順位
|
名前
|
TOTAL
|
1回戦
|
2回戦
|
3回戦
|
4回戦
|
5回戦
|
1
|
ヨンス |
159.1 |
-16.2 |
62.2 |
67.4 |
60.0 |
-14.3 |
2
|
秋瀬 ちさと |
20.3 |
-43.9 |
15.1 |
-19.0 |
18.2 |
49.9 |
3
|
清水 堅斗 |
-63.4 |
54.8 |
-62.6 |
5.8 |
-19.8 |
-41.6 |
4
|
音無 愛音 |
-116.0 |
5.3 |
-14.7 |
-54.2 |
-58.4 |
6.0 |
≪決勝観戦記≫
世間が未曽有の10連休で賑わう中、当協会でも一大イベントがある。
新人王戦。
参加資格は入会5年以内、A1リーグ未経験、G1タイトル未獲得の3点。
未来のスター選手を見届けよう、というものだ。
今年の決勝もそんな条件通り、初々しい顔ぶれが集まった。
★1回戦(清水→音無→秋瀬→ヨンス)
○東1局
ツモ ドラ
裏ドラ
いきなりダブルリーチの満貫が炸裂した。
アガったのは関西16期の音無愛音(おとなしあのん)。
リーグ戦未経験で人一倍緊張していただけに、この先行は嬉しい。
○東2局
ロン ドラ
裏ドラ
秋瀬からチャンス手をアガったのは清水堅斗。
18期前期入会、プロ入り1か月のまさにルーキーだ。
冒頭の挨拶ではヨンスを意識していたが、はたして・・・。
○東4局2本場
ヨンスが親の連荘で2人に続く。
協会の看板選手の1人、鈴木達也の店で鍛えられた実戦派だ。
去年の雀竜位戦― 入会したての彼は、決勝まで進み注目を浴びた。
すぐに決勝の舞台に戻ってきただけでも十分凄いことだ。
○南2局
ここまで防戦が続き苦しいのは秋瀬ちさと。
16期後期入会してすぐ、女流モンド新人戦優勝。
放送対局の経験は4人の中では1番で、前評判もいい。
ヨンスとは同期対決となる。
チー
ポン
ドラ
親リーチを受けながら、最後の手番で清一色テンパイ。
ここにヨンスが飛び込んだ。
親に中筋のだが、仕掛けている秋瀬にはどうだろう。
秋瀬の最終手出しはリーチの中筋だが生牌の。
ツモ番のないノーテンから出てくる牌だろうか。
ノーテンと判断した結果、痛い満貫放銃となってしまった。
○南4局
オーラスを迎えて27000点付近が3人という大接戦。
清水が面白い仕掛けをした。
シャンテン数の変わらないチー。
形もよくなってはいない。
しかしドラを2枚引いて満貫のアガリ。
ポン
チー
ツモ ドラ
この最終形はさすがに予想できなかった。
ルーキー清水が嬉しい初トップ。
1回戦スコア
清水+54.8
音無+5.3
ヨンス△16.2
秋瀬△43.9
★2回戦(音無→秋瀬→ヨンス→清水)
○ 東1局
6巡目テンパイの清水がダマでツモアガリ。
ツモ ドラ
初戦トップの慎重な立ち回りだが、勿体ない気もする。
5回勝負のトップ取りは、もっと貪欲にリーチでもいいように思う。
○東2局2本場 供託3本
アガリの価値が高い状況で、清水が仕掛ける。
ポン
ドラ
上家から出るをポン。
・・・ポン?
なるほどポンした両面待ちは盲点になる。
チンイツは待ちの枚数で選ぶのがセオリー。
まだ6巡目、チー打で両面待ちが自然ではあるが・・・。
そこへ親の秋瀬がリーチ。
清水がを掴み、リーチ・平和・ドラ2・裏2の18000。
秋瀬はリーチ後にを引いている。
素直にをチーしていたら・・・。
スルリと間隙を縫って、秋瀬の会心の一撃が決まった。
○南3局4本場
秋瀬が巧みなゲーム回しで局を進めていく。
相手の勝負手の不発も多く、展開がいい。
この局は、親のヨンスと清水の配牌を追っていこう。
ヨンス
ドラ
清水
ドラ
先制テンパイはなんと清水。
ドラ
一旦8sを切り、12巡目にを引いてリーチ。
一方ヨンスは
ドラ
ドラを大事にを打つと
ドラ
三色ドラ1の7700をダマに構える。
そこに清水のリーチが入り、ツモ切りで追いかけると、
タイミングが噛み合い、一発ツモの6000オール。
一撃でトップ目に立った。
○南3局5本場
秋瀬が最も心残りと語ったのはこの局。
ヨンス41800
秋瀬38700
ドラ
秋瀬は2巡目に出たをスルー。
門前でも打点がなく、速度もないため仕掛けもありだったか。
ヨンスがもう1度アガるとトップが遠くなる。
10巡目、清水がリーチ。
ドラ
これを受けて秋瀬は
同巡に追いつき、の片アガリのダマテンにした。
清水がツモってヨンス親っかぶりでもよし、という狙いだ。
ヨンスがオリ気味なら、リスクを負わないその選択もある。
しかしヨンスは一発目に無筋を切った。
ここで改めてリーチもありかなとは思う。
シャンポンの片割れのも優秀な待ちだ。
で迂回した矢先、すぐ持ってくる―――
すかさずヨンスが
ツモ ドラ
三色テンパイから回って500は1000オール。
絶妙なバランスでアガり、秋瀬を突き放した。
オーラスはヨンスの平和であっさり終局。
トップまであと一息だった秋瀬は痛恨の2着だ。
2回戦スコア ()はトータル
ヨンス+62.2(+46.0)
秋瀬+15.1(△28.8)
音無△14.7(△9.4)
清水△62.6(△7.8)
★3回戦(ヨンス→清水→秋瀬→音無)
連勝も連続ラスもいない。
ヨンスの連勝は避けたいが、まだ自分都合で打っていい時間帯だ。
秋瀬
一発ロン
ドラ 裏ドラ
清水
ポン
ロン ドラ
ヨンス
一発ロン
ドラ 裏ドラ
いきなり打撃戦の激しい展開からスタート。
○東3局2本場 供託1
音無
ドラ
ここから第1ツモでが重なり、立て続けにポンして
ドラ
8巡目、ついに小四喜テンパイ。
この時点では2枚山で、全員オリている有利な状況。
2回戦でも実はかなり現実的な国士が不発に終わった音無。
残念ながら、2枚ともヨンスに吸収され1人テンパイの流局。
○南3局
秋瀬が勝負をかけた。
ダマで満貫の手をリーチ。
・ドラそばでダマでも出にくい
・役牌を仕掛けた清水への牽制
・6000オールによるトップ率の上昇
戦略的ないいリーチだ。
しかしその英断も空しく流局。
秋瀬の手牌を見るヨンスの険しい顔が印象的だった。
○南3局1本場 供託1
秋瀬の親を流したいヨンス。
が3枚切れ、タンヤオやチートイツ狙いの切り。
親の秋瀬の河が早そうで、自分の手は中張牌ばかりで難しい。
これを丁寧にチートイツに仕上げると
ロン ドラ
秋瀬から満貫のアガリ。
これが決定打となり、ヨンスが連勝を飾った。
3回戦スコア ()はトータル
ヨンス+67.4(+113.4)
清水+5.8(△2.0)
秋瀬△19.0(△47.8)
音無△54.2(△63.6)
★4回戦(音無→清水→秋瀬→ヨンス)
現状ヨンスの1人浮き。
特に秋瀬・音無の両名はほぼ連勝条件で、もう後がない。
最低でもヨンスのトップは断固阻止だ。
○東2局1本場
決勝の明暗を分けたのはこの局。
親の清水、なんと4巡目で高め18000のイーシャンテン。
の両面を払い、をポンしての対子落とし。
他3人から見ると、かなり怪しい仕掛けだ。
優秀な両面を嫌っていて、ドラ対子以上のメンツ手の可能性が下がる。
切りでトイトイもなさそう。
そう考えるとピンズのホンイツは候補だが、その場合良形のテンパイorイーシャンテンで危険だ。
知ってか知らずか、ヨンスが平和でリーチ。
ドラ
「やらかしたな」正直、そう思った。
親の危険な仕掛けに対しリスクが高い。
なによりトータル2着の清水の親を蹴る価値が大きい。
杞憂だった。
自力で決着をつけるその姿に、思わず腰が抜けてしまった。
ちなみに清水の手は
ポン
ドラ
リーチに迂回してこの形。は山にない。
つまりヨンスの放銃はなかった―――
これもまた巡り合わせだろう。
○東4局
音無
ドラ
かなり厳しめの手牌。
今日一日を通して見ても、音無は展開が1番キツい。
とドラのを重ねて丁寧な進行をすると
ポン
ロン ドラ
ヨンスから3900直撃。
暫定4着を押し付ける価値の高いアガリにしてみせた。
ラス前、秋瀬の親が終わらない。
ロン ドラ
裏ドラ
ロン ドラ
裏ドラ
ツモ ドラ
裏ドラ
○南4局6本場 供託2
ようやくヨンスが親を迎えた時には6本場。
点棒状況はこう。※()はトータル
ヨンス19700(+113.4)
音無8400(△63.6)
清水27000(△2.0)
秋瀬42900(△47.8)
ヨンス的に並びは悪くない。
最終戦は、このままなら3人とも自分と素点差の必要なトップラス条件になる。
秋瀬がを仕掛け、すぐにを引き終わらせにかかる。
上家の清水は跳満ツモ条件と厳しく、現状維持のアシストも期待しやすい。
ヨンスが急所を仕掛けて5800のテンパイ。
ここに飛び込んだのは秋瀬。
自身もテンパイであり、止めるのは不可能だ。
5800は7600、供託2本つきでヨンスは2着に浮上。
○南4局7本場
運命の瞬間が訪れた。
ヨンス29300
音無8400
清水27000
秋瀬35300
ヨンス
ドラ
音無
ドラ
清水
ドラ
秋瀬
ドラ
断トツの配牌は音無。
しかし軽いアガリが許されず、ソーズへ寄せる。
3巡目にはを暗槓。
テンパイ1番乗りは秋瀬だった。
ドラ
9巡目に待望の役ありテンパイだ。
勝負ありかと思いきや、ヨンスに怒涛のツモが押し寄せる。
2枚切れの待ちでテンパイ。
ドラ3であり、絶対に間違えたくない。
ヨンスの判断はテンパイ取りダマ。
瞬間のツモに期待しつつ、タンヤオ変化をみた。
音無にホンイツのテンパイが入った。
ポイント的に四暗刻も狙いたい。
を切ると秋瀬のアガリだが、紙一重の打。
12巡目、ヨンスはを鳴いて役ありに変化。
チー
ドラ
13巡目、も仕掛けて待ちを広げると、
チー
ドラ
14巡目、ツモで場に安いマンズに受けた。
チー
ドラ
この時切ったは音無にアタリだが、着順が変わらず四暗刻狙いのため見逃し。
ここまでお膳立てが揃えば結果は予想できた。
タンヤオ・ドラ3、4000は4700オール。
目まぐるしい手牌変化を経て、ついにヨンスが逆転。
○南4局8本場
満貫ツモ条件の秋瀬がリーチ。
ドラ
をツモったが裏ドラはなく、ヨンスにトップを明け渡す形になった。
無条件クリアの高めをヨンスにすぐ吸収されたのも、実にドラマチックだ。
4回戦スコア ※()はトータル
ヨンス+60.0(+173.4)
秋瀬+18.2(△29.6)
清水△19.8(△21.8)
音無△58.4(△122.0)
こうして今年の新人王戦はゲームセットとなった。
トータル2着の清水でもヨンスと約200p差。
5戦目を語るのは野暮というものだろう。
音無は厳しい展開にもかかわらず、想像以上の健闘だった。
リーグ戦未経験という大きなハンデや極度の緊張。
大丈夫かな、などと余計な心配をしたことをここに謝罪したい。
今後、彼女がリーグ戦に出られる環境になった時が楽しみだ。
清水は新人ながら堂々と打つ姿に驚かされた。
しかし、仕掛けやリーチの手順、バランスがやや変に感じた。
もっとも、入会1か月でバッチリ打ったらそれはそれで怖い。
ここからピントが合ってくれば、結果も伴うはずだ。
秋瀬はあらゆるターニングポイントに関わっただけに、悔しさも相当だろう。
手牌の柔軟な構え方や、「局」単位ではなく「半荘」単位でのゲームのとらえ方は素晴らしかった。
近い将来、また決勝の舞台に戻ることを期待してしまう。
そして優勝はヨンス!!!
門前リーチを主体とした戦い方は、実践的で手組もしっかりしていた。
対局が終わるごとにアドバイスを求める積極的な姿勢も好感が持てる。
普段は誰からも親しまれる非常に愛嬌のあるキャラなので、これから更に活躍して人気者になってくれるでしょう!
本当におめでとう!!!
最後に、大変恐縮ではあるが私から少しだけ。
「新人王」というタイトルのバトンの受け渡しに直接携わった。
拙いながら解説および観戦記を担当できて、本当にありがたかったです。
視聴・一読いただいた皆様への感謝の言葉で、この物語を終わりにしたいと思います。
本当にありがとうございました。
(文・佐治 敏哲)
≫準決勝までのスコアはこちら
▲このページトップへ
|