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順位
名前
TOTAL
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
1
佐治 敏哲
166.7
-26.3
-14.9
76.7
62.1
69.1
2
松崎 真也
65.5
58.1
10.6
5.4
-15.3
6.7
3
坂本 太一
-48.9
15.5
61.3
-51.8
-59.9
-14.0
4
川崎 たかし
-183.3
-47.3
-57.0
-30.3
13.1
-61.8

≪決勝観戦記≫


毎年ゴールデンウイークに行われる「新人王戦」。
プロ暦5年以内、Aリーグ未経験、タイトル未獲得者という参加資格があり、雀竜位の江崎文朗や前發王位の松本吉弘は参加することができない。
彼らに続く協会の若きスターになることができるのか?
新人王戦の幕が開ける。

★1回戦★(佐治-川崎-坂本-松崎)

坂本太一 15期前期入会

しゃるうぃー天鳳を連覇(HN広島の種馬)し、チャンピオンロードでも2回優勝している。
実績だけならこの面子でも最上位だろうか。
ただ、放送対局は初めてということでオープニングから一番緊張しているようにも見えた。




まず先手を取ったのはこの坂本。

東1局1本場
丁寧な手牌進行からこの聴牌。
ドラ

これをリーチして松崎から3900は4200のアガり。
幸先のいいスタートを切る。

松崎真也 16期後期入会

アマチュア時代に数々の戦歴を誇り放送対局での実績は一番。
九段下「ノーブル」で元最強位の福田聡とともに働いており、直近での競技ルールを一番打ち込んでいるのは彼だろうか。
この中では唯一のMJプレーヤー(J.Jトムソン)でもあり、応援してくれている人も多い。




東3局
まずは配牌。
ドラ
というかなり厳しそうな手牌を9巡目にはこう。
ドラ
ここはが2枚見えているということで冷静な聴牌外しを見せる。
14巡目に
ドラ
と理想形の聴牌にこぎつけるとリーチ。
をリーチ後に暗カンして最終手番でツモ。

アンカン ツモ ドラ 裏ドラ

大きな大きな4000-8000とこの半荘の決め手に仕上げて見せた。
入会して1年にもならない新人らしからぬ打ち筋とともに、見た目とは裏腹に彼はまだ20代である。

東4局
ここは坂本が仕掛けの上手さを見せる。
3巡目に
ドラ
ポンから発進。
道中にドラのを3枚引き佐治から12000のアガり。
ロン ポン ドラ
道中はマンズのホンイツに見せての技ありのアガり。

南1局
坂本の長所は「打点構想力」by江崎文朗。
この局はまさに圧巻の坂本の一局。
トップの松崎と6200点差、3着の川崎からは16200点上。
この点棒状況が後押ししたか。
ドラ
から7巡目に打
10巡目には
ドラ
から川崎のを見逃しを引いて後のない親番の佐治から一発で出アガり。

ロン(一発) ドラ 裏ドラ

この手材料をもらったら最低これぐらいにはね。という意思。
素晴らしい構想力が見られた1局だった。

南4局
前局に佐治が2000.4000で初アガり。
オーラスを迎えて点棒状況はこう
松崎42100
佐治5700 
川崎14700 
坂本37500

坂本は5200もしくは1000・2000。
佐治は12000もしくは2000・4000での着順アップが見込める。
 

佐治敏哲 12期後期入会

今年で新人王戦の出場が最後となる5回目の出場。
放送対局の経験はなし。
同期には松本吉弘がいる。
μの選手が多く働いている麻雀店で働いていたこともあり、「THE競技麻雀」といった雀風。
決勝開始前に選手に提出してもらったアンケートでも佐治を警戒する声が一番大きかった。



まず動いたのはこの佐治。
9巡目に
ドラ
からをポンして打でトイトイと染め手との天秤に構える。
12巡目に
ポン
に打たれるをスルー。
これはすごい。巡目との兼ね合いでポンして打といく人がほとんどではなかろうか。
はもう一枚あるし、必ずしもアガり形にが必要なわけではない。」との本人談だがこの選択は驚嘆だった。
そしてをポンしてを2枚引いての2000・4000で狙い通りのラス抜けに成功。
2局連続のマンガンツモでのラス抜けは会心の手応えだったようで休憩中の表情は4人で一番明るかった。

1回戦終了時
松崎+58.1
坂本+15.5
佐治▲26.3
川崎▲47.3 

★2回戦★(松崎-佐治-坂本-川崎)
東1局
この半荘も先手を取ったのは坂本。
6巡目に
ドラ
からをポン。
直後に親の松崎のリーチを受けるもさらにをポンして
ポン
川崎からのリーチを受けるももポン。
安全にテンパイを維持しながら打点を上げる。
ドラのを引いて受けかえると直後に川崎の持ってきた牌は
会心の手順で跳満をあがって最高のスタートを切る。

川崎たかし 16期後期入会

ここまでは牌の巡りに恵まれず苦しい立ち上がりになっている。
天鳳プレイヤーであり、入会してまだ半年で初めてのこの大舞台。
もちろん放送対局の経験もなし。
現在大学7年生。今年こそ卒業することができるか!?



南2局1本場
この局も仕掛けて主導権を取ったのは坂本。
ドラ
から1巡目にをポンしてプレッシャーをかけていく。
川崎は本日初の勝負手とも言える手牌。
ドラ
からを引くと坂本のホンイツの色であると外して丁寧な手牌進行を見せる。
仕掛けた坂本の手牌がなかなか進まない中、11巡目に待望のテンパイ。
ツモ ドラ
これをツモってやっと初アガり。
初戦は佐治に会心のラス抜けをされてしまっているので今回はやりかえしたいところであろう。
短期戦での2半荘連続でのラスはほぼ留年を意味するだけに…

南3局1本場
現在の点棒状況は
坂本47400
川崎9100
松崎14300
佐治29200

真っ先にテンパイしたのは川崎。
ドラ
これがまだ6巡目。少しでも良さそうな牌があればリーチしたいところ。
しかしこの川崎を阻んだのは松崎。
11巡目
ドラ
何を切るか。テンパイチャンスだけなら圧倒的にになりそうなところだが、 松崎の選択は
絶対にマンガン以上のアガりしか見ませんよという一打。
仕掛けてもチャンタの1ハンをつけることができるのでマンガンになるし、メンゼンなら倍満まで見えるこの形が成就すればトップまで見ることができる。
15巡目にを仕掛けて構想通りのマンガンのツモあがり。
続くオーラスも2000・4000をツモって2局で2着まで浮上。

2回戦
坂本+61.3 松崎+10.6 佐治▲14.9 川崎▲57.0

2回戦終了時
坂本+76.8
松崎+68.7
佐治▲41.2
川崎▲104.3

★3回戦★(川崎-佐治-松崎-坂本)
先制したのは松崎。
リーチ後にをカンするとこれが新ドラになりツモって3000・6000の好スタートを切る。
現在トータル上位者の二人にトップを取られると苦しいのが佐治、川崎。

東2局
先制した松崎にまたもチャンス手。
8巡目にこのテンパイ。
ドラ
これをヤミテンに構えると次順に川崎がリーチ。
ドラ
この段階で親の佐治はまだこの形。
ポン ドラ
松崎もここが勝負とツモ切りリーチといく。
しかしここを制したのは佐治。
ポン ロン ドラ
2900と打点は安いが高打点のリーチを潰し松崎からの直撃と値千金のあがり。

東3局
坂本が終わった後に一番後悔していたのがこの局。
3巡目にを仕掛ける
ポン ドラ
すぐに出るはスルー。
高打点が見える仕掛けをはじめながら形はあまりよくないので安全も確保したい。
これが坂本流のバランス感覚。
そこに佐治の仕掛け返しが入る。
ポン ドラ
。くしくも二人とも索子のホンイツ。
佐治はあっという間の3フーロ。
ポン ドラ
11巡目の坂本の手牌。

さて何を切るか。
佐治最後のポン出しが
簡単に言えば手詰まり。
一番安全そうに見えるのが1枚切れでさっき自分で鳴かなかった
これが大きな8000放銃となってしまう。
夢に出てくる放銃になってしまった。

ここからは佐治の加点ラッシュ。
東4局 3000・6000
南1局 川崎からの8000
南3局1本場 2000・4000は2100・4100

最後は川崎が望みをつなぐアガりをして3着に浮上し残り2半荘。

3回戦
佐治+76.7 松崎+5.4 川崎▲30.3 坂本▲51.8

3回戦終了時
松崎+74.1
佐治+35.5
坂本+25.0
川崎▲134.6

★4回戦★(川崎-坂本-松崎-佐治)
松崎はトップを取ればかなり有利な最終戦を迎える事ができる。
逆に川崎はトップ以外は終戦。
佐治、坂本は松崎にトップを取られるぐらいなら他の二人にトップを取らせて最終戦勝負にいくだろう。

3者の思いとは裏腹に松崎が順調に加点して迎えた東3局。

松崎の配牌がいい。
ドラ
タンヤオでドラもあって234の三色まで付いている。
しかも他3人の手がきつい。
佐治

川崎

坂本

とてもじゃないけど対抗できないかと思っていたのだが、先手は佐治。
ドラ
となりリーチといく。
松崎の親でここは流したい気持ちでを仕掛けてもおかしくないのだが、2枚目のも仕掛けずメンゼンで仕上げてのリーチ。
そして佐治の現物のを仕掛けて松崎もテンパイ。
これを手詰まりした川崎から大きな5800。

東3局3本場
松崎がさらに加点して
松崎46300
佐治20100
川崎17400
坂本15200

ここで松崎を阻んだのは佐治。
4巡目に
ドラ
から一気にホンイツへ。
前巡には白を切っており、三元牌どちらかを仕掛けてももう一つもすぐに場に打ち出されやすい河を作っている。
ここは、仕掛ける牌が出る前にホンイツ七対子のテンパイ。
ドラ
新人王への道を磐石にしようとした松崎の宣言牌を捕らえて直撃に成功。

ここから川崎は今まで見られなかったような思い切りのいい仕掛けでホンイツをアガり、坂本も先制リーチの松崎から直撃に成功する。

南3局を迎えて点棒はこう変化。
松崎26300
佐治21800
川崎31200
坂本20700

川崎が松崎からマンガンでも直撃できれば最終戦全員に目があることになるのだが・・・
打ち砕いたのは松崎。
7巡目リーチを一発でツモって4000オール。

南4局1本場
逆転手を入れていた川崎から前局12000をあがった佐治。
私が思うこの新人王戦でのターニングポイントはこの局。
佐治29800点
ドラ
松崎37000点
ドラ
二人ともいい。
先制は6巡目の佐治。イッツーが確定する入り目で文句なし。
ドラ
松崎は一発目にこの牌姿。

のみ現物。
ここですっと現物のをツモ切ったのだが、ここはもっと時間を使ってもよかったのではなかろうか。
松崎は基本的に小気味いいテンポでここまで打牌してきた。
もちろんテンポよく打つことは大事なのだが、この局面は時間を使うに値する場面だと思う。
ドラのが場に3枚切れ。手役のあるリーチに放銃した場合だけ高い。
その場合2600オールや4000オールだと次局は坂本、佐治連合軍に終局されてしまう可能性が高い。
両面二つのイーシャンテンで役牌のを仕掛けることができる手牌。
先打ちの跨ぎに放銃した場合に手役が絡むのか?
トップを守りきれれば麻雀人生を変えることのできる可能性がある場面。
結論を先延ばしにするかここで勝負するか。
ここは時間を使ってを勝負して欲しかった。
終盤に仕掛けてテンパイを入れた松崎から佐治への大きな12000。

4回戦
佐治+62.1 川崎+13.1 松崎▲15.3 坂本▲59.9

4回戦終了時
佐治+97.6
松崎+58.8
坂本▲34.9
川崎▲121.5

★5回戦★(川崎-坂本-松崎-佐治)
実質佐治、松崎の一騎打ち。
松崎はトップを取るか佐治と2着順離せば勝ち。
坂本は佐治と131.5ポイント松崎とも93.7ポイント離れている。
日本プロ麻雀協会ルールでトップとラスで80ポイント縮めることができるが、佐治に51500点差。
さらに松崎を3着にして33700点差以上つけなければならない。

南2局
序盤からその坂本が順調に加点し、南2局の親番を迎えて点棒状況はこう。
坂本48900 
松崎21000 
佐治21000 
川崎9100

佐治としては悪くない展開。
松崎は坂本をまくることができれば優勝。
坂本は松崎から12000をアガったあとに佐治から12300以上を直撃すれば☆7ミッションコンプリート。

物語はここからクライマックスへ加速していく。
14巡目のテンパイは松崎。
ドラ
連荘するしかない親の坂本の手牌はこの時こうなっていた。
ドラ
これはを打つ選択しかできない。
大きな大きな12000点の直撃。
ここで坂本の新人王戦は終わりを告げた。

このアガりで勢いがついたか松崎の親が落ちない。
リーチツモ ドラ 裏ドラ
佐治との二人テンパイを挟んで
リーチツモ ドラ 裏ドラ
ロン ポン ドラ
一人テンパイ
一人テンパイ

佐治がやっと松崎の親を落としてオーラスを迎えた時の点棒状況はこう。
佐治18700 
川崎1800 
坂本29600 
松崎49900

佐治がまずは2600オール。
一人テンパイとして迎えた運命の一局。

南4局2本場
佐治28500点
ドラ

松崎46300点
ドラ
二人とも好配牌をつかむ。
4巡目のテンパイは松崎。


佐治が追いついたのは8巡目。

ここまでくれば勝利の女神がどちらを選ぶかだけ。
リスクを覚悟で先制リーチを打った松崎。
丁寧に追いついて、追いかけた佐治。
麻雀の面白いところはこういう部分だと思う。
同じような場面はあっても、完全に同じ場面は訪れない。
勇気ある選択と言われることもあれば無謀と言われることもある。
最後の部分は結果でしか語られないところだと思うので。

川崎は今回は終始苦しい麻雀をしいられていた。
後半開き直って今までと違う選択をする場面もみれた。
来年以降また頑張ってほしい。

坂本は仕掛け、メンゼンともに面白いものを見せてくれたと思う。
センスある麻雀は近い未来に大舞台で見ることができるだろう。

二人のしっかりした麻雀がこの決勝をよいものにする大きな要素のひとつだったと思う。

松崎はとにかく悔しいだろうし、これ以上ここで何かを書くことは憚られる。
悔しさを力にできる人だと思うし、これを糧に次の舞台でリベンジしてほしい。

佐治(東家)
ロン ドラ 裏ドラ
第17期新人王は佐治敏哲
我慢強い競技麻雀のお手本を全体通して見ることができた。
南3局はもうちょっと早くなんとかできたかなとは思うけど。
新人王は通過点であって終着点ではない。
今後の佐治君の活躍を願って筆をおきたいと思います。
                                                                              (文・小川 裕之)

≫準決勝までのスコアはこちら

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