5月3日から予選が始まり、5・6日と第5期新人王戦が開催されました。
新人王戦は、日本プロ麻雀協会に入会5年目までの新人雀士だけがエントリーできる、
言わば新人雀士の登竜門。
順位
|
選手名
|
TOTAL
|
1回戦
|
2回戦
|
3回戦
|
4回戦
|
5回戦
|
1
|
小倉 孝 |
95.4
|
21.2
|
-60.9
|
54.5
|
65.8
|
14.8
|
2
|
金 太賢 |
29.8
|
61.6
|
59.1
|
-44.6
|
-17.1
|
-29.2
|
3
|
藤崎 和彦 |
27.5
|
-7.2
|
-11.6
|
-22.6
|
5.0
|
63.9
|
4
|
大浦 隆行 |
-152.7
|
-75.6
|
13.4
|
12.7
|
-53.7
|
-49.5
|
<1回戦>
オーラス 東家・小倉41200点―北家・金34400点―西家・藤崎33800点 の並び。
大きく離れて大浦である。
ここまで10局中8局にロン和了りの起こった打撃戦であった。
内7局を放銃した大浦が箱を割っている。
全5回戦という短期戦。ここまできたら初戦は是が非でも獲りたい。
小倉の圧倒的優位は間違いないが、残りの2人にも十分チャンスはある。
しかし先制したのは大浦。
4巡目リーチ ドラ
リーチ
これを受けてまず藤崎の手牌。
藤崎のやることは決まっている。
放銃して失うのが素点ポイントだけならば、和了りの際得られる順位点ポイントのメリットを追求する。
ここは和了り確率が低くても放銃確率がよほど高くない限り、十分見合う勝負となる。
自分の都合だけでストレートに押してくるだろう。
金の手牌。
リーチの直後にドラを重ねてこの手牌。トップまでは6800点。
多少色気が出るところではあるのだが、
こちらは藤崎とは違って放銃した場合に失うものは素点ポイントだけではない。
場況次第か。
小倉の手牌。
小倉もやることは決まっている。
大浦の和了りを願うだけ。幸いにして現物も2枚。あっさりと現物を抜く。
藤崎は5巡目にを引き入れイーシャンテン。追いつけばなんでもリーチといったところか。
一方金も8巡目には
このイーシャンテン。安全牌は0。
しかし、門前またはドラが叩けるようであればトップまで狙える。金の選択は。
との放銃確率を比較すると打のほうがよさそうだが、
テンパイ時にを切り出すことを嫌がったのであろうか。
藤崎のテンパイは12巡目
ツモ
8巡目に抱えたドラを浮かせてのイーシャンテンから。
ちょっと躊躇ったが、迂回している猶予はないと判断。即リーチと出る。
このとき金は
から微動だにせず、ツモ牌に手を伸ばす。
安全牌2枚を抱えたところで大浦が藤崎に負ければ順位点を失う。
流局の場合でも自分がノーテンならばこれも順位点を失う。
仕掛けるとテンパイ確率はグッとあがる。
2軒リーチのうえまだ仕掛けてイーシャンテンでは、和了り確率はそう高くないはないかもしれないが
現状これだけのマイナス抽選を孕んでいるのだから、
それに見合うプラス抽選の確率を高めていったほうがバランスがよいのではないだろうか?
結局2枚目のもスルー。を引き入れ、引かされたとを押して15巡目。
ツモ
が2枚飛びなのでテンパイチャンスを優先するならだが、これもまた無筋。
は現物だが、場況的にがテンパイまでの生命線になる可能性がありそうだ。
金の選択は、ドラのトイツ落し。
この巡目だと和了りの確率と放銃の確率の兼ね合いで、こちらの選択のほうがやや有利だろうか。
16巡目の金。ツモでドラを横に曲げる。
フィニッシュはまたも大浦の放銃。
一発出和了り抽選に当選した金が、流局寸前に小倉から貴重なトップの順位点を奪い取った。
<2回戦>
東1局1本場 ドラ 北家藤崎 2巡目に
ツモと来てテンパイ。7巡目に引いたもノータイムでツモ切り直後に出和了り。
これに飛びこんだのがまた大浦。本日ここまで13局中9局を放銃している。
正直温い放銃もあるにはあったのだが、ここまでともなると技術だけのせいではない。
このままズルズルといくと、この半荘で大浦の新人王戦が終わってしまうことになる。
しかしマイナスの抽選に当選しまくりだった大浦がここからは恵まれる。
本日の初和了りを金から8000点で決めると、次局も小倉から12000の和了り。
これに詰め寄ったのは金。
2600、8000と和了り、ラス前に圧巻のチートイツ一発ツモ(裏裏)で2人抜きを果たし
トップにまで躍り出る。
オーラス3着目と僅差の北家大浦。
5巡目、仕掛け始めた時の手牌がこう。
ポン
6巡目 上家から出た。2着取りを目指すのなら鉄板でチーなのだがこれをスルー。
7巡目 ツモでテンパイ。まだ先はある。2着で和了りも悪くはないのだが。
8巡目 上家からのでロン。これだけはチーじゃないのか?
大浦の後ろで観戦していて思ったのだが、
1つのパターンに執着しすぎて他のパターンを見落とすような傾向が強くある。
たとえば終盤にオリを選択するとしよう。
何を切ってオリるかという思考に捉われすぎて、形式テンパイの出来る牌を仕掛けようともしないとか。
他3人とはこなした場数の差があるようなイメージを受ける。
経験不足は多少のハンデにはなるだろう。
しかし選択の技術を高める方法は、経験でしか養えないわけではないのだ。
技術を追求することに満足感を見出すか――
純粋に楽しむことだけに満足感を見出すか――
人それぞれである。
<3回戦>
金の連勝で大きく水を開けられた形の3人。
しかしワントップとれれば浮上のチャンスは十分ある。
この半荘先に抜け出したのは大浦。
東3局親番で3軒リーチを制し、値千金の4000オール。
追う藤崎。東4局の親番で
リーチ
ドラは。異彩を放つ初牌ダブのトイツ落とし。その前のもトイツ落とし。
をツモ切って、手出しのリーチ宣言牌。
南家小倉が親の宣言牌を引っ掛けてテンパイをとる。
そのときの牌姿はこう。
は相当切りづらい。が3枚見え、を自分で切っている。
も3枚見えているとなれば、
和了りはあまり期待できないにせよチーテンも止む無しといったところか。
チーして持ってきた牌は。
「まあバッタ待ちもなさそうだし通りそうじゃないか?」通常なら躊躇なく切ってよい牌かもしれない。
しかし、藤崎のリーチ。まあ安くはないだろうし、愚形も考えにくいような捨牌相。
となればもう少し慎重にいくべきではなかっただろうか。
結果はドラヘッドの−待ちに手痛い放銃。
タネ明かしをすると2枚目のは空切り牌であった。
小倉はこの半荘まで△40P弱。
連勝の金を追いかけるどころか、この放銃で13000点持ちのラスまで叩き落され、
諦めたわけではないが「さすがに今日はダメかもしれない」と思ったらしい。
しかしその小倉、南場の親番で配牌イーシャンテンから次巡にあっさりカンチャンを引き入れると、ピンフのみながら当然の即リーチ。
5巡目にツモ和了ると今度は偶然の裏々。アッサリ息を吹き返す。
一進一退を繰り返し、オーラスを迎え南家小倉の手牌。
ドラは
8巡目テンパイ。これを即リーチ。
トップの大浦まで9200点差。3着の親藤崎との点差は11600点差。
ラス目は金なので並び的には好都合なのだが、藤崎と金の点差は2000点しかない。
ここは2着和了りも止む無しと小倉の判断。
できれば藤崎からは和了りたくないところではあるが、
都合の悪いことに藤崎の手牌にはが浮いている。
藤崎からも和了るだろうか?
興味はその1点だったのだが、その牌は最も意外なところからこぼれ落ちる。大浦だ。
大浦いわく「小倉リーチ安かろう」と思っての選択だったらしいのだが、
どこにもその根拠となる材料は見当たらなく
また自身も非テンパイとあらばなんとも軽率な一打であったように思う。
大浦の読み通り?このままなら1300点。しかし――
この半荘2度目の裏々で、小倉望外の初トップ。
<4回戦>
ここまでのトータルポイント
金 76.1P
小倉 14.8P
藤崎 △41.4P
大浦 △49.5P
ラスだけは避けたかったであろう金。しかしまだまだ有利には変わりない。
大浦、藤崎の両者は後が無い。この半荘が勝利へのラストチャンスとなるだろう。
小倉については金を意識することはあっても特別な戦略は必要ないだろう。
ここへきても4者とも常に上を目指すのみ。
東場は小倉、藤崎の両者がマンガンを和了り並走。
決定打は南2局 ドラ
親小倉は
チー ポン
の5巡目テンパイ。テンパイ打牌は。
巡目、点数状況、牌姿、場況すべてを考慮に入れても、
確かにバッタ受けのほうがバランスが良いと思われる。
対する南家藤崎、
のイーシャンテンにツモ2の8巡目テンパイから、放銃。まあこれは仕方ないだろうか。
この後 藤崎多少盛り返すも、あまりにこの失点は痛く2着止まり。
<最終戦>
ここまでのトータルポイント
小倉 80.6
金 59.0
藤崎 △36.4
大浦 △103.2
小倉、金の差は21.6P
10−30の順位点の協会ルール。
ほぼ2人の着順勝負のマッチレースになるかと思われた最終戦。
東1局 金が1000−2000を
東2局 小倉が8000を
それぞれ和了り、この後の一進一退の攻防を予感させる立ち上がり。
しかし、これに割って入ったのが藤崎。東3局の親番で
タンヤオリーチをハイテイでツモりあげ4000オール。
1本場は小倉から3900は4200。
2本場には1フーローのタンヤオトイトイ三暗刻をツモ。 4000は4200オール。
そして3本場ではトータルトップの小倉から12000は12900の直取りに当選する。
このときの藤崎の手はチートイツ。小倉痛恨のオリ打ちもこの場況では仕方なし。
この半荘を含めた現時点での3者のポイントは、
小倉―27.7 金―59.6 藤崎―39.7
この半荘の並びが現在 藤崎―金―大浦―小倉
藤崎の頭の中には「ダンラスの大浦には今後あまり期待できないかもしれない」という思いはあるだろう。
ならばこの親で金ともポイントを一気に縮めておきたい。そう思っても心情的には普通だろうか。
小倉の放銃にほくそ笑んだのは金。この両者はこの半荘の着順勝負。
自分が失点して着順を下げない限り、藤崎の連荘にまだそう脅威は感じていないだろう。
4本場 ドラは。先に動いたのは藤崎。7巡目にをポン
初牌の中を手出し、ツモ切りの後にポン出る。多少嫌な河ではある。
これ対して8巡目金は
これにツモと来て、初牌のドラを放つ。
嫌な河ではあるがこの程度ならまだ放銃確率は低く、仮に鳴かれた場合にも十分対処はできる。
そう、先にもいったとおり放銃さえしなければなんとかなるのだから。
結局このドラには声がかからず、その後もツモ切りが繰り返される。
そして11巡目上家から出るに金微動だにせず。
これは激しく温いんじゃないか?
それともこれが彼のスタイルってヤツなんだろうか?
たしかに瞬間の−待ちは和了るには厳しそうな場況ではある。
だからといってツモ山に手を伸ばし何の抽選を待つというのか?
門前テンパイのメリット?
現時点でのポイント差、巡目を考慮してもあまり無いと思うが。
もっと好形でテンパイする抽選だってかなり薄いのではないだろうか?
12巡目藤崎がを加カン。
リンシャンから持ってきたをそのままツモ切ると、金もこれにはポン。−テンパイ
親の藤崎。実は加カンした時点でまだイーシャンテン。
この連荘でちょっと強気になったか?この巡目での加カンはあまり得しないと思うのだが。
金も小倉も押してきていることは明白。
「もう後が無い」というのであれば話はわかる。でも現状はそうでもないだろう。
小倉は7巡目から
このイーシャンテン。もう曲げたくて仕方ないといったところか。
藤崎大トップを目の前にしても、小倉の標的はまだ金である。その差は13.5P。
イライラしながらその時を待っただろう。
11巡目の金が鳴かなかった。
まだ親番は2回ある。他家の進行速度だって遅くはない。
小倉はポンテンをとっても良さそうだったがここはグッと我慢。
これに関してはそう温いとは思わない(僕は鳴いたほうがよいと思うが)。
この差がおわかり頂けるだろうか。
加カン、ポンが入った直後、を引き入れリーチ。
藤崎、小倉両者に放銃確率の高そうなをノータイムで河に叩きつける金。
元気が良すぎな気がするが(笑)
このを藤崎がチーして勝負。
チー カン
2000点だが−待ち、特には場況的によく見える。ここは押したほうがいいだろう。
この3者のめくり合いはを掴んだ金が廻り、を掴んだ藤崎の放銃となる。
またも裏々で小倉再び息を吹き返す。
東4局は小倉の親番。
ちょっと焦ったか? ドラ
2巡目に出る1枚目のをポン。ピンズが面子になって3900の和了り。
とにもかくにもこれでまた金に追いついた。
1本場
6巡目 北家藤崎の手牌 ドラ
関連牌はが1枚切れ、他すべての有効牌が初牌という場況。
藤崎は打。これも焦ったか?もしくは超大物狙いなのか?
タイトル戦の決勝という舞台。しかも大詰めとなれば、
精神的なプレッシャーなどから影響を受けて微妙に損得の判断が狂いだすこともあるのだろう。
ここは打のリャンシャンテン戻しが良かったのではないか?
9巡目 東家小倉の手牌
を引いて即リーチ。当然仕掛ける藤崎
ポン
数巡後に藤崎がを引いてテンパイを果たすも、打ち出されるで小倉に放銃。
裏ドラが1つ乗る。この打ち込みで藤崎は優勝争いから完全に後退する。
2本場
金に10000点強のリードをつけた小倉。
藤崎のドラ色のホンイツ仕掛けに全く怯まずまだ尚攻める。
ドラ
なんと14巡目リーチ。
採譜用紙に書かれた「連続小倉リーチ!」というコメントが小倉のこういった選択の多さを象徴している。
なんとも危うくみえるのだが、こうした選択が功を奏している局面が数多くあるのも事実。
まさに小倉リーチの真骨頂といったところであろうか。
ちなみにこれは不発に終わる。
3本場
藤崎がヤミテンで金からマンガンを和了る。高め一通のピンフドラ1。
なぜヤミテンだったのか?なぜ金からだったのか?真相は不明だが、
これで藤崎の優勝の目はほとんどなくなったといってもいいだろう。
小倉と金の点差 21.7P
まだワンチャンスある。
南2局 金の親番 ドラは
入り目にもよるが期待の持てるイーシャンテン。
しかし小倉も既に2フーロー。
ポン ポン
金8巡目に引きテンパイ。小倉の動向、リーチするより仕方なしといったところか。
金の一発目のツモは。小倉躊躇せず「ポン」
牌譜用紙には小さく「いったー!」と書かれている。
それほどテンパイ打牌のは危険にみえるのだ。
ポンせずオリてもまだ点差はかなりある。しかし、タイトル戦決勝卓という設定下。
既に優勝の目がないものもいる。親落ちが長引く可能性だって十分に考えられるのだ。
決められるときに決めておきたい。
これはただの願望かもしれない。
しかし優勝する可能性を最大限に高める選択としては間違ってはいないだろう。
このような状況下でも「ポン」の声が出せるのは小倉の雀力の高さ故、といってもいい。
即を引き寄せる小倉。
優勝を確信したツモの手に、普段よりもやや力がこもっていたようにも見受けられた。
<観戦子総評>
小倉君強し!いや実際強かったと思います。
知ってますか?彼って意外と戦略に長けているんですよ。
ただ本人が口下手なため皆さんに誤解というか、理解されにくいと思うんですがね(笑)
愚形リーチを掛けてあがっているイメージが強いんですが、
それは本人のなりの条件を満たしているときだけ発動しているだけで、
先制でもテンパイ外したりしている局面だってあるんですよ。いや・・・たまにですけど(笑)
あと「麻雀反射神経」も鋭いよね。
特にこういうタイトル戦だと慎重になりすぎて損な選択する人って多いんじゃないのかな?
彼にはそれがないよね。
プレッシャーに強い?そうかな?4人の中で1番緊張してたように見えたけどね(笑)
他3人については初めて見ました。
パッと見だけじゃあ正確な雀力評価はできませんが、
金君に関しては結構強そうには見えたけど。
藤崎君に関しては選択肢のある局面が少なかったので評価は難しいです。
でもソツなく打ってたイメージ。
大浦君に関してはちょっと勉強不足の感は否めなかった。
この経験を糧にもっと努力してほしいね。
文責・木原浩一 http://blog.livedoor.jp/aladdinchance1000/
|