、希望はすぐに打ち砕かれる。
4巡目、ヤメ気味に中張牌をバラ切りしていた金のをたろうがポン。

たろう(東家)
 ポン ドラ

。 ドラドラだが、若干ブラフ気味の仕掛け。
このポンを見て、思わずツモ切る手に力が入る五十嵐。
更には7巡目に達也がをツモ切り、テンパイ牌を喰い流されている。

この間隙を突いたのは達也。

達也(西家)
 ドラ

10巡目にこのリーチ。
リーチのみだが、手組み的にも一本道のテンパイ。

これを見てオリに回る金、宣言牌のを合わせるとたろうからチーの声。

たろう(東家)
 チー ポン ドラ

いつの間にか、手をここまでまとめ上げていた。
絶好のをチーして、-待ちの5800。
これを押し切って、たろうがこの局を制した。

たろうは遠目からの打点を見た仕掛けを多用する。
それが本来のたろうのプレイスタイルでもあるのだが、
この日はそれが顕著に表れていたように思う。

かたや好配牌をモノに出来なかった五十嵐、
先制リーチを無視されてアガり切られた達也、その心中やいかに。

1本場は達也が2600をたろうからアガリ返し、東4局。
五十嵐のドラが早い。

五十嵐(東家)
 ドラ

ここから打
好形変化を見た親番のイーシャンテン、
当然と言えば当然の打牌だが…

五十嵐は「至高の守備派」という二つ名も相まって、
守備的な印象を抱いている方も多いと思う。

しかし、本来の五十嵐は守備派などではない。
むしろ攻めるべき局面では他の誰よりも深くまで攻めてくるかも知れない。

では、何故五十嵐は守備派と呼ばれるのか?
その答えはこの後、出ることになるだろう。

さて、運良くには声がかからなかったものの、
その後のツモが効かない五十嵐。

そうこうしている間に、ファーストテンパイはたろう。

たろう(北家)
 ドラ

場にはが2枚、に至っては既に枯れている。
は打つが、当然のダマ。

更に次巡、金が達也のに声をかける。

金(西家)
 チー ドラ

たろうのを見て間に合わないと思ったか、
三色のイーシャンテンに受ける。

金はこういった他家のスピードに合わせるのが上手く、
またその場合、自分の打点にはこだわらない。
アガらなければどんなに美しい手牌も価値はなく、
そこには一切の美徳やプライドの差し挟まる余地などない。
そんな金の声が聞こえてきそうな仕掛けだった。

しかし今回はメンゼンの敵が3人いる。
1人なら捌けそうな手ではあるものの、2人来るとどうか?

そう考えていると案の定というか、達也からリーチが飛んでくる。

達也(南家)
 ドラ

打点は安いが、5枚残りの-
金としては、今を切ったたろうと親の五十嵐を警戒していたはず。
達也が先制で曲げてくるのは予想外だったかも知れない。

流石に押し返せないたろうがすぐにギブアップし、
金も現物、ノーチャンスと抜いたところで今度は五十嵐が参戦。
金の切ったをポンして、無筋のを強打。

五十嵐(東家)
 ポン ドラ

が場に枯れていて苦しいが、ここが勝負所と読んだか。
親権維持に賭けるが、ここは枚数に勝る達也がをツモり上げる。
裏も乗らず、700・1300のアガリ。

五十嵐の攻めと、金の捌き。
結果は達也の勝ちとなったが、二人の個性が出ている局だと思う。
一方の達也、見た目の先制は取れるものの打点がない。

南1局、ドラドラの金がから仕掛けると、
それに呼応するかのようにたろうがをポン。

金(南家)
 ポン ドラ

たろう(西家)
 ポン ドラ

「あーいう手をタンヤオだけにしたくないんだよね」

とは後のたろうの弁。
だが、これが上手くいくのがこの日のたろう。
早々にドラのを暗刻にしてテンパイを入れた金に、
終盤リャンシャンテンから一気に手牌を進める。

終わってみれば、達也のリーチもかいくぐって5200のアガり。
しかし、この手順を踏める打ち手が他にいるのだろうか?
点棒状況的に大きく優位に立った、というほどではないが、
たろうらしさに溢れる独創的なアガリだった。
後に見返した自分の観戦メモには、興奮した字体でこう書いてある。

「今日はたろうの日!」

だが南2局、今度は達也が満貫ツモ。
細かいアガリでなんとか辻褄を合わせてきた達也、
これで僅かながらたろうを交わしてトップ目に躍り出る。
一方、満貫を親っかぶりした金はトビ寸前でラス目に。
勝負には参加出来るものの中々勝ちが拾えない。

南3局は先行した五十嵐が達也のリーチ宣言牌をとらえ、1300。

そして、オーラス。
ここまで機を待っていた五十嵐が、渾身の4000オール。

たろうと達也の仕掛け、金のリーチを掻い潜ってのアガリ。
これには五十嵐も手応えを感じただろう。
半荘通しての攻めの姿勢が、ようやく形になった瞬間だ。
対して、金はこのアガリで遂に箱を割ってしまう。

1本場を迎えて、点棒状況は東家から

五十嵐 40200
達也 30300
金 ▲1700
たろう 31200

この局が、五十嵐が守備派と呼ばれる所以だろう。

8巡目、早々にテンパイを入れたのは五十嵐。

五十嵐(東家)
 ドラ

は場1でいかにも拾えそう。
下との点差がまだまだ安全圏とは言えないため、
単騎でリーチに行くのも悪くはないと思うが、
五十嵐はを切ってダマに受ける。

このダマテンが、五十嵐を守備派たらしめているのだと思う。
つまり五十嵐の守備とは、点棒を持ってからの慎重さの事なのだ。
まだ順目は中盤に差し掛かった程度でしかないのだが、
この時点で五十嵐は、流局ノーテン終了を考慮に入れている。
ここでアガっても、次局差し返されるリスクが消えるわけではない。
ならばこの局だけのリスクで、この半荘をやりすごそうという考えだ。

実際、この後他家の動きに五十嵐はテンパイを崩し、
最終的には目論見通り手牌を伏せて、この日の緒戦をトップで飾った。

五十嵐+57.2 たろう+12.2 達也▲8.7 金▲60.7

(11回戦終了時)
五十嵐 +99.1
たろう +15.2
達也 ▲10.2
金 ▲104.1

 

★12回戦★

少し縦長の展開になったが、まだまだどうなるかはわからない。
ただ、金はそろそろトップが欲しい所。

東1局は五十嵐の先制に子方全員が受けに回り、流局。
1本場、金の手牌が苦しい。

金(南家)
 ドラ

1巡目にをツモり、打でオリ気味に進める体勢。
今回も金以外の戦いか…と思って少し卓を離れると、
終盤に金が2つ仕掛けている。

金(南家)
 ポン ポン ドラ

(苦しい仕掛けだな…)

そう思って見ていると、達也からツモ切りリーチ。

(あぁ、言わんこっちゃない。受けきれるのか?)

と考えたのもつかの間、金が力強くをツモ!

金(南家)
ツモ ポン ポン ドラ

「今の跳満はすげぇ!」
と、観戦に来ていた須田良規をも驚嘆させるアガり。
バラバラな手牌をここまでまとめあげた金、
この跳満でようやく一息ついたか。

東2局は五十嵐が700・1300。
東3局もたろうの700オール、
1本場は五十嵐が500・1000は600・1100と小場の展開が続き、東4局。

ここで達也が魅せる。
序盤こそ平凡に進めていたものの、5巡目。

達也(東家)
 ツモ ドラ

ここから突如打
なるほど、ホンイツならターツが足りているし、
この後のソーズと字牌でメンホンチートイへの渡りも打てる。
メンツを壊すものの、それほどのロスはない。
点棒のない親番、ここはを叩いて最低限連荘したいところだが、
達也はそれを良しとしない。

鈴木達也という打ち手は、独創的な手筋と打点の高さが特徴だ。
その手組みのオリジナリティから、
「ファンタジスタ」の異名を欲しいままにしている。
親番であっても躊躇なく面子を崩していく姿は、
見る者を惹きつけることだろう。

結果五十嵐とたろうに先行リーチを打たれるものの、
セーブしたマンズを重ねて単騎のリーチ!

これを受けて金も、
一旦は迂回していた手からフリテンをチーして4人テンパイ!
結果は…

金のチーで喰い下がってきたで、五十嵐がたろうに放銃。
打点こそ2600と安いものの、大きなアガリとなった。
若干不満気な達也、しかし内容では十分に魅せてくれたと言えるだろう。

南1局、またしても五十嵐が先制リーチ。

五十嵐(東家)
 ドラ

どちらを引いても4000オール、十分な手牌だ。
これにたろうが突っかかっていく。

たろう(西家)
 ツモ ドラ

ドラを温めていたところに、引き戻した
それにしても、得体の知れない親リーチに向かっていくには不十分に見える。

しかし、たろうの選択はリーチ。
これをなんと五十嵐が一発で掴み、裏ドラも乗って8000のアガりとなる。

五十嵐の顔が歪む。
対して、当然のような顔で点棒を受け取るたろう。

これが決定打となるか…と思いきや、
南2局はまたも五十嵐。

簡単に700・1300をツモアガる。

南3局。

この局も五十嵐がポンから動くが、
今度は達也が早かった。5巡で以下のリーチ。

達也(南家)
 ドラ

安全牌のない五十嵐、しぶしぶといった感じで押し返す。
トップ目のたろうは親番ながら戦える形にならず、撤退。

金も始めは撤退の意思を見せていたものの、
12巡目に五十嵐が長考からを抜いたのを見て、テンパイを取りに行く。

金(北家)
 チー ドラ

トップ目たろうとの点差は1400。
達也にツモってもらってもいいところかと思ったが、
たろうが完全にオリているため、
自分がテンパイ出来れば確実にたろうの上に立ってオーラスを迎えられる。

道中若干のリスクはあったが、ここは金の作戦勝ち。
金と達也の2人テンパイ。

オーラスは簡単に金がアガって結局どちらにしてもトップだったものの、
金の戦略が光る1局となった。
それにしても、達也のリーチが中々アガリに結びつかない。

金+56.0 たろう+11.6 五十嵐▲23.1 達也▲44.5

(12回戦終了時)
五十嵐 +76.0
たろう +26.8
金 ▲48.1
達也 ▲54.7

 

13回戦の場決めが終わるなり、話題は南1局へ。

「あーいうのがアガれるから上手くなんないんだよ!」
とお怒り気味の五十嵐に対し、

「だってそういうゲームでしょ?」
「確かにリスクは高いけど、ハイリスクハイリターンだからしょうがないよね」
と冷静なたろう。

これがたろうの尖ったバランス感覚なのだろう。
とても常人に真似出来るものではないが、
20半荘というスパンではどこかでリスクを背負うべきなのかもしれない。
少なくとも、リスクから常に逃げ回っていては頭を狙うことは出来るはずもない。

 

★13回戦★


この半荘は、一言で表してしまえば

「完全なる鈴木たろうの半荘」

だった。

まずは東2局の3巡目。

たろう(北家)
 ドラ

(カンが表示牌に1枚あるし、とりあえずでも切るかな…?)

と思って見ていると、たろうは打
次巡ツモも落とし、更にツモ

たろう(北家)
 ツモ ドラ

難しい手になったが、あくまでカンは外さず打
これが功を奏し、ツモで三暗刻テンパイ。
すぐにツモで2000・4000。

この手、例えば僕が打っていると、
をツモった巡目でようやくテンパイが入る。

 ツモ ドラ

たろうにだけ許された、最速のアガり。

更に次局。

たろう(西家)
 ツモ ドラ
ここから打とし手なりを否定すると、
6巡目には重ねたをカン。

たろう(西家)
 アンカン ドラ

じっと場況の変化を見つめるたろう。

8巡目にを重ねると、を切って縦を捕まえに行く。
次巡達也から先行リーチが入るも、
すぐにを重ねてスジのを打ってテンパイ。
更にをポンして、トイトイに受け変える。

たろう(西家)
 ポン アンカン ドラ

ここからトップ目にも関わらず達也のリーチに無筋を2枚プッシュ!
さすがはたろう、
リターンのある手なら例えトップ目で相手が親リーでも関係ないと言ったところか。
しかしさすがに巡目も深くなってきたところで、更に無筋のを引いてオリ。
結局達也の1人テンパイとなったものの、たろうの手順が際立つ1局となった。


更には1本場。

前半荘の五十嵐対たろうと奇しくも同じ形でたろう対金。
今度は当たり前のようにリャンメンのたろうが勝ち、
あげく裏裏載せてまたしても8000のアガリとする。

まさにたろう絶好調。これには五十嵐も首を傾げるくらいしか出来ることがない…。

11回戦に続きまたも土俵際に追い詰められた金だが、東4局はその金が逆襲。
まず0本場は1人テンパイとすると、
1本場は2000は2100オール、
2本場も1人テンパイとし、なんとか達也と五十嵐に追いついた。

しかし3本場、をポンして粘ろうとする金を横目に、
五十嵐が軽く場を流す。

1枚目のをふかし、形が良くなってからのスピードアップ。
五十嵐の我慢が実る。

南1局もまずは流局で親のたろうが1本積むが、
ここは金が冷静にピンフのみをダマ。

リーチを打って少しでも点棒を稼ぎたいところだが、
たろうの親番を蹴ることを優先する。
確かに点棒を持ったたろうは、無理矢理リスクを押し付けてくる厄介な相手だ。
供託の1000点を拾えれば御の字といったところか。

そして小場で局は進み、南3局。
激しい2着争いをする3者の手がぶつかる!

じっと耐える展開だった達也、ここは競り勝って大きな1000オール。

ここから達也の巻き返しが見られるか…
一瞬漂ったそんな空気を、いとも簡単にたろうが消し飛ばす。

シャンポンをあっさりと引き寄せ、当然のように裏を乗せる。
遂にたろうの点棒は5万点を超えてしまった。

最後は達也がもう勘弁してくれという感じのアガりで終局。

競技麻雀において看過出来ない縦の変化への対応と、
打点を組んだ後の強烈な押し返し。

鈴木たろうの良さがすべて、この半荘に詰まっていたと言っても過言ではないだろう。

たろう+70.7 達也+2.3 五十嵐▲26.0 金▲47.0

(13回戦終了時)
たろう +97.5
五十嵐 +50.0
達也 ▲52.4
金 ▲95.1

 

「受けばっかりで厳しいね」
とは達也。
確かに、ここまで達也がアドバンテージを取る局面はほとんどない。
それでも負けを最小限に抑えているのは、
達也のスタイルと確かな技術を感じさせる。

対して、ひたすらアドバンテージを作りに行くたろう。
薄氷のバランスだが、だからこそ決まれば大きな価値がある。
事実、たろうの仕掛けが先に置いてあるせいで、
周囲が押しきれない局面がここまでもいくつかあった。
このままバランスを崩さなければ、たろうが走ってしまいそうなのだが…

 

★14回戦★

東1局、早速金が喰らいついていく。

金(南家)
 ドラ

ここから親の達也が打ったをチー。
ちょっとフライング気味に見えるが、これが金のひとつの持ち味。
材料はある程度揃っているので、相手が間合いを見誤ればスピードは飛躍的に上がる。
事実、この後全員がマンズを乱打している。
ただひとつ誤算があったとすれば、鳴ける牌だけは誰も打ってくれなかった、
というか持っていなかったことか…
その間にひっそりテンパイを入れていた五十嵐が10巡目に高目ツモ!

五十嵐(北家)
 ツモ ドラ

この男、やはりしぶとい。
達也は何も出来ずに親っかぶりと、またしても苦しい立ち上がり。

東2局、苦しいながらも仕掛けてテンパイを入れた金、親権を維持。
しかしその1本場、またもたろうが現れる。

たろう(南家)
 ドラ

3巡目、ここから打としてリャンシャンテンを拒否すると、
ソーズを連続で引き入れ、6巡目にはを仕掛けてこの形。

たろう(南家)
 ポン ドラ

常人なら、カンの1000点テンパイになっている所。
かなり強引な仕掛けではあるが、更にここから金の切ったをチー。
すると次巡をツモ、これ以上ない引き!
すぐにも出て、このテンパイへ。

たろう(南家)
 ポン チー ポン ドラ

のみの手が、気が付けば飛躍的な打点の向上。
単騎は仕掛けた五十嵐にトイツなのだが…

掴んだのは、絶好のイーシャンテンだった達也。
ピンフドラ3の3面張では、止まるべくもない。
最高のテンパイから、最悪の放銃になってしまう。
せめて入り目が逆なら単騎にも出来たのだが…

東3局は金の1000・2000。
東4局も金がチートイドラドラを五十嵐から直撃。

五十嵐は形式テンパイで親権を維持したいがための放銃。
金の河もチートイとは断定出来ないが、これは痛い。

しかし上位陣で点棒のやり取りはあるものの、達也は完全に蚊帳の外。
極めつけは南1局。

初巡から、まるで金にアガらせるために打っているかのような1局。
極めて自然な手順で打った牌が、7牌中4牌も金に声をかけられてしまう。

それでも諦めない達也、南2局、南3局とテンパイを入れるがこれも実らず。
オーラスは3巡目テンパイのたろうがあっさりと2着を確定し、14回戦は終わった。

金+58.3 たろう+11.9 五十嵐▲20.0 達也▲50.2

(14回戦終了時)
たろう +109.4
五十嵐 +30.0
金 ▲36.8
達也 ▲102.6

 

意気消沈の達也を見かねて、

「そろそろ本気出してもいいですよ」

と軽口を叩いてみるも

「もうキツイ…」

と呟いて去って行く達也。
確かに、そろそろ点差を詰めていかなければもう残りは6半荘しかない。
万一次にラスを引けば、いよいよ苦しくなる。

しかし、これで簡単に終わらないのが鈴木達也であり、
今まで簡単に終わってこなかったからこそ、鈴木達也なのだ。

 

★15回戦★

決定戦もそろそろ終盤、ポイント差が否が応にも目に入ってくる。
ここでたろうにトップを取られるようでは、最終日が厳しい。
それでも、この時点ではまだ自分のポイントを優先すべきだろうか。

最初の動きは東2局。
是が非でもトップを取りたい金と達也が、染め手でぶつかる。

本手同士の戦い、ここは配牌で12枚マンズと字牌をもらっていた達也の勝ち。
「あのポンはやりすぎた。もう入ってるに決まってるのに思わず…」
とは後の金。
確かに達也は怪しげな河だが、流石にもうテンパイだろう。
ホンイツにしろトイトイにしろ、ここから字牌を2つ切り飛ばすのは至難の業。
達也にとっては久しぶりの嬉しいアガリとなる。

東3局は五十嵐が500・1000をツモり、
東4局はたろうが速攻で5200を五十嵐からアガる。
この2人ももちろん、黙って見ているつもりはない。

ここから熾烈な争いが始まるかと思ったのだが…
この半荘のターニングポイントは思いの他早く訪れた。

その南1局、先手は7巡目の金。
金(西家)
 ドラ
はそこまで自信は無かったけど、ダマにしている理由もないし」
金は後にそう語っていたが、このリーチがドラマを起こす。

次巡、たろうの手牌がこう。

たろう(南家)
 ツモ ドラ

金の河はこうなっている。

たろうはここから打
人によっては当然の打牌だが、これを鈴木たろうが打つと若干の違和感がある。
金のは全て手出し。
若干変則的な切り出しだが、通常の手組みならは関連牌になっている可能性が高い。
ただオリるならまだしも、スタイルとして簡単には諦めない以上、
ここはせめてからではなかっただろうか?

前にも述べた通り、たろうの麻雀は薄氷のバランスで成り立っている。
つまり、少しでも道を誤ると…

こうなってしまうのだ。
裏目の、ドラのと引き、一通ドラドラのフリテンテンパイ。
そこに持ってきたでたろうはチラっと点差を確認したものの、
このを打たなければ、それは鈴木 たろうではない。
結果、裏ドラが乗って痛恨の8000放銃となってしまった。

瞬間、完璧に見えたたろうの牙城に空いた隙。
これを見逃すような面子ではない。

南2局のたろうの親番は、金が一瞬で流す。

暗刻で点棒状況的にももう少し上を狙いたい所だが、
ここはたろうに仕事をさせない。

南3局もたろう・金・五十嵐の3人テンパイの流局から、
1本場はたろうのホンイツが届く前に、五十嵐が捌く。

これで、たろうをラス目にしたままオーラス。
達也にとってはこれ以上ない並び。
金は1000・2000で達也をまくってトップに立てる。
五十嵐もこの親番は連荘したい。
自らを窮地に追い込んでしまったたろうはひとつでも着順を上げたいところ。

開局早々、五十嵐の第一打を金が仕掛ける。

金(北家)
 ポン ドラ

ドラが重なってもよし、状況によっては2着でもよし、
相手の手が止まればなおよしの仕掛け。

「…優勝、するしかないですよ」

自分に言い聞かせるように、そう呟いた金。
この日の金は、一貫して自分の麻雀を打てていたように思う。
今回の仕掛けもそうだが、面前にもその打点構成力は随所に顕れていた。
最終日も金らしい麻雀を期待したい。

これに続いたのが達也。

達也(南家)
 ドラ

ここから意を決したように五十嵐のをチー、タンヤオへ向かう。

達也は非常に苦しい展開だったが、
耐え難きを耐え、忍び難きを忍んだ結果、周りに離されることなく食らいつくことが出来たと思う。
これが他の誰かであれば、もっとポイント差が開いていたかも知れない。

五十嵐もタンピン三色のイーシャンテンだったが、
間に合わないと踏んだか、達也のへ声をかける

五十嵐(東家)
 ポン ドラ

「今日は酷かった…明日はまぁ、頑張るよ」

そう言って足早に会場を後にした五十嵐。
過去の五十嵐なら、この手は鳴かなかったかも知れない。
それは良い事なのか悪い事なのか知る由もないが、
協会設立から10年、そのスタイルはより攻撃的に進化していった。
最終日もこのスタイルで、悲願の雀王奪取を狙いに来るだろう。

そして12巡目、たろうがを横に叩きつけた。

たろう(西家)
 ドラ

たろう「ついに出ちゃったね、伝家の宝刀」
綱川「宝刀?」
たろう「放銃だよ」

そう笑いながら話したたろう。
3日目の主役は、間違いなくこの男だった。
その仕掛けで場を制圧し、高い打点で他家を突き放す。
チャンスと見ればどこからでも喰らいつき、
その牙は相手の肉を噛みちぎるまで離れはしない。
だが一方でその鋭い牙は、扱いを間違えれば自分を傷つける刃と化す。
たろうの良い面、そして悪い面がよく出ていたのではないだろうか。

14巡目にはついに4者テンパイが入る。
この戦いを制したのは―

「本気、出すって言ったでしょ?」

最終日を前にして、眠れる獅子は遂に雄叫びを上げた。
四者四様の戦いは、遂に最終局面を迎える―

達也+51.3 金+4.8 五十嵐▲15.7 たろう▲40.4

(15回戦終了時)
たろう +69.0
五十嵐 +14.3
金 ▲32.0
達也 ▲51.3

 

(文:綱川 隆晃)

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