順位 |
名前 |
TOTAL |
1日目 |
2日目 |
11回戦 |
12回戦 |
13回戦 |
14回戦 |
15回戦 |
1 |
鈴木 たろう |
150.0 |
318.5 |
19.2 |
-41.6 |
-65.7 |
-17.9 |
-54.0 |
-8.5 |
2 |
木原 浩一 |
119.6 |
-97.1 |
124.9 |
-16.9 |
15.2 |
9.7 |
71.7 |
12.1 |
3 |
鈴木 達也 |
7.3 |
-97.2 |
-8.6 |
4.3 |
-13.8 |
61.7 |
3.2 |
57.7 |
4 |
金 太賢 |
-277.9 |
-125.2 |
-135.5 |
54.2 |
64.3 |
-53.5 |
-20.9 |
-61.3 |
【3日目観戦記】 | 1日目観戦記 |
2日目観戦記 | 最終日観戦記 |
今年の決定戦もついに3日目を迎え、いよいよクライマックスシーンに差し掛かった。
鈴木たろうの5連勝という大波乱のスタートを切った今年の雀王決定戦。
今日が終われば残すは最終日のみ。
2日目を終えてのポイントは以下の通りである。
鈴木 たろう+337.7
三者を大きく突き放して2度目の栄冠に手がかかっているたろう、一番乗りで会場へ到着。
表情もほぐれていて、王者のオーラすら漂わせている。
それはポイント差からくる余裕なのか、それとも―――。
2日目、三者の必死の包囲網をすり抜けてポイントを上乗せしたたろう。
このまま彼の独壇場になってしまうのか。
木原 浩一+27.8
2日目、対たろうに名乗りを挙げプラス域に転じた木原が二番目に到着。
今日も独特の雰囲気を纏っており、会場内の談笑の輪から一歩外れたところで静かに佇んでいる。
だからといって緊張の色が見えるわけではない。
ただただ自分の世界に入り、臨戦態勢を整えている―――そんな感じだ。
今日こそたろうを捕らえられるか。
鈴木 達也▲105.8
首位のたろうと約450ポイント離され、崖っぷちの現雀王が三番目に会場入り。
筆者は達也がオーナーを勤めるFunというお店でもう5年ほどお世話になっているが、決定戦初日開始前にこんなことを言っていた。
「俺、獲れそうなときは始まる前から分かるんだよね。今年は獲れると思うよ」
勝負の際、最初から負けるつもりの人はいないだろうが、一昨年敗れた決定戦の時には強気の発言を一切しなかった。
何度も大舞台に立っている達也だからこそ、分かる感触があるのだろう。
ちなみに2期・6期・8期・10期と偶数期の雀王決定戦にめっぽう強いが、奇数期の今年はどうなるか。
協会史上初となる雀王連覇を、多くのファンが期待していることだろう。
金 太賢▲260.7
最後に会場入りしたのは金。
去年の決定戦では最後まで達也と優勝争いを繰り広げた金だが、今年はかなり苦しい立ち位置となってしまった。
最終日を可能性なしで迎えないためにも、ここで少しでもマイナスを返上しなければならない。
そういう意味では一番プレッシャーを感じているはずの金だが、筆者が観戦記者として挨拶にいくと
「へー、女の子が観戦記書くんだねー!」とやわらかい笑顔を見せてくれた。
追い込まれた若獅子は、反撃の咆哮をこの神楽坂に響かせることができるか。
★11回戦★(金→たろう→木原→達也)
この日最初に開かれたのは木原の手牌。
木原(西家)
リーチツモ ドラ 裏ドラ
南家たろうがテンパイかつ一発を消すバックのチーテンを入れるが、この鳴きによりアガり牌のが木原の手元へ。
裏ドラが乗って1000・2000のアガりで雀王戦3日目は幕を開けた。
2日目に続きたろうを追撃するのは、やはり木原なのだろうか。
続く東2局、南家木原が5巡目にドラのを重ねる。
たろうが上家のため山越しするには席順が良くないが、親かぶりをさせて自らも加点できる大チャンスには間違いない。
ドラが重なった同巡達也から出たをポンして前に出ると、たろうもポンから入り対抗。
木原(南家)5巡目
ポン ドラ
たろう(東家)9巡目
ポン ドラ
たろうの手、ドラは1枚孤立しているだけなのだが、威圧を与えるには十分な仕掛けだ。
しかし先手を取ったのは金。ドラのを切って一通出来合いの満貫確定リーチを打つ。
金(北家)10巡目
ドラ
リーチ宣言牌のドラを木原がポンしてイーシャンテン。場は一気に緊張に包まれる。
どうにか追いつきたい木原だが、有効牌を引けないうえに鳴けない。
流局間際、たろうが中スジのを打つと達也がこれをポンしてテンパイを入れる。
海底がまわってきた金にツモられてもたろうに親かぶらせることができる当然のポンだ。
結果は金と達也の二人テンパイで流局。
半荘終了後、たろうは木原のドラポンについて、
「アガり牌をポンしていることもあり得ると思ったから、単騎待ちにも警戒しなければならなかった」と語っていた。
実際に木原はドラポンのあとをトイツ落とししているので、中途半端な牌は切れない。
このポイント状況だからこそ、たろうはより警戒範囲を広めなければならない。
誰よりも神経をすり減らさなければならないのは、標的にされる者の宿命である。
流局、流局と続いた東4局2本場。
早々とタンヤオ三色のダマテンを入れていた金がラス牌のカンをツモりあげ2200・4200。
金(南家)12巡目
ツモ ドラ
たろうがラス目という三者理想の展開で南場を迎える。
南1局は達也がお得意の七対子で5巡目リーチ。
達也(北家)5巡目
ドラ
イーシャンテンになった木原がこれに飛び込み、裏ドラが乗って8000。
木原は開かれた達也の手牌を少しだけ見つめた後、小さく頷いて静かに点棒を置いた。
対局中、木原は一切表情を変えない。どんな局面でも眉ひとつ動かさない印象を受けた。
南2局、たろうが親番を迎える。
「たろうの親番だけは、とにかく軽い手がくるよう願ってた」
これは3日目対局終了後の達也の弁であるが、第一ツモで自風のがトイツになる。
達也(西家)配牌
第一ツモ ドラ
願ったり叶ったりだ。残りの形もそこまで悪くない。いち早くたろうの親番を流したい。
しかしこの、待てど暮らせど場に姿を現さない。
河は三段目にさしかかり、親のたろうは両面をチーしてテンパイ気配まで出ている。
鳴けないまま16巡目、達也が自分で2枚切っているをツモ切ると…
木原(南家)16巡目
ロン ドラ
前局七対子で討ち取った8000を、同じ七対子でそのまま木原に返上することとなってしまった。
肝心なたろうの親を落とせたはいいが、その代償は少し高くついてしまったか。
南3局は達也が400・700のツモアガり、オーラスは全員ノーテンで11回戦は終了。
たろうのラス。三者の希望に適ったスタートとなった。
金+54.2 達也+4.3 木原▲16.9 たろう▲41.6
11回戦終了時トータル
たろう+296.1
木原+10.9
達也▲101.5
金▲206.5
★12回戦★(金→達也→たろう→木原)
東1局、たろうと金がぶつかる。
たろうが7巡目に先制リーチをかけると、11巡目に親の金も絶好のカンを入れて高目三色で追いかける。
たろう(西家)7巡目
ドラ
金(東家)11巡目
ドラ
この時点でたろうの待ちは残り2枚、金の待ちは3枚と金有利と思われたが、軍配が上がったのはたろう。
金がラス牌のを掴んで、裏ドラが。3900の放銃となる。
11回戦ではただ座っていただけのラスを引かされてしまったたろう、この半荘で反撃なるか。
続く東2局でもたろうが9巡目に先制リーチ。
待ちは山に残り1枚と薄いのだが、木原からラス牌のがこぼれ2600のアガりとなる。
たろう(南家)9巡目
ロン ドラ 裏ドラ
東3局、たろうの親番。
ここでさらに加点されるわけにはいかない他三者。
金が早々とを仕掛けると、たろうも親番を維持すべくチー。
金(西家)3巡目
ポン ドラ
たろう(東家)5巡目
チー ドラ
続けて金がもポンしてソーズに寄せる。達也も自風のを仕掛けて応戦。
達也(北家)6巡目
ポン ドラ
ここで達也の切ったを金がポンして3フーロ。
これを見た達也は、ドラメンツを晒している親のたろうのケアも含め撤退。
そのまま金が満貫をツモりあげ、たろうの親かぶりと親落としに成功。
金(西家)9巡目
ツモ ポン ポン ポン ドラ
東4局、たろうがまたも先制リーチ。
たろう(北家)5巡目
ドラ
すぐさま金が追いついて牌を横に曲げる。
金(南家)7巡目
ドラ
たろうがを一発で掴み、さらに雀頭のが裏ドラになってハネ満の放銃。これでたろうはラスに転落。
南1局、達也に鬼のような配牌が舞い込む。
達也(南家)配牌
ドラ
ここに第一ツモが。もう好きにしてくれといった感じだ。
達也がソーズに寄せていくと、親の金はオタ風のポンから入りポン、チーとピンズへ寄せる。
ここで金が離したに達也が反応、-の満貫テンパイを入れる。
金(東家)6巡目
チー ポン ポン ドラ
達也(南家)6巡目
ポン ドラ
9巡目に金からが出るが、達也これをスルー。
金を断トツのままにしておき、たろうのラスをより確実なものにする作戦に出る。
すぐにドラのを引き入れハネ満にランクアップ。打でに待ち変え。
すると今度は13巡目に金からが出てしまう。
牌山に伸ばしかけている達也の右手が止まる。眉間に皺を寄せて二秒ほど静止すると、
「…すいません」そう一言呟いてツモ牌に手をかけた。
満貫見逃しからのハネ満見逃し。
アガったとしても、もちろんそれは不正解ではない筈だ。
しかし鈴木達也という男は、現雀王―――その栄冠を守りぬく為に、歯を食いしばって見逃したのだ。
「今日は雀王いるの?」
「雀王が卓入るの?」
「雀王と打てるの?」
お店で多くの人に慕われている達也の姿が、筆者の脳裏にふと浮かんだ。
終盤やっとテンパイを入れた金に、たろうの手からロン牌のが零れる。
この7700の放銃でたろうは1万点を割ってしまう。
たろうの2ラスが濃厚になったこの瞬間、三者の目の色が少し変わったような気がした。
続く南1局1本場、今度は木原がたろうを捕らえる。
3巡目に南のポンを入れると、トイツ持ちだったドラのが暗刻に。
6巡目には早々と-待ちの満貫が完成。間を置かずしてたろうからを討ち取る。
木原(北家)9巡目
ロン ポン ドラ
これでたろうは箱を割ってしまう。
さらにたろうの不運は続く。
南2局3本場、先に2フーロでテンパイを入れていたたろうに木原が追いつく。
木原(西家)11巡目リーチ
暗カン ドラ
たろうも以下のテンパイで押し返す。
たろう(南家)
ポン ポン ドラ
木原のリーチに対して一発目に無筋のを通していて、自分でをポンしているため比較的安全そうではあるをツモ切るとこれが御用。
この8900の放銃でたろうはさらに深い奈落の底へ突き落とされる。
さらにたろうの負のスパイラルは続く。
南3局もたろうのリーチ宣言牌を、先制リーチの木原が捕らえる。
木原(南家)6巡目
ドラ
たろうはこの形のテンパイ。
たろう(東家)8巡目
ドラ
安全度の高いを打って、役ありで木原の現物待ちのダマテン-に受けることもできる。
追っかけリーチに出る選択もある。いずれにせよリーチを打つにしてもダマテンに構えるにしても打がマジョリティだろう。
しかしゼウスが下した選択は、守備を切り捨てMAX打点を見据える打。
たろうはどんな状況下におかれても、「鈴木たろう」の麻雀を貫いている。
たろうがまさかの箱下2万点近くで迎えたオーラス。
ここでオーラス7巡目のそれぞれの牌姿をご覧いただきたい。
金(東家)47300点持ち
ポン ドラ
達也(南家)30200点持ち
ドラ
たろう(西家)▲18700点持ち
ドラ
木原(北家)41200点持ち
ドラ
誰がどう見ても一番遅いのはたろうである。手が重く、ドラも孤立している。
テンパイ一番乗りは達也。
絶好のを引き入れ三面張のピンフテンパイを入れるが、三色の手変りを待つべくダマテンに構える。
たろうから出たを見逃して逆転手の完成を試みるが、たろうがドラを重ね七対子で追いつきリーチ。
たろう(西家)12巡目
ドラ
木原がの暗カンを入れたのを見て、渋々といったかんじで達也もツモ切りリーチに踏み込む。
達也(西家)14巡目
ドラ
直後、たろうの手元に引き寄せられた。
強くハネ満をツモアガり、ラスの負債を少し減らす形となった。
これで金が2連勝、たろうが2ラス。
少しずつだが、状況が変り始めた―――。
金+64.3 木原+15.2 達也▲13.8 たろう▲65.7
12回戦終了時トータル
たろう+230.4
木原+26.1
達也▲115.3
金▲142.2
★13回戦★(金→木原→たろう→達也)
達也のリーチに追いかけリーチのたろうが飛び込んでスタート。
東1局
達也(北家)8巡目
ロン ドラ 裏ドラ
東場で軽快にアガりを重ね達也がトップ目で南入。
南2局1本場、たろうの手牌が倒される。
たろう(南家)10巡目
リーチ一発ツモ ドラ 裏ドラ
ただのリーチのみの手が、一発と裏ドラがついて強烈なアガりとなる。
今日はここまでドン底だったたろうに、せめてこのくらいの救いがあってもいいかもしれない。
オーラスは親の達也が1000オールをツモって連荘すると、1本場は木原が1100・2100をツモって2着を確保。
達也+61.7 木原+9.7 たろう▲17.9 金▲53.5
13回戦終了時トータル
たろう+212.5
木原+35.8
達也▲53.6
金▲195.7
ゼウスに暗雲が立ち込めてきた。朝と比べてたろうの表情は少し硬くなっており、心なしか少し顔色も悪い。
ここまで3半荘で120ポイント以上もの貯蓄を放出してしまったのだから、無理もない。
★14回戦★(達也→木原→たろう→金)
観戦者が増えてきた。主役たちを取り囲むように、たくさんの人が勝負の行方を見守っている。
東1局、配牌でが暗刻の木原、、をポンしてピンズに寄せていく。
道中たろうが自風のを暗カンして新ドラは生牌の。
そのも切り飛ばし危険信号が点滅している木原の仕掛けに対し、たろうがリーチで被せにかかる。
たろう(西家)9巡目
暗カン ドラ
木原も当然、真っ向勝負の構えだ。
火花を散らす2人の勝負は、たろうが引いたで決着がついた。
木原(南家)12巡目
ロン ポン ポン ドラ
東2局、金が5巡目リーチ。
金(西家)5巡目
ドラ
このリーチに対し、特に危険牌を切ることもなく追いついたのがたろう。
終盤、3枚目のを木原からチーして以下のテンパイを組む。
たろう(南家)14巡目
チー ドラ
木原の手には、リーチの安牌がとの2枚。
下家のたろうに立ち入る隙を与えない為には、より先にから打った方が良いのでは…と筆者は考える。
が、ここでの木原の打が思わぬファインプレーに繋がる。
たろうがをチーした同巡、下家の金がツモ切ったのはなんとラス牌の。
そしてさらに次巡金からが出て1000点のアガりとなるのだが、木原があそこでを打たなければ…。
リーチ一発ツモ ドラ 裏ドラ
このハネ満をツモられていることになる。(裏ドラは牌譜記録のため開示)
とはいえ勝負事に「たられば」は厳禁だ。それにあのは当然仕掛けるべき牌だ。
しかし誰が見ても分かるたろうハネ満ツモの回避、「あっぶね〜」という達也の心の声が聞こえてくる。
リーチをかわすことに成功したたろう本人も、少々後味が悪かったのではないだろうか。
東3局、木原が10巡目に先制リーチ。
一発目にたろうが切った木原の現物を金がチーしてテンパイ。
すると次巡、たろうがツモ切ったに声がかかる。
木原(北家)
ロン ドラ 裏ドラ
裏ドラ2枚のおまけがついて12000。
金がをチーしなければ、木原が一発ツモの倍満をアガっていたことになる。
親番でイーシャンテン。たろうはそこから1枚切れのを切っただけ。
そう、ただそれだけでハネ満を一人で被ることになってしまった。
たろうは一体この日何度、不運な牌をつかまされているのだろうか―――。
南3局1本場、達也の手が軽い。
5巡目に高目一通のテンパイをダマに構える。
達也(西家)5巡目
ドラ
11巡目に安目のをツモると、これをアガらず、打でチンイツへ移行。
14巡目にを引き入れ-のチンイツテンパイを果たすが、これは流局で達也の1人テンパイ。
オーラスは2本場で達也が3着から2着に浮上するアガりを決めて終了。
木原+71.7 達也+3.2 金▲20.9 たろう▲54.0
14回戦終了時トータル
たろう+158.5
木原+107.5
達也▲50.4
金▲216.6
これでたろうは本日3度目のラス。
かろうじてトータル首位は守られているものの、木原の足音がもう耳元まで届いている。
★15回戦★(木原→たろう→金→達也)
この日最後の対局が始まった。
東1局は木原の4巡目リーチに達也が押し返し、木原から3900の出アガり。
達也(北家)15巡目
ロン ドラ
東2局、今度は達也が5巡目に高目三色のリーチ。
達也(西家)5巡目
ドラ
このリーチにドラドラの金が無筋を飛ばしていく。
生牌のを引いたところで一旦まわったのだが、終盤テンパイを果たす。
金(南家)15巡目
ドラ
自分で2枚切っているを引き戻してのテンパイ。
リーチしている達也の現物待ち、さらに狙い目のは3枚切られているためダマに構える。
しかしテンパイ打牌で無筋のを打っているので、現物といえども簡単には出てこない。
トータルポイントも考慮して強気にリーチといっても良いと思ったが…。
結果は海底で金がをツモり2000・4000。
東3局、親番を迎えた金が6巡目に先制を取る。
金(東家)6巡目リーチ
ドラ
同巡、木原から追っかけリーチが入る。
お互いにツモ切りが続いた14巡目、金が掴んだに木原からロンの声。
木原(西家)14巡目
ロン 裏ドラ
まさか金も、6巡目で高目倍満の追っかけリーチをくらうとは思わなかっただろう。
東4局、先手を取ったのは親の達也。
自然なツモに沿う形でメンタンピンリーチ。
達也(東家)8巡目
ドラ
高目のドラをツモると裏ドラ次第で6000オールまで見込める手牌だが、リーチをかけた時点で高目は純カラ。
残り3枚の安目を引き当てられるかの勝負になるのだが、ドラ2枚使いの金が追いつく。
金(北家)9巡目
ドラ
金の-は山に2枚生きている。
どちらが勝つのだろうと思いながら見ていると、思わぬところから声が出た。
「リーチ」
声の主はたろうだった。
たろう(西家)11巡目
ドラ
2軒リーチに対する共通安牌はのみ。
次巡手詰まるくらいなら…と勝負に出たのだろうが、ドラは自分の目から1枚しか見えてない上に自分は愚形。
相当果敢なリーチと言わざるをえない。
一体何人の打ち手がここでリーチと言えるだろうか?もちろん、トータルポイントを考慮した上で、だ。
決着はすぐについた。
金が一発でを掴み、5200の放銃となる。
たろうは5連勝スタートという大きすぎるリードを得たあとも、
「俺が受けの姿勢を見せたらみんなに好き放題やられて、結局ノーテン罰符とかで削られちゃう。だから俺は攻めるんだ」
と口にしていた。
たろうの勝負勘、ここにきてやっと輝き出したか。
本日最後となる南場を迎えて、その最初の親となる木原が三者を突き放す4000オールを決める。
木原(東家)13巡目
リーチツモ ドラ 裏ドラ
さらにリードを広げるべく1本場もリーチをかけるが、躱し手のテンパイを入れていたたろうが金のを討ち取る。
たろう(南家)13巡目
ロン ポン ドラ
南3局親番を迎えた金、破壊力に関して言えば4人の中で一番だろう。ここが間違いなく踏ん張り所だ。
そんな金の心を打ち砕くかのようにたろうから早々とリーチが入る。
金はドラのまで切り飛ばして勝負に立ち向かう。
やっとイーシャンテンまで漕ぎ着けたところでたろうから「ツモ」の声。
たろう(北家)11巡目
リーチツモ ドラ 裏ドラ
裏ドラがついて3000・6000。金、達也の表情が僅かに歪んだ気がした。
たろうと木原の一騎打ちのオーラス。
点棒状況は以下のとおり、木原が僅かにたろうを上回っている。
達也 20900点
木原 39100点
たろう 38500点
金 1500点
このまま木原がトップなら、たろうとほぼ並んで最終日を迎えることになる。
鈴木たろう、木原浩一。一体どちらがこの半荘を制するのか、それとも―――。
たくさんのギャラリーも固唾をのんで見守っている。
「リーチ」
たろうの声でもない、木原の声でもない。
それは達也の声だった。
2巡後、2000オール。
達也(東家)13巡目
リーチツモ ドラ 裏ドラ
勝負の行方は次局に持ち込まれる。
たろうか、木原か。はたまた達也なのか―――。
続く1本場も達也に好配牌。
達也(東家)2巡目
ドラ
5巡目に待望のを引き入れると、当然のリーチ。
達也の手牌が倒されるのに、そう時間はかからなかった。
達也(東家)8巡目
リーチツモ ドラ 裏ドラ
最終日に希望を繋げる4100オールでディフェンディングの意地を見せつける。
オーラス2本場、一気にトップ目に立った達也にまたも先制テンパイが入る。
達也(東家)8巡目
ドラ
引きの手変わりを待ちつつ、流局の際に手牌を伏せられるようにダマテンに構える。
すると、着順をこのままにしておきたい金から援護射撃が。
8巡目にカンをチーしてテンパイを入れて、11巡目に決定戦3日目の幕を閉じるツモアガり。
金(北家)11巡目
ツモ チー ドラ
たろう、木原を抑えて達也がこの半荘を制し、優勝圏内に踏みとどまった。
達也+57.7 木原+12.1 たろう▲8.5 金▲51.3
15回戦終了時トータル
たろう+150.0
木原+119.6
達也+7.3
金▲267.9
2日目終了時からは予想もつかない展開で3日目が終了。
独走していたたろうは、この日全逆連対で200ポイント近く吐き出してしまった。
それでもたろうが追随を許さないのか。
木原がたろうの牙城を崩すのか。
達也は奇数期のジンクスを打ち破れるのか。
金が協会史上に残る大逆転劇を見せてくれるのか。
最終日はニコニコ生放送で配信されることになっている。
今年は誰が栄冠を掴むのだろうか。
そういえば昨年は、達也が画面の向こうで不器用な笑顔を浮かべていたな―――。
(文:千歳 かずみ)
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