トップページ
日本プロ麻雀協会について
日本プロ麻雀協会 競技規定
タイトル戦/公式戦情報
チャンピオンロード
関西協会プロアマシリーズ
過去の観戦記
協会スケジュール
対局会場 案内
協会員名簿

や・ら・わ
日本プロ麻雀協会 プロテスト
協会チャンネル
ゲスト/メディア情報
協会員ブログ
日本プロ麻雀協会 麻雀教室
お問い合わせ
ゲスト/麻雀教室 の依頼
日本プロ麻雀協会公式HP プライバシーポリシーお問い合わせよくあるご質問リンクサイトマップ

順位
名前
ポイント
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
6回戦
7回戦
8回戦
9回戦
10回戦
1
朝倉 ゆかり
206.8
59.5
21.9
-16.9
-57.6
60.0
-17.3
16.3
17.5
66.7
56.7
2
竹居 みつき
158.7
7.8
71.7
76.2
-4.3
-24.2
55.8
-14.3
-27.1
10.0
7.1
3
水崎 ともみ
-63.1
-45.7
-62.6
3.5
94.1
12.7
-43.2
58.4
-49.8
-13.7
-16.8
4
佐月 麻理子
-302.4
-21.6
-31.0
-62.8
-32.2
-48.5
4.7
-60.4
59.4
-63.0
-47.0

|1・2日目観戦記|3日目観戦記

≪女流雀王決定戦1・2日目観戦記≫

2017年12月2日、第16期女流雀王決定戦が開幕した。
今年この大舞台に立ったのは以下の4名だ。

佐月 麻理子
「この・・・しゃべりが、ほんとに、ダメです」と、オープニングでは緊張気味であったが、2年前の女流雀王戴冠を皮切りに、今期は第26期マスターズ優勝という大きな大きなタイトルを獲得している。「毎年凄い勢いで成長している」と解説の斉藤が言ったように、昨今の活躍が彼女の強さを証明していることに疑問を挟む者はいないだろう。
「15半荘を大切に、自分らしく」そう語る佐月、2年越しの女王返り咲きとなるか。

水崎 ともみ
気づけばAリーグ7年目、今期が3回目の決定戦となる。Aリーグの顔とも言える彼女だが、未だ頂点にはたどり着いていない。協会内での評価も高く、その様はまるで去年までの金を見ているかのようだ。しかし、金は今期遂に頂からの景色をその目に刻んだ。これに続けるか。
「去年も一昨年も解説として参加していた」と語った目に浮かぶ悔しさを、この決定戦に賭ける。

竹居 みつき
水崎がAリーグの顔であれば、竹居はまさに新人と言ったところか。4人の中では間違いなく最も経験の浅い彼女、やはり表情には緊張が見える。だが、1年間のリーグ戦を走り抜けて、首位でゴールテープを切ったのも間違いなく彼女なのだ。
「ゆっくり走っていくのでよろしくお願いします」と本人も言ったように、どこまで自分の信じる麻雀を貫けるか。

朝倉 ゆかり
現、女流雀王。雀王戦における鈴木達也、鈴木たろう。言うなれば、女流雀王戦で言う彼らの立ち位置にいるのが朝倉だ。去年大逆転で3回目の戴冠をしたのは誰の記憶にも新しいだろう。彼女の周囲に漂うのんびりとした雰囲気とはまるで異なる緻密に練られた戦略的な麻雀は、多くの対戦相手に敬愛と畏怖を与えてきた。
「去年と同じままでは勝てないと思って、1年間勉強してきた」それでも歩みを止めない女王は、無論連覇を狙う。

 

★1回戦(竹居→佐月→朝倉→水崎)

開局、まずは竹居の親リーチ。
東1局 竹居(東家) 8巡目
 ドラ
これがすんなりアガれれば緊張もほぐれるかと思いきや、ここに佐月が突っ込む。
東1局 佐月(南家) 14巡目
 ドラ
のみ手だが、この思い切りの良さ、踏み込みの鋭さが佐月の持ち味のひとつだ。
これを竹居が掴み、裏ドラ1枚で2600点。竹居としては不満だが、開幕から勢いのあるふたりが火花を散らす。

だが、この半荘の主役はそのどちらでもなかった。
東4局 朝倉(北家) 6巡目
 ドラ
河にを飛ばしており、リーチしたくなるところだったが朝倉は冷静にダマテンを選択。
これにメンホンイーシャンテンとなった親の水崎がドラを放り、手痛い8000放銃となった。
リーチといっていれば少なくともまだ打ち出されることのなかった牌だ。朝倉はこういった相手との間合い管理が非常に上手い。

更に朝倉は南1局1本場でも佐月から8000は8300と独走態勢を築き、まずは女王がその威光を示す結果となった。

1回戦結果
朝倉 +59.5
竹居 +7.8
佐月 ▲21.6
水崎 ▲45.7

 

★2回戦(水崎→朝倉→佐月→竹居)

起親の水崎が先程のラスを取り返そうと攻め立てる。
東1局 水崎(東家) 6巡目
 チー ポン ドラ
6巡目でこのまとまりならば、誰もがアガリを期待するだろう。
しかし、この局も主役は彼女ではなかった。
東1局 朝倉(南家) 8巡目
 ツモ ドラ
ドラ暗刻だが難しい形の朝倉、が2枚飛んでいてトイトイには行きづらい形。
しかし他の関連牌は見えておらず、2つ仕掛けた水崎の河はこう。

もツモ切りのため、ホンイツとは断定出来ない。
ならばタンヤオとチートイを見据えてツモ切りか、と思いきや女王の選択はドラのだった。
チートイ決め打ちというよりは親の水崎をケアした動きだろう。
自分にドラが固まっているため、水崎が高いとすれば役絡みしかない。
すると次巡のツモがなんと
更にが早い子方2人を見て冷静に単騎とし、すぐにツモ。2000・4000のアガリとなった。
この局、多くの人が打として水崎にテンパイを入れてしまうのではないだろうか?
またしても、朝倉の間合い管理が光る1局となった。

これで気をよくした朝倉は、東3局、南2局と満貫をアガって持ち点は5万点オーバー。
オーラスも早々とを仕掛けてホンイツへ向かい、親の竹居からリーチが入るもひるまず前に出てこの形。

南4局1本場 朝倉(西家) 10巡目
 ポン ポン ドラ
朝倉としてはかなり手応えを感じる半荘だっただろう。
そう、この瞬間までは。

直後、リーチの竹居がを暗カン、新ドラが
ん・・・
と思う間もなく、竹居の手元にが滑り込む。

南4局1本場 竹居(東家) 12巡目
 リーチツモ(リンシャン) ドラ 裏ドラ
リーチドラの手が一瞬で6000オール。
これで竹居は38100点、46100点持ちの朝倉に肉薄した。

更に次局の竹居。
南4局2本場 竹居(東家) 5巡目
 ドラ
どれが正解とも断ずることの出来ない手だ。
を切ってホンイツとイッツーを睨むのがマジョリティか?

だが、竹居はゆっくりとに手を伸ばす。「ゆっくり走って行く」との言葉通り、丁寧に内へ寄せる一打。
そして、次巡を引くとメンホンと即リーを見て打
前巡にを切っていると、ここでとなりそうだ。
更にツモでドラ受けを残す打とすると、目論見通り引いたのは
竹居は落ち着いた手つきで、しかし迷い無くを横に置いた。
南4局2本場 竹居(東家) 8巡目
 ドラ
息つく間もなく、佐月から追撃のリーチが入る。丁寧に打った結果のテンパイ、アガると大きくトップに近づく。
初めての決定戦、まずは早くトップが欲しい。嫌が応にも気持ちの入る局面だ。

それがラス牌だと、もちろん彼女は知る由もない。
しかし、それでも、彼女は僅かにすら音を立てることなく、静かに牌を引き寄せた。

南4局2本場 竹居(東家) 17巡目
 ツモ ドラ 裏ドラ

2回戦結果(トータル)
竹居 +71.7(+79.5)
朝倉 +21.9(+81.4)
佐月 ▲31.0(▲52.6)
水崎 ▲62.6(▲108.3)

 

★3回戦(朝倉→佐月→竹居→水崎)

竹居の勢いが止まらない。
東3局1本場には水崎、朝倉との3軒リーチを制して6000は6100オール。
東3局1本場 竹居(東家) 8巡目
 リーチツモ(一発) ドラ 裏ドラ
早くも持ち点を52700とすると、南3局ではまたしても3軒リーチを制し、局消化で失った点棒を補充。

この煽りを食ったのが佐月だ。
全12局中リーチ時以外の放銃は6400と2900の2回のみにも関わらず、終わってみれば箱下2800点の大きなラス。
開幕のリーチから鋭い攻めは見せ続けているのだが――。

3回戦結果(トータル)
竹居 +76.2(+155.7)
水崎 +3.5(▲104.8)
朝倉 ▲16.9(+64.5)
佐月 ▲62.8(▲115.4)

 

★4回戦(朝倉→水崎→佐月→竹居)

その佐月に、開幕大きなチャンスが訪れる。
東1局 佐月(西家) 9巡目
 ドラ
がフリテンだが、ビハインドを考えれば当然のリーチ。だが、それを阻むのはまたしても竹居だった。
東1局 竹居(北家) 16巡目
 ロン ドラ
丁寧に迂回してのテンパイ、放銃は佐月。何度斬りつけても弾き返される佐月の猛攻。

しかし、その間隙を突いて、彼女が来た。
東2局2本場 水崎(東家) 8巡目
 リーチツモ ドラ 裏ドラ
水崎だ。
この4000は4200オールを皮切りに、今までの鬱憤を晴らすかのようなアガリを重ねる。

南1局 水崎(南家) 5巡目
 ロン ポン ドラ

南2局 水崎(東家) 12巡目
 リーチツモ(一発) ドラ 裏ドラ

南3局 水崎(北家) 13巡目
 ロン チー ドラ

オーラスも朝倉と佐月の2軒リーチを難なくかわし、終わってみれば74100点の大トップ。
4回戦を+94.1として、ここまで3半荘の不遇を一気に消し飛ばした。

対して佐月はラスこそ逃れたものの素点のない3着。水崎にも差をつけられ、いよいよ孤立してしまう。

4回戦結果(トータル)
水崎 +94.1(▲10.7)
竹居 ▲4.3(+151.4)
佐月 ▲32.2(▲147.6)
朝倉 ▲57.6(+6.9)

 

★5回戦(水崎→朝倉→佐月→竹居)

初日の最終戦を残して、下馬評でも苦戦が予想されていた竹居の独走。
果たして誰がこの光景を想像していただろうか。蓋を開けてみれば、緊張とは裏腹に丁寧な麻雀でひとつひとつアガリを拾っていく竹居。
気が早いながら、誰もが脳裏に新たなヒロインの誕生を予感していたことだろう。

だが、無論、女王への道程はそれほど楽なものではない。

東2局 朝倉(東家) 8巡目
 リーチロン ドラ 裏ドラ
竹居の手牌から押し出されるようにして放ったが朝倉に捕まる。

更に次局も朝倉に3900は4200を放銃し、3着目にも大きく水をあけられる竹居。
しかし、それでも彼女は粘り強く、1300・2600、3200とアガリを刻んで失点を挽回していく。

「自分が何点持っているか、何着目か。それはアガリへの道筋に関係ない。ラス目だから大きく狙おう、トップだから手堅く捌こうではなく、アガリを拾うために必要なのは、あくまで今そこにある場況がすべてだ」
これは私がまだ若い頃とある先輩に教わった言葉だが、竹居の麻雀を見ていると、まさにその通りだな、と感じる。

南場で見せた受けの強さも興味深い。南場だけで出されたリーチ棒は11本あったが、うち竹居のリーチは僅かに1回。
のべ10回もの危機に晒された竹居、しかしその間の失点は放銃無しの7900。最後まで攻勢に晒されながら、この半荘を3着で凌ぎきった。

5回戦結果(トータル)
朝倉 +60.0(+66.9)
水崎 +12.7(+2.0)
竹居 ▲24.2(+127.2)
佐月 ▲48.5(▲196.1)

例えばリーグ戦形式の戦いである場合、争っているのは規定回数消化後の順位だ。
極端な話、5回戦終了時のトータルポイントは最終的な勝敗には関与しない。

しかし、麻雀を嗜む皆さんなら覚えがあることだろうが、回数単位、日単位、月単位、あるいは年単位であれ、関係ないと頭ではわかっていながらも人は区切りをつけたがる。そういう意味では、初日が終わり安堵していたのは水崎だろうか。開始2半荘で100ポイントマイナスしていたにしては上出来の「区切り」と言える。実際のところ、1位から3位までは半荘1回で容易くひっくり返るだろう。
このある意味危ういバランスが協会ルールの面白い所であり、難しい所だ。逆に佐月は早くもトータルを視野に入れざるを得ないか。
各人がそれぞれの思いを抱えたまま、2日目は始まった。

 

★6回戦(水崎→竹居→朝倉→佐月)

お互い様子見から入ったわけではないだろうが、この日は静かな立ち上がりとなった。東場終了時の最高打点はなんと竹居の500・1000。
東2局に水崎が得た1人テンパイ料のほうが高い。
・・・のはずなのだが、気づけば竹居が33200点と1歩抜け出したトップ目にいる。
理由は流局を含め5局中4局で加点という驚異的な得点率だ。やはりアガれる手をしっかりとアガるという事が竹居の強さなのだろう。

そんな竹居が勝利の女神に微笑まれていたら?

南2局 竹居(東家) 13巡目
 ツモ ポン ドラ
止めるのは容易ではないだろう。ポンテンを取ったタンヤオが1手でトイトイに手変わり、そしてツモって三暗刻。
均衡を破るどころか、南場で他家を大きく突き放すアガリとなった。

もう優勝のためには猶予の無い佐月も追いすがる。

南2局1本場 佐月(西家) 5巡目
 ポン ポン ドラ
この手が5巡目だ。佐月は11100点持ちのラス目、竹居までは30700点差。
親番があるとはいえ、出来れば竹居から直撃を取りたいところだが・・・このは既に水崎が暗刻。

南2局1本場 水崎(北家) 5巡目
 ドラ
が重なれば飛び出してしまう形にはなっているが、それより他の手変わりが圧倒的に多い。
これはなんとか凌げるか・・・と思った矢先、水崎のツモはなんと
1番早いのがチートイツとなればさすがに暗カンも出来ず、ツモ切った牌に佐月が声をかける。
佐月はこれで3着には上がったものの、まだまだ加点が必要だ。もちろん、やられた水崎も黙ってはいられない。

南3局1本場 水崎(西家)11巡目
 ドラ
打点が必要なのでここから目指すは最低でも役トイトイの5200。
チートイドラドラが本線となるため残す牌も重要になる。
が自分の目から3枚、は1枚見えているため切りかと思いきや場況を丁寧に読み打とすると、これがぴたりとハマってを重ね、当然のドラ単騎リーチ。ドラのは山に1枚残り、これが引ければまだトップ争いに参加出来る。
引かせてくれ、と祈っていたであろう水崎だったが、引いたのは――

南3局1本場 佐月(南家) 16巡目
 リーチロン ドラ 裏ドラ
またしても佐月への放銃牌。佐月も無論水崎からは当たりたくないのだが、見逃せる余裕も当然なく致し方なし。
結果的に下位2人はチャンス手を互いに潰し合い、上位陣にキズ一つつけることが出来ない。これも勝負の綾というものか。

オーラスは水崎が執念のメンホンリーチをツモアガるも、3着まで2万点以上の差ではラスのままである。

南4局 水崎(南家) 12巡目
 リーチツモ ドラ 裏ドラ
この手がもう少し早く入っていればまた違う展開もあっただろうが、それを悔やんでも意味が無い。
竹居がリードを更に広げる結果となった。

6回戦結果(トータル)
竹居 +55.8(+183.0)
佐月 +4.7(▲191.4)
朝倉 ▲17.3(+49.6)
水崎 ▲43.2(▲41.2)

 

★7回戦(水崎→竹居→佐月→朝倉)

初日に続きラススタートとなった水崎だったが、オーラスのメンホンでエンジンがかかったか、今回は立ち直りが早い。

東1局 水崎(東家) 12巡目
 リーチロン ドラ 裏ドラ

東1局1本場 水崎(東家) 14巡目
 リーチロン ドラ 裏ドラ

東1局2本場 水崎(東家) 10巡目
 リーチツモ ドラ 裏ドラ
いや、早いどころではない。
たった3局であっと言う間に持ち点は51500、この半荘の趨勢を決めにかかる。

これに待ったをかけたのは朝倉。
東1局3本場 朝倉(北家) 8巡目
 ツモ ポン ポン ドラ

こちらも電光石火の2300・4300。トップ争いに名乗りを挙げる。

対照的に急ブレーキとなったのは佐月。実は水崎のロンアガリはいずれも佐月から。
どちらもテンパイからの放銃ということでボーンヘッドではないのだが、結果だけ見れば東1局終了時点で残り1800点。
更に東2局、7巡目に先制両面リーチを打つもアガったのは竹居。

東2局 竹居(東家) 16巡目
 リーチツモ ドラ 裏ドラ
この2600オールであっさりと佐月は箱下へ。
僅か5局、しかもうち4局はテンパイ同士の競り負けだ。気分が良いはずもない。

それでも佐月は攻め続ける。
1本場で2100・4100をツモアガりまずは箱下から抜け出すと、
2000は2300、1人テンパイと加点し、気づけば3着目の朝倉まで4300点というところまで追い上げてきた。
まずは朝倉をまくって、あとは行けるところまで――と思った矢先の出来事だった。

「ロン、8000は8300」

南2局1本場 水崎(北家) 12巡目
 リーチロン ドラ 裏ドラ
断っておくが、この時も佐月は5200のリーチを打とうとしたところだった。
決して甘い放銃ではなく、勝負に打って出た末の結末だ。

しかし、勝利の女神はなかなか彼女に微笑もうとしない。佐月の粘りもここまで、最終的には再び箱下に沈んでしまった。
一方佐月を踏み台にした水崎は、朝倉の猛追からなんとか逃げ切り決定戦2回目のトップ。
トータルも再びプラスへ戻して、反撃の狼煙を上げる。

7回戦結果(トータル)
水崎 +58.4(+17.2)
朝倉 +16.3(+65.9)
竹居 ▲14.3(+168.7)
佐月 ▲60.4(▲251.8)

 

★8回戦(佐月→水崎→朝倉→竹居)

先程の半荘で意気消沈かと思われた佐月だったが、この8回戦は全9局中失点を僅か2局で防ぐ。
なんとリーチが全局で3回のみという投手戦、こういった展開を勝ち切るためには、しっかりテンパイを取り切る粘り、相手のチャンスを潰す捌きが必要だ。実際、この半荘での佐月は流局時テンパイ率100%と脅威の数字を残している。
また、テンパイが取れないと見るや海底をズラし失点を少しでも減らそうとするなど、あらゆる手を使ってトップを奪い取った。

それに対して、痛恨のラスを引いたのは水崎。
先程のトップは泡沫の夢と消え、またしてもマイナスへ転落してしまった。

8回戦結果(トータル)
佐月 +59.4(▲192.4)
朝倉 +17.5(+83.4)
竹居 ▲27.1(+141.6)
水崎 ▲49.8(▲32.6)

 

★9回戦(朝倉→水崎→佐月→竹居)

「ロン、18000」

東2局0本場 水崎(東家) 13巡目
 ロン ドラ
開局早々、水崎の大きなアガリが飛び出す。
これに飛び込んだのはまさかの竹居だ。

水崎の河は、



となっており、9巡目のが最終手出し。
若干の偏りはあるが全体的に弱いトーンの河、警戒するのは難しい。
ここまで上手く失点を防いできた竹居だったが遂に捕まってしまった。

一方の水崎にとっては降って湧いた大きなチャンス。
大事に行きたいところだったが、なんとここから朝倉が怒濤の4局連続リーチ。
3人テンパイ、1300・2600は1400・2700、500・1000と細かく刻んだ後、最後は水崎との直接対決を制して3900の直撃に成功、一気に逆転。
南1局終了時点で各家の持ち点は、
朝倉 45200
水崎 41500
佐月 9800
竹居 3500
と上下大きく離れた展開。
あとはトップ争いとラス争い、竹居をいかにしてラスのまま終わらせられるか――という戦いになる、はずだった。

しかし、勝利の女神は朝倉だけに微笑んでいたわけではなかったのだ。

南1局1本場 竹居(北家) 13巡目
 ロン ポン ドラ

南2局 竹居(西家) 5巡目
 リーチツモ(一発) ドラ 裏ドラ

南3局 竹居(南家) 17巡目
 リーチツモ ドラ 裏ドラ

南4局 竹居(東家) 12巡目
 ロン チー ドラ
朝倉が怒濤の4局連続リーチなら、竹居は脅威の4局連続アガリ。
持ち点も3500→7700→19700→28700→34500と一気に2着目へ。

これには実況の金、解説の多田、米崎も
「竹居に運が後押ししている」
「これは女流雀王ですね・・・」
と圧倒されたかのように語るしかない。

最後は朝倉が辛くも逃げ切りトップを手中にしたが、会場は冷たく、しかし何かを予感させる静けさに満ちていた。

9回戦結果(トータル)
朝倉 +66.7(+150.1)
竹居 +10.0(+151.6)
水崎 ▲13.7(▲46.3)
佐月 ▲63.0(▲255.4)

 

★10回戦(朝倉→水崎→竹居→佐月)

泣いても笑っても2日目最終戦。
朝倉と竹居がほぼ横並びとなった今、水崎にとってもかなり苦しい展開となっているが、言うまでもなく佐月はそれ以上に厳しい。
普通のトップでは、ここから6連勝しても届かないかもしれないほどだ。

だが、もちろんそれは諦める理由にはならない。
まずは東2局、久しぶりにその佐月が先制のアガリを決める。

東2局 佐月(西家) 10巡目
 リーチツモ ドラ 裏ドラ
しかも高目をツモって3000・6000。
更に次局は竹居の先制リーチを受けながらこの形。

東3局 佐月(南家) 9巡目
 ドラ
ダマテン満貫、しかも一手変わり四暗刻!
だが幸か不幸か待ちのは親リーチ竹居の現物、それを水崎が打って8000。
点棒を減らしたのが水崎なのはやや残念だが、とにかくこれで佐月の持ち点は46300。

だが、と繋ぐのもいい加減食傷気味なほどだが、幾度もダビングされたビデオのように、またしても佐月は悲劇のヒロインを演じることとなる。
東4局を1300・2600で加点し、親番を迎えた朝倉。
その朝倉があっさりと牌を横に曲げた時、佐月は何を思っただろうか。
そして、当然のような声色でこう告げた時は。

「ツモ、6000オール」

南1局 朝倉(東家) 17巡目
 リーチツモ ドラ 裏ドラ
たった2局。
たった2局で、佐月はあっさりと朝倉にかわされた。
そして、それを差し返す余力は、今日の佐月には残っていなかった。

南2局1本場には水崎の4000は4100オール。
さらにこの時点で5400点まで落ち込んでいた竹居が2本場を佐月から2600は3200点のロンアガリ。

南3局の親番では竹居がまたしても佐月から12000点と連続アガリ。
南3局1本場では水崎が竹居から値千金の5200は5500点をアガるものの、オーラスを迎えて、気がつけば佐月は3着まで後退を強いられた。

南4局、持ち点は、
朝倉 39700
水崎 26200
佐月 20000
竹居 14100

佐月はこの親番で連荘出来なければ、最終日は5連勝しても到底優勝に届かない。
実質、自然に打てる最後の局になるかも知れない。

ここでも佐月がどんな心境であったか、それを推し量る術はない。
私に書けるのは、佐月が最後まで足掻こうとめいっぱい手を伸ばしたこと。

南4局 佐月(東家) 12巡目
 暗カン ドラ

「・・・ツモ」

南4局 竹居(北家) 12巡目
 ツモ ドラ

そして、その手は空を切ることすらなかったと伝えることだけだ。

10回戦結果(トータル)
朝倉 +56.7(+206.8)
竹居 +7.1(+158.7)
水崎 ▲16.8(▲63.1)
佐月 ▲47.0(▲302.4)

残り5半荘を残して、佐月から朝倉までは509.2ポイント。
これは2万点差のトップラスを5連続で決めてようやく並ぶ程度の差だ。
そして、敵は1人ではない。現実的に考えて、ほぼ不可能に近いと誰もが言うだろう。

だが、不可能に近い、ということは不可能ではない。
いや、例え不可能だったとしても、それを不可能と言ってはならない。
女流の頂点を決める戦い。たった4つしか用意されなかった椅子に座っている、その誇りを最後まで忘れないで戦って欲しいと思う。

さて、いよいよ残すはあと1日。果たして最後に笑うのは誰なのか、それは他の誰かに語ってもらうとしよう。

(文・綱川 隆晃)

▲このページトップへ

 

当サイト掲載の記事、写真、イラスト等(npmのロゴ)の無断掲載を禁止します。(c) 日本プロ麻雀協会. ALL Rights Reserved. 管理メニュー