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順位
名前
ポイント
1日目
2日目
3日目
16回戦
17回戦
18回戦
19回戦
20回戦
1
金 太賢
90.3
97.8
-38.3
-99.9
-24.5
-16.2
94.3
62.4
14.7
2
下石 戟

23.9

107.9
106.3
24.0
-45.6
-49.7
-20.6
-49.2
-49.2
3
仲林 圭
-44.3
-16.3
-16.3
50.2
64.1
9.6
-79.2
13.7
-28.4
4
宮崎 和樹
-72.9
-191.4
-10.0
24.7
6.0
56.3
5.5
-26.9
62.9

1日目観戦記 | 2日目観戦記 | 3日目観戦記 |  【最終日観戦記】 |

(15回戦まで)
下石戟+238.2 仲林圭△24.1 金太賢△40.4 宮崎和樹△176.7

下石の1人浮きで迎えた最終日。いわゆる包囲網が築かれるポイント状況だ。とくに宮崎は自分がトップを取るだけでは届かない差である。
下石にとって本当に長い、残り5回戦となる。


●16回戦(仲林―金―宮崎―下石)
東1局、起家を引いた仲林が積極的に5巡目にリーチ。
ドラ
マチ頃を選ぶ時間も惜しいと即リーチ。場にが3枚出ており、リーチ打牌のよりはややマシといった程度。
3人とも親の早いリーチに対応していたが、手詰まりになった下石が放銃して裏ドラがのってしまう。
下石の放銃はアガッた仲林だけでなく、他2人も歓迎ムード。

東2局、宮崎がドラのタンキでリーチ。そのをトイツにしていたのが仲林。通常ならば前に出ておかしくないが、すでにトップ目なので守備を選択。
親の金が追い付く。
ドラ
-はリーチに通っている。仲林はやめている。そこでヤミテンにしていると、仲林からがこぼれた。5800の出場最。

東4局の宮崎。
ドラ
仮テンののときに出たのだが、2600では不服と見逃し、タンキに変えて6400は確定のリーチ。
これに親の下石が追い付く。
ドラ
このときの金が凄かった。自分の手を作ろうとせず、下石に通りそうで宮崎に当たりそうなところを切り続けたのだ。
仲林と僅差でトップ争いをしているのだが、それよりも下石の連荘を嫌がっているわけだ。
結果は下石のツモアガリ。
ツモ ドラ 裏ドラ

1本場、ここでようやく宮崎にアガリが出る。
ドラ
リーチ一発でをツモると、これが裏ドラになってハネ満に。下石親被り。
これで下石を後方に置いて、3者がほぼ並んだ。その状況に大きな変化のないまま南場は回っていく。

南3局、金が脱落する。
金が5巡目リーチ。
ドラ
11巡目に下石が追いついてリーチ。
ドラ
圧倒的に下石有利。
次巡、仲林も追いついた。
ドラ
こちらは下石の3メンチャン以上に残っていた。
金が4枚丸生きのを一発で掴んで満貫放銃。
ロン ドラ 裏ドラ

オーラス、仲林トップ目、宮崎が7700差で2着。下は金が15500、下石14400と1100差。
仲林がと切って4巡目リーチ。
トップ目のリーチなので役無し好形が濃厚。第1打のがドラなのでおそらく13本リーチ。しかし、1300でも打てばラスになる金は慎重に打牌を選ぶ。
リーチと来てくれたため直撃も狙える宮崎と、ラス目ラス親の下石は真っ直ぐ。
10巡目、宮崎が待望のドラを引いてテンパイ。
ツモ ドラ
しかし、リーチ打牌が仲林のロン牌だった。
ドラ 裏ドラ

仲林+64.1 宮崎+6.0 金△24.5 下石△45.6
このトップラスで仲林は下石に152.6差と迫った。


●17回戦(下石―金―仲林―宮崎)
全員が2万点台という接戦で場が回っていく。
下石が微差のラス目のため、ここを浮上させないように3者が隙なく打っていることが全体の打点を下げている面もあった。
決定打がようやく出たのがラス前だった。
ツモ ドラ 裏ドラ
宮崎が一発ツモで満貫。
オーラスは金以外には満貫を打ってもOKの宮崎が大量得点をめざしてをポンしてこのテンパイ。
ポン ドラ
1000・2000で2着浮上になる仲林はドラのを使い切るためにを打って手をせばめながらもイーシャンテンに漕ぎつけていた。
ドラ
が親満に刺さる牌だったが、これが出ていかない形でテンパイした。をツモッて切りリーチ。
一発でツモッて満貫。
ツモ ドラ 裏ドラ

宮崎+56.3 仲林+9.6 金△16.2 下石△49.7
トータル 下石+142.9 仲林+49.6 金△81.1 宮崎△114.4


●18回戦(仲林―下石―宮崎―金)
この半荘はいきなり乱打戦となる。
下石が4巡目にリーチ。
仲林の手に現物はひとつもない。
ツモ ドラ
雀頭ができ、イーシャンテン。加えて、チャンタ狙いの金がこの巡目ですでにを2枚切っている。
ということで、を切ると……
ドラ 裏ドラ
一発が付いて満貫。2ラスの下石、この半荘は好スタート。しかし……

東2局、仲林が終盤にリーチ。2巡後にツモアガる。
リーチツモ ドラ 裏ドラ
下石、ハネ満の親被りで、満貫直撃した相手に一瞬で捲られる。

東3局、金がハネ満をアガる。
ツモ ドラ 裏ドラ
この局にはいくつかの逸機があった。
最初にテンパイが取れる形になったのは親の宮崎。
ドラ
しかし、ドラも何もない手なのでテンパイ取らずの打。同巡、金はツモ切り。
宮崎は次巡ツモ、次巡ツモで、これ以上は待てないとして打、カンマチリーチといった。
もしも宮崎が即リーチを打っていたとしたら、どうなっていただろうか?
宮崎がシャンポンでテンパイする巡目の金は、
ツモ ドラ
宮崎の捨て牌にはがあるので、ここをトイツ落としできる。すると最後は、
ツモ ドラ
親リーなのでさらにを切って回る可能性もあるが、まあ、1牌勝負でリーチとなるだろう。すると結果は一緒だ。
しかし、もう一人、下石はちがう。
宮崎のカンリーチの直後にこの形となった。
ツモ ドラ
いつもの下石ならば、リーグ戦の中の一戦ならば、たとえ親リーチの一発目であっても勝負でリーチと言っていたはずだ。そもそもだって生牌なのだ。
しかし、これは決定戦の最終日。
ラス、3着と来ているとはいえ、まだトータル首位。仲林のリーチならばともかく、宮崎のリーチには勝負する必要がない……さまざまな思惑がよぎったのだろう。
下石はに手をかけていた。
直後に宮崎がドラをツモ切っていた。
昭和の流れ論者が解説していたら、きっと言うにちがいない。
「いろいろアヤがあった局ですね。これは恵まれた金が吹きますよ」と。

東4局、金は下石のリーチをかいくぐってクイタン1500で連荘。
1本場はダブ東をポンして、
ポン ドラ
ツモ4000オール。

2本場は、
ポン ドラ
ツモ2000オール。5万点を超えるダントツとなった。
3本場に下石がようやく自風のみで東場を終らせたが、金は5万点を超えるダントツとなった。

南1局は宮崎が、
ドラ 裏ドラ
一発ツモで3000・6000。

南2局は、またも金。
チー ドラ
仲林がで飛び込んだ。

南3局は親の宮崎が3連続和了。しかし、いずれも打点が低い。
それでも下石、仲林は思っていただろう。もっとアガッて金を捲ってくれ、と。2人にとっては金より宮崎トップのほうがマシだからだ。
しかし3本場でもらった配牌はドラトイツながらも七対子イーシャンテン止まりで終わった。

オーラス、何も怖がる必要がないほどに点棒を持った金の親。いわゆる王様タイム。
積極的に仕掛けて、このテンパイ。
ポン
ドラ

マンズ、ソーズは早くからバラ切り。ポンのテンパイ時に打ち出されたのはだった。実況席のの堀慎吾は、
「一番怖いのは小四喜。次がピンズのホンイツ。まあ(切りは)真っ赤なウソですけどね」と解説している。
この半荘を一刻も早く終わらせたい仲林がクイタンのテンパイからを放銃。
捨て牌には早々とがあり、小四喜狙いならからの決め打ちは考え辛い。ホンイツの本線はピンズである。
ということで、仲林はさほど考えずにツモ切った。ウソつき金、してやったり。
次局、下石がアガッてこの乱打戦をようやく終わらせた。

金+94.3 宮崎+5.5 下石△20.6 仲林△79.2
トータル 下石+122.3 金+13.2 仲林△29.8 宮崎△108.9


●19回戦(仲林―宮崎―金―下石)
起家の仲林が幸先よく4000オール。
リーチツモ ドラ 裏ドラ
しかし次局、宮崎のこのリーチに、
ドラ
仲林が放銃。裏ドラで12000をあっさり明け渡す。

東2局、親の宮崎がリーチ。
ドラ
ポンでテンパイを入れた仲林がまたも放銃。裏ドラが痛恨の
松嶋桃が「平均打点が12000です」と実況する。

1本場、宮崎が果敢に攻めるが、
チー
中盤以降マンズを一枚も引かず、親を流してしまう。

東3局2本場、親の金が10巡目リーチ。
ドラ
15巡目にツモ、裏ドラで満貫。
松嶋「12000のアガリしか出ない!」

3本場、またも6巡目にドラのを切ってリーチ。
ドラ
12巡目にツモ。裏ドラはなかったが、この1300は1600オールで宮崎に1100差と肉迫。

4本場、金の小技が光った。
金の親を流したい宮崎、この手から、
ツモ ドラ
ドラのをツモ切る。
これを下石がポン。
ポン ドラ
そのとき、金はこの手。
ドラ
ツモッたをツモ切りせずに空切り。
金、を入れて切りリーチ。
下石は前述の手にを引かされた。
このとき、渋川は、
「現物の、次はワンチャンスを頼ってと行くか? でも、手出しをとのスライドと読んでと行くほうを選ぶかもしれません」
と解説している。
小考した下石はまさに渋川の言ったとおり切りを選択した。
一発と裏ドラでこの半荘5度目の12000となった。
5本場は仲林がリーチツモ・ドラ1で金の親を落とす。

東4局、南家の仲林が、と234三色を睨んでカンから仕掛ける。
チー ドラ
最終的にはをアンコにして、
チー ドラ
ドラトイツでピンフイーシャンテンの下石からで討ち取る。

南1局、もう後がない仲林の親番。2局連続でリーチ。
ツモ ドラ 裏ドラ
ツモ ドラ 裏ドラ
どちらも裏がのらず、打点が足りない。
次局も7巡目にリーチ。今度こそツモれば親満。
ドラ
宮崎も追いつき11巡目にリーチ。
ドラ
この巡目で5枚残りの-のめくり合いとなったが、仲林が引き勝った。
この瞬間、仲林が41400、金40200とトップに。ノーホーラの下石は箱下である。
この親は金がピンフのみで流して僅差ながらもトップ奪回。

南3局、仲林以上に後がない宮崎の親。
北家の仲林がリーチ。
ドラ
宮崎が追っ掛ける。
ドラ
金がリーチ打牌のをチーしてテンパイ。
チー ポン ドラ
結末は、金がを掴んで仲林に放銃。安目で1300。宮崎の親は終わった。

南3局、テンパイ一番乗りは仲林。
ドラ
下石がテンパイしてリーチ。
ドラ
仲林、打てないを掴まされ切りで回り、再びテンパイ。
ドラ
しかし終盤、またも打てないを掴まされテンパイ崩し。
親の金もクイタン仕掛けで粘ったがテンパイせず。下石の1人テンパイ。

オーラス1本場。突如下石に手が入る。
ドラ 裏ドラ
をツモッて6000は6100オール。

2本場、またもリーチ。
ドラ 裏ドラ
ツモで1300は1500オール。

3本場は宮崎以外の3人テンパイ。
これで点棒状況は、
仲林36100 金33200 宮崎15500 下石15200
となった。仲林、金のトップ争いは熾烈だが、下石のラス逃れもわずか300差となった。

4本場、最初のテンパイは仲林。の出から仕掛ける。
のバックだが、この局面で止める者はいない。読みどおりが下石から鳴ける。 
ポン チー ドラ
次のテンパイは宮崎。
ドラ
ただし、トップには倍満ツモ条件なので不十分テンパイ。フリテンリーチも辞さずの手変わり待ち。
下石もこれ以上は待てないと、好形のピンズを不承不承チーテンを入れる。
チー ドラ
最後のテンパイが金。
ツモ ドラ
仲林がテンパイした時点では圧倒的に遅く、メンツ手ともトイツ手とも言い難い手だった。
このときどちらにも取れる安易な切りとせずに、切りと七対子に決め、このイーシャンテンまで進めた。
そしてドラを重ねる。このとき打ち出したは相当な危険牌であったが、狙ったはすぐ次のツモにいた。
大きなアガリである。この半荘のトップを取ったというだけでなく、満貫になったために最終戦のラス親の座も手にしたからだ。
(協会の決勝最終戦では、場決めはするが親決めはせず、トータル首位者が自動的にラス親になる)

金+62.4 仲林+13.7 宮崎△26.9 下石△49.2
トータル 金+75.6 下石+73.1 仲林△15.9 宮崎△135.8

金と下石はわずか2.5P差。最終戦は百点でも上のほうが勝つという単純な着順勝負。同点ならば2.5P差で金が優勝である。
仲林から金は91.5P、下石とは89.0P差である。もちろんトップ必須。その上で、2人を同時にラスにすることはできないので、3着との点差が条件となる。
金3着、下石ラスならば3着の金と31600差(同ポイントの場合はディフェンディングの金が優位)が必要。下石3着、金ラスならば3着の下石と29100差(同ポイントの場合はリーグ戦1位の仲林が優位)が必要である。
宮崎はとにかくありったけの点棒を集めてからでないと、優勝条件は見えてこない。


●20回戦(宮崎―下石―仲林―金)
東1局は静かな立ち上がり。
チー ポン ドラ
金がでこの手を宮崎から2000点。

東2局は宮崎が7巡目リーチ。
ドラ
中張牌バラ切りの不気味な捨て牌だったが、が4枚見えており、国士はなし。
ということで、4枚持ちのをカンせず1枚はずしながら手を進めていたドラアンコの金が11巡目に追いついてリーチ。
ドラ
金がを掴んで3200放銃
ロン ドラ 裏ドラ
アガリ点は大きくないが、1局ごとに優勝条件保有者が入れ替わる。

東3局、金が仕掛ける。
ポン
ドラはで、1000点ではラス抜けせず意味なしと、テンパイ取らずの切り。
さらにもポンでき、タンキでテンパイ。
ここに、
チー ドラ
ツモでテンパイの入った下石がで放銃してしまう。この5200直撃は大きい。
しかし、平素の下石ならば、このはもっと早く切られていたのではなかろうか?
また、1000点のテンパイで3フーロ相手に生牌のを切るような麻雀だったろうか?

東4局、またも金が仕掛けを実らす。
加カン ドラ
仲林がで放銃。2000点。
この局、下石は7巡目にこうなっていた。
ドラ
下石はドラの、カンドラとなったを重ねてのテンパイを考えたのだろう、切りとした。
もしも中張牌だらけの手の延びを重視し、仲林の6巡目切りに合わせるように切りとしていれば、あるいは切り(これも仲林が第1打に切っている)としていれば、9巡目に、

この先制リーチが打てていたはずだ。
どうもこの2局、下石に固さが感じられた。極限状態の最終戦、無理もないのだが……。

東2局1本場、ようやく下石らしいアガリが出る。
ドラ
この形で4枚持ちのを1枚はずす。七対子のイーシャンテンだが、が出るとポンして打
直後にペンを入れた仲林がリーチ。
ドラ
下石、ツモ。無スジだが勝負。を引き入れ打
仲林がを掴む。
ロン ポン ドラ
リーチ棒も入ってほぼ金と並び。900点差と迫る。

南1局、超デカトップ条件の宮崎、最後の親番。
4巡目にこの形。
ドラ
ツモで一通を見て打
5巡目ドラのをツモ。を切りかけたが、思い直して切り。
6巡目フリテンを解消し、高め三色となる絶好のツモ。当然の切りリーチ。
ドラ
8巡目にツモ。6000オール(裏ドラ
ありったけの点棒が欲しい宮崎には、その一歩となる嬉しいアガリだが、仲林にも嬉しい。宮崎に点棒を持ってもらわなければ、金と下石を3着4着にできないからだ。
着順勝負の2人には、宮崎のツモアガリは影響がない。悲しむ人が誰もいないというアガリである。

1本場、宮崎が7巡目リーチ。
ドラ
3人の手を止めるためにも一刻も早くリーチと言わなければならない。
リーチ打牌のよりはまわりを厚く持っているのほうがマシと、これでリーチ。
しかし、次巡には仲林がテンパイしていた。
ドラ
そして、は宮崎が3巡目に切っている。仲林ヤミテン。
下石がを切ってしまう。
おそらく、宮崎が親ハネをアガる前ならば仲林は見逃しただろう。というか、宮崎の連荘に期待して手を作らなかっただろう。
しかし、いまや宮崎は4万点超え。あとは自分がアガッてトップに立つだけで金と下石を3着4着にできるのだ。
下石にとっては痛恨の6400放銃。金の7600下になった。

その下石の親番は、仲林があとはアガりまくるだけと、11巡目にリーチ。
ドラ 裏ドラ
をツモッて1300・2600。下石は親被りで金との差が8900に。

南3局、仲林の親。
金を追いかける下石に絶好の三色確定のテンパイが入る。
ドラ
10巡目リーチ。ドラはないがツモれば優勝条件を手にすることができる。
親満を2回ツモれば優勝条件が転がり込む仲林が直後に追いつきリーチ。
ドラ
13巡目、宮崎が完全に手詰まり。安全牌をリンシャンに求めて4枚持ちのをアンカンした。
しかし、リンシャンから持ってきたのはこれも通っていない牌。宮崎はこれがまだマシと、生牌のトイツを切った。
カンドラは。ともに満貫が確定した。
下石はのカンを見て何を思っただろうか?
だが、下石のマチ、をカンされても、が3枚も生きていた。対して仲林は-1枚ずつの計2枚。下石のほうが分のいい勝負だった。
15巡目、仲林がを掴んだ。
ロン ドラ 裏ドラ
満貫出アガリ、仲林のリーチ棒込み。思い出してほしい、金と8900差だったことを。
そう、着順勝負の2人の差はわずか100点という最少点差でオーラスを迎えたのである。
宮崎42900 下石22800 金22700 仲林11600

いちおう仲林にダブル役満条件が残されているが、実質的には2人の勝負。
決勝最終戦のシステムは、本来トータル首位者が有利になるように作られている。
しかし、この極小差では金のほうが不利だ。下石は1000点でもいいからアガればジ・エンドだが、金はアガッたあと、もう1局やらねばならない。
1500や2900点でも首位に立つが、1500での連荘ならば1本場で下石が1300+300、2900ならば2600+300のアガリで捲り返せる。
加えて、テンパイ料のやり取りでもひっくり返るのでノーテン終了も難しい。
金にとっての理想は下石を一発で引き離す高い手をアガること。
願いが通じたのか、金にその手が入る。
4巡目、
ツモ ドラ
ドラがくっつき、カンチャンの整理に入る。切り。
次巡、ツモ。チャンタまで見える。打
そしてツモ、リーチ。
ドラ ドラ
捨て牌はこうなっている。

は手出しで明らかなカンチャンターツはずし。値段はともかくリャンメン以上の好形は予想できる。
しかし同巡、下石は自風をアンコにして引くに引けなくなっていた。
ツモ ドラ
勝負を先のばしにするなら切りだろう。下石は十分考えた末に切りを選んだ。真っ直ぐの打牌だ。
しかし、次のでは手をせばめた。再び切り。
たしかにリャンメンの可能性が高いリーチに向かってさらに手出しの裏スジまで行くのはやりすぎか。下石の判断の中にそれもたしかにあったと思う。
「そうは言っても、アガれば優勝の場面で受け入れをせばめるのは気弱ではないか」
そんな声が聞こえてきそうである。当日の実況席でも渋川が「ん〜、ここからまだ我慢するのか」と疑問視している。
しかし、いま映像をじっくりと見返してみると、弱気とは別の下石の戦略が見えてくる。

のあと、また、そして(ツモで)現物の切り。これを見てどう思われるだろうか。もちろん勝負しているようには見えない。
もう一度、金の捨て牌を見てもらいたい。すでに勝負に割って入ってこないであろう上家の宮崎は、下石がおとなしくしていれば現物のやスジのを切る可能性が高い。
実際に、宮崎はリーチ後にトイツ落としの後に切りを選んだ。
もしも下石が「来ている」打牌をしていたら、宮崎は通ったばかりの(下石はを切っている)あるいはトイツのを切っていたかもしれない。
下石が「真っ直ぐ行けません」を演出したおかげで場に放たれた。当然のチーテン。カンと分が悪いながらもめくり勝負に持ち込んだ。
あとはアガリを求めて2人ともツモ切り続けるだけだが、下石は終盤になって流局の可能性が高まったらオリを選択することもできる。
いったんは首位を明け渡すが、放銃して致命傷を負うよりはノーテン罰符の差でもう1局のほうがマシだからだ。
そろそろその分岐点となりそうな14巡目、下石は運命のをツモッて長考した。
彼が下した判断はツモ切りだった……。

宮崎+62.9 金+14.7 仲林△28.4 下石△49.2
トータル 金+90.3 下石+23.9 仲林△44.3 宮崎△72.9


金太賢、連覇。
雀王を複数回戴冠したのは長らく鈴木達也、鈴木たろうの2名だけだったがついに3人目があらわれた。
成績の安定感ではこの2人に劣らず、年齢的にも間違いなく充実期を迎えている。
協会内のタイトルにかかわらず、獲れるタイトルは何でも勝って、W鈴木を超える協会の顔になってもらいたい。

                                                                 (文 ・五十嵐 毅)


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