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順位
名前
TOTAL
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
1
内海 元
127.7
6.1
68.9
-5.8
-15.1
73.6
2
中林 啓
48.2
-15.3
-24.3
-57.4
56.6
-26.2
3
木原 浩一
-78.4
-55.7
2.6
16.0
-48.4
7.1
4
二見 大輔
-97.5
64.9
-47.2
-67.6
6.6
-54.5

【1日目観戦記】

2日目観戦記最終日観戦記

『雀竜位戦』
それは雀王戦と双璧をなす協会2大タイトル戦の1つである。
雀王決定戦が「協会最強」を決める戦いならば、雀竜位決定戦は「次世代を担う打ち手」を決める戦いと言える。

――旬の打ち手は誰だ?

その答えがここにある。

 

★1回戦★(中林→内海→木原→二見)

「ツモ、1000・2000」
リーチ、そして最初の和了宣言は南家に座るその男だった。

内海 元

第9期雀竜位、ディフェンディングチャンピオンである。
今期はB1リーグでの激戦を勝ち抜き昇級、次期Aリーガーとなり前年からの勢いは衰えていない。
雀風は先手を取り主導権を握るためのリーチと仕掛けを多用し、
後手に回れば基本はベタオリ、とメリハリの利いた押し引きが特徴。

「間に合わないと思って」
「1牌も押さずに連覇する」

内海が良く発するこの言葉がその雀風を表している。

 

 

東2局、リーチの発声はまたも南家。

木原 浩一

「カリスマ店長」

麻雀界においてこの言葉は木原 浩一のためにある。
12年にも及ぶ雀荘勤務において驚異的な成績を長く残し続けている。

今回が初の決勝進出となるが「経験」で劣る事はないだろう。
雀風はリーチや仕掛けを多用する点では内海に似ているが、
内海よりも手役を意識し攻撃志向にある。

このチートイツのリーチも単騎選択を待たずに即リーチと先手重視の木原らしい。
結果は当たり牌を抑えきった中林と2人テンパイとなるが、
内海の親を流せたので十分と言ったところか。


次局は内海が二見から3900を和了。
しかしその二見も親番を迎えて2人テンパイ、500は600オールと失点を取り返す。

二見 大輔

2年連続雀竜位の決勝となる。
協会内では「プレイヤーの二見」としてよりも「理事の二見」の印象の方が強く思えるが、
まだまだ現役だということをこの決定戦で見せてくれることだろう。

雀風は他の3人に比べ門前手役重視の攻撃型。
親番では柔軟な仕掛けも多い。

 

しかしその二見の親番も、ここまで耐えてきた男のツモアガりで流れる。

 

 

中林 啓

第8期雀竜位戦にて、あと一歩のところで戴冠を逃す。

第9期、A級の最終戦オーラスにて内海とアガった方が決勝進出という勝負に敗れ、その内海が雀竜位に。
決勝進出者4名とも、それぞれ雀竜位への渇望はあるだろう。
だが、こと今回に関しては中林がもっともその思いは強いのではないだろうか?

雀風は守備型だが手数が少ないわけではなく、絶妙の押し引きバランスを持った打ち手。
前述の2つの全体牌譜を見ていただけば、中林の繊細な押し引きが良く分かるだろう。

 


南2局
トップ目の内海がリーチする。
問題はその局面だ。

二見がオタ風とは言えドラのをポンしている。

内海自身「微妙」と語ったこのリーチの是非はどうなのだろうか?
少なくとも筆者には打てないリーチだが、考えなしに打つほど内海も稚拙ではない。
・二見の手がまだ役が絞り切ない
・捨て牌が平凡なので、まだ手の内が整ってないケースもある
・回るにしてもが安全な保証がなく、巡目が進むほど攻め返しが難しくなる
なにより自分が親という立場がこのリーチを打たせた。

現状でのリターンの少なさがリーチを躊躇させそうだが、このリーチを打てる事も今の内海の強さを支える一つなのであろう。
結果は二見の3000・6000のアガリとなったが、内海の存在感が現れた一局。

南3局
3巡目と早い巡目に内海からリーチが入る。
ラス目で親の木原がドラドラのリャンシャンテンから押すも、内海がツモアガる。

内海(北家)
 リーチツモ ドラ 裏ドラ

最後に重ねたが裏ドラとなりトップに躍り出る満貫のアガリ。

南4局
親で2着目の二見と内海のトップ争いになるかと思われたオーラスだが、勝負は二見の一撃で勝負あり。
6巡目にリーチをすると一発ツモ。

二見(東家)
 リーチ一発ツモ ドラ 裏ドラ

次局内海も満貫ツモでトップを狙える点差からドラドラのイーシャンテンまでいくも、
阻むはまたも二見の一発ツモ。

二見(東家)
 リーチ一発ツモ ドラ 裏ドラ

オーラス2本場は中林がツモ、裏ドラ1枚で2着だったが乗らず。
数分前までトップ目だった内海、最悪の事態は免れたか。

とはいえこの半荘の圧倒的な被害者は木原だろう。
放銃はトイトイドラドラのテンパイから打った1300のみ。
ツモられで20000点近く失ったことになる。

「何も出来ないで負けた」
木原の嫌う言葉である。
何も出来ないというのは、そのまま自分の力不足を表すものだと認識しているのだ。
このまま負ける事は木原の中ではあってはならない事だろう。

1回戦結果
二見+64.9 内海+6.1 中林▲15.3 木原▲55.7


★2回戦★(二見→中林→内海→木原)

東1局
中林のリーチを受けるも木原が捌きその中林から2000点のアガり。
これが初アガりの木原、点数以上に得た物は大きい。
東2局からは二見が3局連続で加点し南場の親番を自力で持ってくる。

南1局
守備的な進行が多い中林が珍しくギリギリまで踏み込みテンパイ、最終形は絶好の-待ち。
一発ツモで押し切った甲斐があっただろう。

最低で8局しかない半荘戦。
来るかわからないチャンスを指を咥えて待つ、それでは強者が集う場では勝ちきれない。
来たチャンスを最大限に生かす、中林の決断が光った一局。

南3局ここでも中林の読みが冴えていた。

終盤親の内海のリーチを受ける。
第1打にを切っていながらをツモ切りリーチ宣言牌が
中林に役ナシを引いてのテンパイが入る。

中林(北家)
 ツモ チー ドラ

全員が20000点台にいる接戦、喉から手が出るほど欲しいテンパイ料。
――を切っても仕方なしと言われる局面かも知れない。しかし自分の麻雀はそうではない。

強い意思の込められたが河に置かれた。
「あの手はが絶対手牌に関連しているから、もし役アリのを引いても切らなかったよ」
己の読みと心中できる、これぞ中林の真骨頂。

南3局1本場
内海にしては珍しい進行を見せる。

内海(東家)
 ツモ ドラ

先手を取る事をかなり意識する内海。
特に今回は西家の二見が役牌を2つ鳴いており、 捨て牌からもイーシャンテンもしくはテンパイが濃厚であり、を切るだろうと見ていた。
しかし予想に反し、打とペンチャン落としでイーシャンテン取らずとした。

だがこのペンチャン落としが功を奏す。
次巡にを引き入れると、中林のリーチを受けるがすぐに追いつき-でリーチ。
高めのをツモり上げると裏ドラも2枚乗り僥倖の8000オール。

南4局3本場
オーラスを迎え点棒状況はこうなっている。

東家・木原:19200
南家・二見:13800
西家・中林:20600
北家・内海:46400

ラス親とはいえ木原も無理にトップは狙わずに2着を取りに行くだろう。
3者の2着争いを引き気味に見守る内海といった構図か。

6巡目、二見から気合の入ったリーチの声。
ツモでマンガンの手が入ったのかと手牌を覗く。

二見(南家)
 ドラ

どこから出ても2着、何よりツモればまさかのトップである。
しかも待ちは山にまだ3枚残っている。
仕掛けている木原・中林共にイーシャンテンだが形が苦しい。
−これはもしかするな
そう思いながら見ていると、10巡目に中林にもテンパイが入る。

中林(西家)
 ツモ ポン チー ドラ

二見にはが通っておりも2枚切れのため安牌。
降りても2着になるパターンが十分にあるため、中林の雀風からして降りると感じていた。
しかし中林の選択は打と戦闘態勢。
かなり意外に感じたが、この選択が局面に多大な変化をもたらす。
がトイツだった木原がこれをポンし-のテンパイ、すぐに中林がを掴んで1500は2400のアガリとなった。
中林があそこでテンパイを拒否していれば、木原にテンパイは入るものの待ちはかなり苦しく、二見のアガりが炸裂していた可能性が高い。
放銃し3着に落ちた中林は、内心面倒な展開になったと嘆いていたかも知れない。
だがこの牌譜を見た暁には、その指運に謝辞を述べた事だろう。

未曽有の危機を回避した内海、次局に自ら決着をつけトップを確定させた。

2回戦結果
内海+68.9 木原+2.6 中林▲24.3 二見▲47.2

(2回戦終了時)
内海+75.0
二見+17.7
中林▲39.6
木原▲53.1


★3回戦★(二見→中林→木原→内海)

東1局
内海が「今日一の手順」と評した一局。

内海(北家)
 ツモ ドラ

2巡目にこの形からイーシャンテンを拒否する切り。
受け入れMAXの切りはドラの受け入れがなくなり、切りはイーペーコやマンズの好形変化が乏しくなる。
何よりソーズのターツを払っておくとそれらの変化をした時の形が良くなる。


おそらく6巡目以降ならば打の一択だろう。
2巡目というタイミングがリーチのみカンの手順を否定させた。
内海の強さの一つはこのような巡目バランスを考慮した手組にある。
その後と引き込んでリーチ、安目ながらをツモりアガる。

内海(北家)
 リーチツモ ドラ 裏ドラ

東2局
中林の仕掛けが面白い。

中林(東家)
 ドラ

この形から上家から出たをチーし打とする。
シャンテン数の変わらない鳴きはタブーとされる風潮もある。
しかし今回のケースはドラドラながら愚形が残っており、現状は役もないため仕掛けができない。
また木原がソーズのホンイツ模様のため、ソーズに伸びを期待するのも難しい。
を仕掛けタンヤオを確定させることで柔軟性が増すこの手牌ならばツモ番を1回放棄する価値がある。
すぐに木原からドラが切られポンしてテンパイ、そして二見のリーチ宣言牌を捕らえ12000のアガリ。

一方二見はこの放銃を皮切りに7局連続失点で箱を割る。
その内リーチ宣言牌での放銃が3回、リーチ負けが1回と致し方ないものである。
残す3人がその二見を余所にアガリを積み重ね、オーラスを迎え大接戦となった。

東家 内海:35700
南家 二見:△7300
西家 中林:35300
北家 木原:36300

親番の内海は現状2着目にいるが、他家の500・1000以上のツモでの親被りや中林のアガりで着順落ち確定ということと、
2回戦までのポイントを踏まえた差し込みなどを考慮すると大分不利なポジションか。
その中林、ここぞとばかりに仕掛け始め内海に暗雲が立ち込める。
しかし、内海の切った横を向いたが三者の望みを断ち切ろうとしていた。

内海(東家)
 ドラ

打点はともかく、待ちとしては申し分ないリーチ。
この親のリーチには誰も踏み込まないだろうと感じていた。
思惑通り、イーシャンテンだった中林はオリの姿勢を見せる。
しかし木原から想定外のプッシュが入る。
中林が切ったをチーすると通っていないを切り飛ばし自ら勝負をつけに行く姿勢。
これにより回し気味に打っていた中林も内海のツモ切ったをポンしテンパイ。

中林(西家)
 ポン チー ポン ドラ

その中林のテンパイ打牌のをポンし木原もテンパイ。

木原(北家)
 ポン チー ドラ

3者の宝探し、最も早く財宝を掘り当てたのは中林だった。

内海のお宝である-は残りのツモ山に4枚を残し、埋もれたままその姿を現すことはなかった。

3回戦結果
中林+57.4 木原+16.0 内海▲5.8 二見▲67.6

(3回戦終了時)
内海+69.2
中林+17.8
木原▲37.1
二見▲49.9


★4回戦★(中林→木原→二見→内海)

初戦トップだった二見だが、2連続ラスでまさかの最下位に転落。
負のスパイラルはまだまだ続く。
親の中林と内海の仕掛けを受け丁寧に回し打ち、2人に通っているを切ったところでまさかのロンの声。

木原(南家)
 ロン ドラ

木原も押しているようにも見えるのだが、これを打つなというのは流石に辛いだろう。

東2局
2回戦・3回戦のオーラスで針の穴を通す打牌をした中林、二見の不調を嘲笑うかのように手牌の勢いが増す。

中林(北家)
 ツモ ドラ

絶好のドラを引き込むと即リーチ。
これをテンパイしていた内海から一発でアガり8000。
親番でもズバリの待ち選択で4000オールに仕上げ頭一つ抜け出す。

南3局
手は入るもことごとく競り負け持ち点が5000点を切った二見だが、前局に内海のリーチを受けながらもギリギリのアガりを見せ親番を死守。

南3局1本場

二見(東家)
 ツモ ドラ

2巡目でお世辞にも整った形ではないものの、一牌のロスも許されないとをカン。
その後8巡目にようやくイーシャンテンにたどり着く。

二見(東家)
 ツモ 暗カン ドラ

-が4枚見えている状況が二見に長考を余儀なくさせる。
――ここでの選択ミスは、そのまま4回戦のラスを意味する
二見、決断の切り。
その答えは、5巡後に開かれた手牌が全てを物語っていた。

二見(東家)
 リーチツモ 暗カン ドラ 裏ドラ

二見・内海・木原はこれで持ち点が横並びに。
オーラスを迎え一旦はラス目に落ちるも、冷静な打ちまわしで8000を木原から取り返し二見が2着でフィニッシュ。

4回戦結果
中林+56.6 二見+6.9 内海▲15.1 木原▲48.4

(4回戦終了時)
中林+74.4
内海+54.1
二見▲43.0
木原▲85.5


★5回戦★(内海→木原→中林→二見)

この半荘が1日目の最終戦。
内海・中林は初日を首位で終わらせ2日目以降の糧とするため、木原・二見は負債を出来る限り減らし戴冠への希望の光が消えないように。

東1局
12巡目に木原がテンパイ。

木原(南家)
 ツモ 暗カン ドラ

-が4枚切れ・ドラ切り拒否・宣言牌のスジで待てるなどの状況を加味してシャンポンでのリーチを選択。
直後に中林からリーチが入り目論見がずれるも、結果は良い意味で裏切られた。

木原(南家)
 リーチ一発ツモ 暗カン ドラ 裏ドラ

一発でのドラツモでハネマンのアガリとなり、一筋の光が差す。

しかし、今日の主役が最後の最後で本性を現す。
現雀竜位・内海の和了ショーの開幕である。

東2局
 リーチツモ ドラ 裏ドラ

東3局
 ツモ ドラ

東4局1本場
 リーチツモ ドラ 裏ドラ

南1局
 リーチツモ ドラ 裏ドラ

南1局1本場
 リーチツモ ドラ 裏ドラ

特に東3局の手順は新たな内海を見れた瞬間だった。

内海(西家)
 ドラ

この形から出たドラのをスルー。
ポンされている受けを嫌う落とし、場に安いマンズでの好形待ちに仕上げる。
掴んだら誰もが切りそうな--を冷静にダマテンとし、すぐにツモアガる。

これをダマテンをする男が、1回戦に見せたドラポンに対してのペンリーチを打ってくる。
対局者にとってこの間合いの測りずらさは恐怖に違いない。

この内海の独走により、他者もトップを諦め目標照準を下げる。
結果局の進行が早くなり内海にとっては好都合な展開になる。
条件合わせのために長引きがちのオーラスも自身でアガリきり、1日目の大トリを飾った。

内海(南家)
 ロン ドラ

東1局のハネマンの親被りから始まったものの、終わってみれば内海による内海のための半荘であった。

5回戦結果
内海+73.6 木原+7.1 中林▲26.2 二見▲54.5

(5回戦終了時)
内海+127.7
中林+48.2
木原▲78.4
二見▲97.5

 

今日の内海は愚形でのリーチや勝負手のぶつかり合いの時、それがアガリに結びついたことが多かった。
ツキが向いていたことは否定できないだろうが、それ以上に内海の持つ独創的かつ優れたバランス感覚での攻守が目立っていた。

この5半荘全60局で放銃はわずか2回、
その2回もリーチ負けと親でテンパイから放銃したものだけである。
現雀竜位内海、その力はフロックではない。

2位につける中林も、明らかに一昨年以上の力を身に着けていた。
以前は押しきれないことでのアガリ逃しや他家のアガリの誘発もあった。
今回はその点でピタリと勘が冴えており、他家の本手を幾度となく潰していた。
対抗馬の一番手、それは今日の内容とトータルポイントを見てもこの中林だろう。

3位の木原は展開の悪さ・手の入らなさに悩まされた一日。
2回戦以降は本手を成就させる機会も数あったが、それ以上の反撃をもらい過ぎた。
それでも協会ルールのトップなしでこの成績に収めているところは流石である。

4位の二見は逆に手が入ることは良いのだが、如何せん競り負けや最後の1牌が捉えられることが多かった。
その分で点棒を削られ、自分以外の3者での争いになる展開が多かった。
それゆえに、二見の一撃の破壊力も十分に伝わった結果になった。

2日目、そして最終3日目へ続く名勝負を期待したい。

まだまだ楽しめそうなことでなによりだ。

(文:橘 哲也)

2日目観戦記最終日観戦記

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