 
【ポイント成績】
順位 |
名前 |
TOTAL |
1日目 |
2日目 |
11回戦 |
12回戦 |
13回戦 |
14回戦 |
15回戦 |
1 |
大崎 初音 |
134.6
|
51.0
|
51.9
|
51.0
|
13.0
|
-47.1 |
-59.2
|
74.0
|
2 |
杉村 えみ |
26.8 |
209.1 |
-141.2 |
6.0
|
-13.2
|
-24.5 |
8.9
|
-18.3
|
3 |
崎見 百合 |
-26.7
|
-105.7
|
73.6
|
-41.3
|
-53.1
|
14.7 |
81.4
|
3.7
|
4 |
朝倉 ゆかり |
134.7 |
-154.4 |
15.7 |
-15.7
|
53.3
|
56.9 |
-31.1
|
-59.4
|
【最終日観戦記】
|1日目観戦記|2日目観戦記|
4人のゆずれない願いが交差する女流雀王決定戦も今日が最終日。残るは半荘5回。
喧嘩とは最後には拳と拳のぶつかり合いになるものだ。
信念という力をこめた拳は、どんなに大きな実力差も時にははねのける。
「協会女流最高峰のこのタイトルを制する」
心に刻んだ夢を放つことができたのは・・・。
★11回戦★(杉村→大崎→朝倉→崎見) 「誰よりもリーチをします!」
大崎は始まる前にこう宣言していた。
初日、2日目と公約通りといわんばかりに大崎は攻めている。
決勝でも、いつもの麻雀を。
その前向きな姿勢の成果が今のポイントに表れている。
だが、一番怖いのはここからだ。
ポイントを持てば持つほど、攻守のバランスが難しいのも麻雀である。
はたして何人の選手が、差を広げようと転び、差を守ろうとしてつまずいたことか・・・
そんな心配は杞憂に。
最終日は、大崎の1000点のロン和了で静かに幕を開けた。
大崎(南家)
         ポン  ロン ドラ
親の連荘もなく、場は淡々と進む。
東2局に満貫をツモった朝倉の一歩リードで迎えた南1局。
親の杉村が以下の仕掛け。
杉村(東家)
          チー  ドラ
ネックのドラカンチャンを引けば親満まで狙える仕掛けだ。
しかし、この鳴きによりダマテンを選択していた崎見に超絶有効牌がインサート!
崎見(北家)
            ツモ ドラ (場に - は3枚切れ)
三色確定の を切ってのリーチ。これに対して杉村は苦渋のオリ。
麻雀は非常に攻守の基準に個人差がある。
この崎見の手牌も三色になる前に、先制リーチ有効理論につき即リーチをする者も多いだろう。
そうなれば杉村は を鳴ききれなかったかもしれない。
崎見がダマテンを続行していたら を杉村から打ち取っていただろう。
たった一言の「リーチ」の有無でここまで未来が変わるものなのか・・・
だから、麻雀は面白いのだろう。
崎見のリーチが入ったが、この局を制したのは大崎。
ベタオリではなく、隙あらば和了を。
それがダメなら形テンを狙って、ワンチャンス・現物と切っていく。
結果は、ツモの流れに身をまかせての強烈な和了!
大崎(南家)
            リーチ一発ツモ ドラ 裏ドラ
そして次局、親番を迎えてのトイトイのノミ仕掛け。
和了ることはできなかったがドラや役牌の恐怖が、他者の打牌を縛ることに成功した。
朝倉に放銃した杉村と対照的に大崎は自由にのびのびと打てている。

オーラス。
大崎33000 朝倉26300 崎見23700 杉村17000
朝倉と崎見はポイントの都合上是が非でもトップが欲しいところだ。
だが、その刹那。南2局で体勢を崩したと思われた杉村からのリーチの発声が。
親の崎見も追いつくが、杉村に軍配があがる。
杉村(南家)
            リーチツモ ドラ
三色の手替わりなどでダマテンに受ける人も多そうだが、
この即リーチからは、杉村からの思い切りのよさが伝わってきた。

裏ドラが乗れば満貫で朝倉を捲ることになる。
「お願い、乗らないで・・・」
朝倉の心の叫びもむなしく、ドラ表示牌には が・・・。
11回戦結果
大崎+51.0 杉村+6.0 崎見△41.3 朝倉△15.7
11回戦終了時トータル
大崎 +153.9
杉村 +73.9
崎見 △73.4
朝倉 △154.4
「さあ、楽しい麻雀の時間だ」
宣言通りか、ここまで一番麻雀を楽しんでいるのは大崎に見えた。
女流雀王にむけて大崎初音・前進!!!
★12回戦★(大崎→崎見→朝倉→杉村)
「私の応援なんて別にいいよ。
だからみんな色々なタイトル戦に出て、いっぱい協会にタイトルを持って帰ろうね!」
1年前、朝倉が日本プロ麻雀連盟のマスターズ決勝に残った日、
他のタイトル戦に出ようか応援にいこうか話をしていた私たちにかけてくれた言葉である。
ついに追い込まれた女流雀王・朝倉。
まだ終わらせない――そんな思いと裏腹に、またもや大崎のペースで場は進む。
東1局 朝倉→親:大崎 7700点(リーチ対決)
大崎(東家)
            リーチロン ドラ 裏ドラ
東1局1本場 杉村→親:大崎 4800点(+300)
大崎(東家)
            リーチロン ドラ 裏ドラ
起親での連続和了。この勢いは本物だ。
このまま連勝されると大崎優勝が当確してしまう。
東1局2本場

これ以上好き勝手されるわけにはいかないと、3人全員本手リーチによる包囲網。
少しは苦しめられるかと思いきや、手牌が悪かったにつき余裕のオリ。
朝倉は崎見から満貫を和了るも、これでは大崎は崩せない――朝倉の目つきが変わった。
東2局
朝倉がリーチ
朝倉(南家)
            ドラ
宣言牌は なのでドラ受けの多面張にも受けられるが、山にごっそりといそうな - を選択。
大崎はなんとメンチンテンパイ。
大崎(北家)
            ドラ
ギャラリーが固唾を飲んで見守るが、流局。
・・・???
朝倉のリーチ一発目にあたる崎見の捨て牌に があるのだ。
満貫のアタり牌を見逃した・・・?
・・・まさかね・・・見間違いだよね・・・。
東2局2本場

朝倉がドラ3の勝負手。
朝倉(南家)
            ツモ ドラ
ここからの打 !
「これはやりすぎじゃないか」
「即リーチしないの?」色々な意見はある。
だが、朝倉はこの手牌こそ数少ない大崎から直撃できるチャンスだと信じてテンパイを崩した。
すぐに をツモり、ダマテンにできるピンフテンパイ。
崎見からの を見逃し大崎を狙うが、大崎は切る手組ではない。
自らツモりあげる結果になるのだが、数少ないチャンスを無駄にしたくない――
他の誰でもない!私の信じる・・・私の麻雀を信じる!!
朝倉の魂の叫びが聞こえてくるようだった。
・・・やっぱり・・・見逃している・・・。
これを見せられると大崎には、山越しという不安がつきまとってくる。
普段のリーグ戦やフリー対局にはめったに見られない光景を前に、
彼女には朝倉の声が聞こえたのだろうか
「・・・大崎さん。楽しい麻雀の時間は、もう終わりよ!」
南2局

杉村のフリテンリーチと崎見の親リーチを受けて朝倉。
四喜和イーシャンテン。まさかの役満も期待されたが、この局は杉村のツモ和了。
まだまだ勝負はわからなくなってきた。
南3局に崎見がハネツモで舞台はオーラス。
崎見(西家)
            リーチ一発ツモ ドラ 裏ドラ
ここにきて朝倉の手が重い。
対照的に大崎の手は軽く、じわじわとノーテン罰符で朝倉を追いつめ、3本場ではついに朝倉を逆転してしまう。
これが勢いの差だろうか。
はたまた見逃しを繰り返した朝倉が力を使い切ってしまったのだろうか。
そして4本場、決着がつく。

直撃、ツモ条件の朝倉が自らの手でトップを奪取する。
ここまで我慢に我慢を重ねた朝倉。
大崎が2着のため、ポイント的にはまだ射程圏内とはとてもいえないが・・・
自分にできることを全てやった末のトップ。
それはポイント以上に大きな価値がある。
「自分の麻雀を打って、勝たなきゃ意味がない!」
という朝倉の意志が伝わった素晴らしい半荘だったのではないだろうか。
この は、そんな朝倉に対して麻雀の神様からの贈り物だったのかもしれない。
女流雀王・朝倉ゆかり 始動!!!
12回戦結果
朝倉+53.3 大崎+13.0 杉村△13.2 崎見△53.1
12回戦終了時トータル
大崎 +166.9
杉村 +60.7
朝倉 △101.1
崎見 △126.5
★13回戦★(大崎→崎見→杉村→朝倉)
「こんなに強くなりたいと思ったのは、はじめてだ!」
杉村はまっすぐシャンテン数を上げるスピード重視の効率的な打ち手だ。
麻雀の定石で、
「長いスパンで勝てる打牌を繰り返す」というものがある。
生涯半荘数が一般の人と比べて何倍もある者にとって、これはすごく重要な言葉だ。
だが、決勝戦はたった3日。
長く見えるようで、半荘15回しかない。
たとえトータルでは理論上得になる打牌が、ときには敗着となることもある。
長いスパンではない。今日勝てる牌を切らなきゃダメなのだ。
今日負けると、明日はないのだから・・・。
杉村は基本に忠実な攻守のバランスの持ち主だ。
この決勝で、どこかで勝負をかけなければいけない状況になった時、彼女はどのような選択をするのだろうか?
東1局、親の大崎以下の手牌。
大崎(東家)
             ドラ
何を切る?
関連牌は と が場に1枚づつ切れているだけで、はっきりいって勘勝負。
大崎は打 をチョイス。すんなり をひき、形のよいイーシャンテンから ツモでリーチ!
これはもう優勝者のツモだ――誰もがそう思った。
このリーチに対して3人はぐっと我慢。
「この局は諦める・・・でもそれは今日の勝負を諦めないためだ!」
この局は流局1人テンパイ。
東2局

大崎の先制リーチに崎見が高め一通で追いつき、
大物手が見える杉村がまっすぐいって崎見に放銃。
山には大崎の待ちである が丸生きであったのだが、1枚もツモらせてもらえない。
何かが、変わってきた。
東2局2本場
朝倉(西家)
            リーチツモ ドラ 裏ドラ
朝倉が満貫をツモりあげる。
南1局
崎見(南家)
      チー  ポン  ツモ ドラ
崎見が隠しドラ3の満貫ツモで大崎に親かぶりと、2人の反撃が始まった。
そしてオーラスを迎えての3者の点棒は以下の通り。
崎見 41500
朝倉 28300
大崎 19700
杉村 10500
苦しいのは杉村だ。
勝負できる手牌が来たときに放銃にまわり、横移動を期待してオリを選択してもノーテン罰符、ツモで削られていく。

そしてこの局は朝倉が親満をツモりあげる。
続く1本場も500オールと加点。
杉村は、これ以上の失点は避けたいところだ。
なぜなら、すぐ後ろに女流雀王・朝倉の足音が聞こえている。
南4局2本場
朝倉がドラの をリリース。
これをトップ争いしている崎見がポン。
朝倉と崎見、この半荘を制した者が大崎と対決することになる。
まだ2回あるとはいえ、大崎が現状3着のため、ポイントはそこまで開かないので事実上のリタイヤ決定戦なのかもしれない。
次巡、朝倉がツモ切りリーチ。
朝倉(東家)
            ドラ
崎見も役牌が暗刻でイーシャンテンだ。
崎見(西家)
         ポン  ドラ
2人の一騎打ちかと思われたが、ここで杉村にようやく勝負手が入る。
杉村(北家) リーチ
            ドラ
2件リーチを受けて崎見は苦しい。
朝倉→杉村の横移動を祈り、オリをチョイス。
杉村は現状ポイントに縛られない状況だ。
朝倉のこれ以上の連荘を止めるため、誰から出ても終わらせに来るだろう。
杉村の手に力が入る。
和了牌の だ。大崎をラスにしたいが、これ以上の失点は避けたい。
彼女の下した決断はノータイムのツモ切りだった。
あまりにも自然な。それは 以外は要らないという意思を皆に鼓舞するかのようだった。
杉村の意志は固まっていたのだ。
「私の勝負処はここなんだ!」
「ツモ」の声が力強く響いた。
卓上に舞い降りたのは だった。
この満貫ツモ(裏は乗らず)により、大崎をついにラスに追いやった。
杉村は3着だ。これは何よりも大きな大きな3着。
もしかしたら、はじめて杉村が博打に出た局面だったのではないだろうか。
勝利というのは自らの手で勝ち取らなきゃいけないものなんだ!
私は自らの手で勝ち取りに来たんだ!!
みんなの応援を背負い、杉村えみ・覚醒!!!
13回戦結果
朝倉+56.3 崎見+14.7 杉村△24.5 大崎△47.1
13回戦終了時トータル
大崎 +119.8
杉村 +36.2
朝倉 △44.2
崎見 △111.8
★14回戦★(大崎→杉村→朝倉→崎見)
「3期、6期と来たから9期は私の年だと思うなあ」
Aリーガー崎見百合。通り名は「役満クイーン」
今期のオータムチャレンジカップ決勝といい、崎見はもはや協会を代表する打ち手だ。
タイトル戦の経験値は、この中では彼女が一番あるといえよう。
逆境には慣れている。しかし、現状ポイント差がつきすぎてしまった。
この半荘でトップ、しかも大崎を沈めての大トップをとらない限り、優勝は難しいだろう。
大崎、杉村がリードを守り、朝倉、崎見ががむしゃらに点棒を取りに来る。
14回戦は攻守がはっきり別れた展開になるな・・・誰もがそう思っていた。
そんな予想を裏切り、東1局から火花が散る。
西家の朝倉が ポン、 ポン。
場に出ていない牌は と だ。
この仕掛けに対して起親大崎、以下の手。
大崎(東家)
             ドラ
ここから打 !朝倉がポンで一気に場は沸騰する。
これはさすがにやりすぎだろうという声もあるだろう。
大崎は守る気なんてなかった。
この半荘でもう決めてしまおうということだ。
さらに生牌のドラ も切り飛ばし、 を引き入れてリーチを敢行する。
朝倉は大崎からの直撃チャンスなので、当然オリない。
が朝倉から放たれて、大崎の3900の和了。
初のタイトル決勝とは思えないくらい肝がすわっている。彼女を崩すのは誰だ?
東1局1本場 5巡目
大崎(東家)
            ドラ
大崎がトップになれば、最終戦は全員かなり厳しい。だれかが鈴をつけなければ・・・。
その役目は、予想通り彼女だった。
崎見(北家)
            リーチツモ ドラ 裏ドラ
まずは満貫の親っかぶり。
東2局
大崎(北家) リーチ
            ドラ
これを受けて親の杉村が追いかける。
杉村(東家) リーチ
            ドラ
と が4枚山にいるので大崎の勝ちかと思われたが、崎見が大崎を仕留める。
崎見(西家)
            リーチ一発ロン ドラ 裏ドラ
これを機に、大崎のベタオリと、中途半端な放銃が目立つようになってきた。
大崎はこれまで、めったにシャンテン数がよほど悪い手牌でない場合は、決してベタオリをしなかった。
粘って粘っての手組みが和了に結びついた局がいくつもある。
それは大崎の手牌の良さを表しているのだが、ここにきて配牌も悪くなり、とても戦えない状況になっている。
麻雀において、実力差がでやすいのは配牌が悪いときだ。
本人も認めていたことだが一番地力で劣る彼女には、まだこの状況を打破するための経験値と我慢、手牌構成力が無いのだ。
東3局は杉村に3900点。
杉村(北家)
            リーチロン ドラ 裏ドラ
東4局1本場では崎見に4800は5100点。
崎見(東家)
            リーチロン ドラ 裏
一気に大崎の持ち点は5000点を切ってしまう。
南1局

大崎(東家)
             ドラ
ここから を切らずに打 。
結果云々はともかく、三色目を考えたら打 の一手だ。
細かいところで勝負が決まることは少ないが、積み重ねられた小さなミスは敗北という大きな結果をもたらしてしまう。
ここにきて、手順の差が出てしまうのだろうか・・・。
この局は2人テンパイで流局。
南2局
杉村(東家)
            ドラ
杉村が親で本手リーチ!
・・・するも、待ちがほとんど他者の手牌に組み込まれているので、ツモれず流局。
採譜者の竹中も
「なんで私が採譜をしているのに、ツモれないんだ!」と嘆いているくらい、いい待ちに見えたので実に残念である。
ちなみに採譜者の人間力は決勝においてそうとう重要だ。
つまり…(以下略)
南2局1本場 朝倉がダマで杉村からロン和了。
朝倉(南家)
            ロン ドラ
チャンタを狙ってのダマだったが、これを見逃すにはリスクが大きいと判断してのロン和了。
ツモ切りリーチをすれば大崎の持っていた が即出だったかもしれないが、正解はないだろう。
南3局2本場

この局は杉村の粘りが出た局だった。
朝倉は崎見のリーチがなければ、清一色テンパイまでもっていけたかもしれないが、
これは仕方がない放銃か。
オーラス
崎見 62400
杉村 26900
朝倉 8900
大崎 1800
麻雀とは決して思い通りになるものではない。
しかし、対局者の連携が大崎という牙城を崩すことに成功したのだ。

あとは崎見がこの勢いで連荘しまくるだけ。
そうはさせないと大崎が朝倉をまくる前に、杉村がこの半荘を終わらせる。
14回戦結果
崎見+81.4 杉村+8.9 朝倉△31.1 大崎△59.2
ここでトータルポイントを見てみよう
14回戦終了時トータル
大崎 +60.6
杉村 +45.1
崎見 △30.4
朝倉 △75.3
あの大差がここまで埋まるとは誰が想像できたか。
朝倉も崎見も並び次第で十分に優勝が見えてきた。
崎見と朝倉。2人の女流雀王の意志が流れを変えたのだ。
どんな状況になっても、諦めてはいけない。限界の向こうは無限大だ。
麻雀とは運と確率のゲームだ。誰かがそんなことを言っていた。
とんでもない。対局者の感情が、心理が運も確率も超越する戦いである。
女王の貫録、崎見百合・健在!!!
★15回戦★(杉村→崎見→朝倉→大崎) ここで条件の確認をしておこう。
杉村と大崎は着順勝負。
トップ・ラスで80P縮まる協会ルール。
崎見と朝倉は大崎と杉村をラス、3着にしての大トップである。
(大崎が2着なら崎見は5万点差。朝倉は約85000点差が必要なので苦しい)
ここで最初に抜け出したのは・・・杉村だ。


「いける」
杉村は思っただろう、連続ツモ和了により、会場にも杉村ムードが漂ってきた。
そして東4局、大崎の親番が回ってきた。
2連続ラスを押し付けられた大崎。
彼女の目は死んではいなかった。
「誰よりもリーチを打つ」
その信念のもとに麻雀を打った結果であって、崩れてはいなかったのだ。


大崎のリーチのアタり牌を掴んだ杉村。
「時」が止まった
喧嘩とは最後には拳と拳のぶつかり合いになるものだ。
「ロン18000」
大崎の信念を込めた拳が杉村の拳を貫いた時、勝負は決した。
技術ではない。経験でもない。
それはたったひとつの大崎の武器だった。
「みんな私より強いのは周知の事実」
大崎は始まる前にこんなセリフも言っていた。
実力のないものは皆、負い目や不安を抱えて沈んでいくのが決勝だ。
それらをすべてはねのけ、最後まで一貫して自分でできる範囲の最高の戦いをした大崎の優勝に誰が意見できるだろうか。
さあ、ここからが大変だ。
女流雀王になったものは、皆他団体の決勝などに残り活躍している。
大崎はそれらのプレッシャーをはねのけ、来年、成長してこの舞台に立てるだろうか。
戦いは今始まったばかりだ。
おめでとう大崎初音!
(文:三木 敏裕)
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