順位
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選手名
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TOTAL
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1日目
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2日目
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最終日
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1
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吉田 基成 |
228.0
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30.0
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100.3
|
97.7
|
2
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石野 豊 |
227.4
|
120.3
|
76.2
|
30.9
|
3
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内海 元 |
-103.0
|
-31.1
|
-8.0
|
-63.9
|
4
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福田 聡 |
-353.4
|
-119.2
|
-168.5
|
-65.7
|
第6期雀竜位は吉田基成が初戴冠!
3月16日(日)に第6期雀竜位決定戦の最終日が、神楽坂「ばかんす」において行われました。
役満が三発も飛び出す激しい乱打戦となった今期の決定戦。
まず初日2回戦に吉田プロが、四暗刻単騎を福田プロから出和了ると、
続いて4回戦には内海プロが国士無双をツモ和了。
そして最終日は石野プロが価値ある四暗刻ツモ。
石野プロの連覇が濃厚と思われた最終戦でしたが、
吉田プロがなんと約7万点の大トップ。
トータルで僅か0.6ポイントかわして、吉田プロが初戴冠となりました。
2日目観戦記|最終日観戦記
1日目観戦記
“本日ハ晴天ナリ”
目覚めたときに窓に広がった光景は、こんなありふれたフレーズが似合う、雲一つない青空であった。
しかし表に出てみると、この日の東京は台風と見紛うほどの暴風に見舞われていた。
清々しさの中にどこか荒々しい波乱を予感させて、今期の雀竜位決定戦が始まったのである。
筆者が会場に着くと、既に一人の選手が待ち構えていた。
落ち着いているというよりも、何か思いつめた顔をしてうつむいているように見える。
彼はいつも穏やかだが、静かに闘志を湛えて卓につく。
吉田基成
協会若手の中では珍しく、腰が重く基本に忠実でオーソドックスな麻雀を打つ。
コレと言った派手さはないが、大きなミスもせず無難に打つことが出来る若手を挙げろと言われれば、私はまず彼が思い浮かぶ。
今日の進行を筆者が会場係と確認していると、スーッとエレベーターが開いた。
軽く周囲に挨拶を済ますと奥の方の椅子に一人腰掛け、ゆっくりと開始を待っている。
その落ち着いた様子が、決して平易ではない連覇への道を、周囲にも磐石だと意識させてくれる。
石野豊
言わずと知れた現雀竜位。先日最高位戦主催で行われた發王戦も、2位以下に大差をつけての快勝で現在2冠。門前はもちろん仕掛けにおいても定評のある石野。圧倒的格上の立場で、挑戦者たちを迎え撃つ。
対局前の重苦しさから逃れるように、筆者がエレベーターの前の椅子に掛けて待っていると、三人目の選手が到着した。
彼も決勝の重圧を身に持て余していたのか、表情をほころばせて筆者に語りかけてきた。
内海元
関西リーグ所属だが、知人を頼って麻雀の研鑽のために、もう数ヶ月はこちらに滞在している。
人懐っこい関西弁と、麻雀に対する熱意が好印象な若手である。
麻雀は、押し引きバランスに非常にメリハリがあり、先手を取ったら一気に踏み込むタイプである。
対局した印象は、特に門前を好むように私には見えた。
三人が卓に着いた直後、強風により電車の足止めを喰らっていた男が慌てて会場入りした。
普段と変わらぬ低姿勢で、申し訳なさそうに対局者に詫びを入れて、急いで卓についた。
福田聡
今年で第6期を迎える雀竜位戦で、唯一の6期連続のA級選手。今期は3度目の雀竜位決定戦である。
平素の大人しい性格を体現する守備型麻雀で、牌の絞りは一級品である。
特に仕掛けの多い打ち手などは、彼の下家に座るのは心の底から嫌なものである。
また鳴きも少なく、無理な形からは決して仕掛けない、協会随一のデフェンシブプレイヤー。
室内にいても外の風の強さが伝わってくる中、対局は開始された。
1回戦
内海−福田−吉田−石野
東1局
内海・吉田が3巡目、福田も5巡目にはイーシャンテンと、ハナからぶつかり合いになりそうな勢い。
しかし内海と吉田は互いに、福田は石野に有効牌を握り潰され、全員ノーテンでまずは静かに局を終える。
東2局
『優勝できなきゃ2位も4位も同じですよ!絶対獲ります!』とは先日の内海の談であった。
ここまで精神的な緊張もあったのか、肩に力が入りすぎていた様子だったが、素直にテンパイを入れてリーチ。
内海(北家)6巡目
ドラ
同巡吉田も三色目のを引き込み、臨戦態勢。
吉田(南家)7巡目
ドラ
初和了を手にしたのは、8巡目にを持ってきた内海。裏ドラも1枚乗り、1300/2600。
この和了でフッと固さが抜けたように見えた。15半荘の長丁場、いつまでも気負ってはいられない。
いいタイミングで先制の和了を拾えた内海である。
東3局は福田(北家)の、東4局は吉田(北家)の1人テンパイで場は進み、
南1局2本場・供託1000点
ここまで1度もテンパイすることのなかった現雀竜位石野であったが、
石野(北家)4巡目
ツモ ドラ
やっと先手を取っての即リーチ。
親番で仕掛けも利く、完全イーシャンテンだった内海。一発目にスッとを河に置く。
裏ドラも2枚乗り、8000は8600。
南2局
痛手を喰らった内海であるが、気落ちは微塵も感じさせない。
配牌を取り終えツモ牌を右端に寄せた時点で、ドラドラつきの形の決まったリャンシャンテン。
内海(北家)1巡目
ツモ ドラ
後は一本道である。先ほどの失点を是が非でも取り戻したい内海。
しかし先にテンパイを入れたのは福田だった。
福田(東家)7巡目
ツモ ドラ
が2枚切られてはいるものの親番である。リーチをかけたくなるのが心情というものだろう。
ここで福田はヤミテンに構える。
同巡内海がテンパイを果たし、即リーチ。
内海(北家)7巡目
ドラ
もし、福田が先にリーチをしていれば、と河に並んでおり、結果内海に放銃となっていただろう。
しかし福田はそれらを手の内に引き込み、テンパイ復活。
ドラ
結局、内海にツモ和了されてしまうのだが・・・、守備型の福田の打ち筋を光らせる1局であった。
南3局
先ほどの内海のツモ和了で全員が20000点台。落ち着いた点棒状況である。
対照的に外の風は、窓をガタガタと揺らすほど強くなってきている。
このまま何事もなくオーラスを迎えるようにはとても思えなかった。
先手を取ったのはまたもや内海。
内海(西家)9巡目
ツモ ドラ
和了さえすれば暫定トップ目になる内海。を横に曲げる。
これに屈せず向かっていったのは親の吉田。
吉田(東家)11巡目
ツモ ドラ
ここは勝負処と踏み、静かにを河に放つ。そして、次巡待望の。
攻勢一気にを切る。
内海のリーチに対し安全牌が皆無だった福田、現物であるをツモ切ると、吉田から討ち取りの声があがる。
吉田(東家)
ロン ドラ
更に福田はこの12000の次局も、ヤミテンの吉田に点棒を献上してしまう。
吉田(東家)18巡目
ロン ドラ
7700は8000。
2本場も1人テンパイで流局。
風が、風が吹いている。
3本場
ここでも吉田がリーチと攻め立てるが、ここは石野が上手くかわし、福田から1000は1900。
南4局
石野31100 内海26900 福田▲2600 吉田44600
親の石野、3巡目に内海から出たを一鳴き。
石野(東家)
ポン ドラ
この鳴きのあと、内海が牌の巡りの悪戯に嵌ってしまう。
内海(南家)5巡目
ツモ ドラ
テンパイ取らずの打。
着順の陥落の可能性は現状では皆無と言える。それならば偶発性に頼らずに着順が浮上する道程を辿りたいのが自然であろう。
内海(南家)6巡目
ツモ ドラ
当然のツモ切り。
内海(南家)7巡目
ツモ ドラ
打。一瞬迷っていたようだが三度取らず。
内海(南家)9巡目
ツモ ドラ
やはりツモ切り。
内海(南家)11巡目
ツモ ドラ
打。
内海(南家)14巡目
ツモ ドラ
打。気負いも焦りもなく、ただ淡々と打牌を繰り返す内海である。
内海(南家)15巡目
ツモ ドラ
ここで不本意ながらもテンパイ取り。
内海(南家)16巡目
ツモ ドラ
この終盤に来てようやく条件を満たす形。曲げない理由はない。一呼吸置き、満を持してリーチの発声。
しかし成就することなく、石野と2人テンパイ。
1本場は吉田が仕掛けて2000は2300を石野から和了。並びは変わらぬまま緒戦を終える。
南3局まで全員平坦な状況であった1回戦が、終わってみればこの開き。
これから訪れる嵐の雀竜位決定戦の幕開けであった。
1回戦終了時
吉田+66.4 石野+10.3 内海▲12.6 福田▲64.1
2回戦
内海−吉田−福田−石野
東1局
石野が早々に6巡目リーチ。
手のまとまらない三者は初手から退歩を余儀なくされる。
終盤、安全牌が皆無となり困窮した吉田が痛恨の降り打ち。
石野(北家)
ロン ドラ
打点こそ2000点と高いものではないが、初陣をトップで終えているだけにラスは避けたい吉田。
特に前回2着の石野への放銃は手痛いところであろう。
東2局
内海に好機が訪れる。
内海(北家)5巡目
ドラ
逡巡することなく発せられたリーチの声。
優勝以外意味はないと、力強く明言した内海が思い起こされる。
しかしこの挑戦状を、真っ向から受けとめたのが石野であった。
石野(西家)6巡目
ツモ ドラ
ここから一旦の対子落としで迂回するも、立て続けにと引き入れ、と河に押し出していく。
内海にとってこのような舞台で、真の実力者に押し返されると言うのは初めての経験であろう。
この時内海は、何を思いながら石野のリーチの発声を聞いたのだろうか。
石野(西家)12巡目
ロン ドラ 裏
高目を一発で掴まされた内海。
内海にとっては、一筋縄ではいかない現雀竜位の粘り強さを思い知らされる1局になっただろう。
東3局
福田が丁寧な打ち回しで吉田から2400。
福田(東家)
ロン ドラ
続く1本場も、福田のリーチをかわしに来た吉田をとらえる。
福田(東家)
ロン ドラ 裏
5800は6100。福田にとっても、1回戦目トップの吉田にとっても決して安くない点数だ。
東3局2本場
福田に風が吹いてきたのだろうか?この局もダブ対子の3巡目イーシャンテン。
しかしこのが中々場に放たれないまま5巡目に内海、8巡目には石野にもテンパイを入れられてしまう。
内海(西家)
ドラ
石野(南家)
ドラ
いずれもヤミテンだが、ツモることも出ることもなく、13巡目福田の切ったに吉田がポン、打。
福田もポンテンテンパイとするが同巡に吉田が声高らかにツモ和了宣言をする。
吉田(北家)
ポン ツモ ドラ
起死回生の3000/6000で、内海を除く三つ巴となった。
東4局
まずは親の石野が1人テンパイ。
同1本場
石野(東家)5巡目
ドラ
三色と一通が望める、いわゆる黄金のイーシャンテン。
そして7巡目にテンパイを果たす。
石野(東家)7巡目
ツモ ドラ
捨て牌が
石野(東家)
内海(南家)
吉田(西家)
福田(北家)
は盤面的に絶好の待ち。を横に曲げ、まるでヤマに何十枚も眠っているかの様に一発でツモり上げる。
外の風は、更に激しさを増してきた。
時折、採譜者や観戦者があまりの風の強さに窓に目をやるが、対局者は誰一人として卓上から目を逸らす者はいない。
暴風警報はまさにこの卓上で唸りを告げていると、四者には分かっていたのである。
東4局2本場は石野の1人テンパイ。
同3本場は
福田(北家)5巡目
ツモ ドラ
好形テンパイと567の三色を睨み打。
次巡を引き、ドラを叩き切ってのリーチ。
ヤミテンのマンガンテンパイをしている吉田からで討ち取り、3900は4800。
南1局
まずは福田がリーチ。
福田(西家)8巡目
ドラ
直後に内海が追いつく。
内海(東家)9巡目
ツモ ドラ
は福田の現物であるが点棒のない内海、ここでヤミテンの1500点を拾うことにあまり魅力はない。
リーチで直接対決へと持ち込む。これに飛び込んでしまったのは再び吉田。
内海(東家)
ロン ドラ 裏
吉田はこれでラスへと転落してしまう。
しかし、ここまでの点棒の動きは、真の大時化の前の凪に過ぎなかった。
吉田に望外の追い風が吹いたのは、すぐである。
配牌は、
吉田(南家)
ドラ
と、ぱっとしない。和了があるとしたらチートイツくらいだろうか?
しかしツモが秀逸で、第1ツモでを重ねると、と7連続有効牌の鬼引きを見せ、わずか7巡目には
吉田(南家)
ドラ
このテンパイ。
ここでリーチを宣言した福田がを河に放つ。
「ロン。32000は32300」
冷静に、いつもと変わらぬ低いトーンの声が福田に向けて発せられる。
晴天の霹靂か。まさに落雷が福田に直撃した瞬間だった。
『挑戦者として内容にはあまりこだわらない。ただ、ただ優勝だけを目指して打ちたいと思う』
吉田はそう言っていた。普段大それた発言などはしない。
普段寡黙な人間が優勝と言葉にして、いやに重々しく聞こえたのを覚えている。
南2局1本場・南3局と静かに局が進行し、南4局を迎える。
石野(東家)46800 内海(南家)14900 吉田(西家)46400 福田(北家)▲8100
石野の400点のリードなど、最早無いようなものだ。
石野(東家)5巡目
ツモ ドラ
普段、小気味良く同じテンポで打つ石野の手が止まる。
少考後打とすると次巡再びツモ。もう一度少考に入る石野、今度は打。
そのに対し下家の内海からポンの声。
同巡を引いた石野はノータイムでリーチ。
降りるわけにはいかない吉田も無筋を押していくが、結局軍配は石野。
ツモ ドラ 裏
裏ドラ2枚で4000オール。
これを差し返す力は吉田には残っておらず、荒れ場を制した石野のトップで2戦目は終了。
2回戦終了時(カッコ内はトータルポイント)
石野+74.7(+85.0) 吉田+20.3(+86.7) 内海▲19.8(▲32.4) 福田▲75.2(▲139.3)
3回戦
福田−内海−吉田−石野
前回の勢いのまま石野に手が入る。
東1局
石野(北家)9巡目
ツモ ドラ 裏
3巡目のテンパイ即リーチ。当然の様にツモ、当然の様に裏。
まさに順風満帆という言葉が相応しい。
次局もを仕掛けてドラドラテンパイ。
石野(西家)
ポン ドラ
しかしここは福田が固くヤミテンで和了する。
ロン ドラ
東3局
吉田(東家)のリーチに内海が現物待ちのマンガンテンパイ。
石野も仕掛けてドラ3のテンパイを入れるも、吉田が内海から和了をもぎ取る。
吉田(東家)
ロン(リーチ) ドラ 裏
東3局1本場
過去の雀王位決定戦・雀竜位決定戦の牌譜を眺めてみると、石野は嵌張での、特に2・8のリーチは非常に多い。
そういえば口開けの石野のリーチもカンであった。
5巡目に早くも石野が先制で曲げる。
石野(南家)
ドラ
ここでもカンである。
これに追いついたのは吉田。
吉田(東家)6巡目
ツモ ドラ
は石野の現物。しかし石野を叩くのならばここだろう。リーチで脇二人を抑え付ける。
はヤマに4枚、はヤマに3枚眠っているが、石野・吉田にはもちろん脇の二人にも流れない。
吉田も石野も祈るような気持ちで摸打を繰り返していることだろう。
二人の焦燥感を尻目に、15巡目にしてようやくが1枚福田の手に。
王牌を入れ、残り24枚中二人の和了牌はまだ6枚もある。
決着はつきそうだ。そう思う間もなく、吉田が放銃。
石野(南家)16巡目
ロン ドラ 裏
未だ追い風の石野である。
続く東4局は、我慢を続けてきた福田。好配牌を丁寧に仕上げて2000/4000。
福田(南家)
ツモ ドラ 裏
南1局
これまでテンパイを入れられても、なかなか和了に結びつかない内海。この局もまさにそうだった。
内海(南家)8巡目
ツモ ドラ
ヤマに眠っていそうな単騎で先制リーチ。
これに斬り返して行ったのは意外にも守備型の福田。ドラの、と積極的に飛ばしていきリーチ。
内海がホウテイでを掴み福田に7700。
福田(東家)
ロン ドラ 裏
内海の欲しかったは終盤に吉田、そしてもう1枚は王牌に殺された結果となった。
南1局1本場
これで石野を捲った福田であったが、
石野(北家)11巡目
ツモ ドラ
形だけ見ればリーチと言う打ち手も少なくないかもしれないが、ソーズがあまりにも高すぎる場。
ヤミテンのまま8枚目のを引き当てた石野が、トップへ再浮上。
南2局
ここまでの点棒状況は
内海(東家)6700 吉田(南家)16000 石野(西家)42000 福田(北家)35300
明暗がクッキリと分かれている。3着3着と来ている内海、ここはどうしても一矢報いたい所だが、現実は厳しかった。
石野が先制リーチで突き離しにかかる。
石野(西家)11巡目
ドラ
ここに内海も執念のテンパイを入れる。
内海(東家)13巡目
ツモ ドラ
こうなればぶつけ合いである。内海の追いかけリーチ。
同巡吉田にもテンパイが入る。
吉田(南家)13巡目
ツモ ドラ
捨て牌が
内海
吉田
石野
福田
ここでこの日一番の長考を入れる吉田。
切るなら枚数的にであろうが、無論二人に通ってはいない。
ここはラス目の親内海に、石野を蹴落とすチャンスを委ねたか?
慎重に安牌の打とし、役なしのダマテンに構える。
しかし次巡内海にツモ切りされたに、一瞬顔を曇らす吉田。を引いて撤退した後、さらに石野がと放つ。
吉田、悔やんでも後の祭り。一騎打ちの結末は16巡目
石野(西家)16巡目
ツモ ドラ 裏
再びラス牌をツモり裏裏。三者にとってあまりにも重い3000/6000である。
南4局
2着目の福田が重厚な手順で和了。
福田(南家)6巡目
ツモ ドラ
ここから打とし、しっかりメンタンピンを一発でツモり上げ3000/6000。
福田(南家)15巡目
ツモ(一発) ドラ 裏
着順こそ変わらないものの、素点は作って石野に喰らいつく福田であった。
3回戦終了時(カッコ内はトータルポイント)
石野+68.7(+153.7) 福田+25.4(▲113.9) 吉田▲30.5(+56.2) 内海▲63.6(▲96.0)
4回戦
福田−吉田−石野−内海
窓を打ちつける風の音は、やはり衰えることを知らない。
東1局
石野(西家)4巡目
ドラ
よもやの四暗刻と思われたが、冷静に7巡目に出たをポン。内海リーチも逆に討ち取る。
石野(西家)11巡目
ポン ロン ドラ
続く東2局も終局間際、
石野(南家)18巡目
ツモ ドラ 裏
このマンガンを和了する。
次局親番では、と連続して手出しの、誰が見ても“入っている”リーチ。
石野(東家)15巡目
ツモ ドラ 裏
同卓者三人が、思わず目を瞑りたくなるような6000オール。
ああ、もう圧倒的だ。
この瞬間に昨年、開幕5連勝という脅威の強さで優勝を決めた石野の姿が頭に浮かんだのは、筆者だけではないだろう。
東4局
内海にようやく手が入る。
内海(東家)9巡目
ドラ
次巡を引き、打
内海(東家)10巡目
ドラ
高目親倍のテンパイを果たすが、
石野11巡目(北家)
ロン ドラ
石野が固くヤミテンで福田から1300を和了してかわす。
ここでもまだ、内海は石野の後塵を拝するしかないのか。
南1局
ここにきて初めて、1回戦から数えて実に43局目、石野に放銃があった。
福田(東家)7巡目
ロン(リーチ) ドラ 裏
石野からすれば打つべくして打った牌であるため、精神的動揺や後悔は一切無いだろう。
それでもどこか、風向きの変化をわずかに卓上に落とした雰囲気があった。
南2局1本場
三者が遅い進行の中、ずっと音沙汰の無かった内海が突然に、そして厳かに手を開く。
内海(西家)10巡目
ツモ ドラ
『8000・16000は8100・16100』
いきなりの僥倖に自らも驚きを隠せない様子で、だが力強く、内海は対局者に向けて発声した。
さらに追い風が内海を後押しする。
南4局
内海(東家)39300 福田(南家)6800 吉田(西家)10800 石野(北家)43100
内海(東家)9巡目
ツモ ドラ
が薄いため打。
次巡を引き、単騎のチートイツでノータイムリーチ、渾身の一発ツモ。
内海(東家)11巡目
ツモ(一発) ドラ 裏
さらに望外の裏裏である。
2回の和了で一気に石野を捲った内海。
ようやく、ようやく内海のポイントにプラスの文字が記入された。
4回戦終了時(カッコ内はトータルポイント)
内海+77.3(▲18.7) 石野+19.4(+173.1) 吉田▲35.2(+21.0) 福田▲61.5(▲175.4)
5回戦
石野−吉田−内海−福田
『協会の押し引きバランスは難しいけどね。色々考えながら自分の麻雀をしっかり打とうと思っているよ』
難しいとは言いながらもここまでほぼ迷い無く打牌を繰り返し、全連対で圧倒的な強さを見せている石野であった。
吉田も、そんな石野に離されまいと必死に喰らいついている。
苦しいながらも前回トップを獲った内海、ここで連勝してプラスで初日を終えたい。
4半荘中3回箱を割り、ただ一人蚊帳の外に置かれている福田。
全15回戦の長丁場とは言え、ここでラスを引かされるようだと非常に苦しくなる。
ここまで、必ず誰かが箱を割っている激しい乱打戦。この5回戦目も一波乱ありそうな予感は十分あった。
序盤戦はリーチ棒が飛び交う攻防となるが、誰しもが決め手に欠け、小さい動きのまま淡々と局が漸進していく。
東3局
突如、呼応するように各家に手が入った。
先ずは内海
内海(東家)5巡目
ツモ ドラ
ヤミテンでマンガンのテンパイではあるが、5巡目にして既には3者に1枚ずつ切られており、厳しい所である。
続いて石野
石野(西家)5巡目
ドラ
しかしこのイーシャンテンから何も引けないまま、ドラのをツモ切ると、ポンの声は福田。
『俺みたいな守備型の人間は、和了できる時は打点を作らなきゃとても勝ちきれないよ。
対戦相手は強敵揃いだけど、ミス無く集中して打てれば結果はついてきてくれると信じてるよ』
そう言っていた福田。ここまで厳しい戦いを強いられてきただけに、この手をなんとしても成就させ、
上位陣との差を縮めて初日を終えたい。
福田(南家)12巡目
ポン ドラ
直ぐにを引いた福田の選択は打
石野(西家)15巡目
ツモ ドラ
打つべき牌は1つしかない。
福田、石野から値千金の12000を和了する。
石野に暗雲が立ち込めてきたか?
東4局は内海が軽くツモ和了。
南1局では親の石野が先手を取ってリーチに出るも、三人しっかりと押さえて流局。
同1本場では吉田(南家)がリーチ
↓ ↓ ↓
(リーチ)
石野(東家)10巡目
ツモ ドラ
至当の打だが・・・静かに倒される手牌。
またも石野が耳にしたのは、痛恨の12000の声。
ロン(一発) ドラ 裏
やにわに石野が箱を割る。
南2局を迎え、
吉田(東家)32700 内海(南家)32800 福田(西家)36500 石野(北家)▲2000
三者にとっては、願ってもない展開である。
この局も石野が積極的にリーチを掛けるが、福田が同巡500/1000のツモ和了で潰す。
南3局は石野が意地を見せ2000/4000をツモ和了し、オーラスも
南4局
石野(南家)6巡目
ツモ ドラ
ここからを切ってフリテンリーチするも、ツモ和了は再び。
裏無しの700/1300で5回戦目が終了した。
福田、耐えに耐えてどうにかトップをもぎ取り、初日を終えることが出来た。
吉田・内海も終わってみれば大して原点から動いておらず、2日目に調子良いスタートが切れれば一気に頭に立つことも可能だ。
そして石野。4回戦途中までは圧勝ムードが漂っていただけに、本意と言える幕引きではないだろう。
しかし優位な立場にいることは間違いない。このまま王としての格の差を見せつけ、挑戦者たちを一蹴するのであろうか?
5回戦終了時(カッコ内はトータルポイント)
福田+56.2(▲119.2) 吉田+9.0(+30.0) 内海▲12.4(▲31.1) 石野▲52.8(+120.3)
『本日ハ晴天ナリ』
そんな言葉をそらぞらしく呟いて、今日の対局を反芻した。
依然吹きすさぶ強風に肩をすくめ、筆者はこの日の会場を後にしたのである。
2日目観戦記
6回戦 石野‐内海‐吉田‐福田
東1局
「ロン。8000」
開局一番に手を開いたのは、現状トータル最下位の福田である。
ロン ドラ 裏
打ったのは、トータル首位の石野。
福田・吉田のリーチに仕掛けて応戦した結果の放銃である。
石野を追う三者にとっては好スタートといえるだろう。
しかし、目下ポイントを守るべき立場にある石野が、真っ向と挑戦者たちの攻撃を受け止めて斬り返してきたことが、
私にはそら恐ろしく思えた。
東2局
すかさず二の矢を構え直す石野。4巡目にあっさりテンパイし、リーチとツモで失点を半分挽回。
石野(北家)8巡目
ツモ ドラ 裏
今日も石野は、攻撃の手を緩める気は毛頭無い様子である。
東3局
石野と90ポイントほど離れた2位の吉田が親。
吉田はここであがって石野を突き放しておきたいところであろう。
吉田(東家)5巡目
ツモ ドラ
平素の吉田なら打あたりかな、などと考えながら眺めていたが、吉田の選択は打。
同巡内海の切ったをチーし、あとは一直線。
と引き入れ、力技で4000オールのツモ和了。
吉田(東家)13巡目
チー ツモ ドラ
吉田、思惑通りにトップ目に立つ。
東3局1本場
吉田(東家)7巡目
ツモ ドラ
吉田は取らずの打。
すぐに内海からを喰ってテンパイ。
吉田(東家)8巡目
チー ドラ
このあたりは自然な進行であろう。
無論門前で張れば勝負手で曲げるところだが、喰わないのも緩手ではある。
しかし、5巡目に仮テンを入れていた石野、吉田の鳴きにより本手に昇格するツモ。
石野(西家)8巡目
ツモ ドラ
を横に曲げると、力強く一発でを手繰り寄せ、一気に原点復帰。
石野(西家)9巡目
ツモ(一発) ドラ 裏
本当に、石野の壁は厚い。
東4局は石野が吉田から、南1局は福田が石野から仮テンを軽く和了。
南2局
ここまで内海を除く三つ巴である。
トータル3着目内海は初日と同様、一方的に点棒を削られる展開になっており、抗う術がない。
そんな中内海にチャンス手が入るが、焦燥感を露呈させて最悪の仕掛けをしてしまう。
内海(東家)6巡目
ドラ
ここからオタ風であるを一鳴き。
しかし当然、ラス目の親のこの仕掛けを見ては、他家からやがこぼれてくることはなかった。
終盤石野が、を打てばテンパイという牌姿になるも、出さずに結局全員ノーテンで流局。
南3局1本場
ここは石野が吉田の親を蹴りにいく。
石野(西家)5巡目
ドラ
ここからポンで打。ツモと来てポンでテンパイ。
内海のリーチが入るも、300・500は400・600のツモ和了でオーラスに繋いだ。
石野(西家)10巡目
ポン ポン ツモ ドラ
南4局
先の石野の和了で、
福田(東家)29100 石野(南家)26400 内海(西家)15500 吉田(北家)29000
ここまで固く来た福田が暫定トップ目だが、和了しても続行、ツモられてもノーテンでも降着では苦しいところ。
むしろ追う立場の吉田・石野の方が打ちやすい。
序盤に仕掛けていた吉田、11巡目にやっとテンパイ。
チー ポン ドラ
そして14巡目、吉田の捨て牌が
ここで福田の手は
福田(東家)
ドラ
場に4枚目のだが、福田はスルー。
しかし、ここは流石にチーして打として形式テンパイを取っておくべきではないか?
仮に吉田に打っても、3着落ちは考えにくい。
ここでトップを逃すことが最も重いのは、ポイント的に福田なのである。
結果は終盤、吉田が前へ出る石野から1000を討ち取り、吉田‐福田‐石野‐内海の並びで終了。
6回戦終了時(カッコ内はトータルポイント)
吉田+50.0(+80.0) 福田+9.1(▲110.1) 石野▲14.6(+105.7) 内海▲44.5(▲75.6)
7回戦 内海−吉田‐福田‐石野
結局3着を引いた石野であったが、やはり最後まで厳しい粘りを見せてくる。
吉田がかなり詰め寄ったとはいえ、無論楽観視できる状況ではない。
東1局
初戦ノー和了のラスを引いた親の内海だったが、ここでやっと追撃の手が入る。
内海(東家)11巡目
ドラ
当然のリーチで攻め立てる。
タンヤオドラドラのテンパイをしていた吉田が、同巡ツモ切りリーチで応戦してくるが、ここは内海に軍配。
内海(東家)12巡目
ツモ(一発) ドラ 裏
安目ではあるが一発でツモって4000オール。
東1局1本場
福田が4巡目リーチで終盤に1300・2600のツモ和了。
福田(南家)16巡目
ツモ ドラ 裏
東2局は福田・吉田の2人テンパイで流局。
東2局1本場
ここからやっと、前回3着に甘んじた石野がオフェンスターンに入る。
石野(西家)3巡目
ドラ
この牌姿からをポンして打。
連続でマンズを掘り当て、福田が9巡目に放ったをとらえる。
石野(西家)9巡目
ポン ロン ドラ
打った上家の福田はドラドラだったとは言え、愚形残りのイーシャンテン。絞りに定評ある福田らしくない放銃である。
先ほど肝心なところでトップを逃した福田が、早くも優勝戦線から離脱しつつあるのを痛切に感じた。
東3局
更に石野がリーチで攻める。
石野(南家)8巡目
ドラ
しかし、この回のトップを死守するべく、真っ向から内海が立ち向かった。
内海(西家)12巡目
ツモ ドラ
内海、打でのドラ待ちカンチャン追い掛けリーチ。
終局間際、リン牌となる和了牌をツモりあがる。
内海(西家)12巡目
ツモ ドラ 裏
1000・2000で2着目の石野を突き離す。
今回ばかりは内海の気概がうまい結果を運んでいる。
このまま内海が走るかと思われた南1局。
石野、内海に対子持たれの嵌を引き入れてのリーチ。
石野(北家)6巡目
ドラ
高目のは山に3枚。早々の攻撃に三者は後退、後は一人旅である。
事も無げにをツモりあげた石野。トップ目の内海にまた詰め寄った。
石野(北家)10巡目
ツモ ドラ 裏
南2局1本場 供託2000
追われる立場の内海、イーシャンテンの配牌を得て5巡目、
内海(北家)5巡目
ツモ ドラ
ここでカンをし、単騎で攻勢一気に即リーチ。
2巡後石野に追いつかれるが、石野がを掴み、3200は3500。
カン ロン ドラ 裏
南3局
壮絶な叩き合いを繰り広げる石野と内海である。
この回トップが是が非でも欲しい内海、現状石野をここまで10000点ほど離して逃げの体勢に入っている。
ここで14巡目、石野がを切ってリーチ。
全員の捨て牌が
福田(東家)11600
石野(南家)28800
(リーチ)
内海(西家)38200
吉田(北家)21400
それを受けた吉田、
吉田(北家)14巡目
ツモ ドラ
三色のイーシャンテン形で、選択肢は3つ。
一つ目は現物の。広いイーシャンテンを維持しつつ、堅実に現物を抜く。
二つ目はこれも現物の。
タンピンの可能性を残し、が先に入るようであればを切るであろう。
そして三つ目は筋の。
タンヤオ・三色の可能性を残し、受け入れも最大に構える。
石野の捨て牌に、そしては自分で一枚切っており、これが一番多い選択肢ではないだろうか?
吉田の選択も。
しかし、勢い良く石野の手牌が倒される。
「ロン、6400」
ロン(一発) ドラ 裏
石野は、を切ってのシャンポンリーチであった。
仕方ない、と言えなくはない放銃。
しかし、ここまで大きなミスもなく順調にポイントを積み重ねてきた吉田。
自分のツモ番は3回しかないこと、流局してオーラスになってもマンガンツモで石野を捲れること、
そして何より、トータルトップ目の石野のリーチであることを加味すれば、このは打ってはならなかったのではないだろうか?
南4局
親の石野は、トップ目である内海にもう3000点差まで詰め寄って来た。
最初にテンパイを入れたのは吉田。
吉田(西家)9巡目
ドラ
内海からの出和了を嫌い、ヤミテン。当然、内海からのは見逃す気構えに他ならない。
ここで脇が石野にトップを献上するわけにはいかないのである。
しかし、10巡目に石野が仕掛けを入れ、と通してテンパイ。
石野(東家)14巡目
チー ドラ
場にはソーズが非常に高く、石野のテンパイもほぼソーズ。
吉田(西家)14巡目
ツモ ドラ
少考の末、吉田が放銃。
自身もラスへと堕ち行く、最悪の5800である。
南4局1本場
福田(北家)6巡目
ドラ
石野からの高目出和了、あるいは跳満ツモならばトップは内海。
福田もまた、ヤミテンに構える。
しかし福田安めのをツモ和了。
記録用に裏ドラ表示牌をめくると、そこに鎮座していたのは。
吉田・福田は途中まで石野のトップを避けるべく打ち回していたのだが、結局共に不本意な結果を残してしまった。
「まだ7回戦」なのか「もう7回戦」なのか。そのあたりの気構えの差が影を落としたような気がした。
鬼神のごとくの追い上げで、見事トータル2着目の吉田をラスに沈めてのトップをもぎ取った石野。
この堅固な壁を本当に、ここから突き崩すことが出来るのだろうか?
決定戦はこれより折り返し地点に差し掛かる。
7回戦終了時(カッコ内はトータルポイント)
石野+59.6(+165.3) 内海+9.1(▲58.2) 福田▲25.4(▲135.5) 吉田▲51.6(+28.4)
8回戦 石野−内海‐福田‐吉田
東1局
石野(東家)6巡目
チー ドラ
石野の捨て牌は大人しく、共に1枚切れ。はまだしも、はすぐにでも出てきそうな感じである。
しかし、ここは吉田が福田からメンピンの2000を出和了し、まずは石野の勝負手を潰す。
東2局は石野が内海のリーチを捌き3900を和了。
東3局・同1本場も互いが互いを牽制しあい、小さな移動で迎えた東4局。
東4局2本場 供託1000
序盤、内海・石野共に好手牌。
内海(西家)3巡目
石野(南家)5巡目
ドラ
お互いマンズの上が苦しいところではあるものの、打点的には十分期待できる。
決着がついたのは12巡目。
石野(南家)12巡目
ツモ ドラ
均衡状態を突き破る2000・4000。
またしても三者の前に立ちはだかる石野である。
それにしても石野の攻撃力はやはりこの中では抜きん出ている。
ポイントのリードを守りに行くどころか、終始攻め倒して他家の気持ちを折りにかかるのである。
南1局
石野(東家)40500 内海(南家)19800 福田(西家)18900 吉田(北家)20800
石野ダントツの点棒状況で迎えた南場。
しかし、誰かが石野の首に鈴をつけなければならない。
三人の目は、決して死んではいなかった。
まず最初に動いたのは福田。
福田(西家)10巡目
チー ポン ドラ
仕掛けた福田を横目に13巡目、テンパイを入れていた石野が分岐点に立つ。
石野(東家)13巡目
ツモ ドラ
ヤミテンで9600のテンパイを果たしていたが、ソーズは非常に場に高く、は既に吉田・内海に2枚ずつ持たれており、
放たれる形ではない。
石野、ここからを切って横に曲げる。
同巡内海も追いつき、リーチ。
内海(南家)13巡目
ドラ
三つ巴の攻防は、18巡目に石野が「掴んだよ」と言わんばかりに珍しくを強打して決着。
福田(西家)18巡目
チー ポン ロン ドラ
なんとか石野の足を止める3900。
南2局は吉田・内海の二人テンパイ。
同1本場は内海がリーチ。
南2局1本場 供託1000
内海(東家)12巡目
ドラ
先にヤミテンを入れていた石野が掴んで放銃。
内海(東家)15巡目
ロン ドラ 裏
石野の3局連続の失点で、全員が20000点代に突入。
南2局2本場
石野がここにきてヤミテンで軽く和了を拾う。
石野(北家)8巡目
ロン ドラ
全員が競っているこの状況、リーチをしても良さそうに見えるが、放銃が続いて逃げを意識したのであろう。
これが石野の勝負感覚なのであろうが、筆者には多少違和感のあった2000。
しぶとく食らいつく三者を、この点差で果たして振り切ることができるのだろうか?
南3局
石野が軽く仕掛けて、チートイツイーシャンテンだった内海から2000の和了。
石野(西家)8巡目
ポン ロン ドラ
石野が再び抜け出してのオーラス。三者は2800点差での二着争い。
石野はひとまず、子方のマンガンツモでも捲られることはない。
内海・福田も石野をトップから引きずり下ろしたいのは山々だが、自身の二着確保もしなくてはならない。
石野にとって、理想的と言える状況ではあるが・・・。
を一鳴きして、最初にテンパイを果たしたのは福田。
福田(北家)7巡目
ポン ドラ
福田のソーズ気配は明らかであるが、ポン手出しのでテンパイ。
まだ一枚も余らせておらず、石野からの和了も期待できるところ。
しかし、この局を制したのは、ここまで序盤から我慢を続けてきた吉田だった。
9巡目に仮テンのチートイツをテンパイすると、次巡一枚切れのを引いての即リーチ。
これを一発で引かされてしまったのは福田。当然止まる術もなく9600の放銃。
吉田(東家)10巡目
ロン(一発) ドラ 裏
続く1本場
石野、単騎の仮テンから振り替わりリーチ。
石野(南家)11巡目
ドラ
福田が追いつく。
福田(北家)13巡目
ツモ ドラ
起死回生のメンホンチートイツ。
「リーチ」
しかし、宣言牌のを河にフッと置いたときには、既に吉田からロンの声が掛けられていた。
吉田(東家)13巡目
ロン チー ポン ドラ
南4局2本場
こうなれば断然吉田だ。この局も牌の巡りが吉田の味方につく。
吉田(東家)8巡目
ドラ
打点こそ低いものの、先手を取ってのリーチ。
石野(南家)8巡目
ドラ
石野もこのイーシャンテンだったが、吉田がツモ切った牌にポンテンをかけ、吉田に2000は2600の放銃。
吉田、三連続和了で抜け出した。
吉田(東家)36300 石野(南家)30900 内海(西家)23500 福田(北家)9300
ノーテンでも石野に捲られる事はない。次局が最終局濃厚である。
南4局3本場
トータル2位の吉田にトップを取らせたくない石野、初巡からいきなり仕掛ける。
石野(南家)1巡目
ドラ
ここから吉田の切ったをポン。一気に寄せる意思表示を見せる。
これに呼応して内海も仕掛ける。
内海(西家)3巡目
ドラ
石野の切ったにチーの声。
その後、石野はポン、内海はポン、ポンの三副露。
内海(西家)8巡目
ポン ポン チー
石野(南家)6巡目
ポン ポン ドラ
石野ここに引いてきたを淡白にツモ切り、三着落ちとなる8000は8900を放銃。
これは自重の一手であっただろう。
石野が三着に転落するパターンは、自身が放銃しない限り、
内海1300・2600以上ツモ和了
福田が内海に6400以上放銃
の2通りしかない。実際には吉田・福田が石野から6400以上出和了でも三着になるが、
二人は降りているため、内海の1300・2600以上ツモ和了しかない。
さらに言えば、内海が2000・4000ツモ和了であれば石野は三着だが、3本場のため内海が吉田を捲りトップに立つ。
トータルポイントを考えれば、吉田にトップを取られて自身が二着よりも内海がトップで吉田が二着の方が良いのではないだろうか?
この放銃によって、吉田にとっては願ってもない並びで8回戦は幕を閉じた。
8回戦終了時(カッコ内はトータルポイント)
吉田+56.3(+84.7) 内海+12.4(▲45.8) 石野▲18.0(+147.3) 福田▲50.7(▲186.2)
9回戦 石野−内海‐吉田‐福田
8回戦は前のめりに倒れてしまったものの、石野の断続的な攻撃はやはり脅威である。
ここまで石野が抜けて三者が追う状況が多く、また三者の誰かが抜け出せば決まって石野が掴みかかって来る。
石野の振り下ろした刀身を臆せず受け、決して握った柄を弛めてはならない。三者に課せられたのは、その勇気と忍耐である。
東1局
8回戦目を制した吉田が、余勢を駆って攻め立てる。
吉田(西家)4巡目リーチ
ドラ
しかし、ここに斬り込んで来たのは、やはり石野。
吉田からリーチを受けた際の手牌こそ、
石野(東家)4巡目
ドラ
と、とても戦えそうな形ではなかったが、一旦を落として回り、終局をチー。
石野(東家)17巡目
チー ドラ
吉田が最後のツモでを掴み、石野が持ち味のしぶとさで5800の和了。
東1局1本場
さらに鬼神は畳み掛ける。
石野(東家)4巡目
ツモ ドラ
このツモで、一気に決めに行ける感触を得た石野、当然の打。
2巡後に出たを叩き、すぐにを引きテンパイ。
石野の捨て牌は
同巡イーシャンテンになった内海、石野の捨て牌を一瞥した後、打。
「ロン」
え?という表情を見せた内海。
石野(東家)8巡目
ポン ロン ドラ
一刀両断の18000。
石野、粘りの和了の次にこの本手である。
正直この無限に振り下ろされる刃には、兜を脱ぎたくなるであろう。
内海は次局も放銃で、残り点数は僅か2200点となる。
内海、太刀を返すことなくこのまま終わってしまうのか?
東2局1本場
内海(東家)7巡目
ツモ ドラ
親の内海、真剣な表情で場を見据えている。
は2枚切れだが、山には眠っていそうである。しかしここは打点の欲しいところ、をツモ切り。
次巡のツモは裏目となる。内海の手が止まる。
内海(東家)8巡目
ツモ ドラ
私ならとりあえず保留の意味でを打ちそうなのだが、内海の打牌は。
ソーズの両面を拒否し、筒子のリャンカン形との心中を選んだ。
次巡のツモは。
打、あるいは打や打としているとここで雀頭がになり、マンズとソーズの両面イーシャンテンになっている。
を切っている以上、内海はのツモ切り。
内海の選択の是非や如何に――。
1巡置いての11巡目、内海は最高の牌を引き入れる。
内海(東家)11巡目
ツモ ドラ
ヤミテンに構え、福田の打ったに12000。
復活した内海、2本場も1人テンパイと確実に点棒を戻していく。
さらに、
東2局3本場
内海(東家)11巡目
ロン ドラ
配牌から孤立していたを、テンパイした石野が放銃。
なんと、気付けば石野と内海の差はわずか10000点差となっていた。
南1局
最初のテンパイは吉田。
吉田(西家)5巡目
ドラ
とドラ表示牌であるのシャンポンテンパイ。リーチの選択をする人も少なくないかもしれないが、吉田はヤミテンに構える。
しかしこの堅実策が、内海に風を運ぶことになる。
イーシャンテンだった内海が同巡をツモ切り、8巡目にテンパイ。
内海(南家)8巡目
ツモ ドラ
こちらは当然の即リーチ。一発でを引き当てた内海、裏ドラ表示牌をめくると望外の。
実に50000点近くあった差をひっくり返し、逆に石野に8000点のリードをつけた内海。
親ッパネを放銃しようとも、決して折れない内海の忍耐力が、ここに実を結んだ。
南3局
吉田が10巡目にリーチ。
吉田(東家)10巡目
ドラ
内海も同巡に追いつく。打点はともかく、ここを和了してオーラスをさらに優位な条件で迎えたい内海、果敢に追いかけた。
内海(北家)10巡目
ドラ
しかし、2巡後にをツモり、手牌を開いたのは、内海ではなく石野。
「700・1300」
石野(西家)12巡目
ドラ
ここまで来ると、石野の粘りは憎らしいほどである。
南4局
福田・内海の2人テンパイでこの状況。
福田(東家)12700 石野(南家)32600 内海(西家)35500 吉田(北家)19200
南4局1本場
もちろん自分で和了して終わらせたい内海。
一方吉田はマンガンツモ和了でも石野に届かないため、内海以外からならば喜んで和了にくるだろう。
そんな思いを打ち砕くように、鬼神石野が5巡目に牌を横に曲げる。
石野(南家)5巡目
ドラ
この手、ツモ和了の場合
なら単独トップ
は同点トップ。裏1枚で単独トップ
内海から出和了の場合
どれでも単独トップ
吉田・福田から出和了の場合
なら同点トップ。裏1で単独トップ
だと二着変わらずのまま。裏1で同点トップ。裏2以上で単独トップ。
トータルポイント的に、内海はここでのトップは絶対に欲しい。放銃は無論できないのだが、
福田・吉田が降りに回ってしまうと石野の一人テンパイでトップが入れ替わってしまう。
内海(西家)12巡目
ドラ
上家の石野の放ったをでチーし、中筋である打と行った。
次巡石野の和了牌であるを喰い取り、打で臨戦態勢。
内海(西家)13巡目
チー ドラ
前へ出た内海に高めを下げられた石野だったが、次巡をツモ。
石野(南家)14巡目
ツモ ドラ 裏
裏ドラは乗らずで、同点分け。
ひるまず立ち向かった内海の動きが奏功し、とにかく石野の単独トップだけは食い止めた。
9回戦終了時(カッコ内はトータルポイント)
石野+34.9(+182.2) 内海+34.9(▲10.9) 吉田▲21.4(+63.3) 福田▲48.4(▲234.6)
10回戦 福田−吉田‐石野‐内海
2日目最終戦。
流石に全員疲労の色が濃い。
ここまで攻め倒す石野も、受け止める三者も、決して楽な戦いはしていない。
しかし、この最終戦のトップが、明日の趨勢を左右するのは自明であろう。
三者はもう絶対に、石野にトップを取らせてはならない。
東1局
親番の福田が久々に先手を取りリーチ。
福田(東家)10巡目
ドラ
前巡、テンパイを入れていた内海もツモ切りリーチで追いかける。
内海(北家)10巡目
ツモ ドラ
しかし宣言牌のは、石野の今テンへの放銃。
石野(西家)10巡目
ロン ドラ
もはや何度目であろうか。ここに来てもまた、石野が主導権を握っての開局。
東2局
石野(南家)5巡目
ドラ
この仮テンにを引き打のヤミテン。
福田もひそかに本手を入れていた。
福田(北家)5巡目
ドラ
ポイント的には崖っぷちの福田。今度こそ、と強い思いで内海から出たをポンし、打で3面張へ受けかえるも、
それは石野の和了牌。
福田、必然の打牌が悪い結果へと偏り、放銃という結果が非常に多い。流石に厳しくなってきた。
石野(南家)8巡目
ロン ドラ
リードする石野。誰が、追撃に名乗りを上げるのか。
東4局
まずはドラドラの内海がテンパイ。
内海(東家)12巡目
カン ドラ
吉田も続く。
吉田(西家)13巡目
ツモ ドラ
絶好のを引いてのテンパイ。ヤミテンでも十分な打点はあるが、こちらは強気にリーチで攻める。
直後に福田も追いついた。
福田(南家)14巡目
ツモ ドラ
果敢に追いかけるも、決着は次巡すぐ。
福田が力なく河に置いたのはドラのであった。
吉田(西家)15巡目
ロン ドラ 裏
痛烈な16000で、吉田が一撃でトップ目に立つ。
南1局1本場
福田の先制リーチに石野が追いかけ、一発でツモ和了。
石野(西家)15巡目
ツモ(一発) ドラ 裏
ここでもやはり、トップを楽にはさせない石野である。
オーラスを迎え、吉田との差を6200まで詰め寄った。
しかし、ここは好配牌を貰った吉田がなんとか逃げ切る。
南4局3本場供託3000
吉田(西家)10巡目
ロン ドラ
「ロン。2600は3500」
安堵の表情で手牌を倒す吉田。
最終日につなぐ大きなトップである。
10回戦終了時(カッコ内はトータルポイント)
吉田+63.3(+130.3) 石野+14.3(+196.5) 内海▲28.2(▲39.1) 福田▲53.1(▲287.7)
並びは結局変わらぬまま、二日目が終了した。
トータルトップの石野、依然強力な攻撃で三者を圧倒し続けている。
最終日もこのまま大刀を振り回して立ちはだかるのか、それとも一転して守勢に回るのか。
その後ろ、静かに追走する吉田は、虎視眈々と反撃の機会をうかがっている。
石野を倒せる位置にいるのは、現実的にはもう吉田しかいないのだ。
内海は早い段階でトップを取れればまだ希望は残るが、石野のポイントを減らせない事には厳しい。
福田が実質目無しになった以上、石野の着順を落とすのも非常に難しいのである。
残すは半荘5回。
最後の瞬間笑うのは、やはり石野か、それとも――。
文:大浜岳
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