1回戦
3回戦
|【1日目観戦記】|2日目観戦記|3日目観戦記|
≪女流雀王決定戦1日目観戦記≫
「女流雀王決定戦に出場するまで4年半もかかりました!」 オープニングでの大島麻美のコメント。 彼女は協会入会直後に、女流モンド新人戦の座を勝ち取りそのまま優勝。さらにその勢いで女流モンド杯を優勝するという空前絶後の輝かしいプロ生活のスタートを切った。女流麻雀王決定戦にコマを進めるには、当時のシステムで最短で2年半。もちろん放送対局オープニングのリップサービスがあるにせよ彼女からしたら長かったのかもしれない。
彼女はパリピ麻雀を自称する。99.9%の人は何それ?と思うはずだ。 パリピとは”party people”の略で・・・説明するのは野暮だ。やめておこう。
パーティーに華やかさはつきもの。 一回戦 東3局の牌姿 かを切ればイーペーコードラ2テンパイである。場には2枚切れ。 ド終盤ではあるが、を軽く指で撫でてから打とする。 次巡、当然のようにを暗刻にして四暗刻テンパイ。 この時点で、がそれぞれ一枚存在したが流局まで顔を見せずに流局。 大島は比較的親権を維持したいタイプである。 最終手番前、上家からが切られた。大島はチーを選択する。 二軒リーチではあるが通れば親権維持に加えテンパイ料が見込める。 ある程度のリスクは承知の上で河にを放つも今回は朝倉への放銃。 親権死守タイプはしばしば親で大爆発が起こる。今日は不発ではあったが。 今日大島は苦しい展開が延々と続く。 三回戦 南2局 5巡目にして四暗刻イーシャンテン、ホンイツ小三元含みの華やかな手が入るも、朝倉がを切らないまま水口に満貫をツモられる。 協会を代表する選手になっていくであろう大島へエールを込めて。 時は前後するが二回戦の東4局。 朝倉が大量リードで連荘中。結果だけ言えば大島から朝倉への9600放銃となった局である。 大島は終盤チートイツのイーシャンテン。 2枚切れの字牌での放銃だ。 少し見にくいが南家の逢川はマンズの染模様。チーで12巡目にドラのも溢れた。 朝倉の捨て牌は途中から様子がおかしい。 6巡目以降の手出しだけ並べるとの順である。 に違和感を受ける。 を持ったままを切った上で打である。 メンツ手で例えばとあればを打つだろう。 が4枚、後にも4枚見えている。スライドや空切りも考えにくい。 終盤に朝倉から逢川に向けてがツモ切りで勝負される。トップ目の朝倉から。 そして手出し。大島からが4枚見えていた。 朝倉はメンツ手ではないのでは・・・?? を勝負している。自分が重ねたいドラは既に朝倉に・・・??? やよりこの終盤で良い待ちとは・・・???? 朝倉が待ちのころ。を押されたこと、を4枚切りがスライドではないという情報を得た女流雀王逢川。 結果はを勝負しているが盤面を熟考し相当な間があった。手出しツモ切りや枚数カウントによるパターン消去。 実に些細な情報だが、短期決戦では1枚が勝負を大きく分けることがある。 もし、逢川のに大島が合わせられていたら。 ツモ時にオリを選択出来ていたら。 大島麻美 1日目 ▲177.3 「ただ麻雀が好きだったから」 本人の弁を引用する。 「ただのポンコツなんです。麻雀に関してはセンスゼロ。それでもここまで続けられたのは、ただ麻雀が好きだったから。凡人は凡人なりに強い凡人を目指すことに決めました」と。 先述の大島と対照的に入会9年目でついに初めての決定戦である。 1,2回戦と我慢を強いられた水口も3回戦目に手が入る。 南場の親番にて怒涛の3局連続和了。 ドラ タンヤオ・ドラ3の4000オール。 ドラ タンヤオ・ドラ2の5800は6100。 リーチ・タンヤオ・平和・ドラ1の12000は12600。 この3局は手が入っていた大島との対決を全て制し、手堅く3回戦をトップでまとめ上げる。 4回戦南2局 親番は残るものの大きくビハインドを背負った場面でドラドラの手。 前巡に三色を見切り河にを放った翌巡が来る。 逢川がすでに役牌の仕掛けを入れている。 水口の選択は打。 二度受けを含むフリテンになり易いターツを残した。 なかなか難しい選択なのではないだろうか。 4巡でテンパイ。 でリーチ宣言、終盤にをツモり2000・4000のアガリ。自称凡人が難問を容易く解いた。 続く親番に大島からリーチを受ける。 ラス目の親番。タンヤオ3シャンテン。 ベタオリするとオーラスは3着狙いになる。 彼女はここからをチーし、生牌のドラを打ち出していく。倒れるなら前のめり。 無筋4枚、生牌2枚を躊躇いなく押しての親権維持。値千金である。 この勝負は1局単位の期待値こそ損になると思われるが、そんなことは彼女は百も承知だろう。協会ルールと決定戦の環境が彼女の背中を押す。 凡人であるなら、麻雀が好きなだけで苦難の道を歩み続けることなんてできない。 かれこれ5年前に彼女がリーグ戦最終節後にSNSに決意と共に挙げた投稿。本当に辛い一年で、内容に結果がついてこない時期だった。 不運を理由に投げ出す人が多い中、彼女はひたむきに向き合い続けることができた。 やり続けることのできる才能を持った凡人・・・いや才女は今日も打ち続ける。 水口美香 1日目 ▲23.6 「今麻雀のバランス崩れちゃって・・・」 逢川恵夢。現女流雀王の彼女は嘘か真かこう話す。一見するとネガティブワードだが、彼女はこう続ける。 「破壊と成長を繰り返しながら麻雀は上達するはずだ」と。 タイトルを持ったりするとスタイルを”破壊する”のは難しいことが多い中、彼女は積極的に変化を受け入れる。 逢川の特徴は何と言っても手数の多さと記憶する人が多いのではないか。鳴きを多用し、時に最短手組でリーチを打ち先制を取り続けて場を制する。 今年の逢川は安定感のある仕掛けが圧倒的に増えたように思える。がむしゃらにアガリに向かう仕掛けよりも守備を意識した、また局消化という明確な目的意識が見て取れる。 上の画像の仕掛けはソーズに不安定な部分はあるものの局消化によるトップ率が圧倒的に上昇するためリターンも十分にある。 逢川のリーチのタイミングも一定になった。 テンパイ確定が2:15:08 リーチモーションが2:15:16 ツモ⇒河にゆっくり目を落とす⇒一呼吸⇒リーチ宣言 逢川がリーチをかけるのに要する時間はほぼ毎回8秒であった。このように常に一定であれば余計な情報が漏れにくい。 こちらは再登場の場面で詳細は先述を参照されたい。逢川は手拍子で打つという行為がなくなった。 昨年女流雀王になり協会を代表した対局に数多く出るようになったことで、より一層1枚の牌の重さを実感してきた所以なのだろう。 四回戦、五回戦は東1局にそれぞれハネマンを和了している。 リーチ・一発・ツモ・ドラ3・裏ドラ1 白・ホンイツ・ドラ3 前半にリードを得ると、要所要所で相手の親を流し危なげなく2連勝を飾る。 冒頭で「麻雀バランス崩れちゃった詐欺」をしておいて2連覇に向けてまずまずの好スタートである。 逢川恵夢 1日目 +100.4 「ぐにゃんぐにゃんで怖くないですか?」 最近筆者の娘が誕生。その産まれたての赤子の抱き方について優しく教えてくれる。 何度目の決定戦だろうか。実績実力共に女流最強という言葉は彼女のためにある。 四名の中では最もリラックスした様子。 麻雀はぐにゃんぐにゃんとは程遠い、重厚という言葉が似合うスタイル。 3000・6000!(リーチ・一発・ツモ・平和・ドラ1・裏ドラ1) 6000オール!!(リーチ・ツモ・ドラ4・裏ドラ1) 3100・6100!!!(リーチ・ツモ・ドラ3・裏ドラ2) 6000オールゥゥゥ!!!!(リーチ・ツモ・タンヤオ・三色・裏ドラ1) 大物手を次々と成就させ1,2回戦2連勝。 このルールってハネマンがこんなに出現するんでしたっけ・・・・ さて、手役とドラをかき集めて和了するだけが朝倉ではない。 三回戦 東2局1本場(供託2) 逢川が10巡目にポンで打。 更に逢川はチーで打。しかも今回は既に切ったをまたぐチー。 そしてチーで打。 朝倉から見た逢川 チー ポン ドラ
そんな中、朝倉が平和高め三色のテンパイに漕ぎつく。 この手をヤミテンに構える。
逢川の手牌を巻き戻せば、 ドラ から打を選択した状態までは朝倉ならば難なく戻せる。実は相当に手牌を絞ることが出来る。
ピンズ待ちはない。 ならばからを切るのはかなり不自然。 -ならばからは切らないので否定される。 -ならばからは切らないので否定される。 ソーズ待ちも否定される。 -ならばから打は選ばれず否定される。 -二度受けが残る形ならば同じくを切らない。 -もからのはかなり不自然である。 残るはマンズ。 -、-にしては打が相当手狭で不自然だ。字牌を十分に持っていたなら尚更。 残りは-、-、-の三択で自分からが3枚見えている分、-が確率的に高いか。 朝倉は連勝中の自分がリーチをすれば、安い手の逢川に向け現物のを抜き打たれることを嫌ってのヤミテンと思われる。 他の者から逢川のアタリ牌を河に打たせることなく、朝倉の待ち牌のは逢川から放たれた。 緻密。平和高め三色はリーチ!と固定観念を持った者には絶対に辿り着くことの出来ない境地。 逢川より0.1ポイント上回り1日目を終える。 朝倉ゆかり 1日目 +100.5 1日目…FRESH! 2日目…FRESH! 最終日…FRESH!
(文・斎藤 俊)
▲このページトップへ