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順位
選手名
TOTAL
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
1
逢川 恵夢
167.9
49.1
62.0
9.7
60.0
-12.9
2
鈴木 啓祐
8.2
8.8
-51.6
-19.1
15.3
54.8
3
麻瑞
3.9
-17.0
6.9
54.9
-49.1
8.2
4
中林 啓
-181.0
-41.9
-17.3
-45.5
-26.2
-50.1

【第10期新人王戦 観戦記】

日本プロ麻雀協会が出来たのは2001年。
2002年にスタートした新人王戦も今年で10回目となる。
その第1回目の新人王戦決勝戦、私はギャラリーの中にいた。
現Aリーガーの赤坂げんきら1期入会の3名が戦っていたが、最高位戦からの移籍組の宇野 達矢が優勝した。
同期に先を越されないで済んだ安堵感を思い出す。
その翌年、伊達 直樹・吉田 光太・鎌田 勝彦の素晴らしいメンツと決勝の舞台で戦えたことは今でも誇りに思っている。
第10期新人王戦には東西合わせて70人の参加があった。
初期の頃に比べ参加人数も増え、ハードルが高くなっている。
その決勝に残ったのは以下の4名。
本人のコメントも含めて紹介する。

中林 啓(なかばやし けい) 
7期前期入会、雀王戦B2リーグ。雀竜位戦・野口賞の決勝経験あり。実績的にも本命視。
「同期2人目の新人王になりたいと思います」

麻瑞(あさほ) 
7期後期入会、雀王戦C3リーグ。女流の中では強いとの噂。
「緊張しすぎないように気をつけます」

鈴木 啓祐(すずき けいすけ) 
8期前期入会、雀王戦C2リーグ。イケメンと言われる次世代のホープ。
「他の『鈴木』さんはAリーグでタイトルを多数獲得しているので、第3の『鈴木』として頑張ります」

逢川 恵夢(あいかわ めぐむ) 
10期前期入会、雀王戦関西C3リーグ。2年前に麻雀を覚え今年に入り入会。
「今年入会したばかりで大会にも慣れていませんが、力の限り頑張ります!」

★1回戦★ 逢川-麻瑞-中林-鈴木

東1局。
開始早々に先手を取ったのは麻瑞。
テンポのいい打牌から10巡目と早くはないが、先制リーチを打つ。

麻瑞(南家) 10巡目リーチ
 ドラ
しかし、このリーチに三者が丁寧にオリて流局。

東2局1本場。
一人テンパイで持ってきた親の麻瑞が早い。
配牌リャンシャンテンから3巡目にはペンを引き入れイーシャンテン。
麻瑞(東家) 3巡目
 ツモ→打 ドラ
さらに6巡目にはドラのを重ね、打点もついてくる。
しかし、先にテンパイが入ったのは西家の鈴木。
鈴木(西家) 9巡目
 ツモ ドラ
が場に2枚飛んでいることもあって、打で一通のカンリーチ。
これに対し麻瑞は無筋を1枚勝負するが、危険牌を2枚掴んでオリに回る。
鈴木の一人テンパイで流局。

東3局2本場。
今度は新鋭逢川が7巡目に高め満貫のリーチを打つ。
逢川(西家) 7巡目リーチ
 ドラ
リーチの時点で5枚生きていたこの待ちも空振り。
こちらも一人テンパイで流局。

さらには東4局3本場も中林がホンイツで仕掛けるが全員ノーテンで東場が終了。

新人王戦らしからぬ、まるで老練な雀士が打っているような何とも重い雰囲気の決勝戦となった。

南1局4本場。
ここまで供託が3本に4本場が転がっている。
まだアガりの出ていない状況でこの点棒を拾えばかなり有利に進められる。
ここは点数の多寡は関係なく、みんなで狙いに来るだろう。

その中で配牌を取りながら苦渋の表情を浮かべたのが親の逢川。
チョンチョンでドラのを重ねるものの8種10牌とかなり厳しい。

逢川(東家) 配牌
 ドラ
国士・ホンイツ・チャンタに三色と手役だけは色々と見えるが、如何せん手が重い。
私が打つならば、ドラのを生かして無理矢理ホンイツに行きそうだが、逢川は字牌から切り出していく。
ここでのスピードは北家の鈴木。
字風をいきなり1巡目にポンすると3巡目にはカンチャンをざっくりと入れ、イーシャンテン。
鈴木(北家) 3巡目
 ポン ツモ ドラ
関連牌で場に出ているのはが1枚のみ。ここから鈴木が選択したのは打
この選択が敗着となる。
この何ともアガリたい忙しい局面では、すぐにでも出てきそうなはポン材として残すべきであろう。
実際に次巡を引き入れカンのテンパイを果たすと対面の麻瑞が切ったのは
このを鈴木はどのような思いで見送ったのだろうか?
鈴木がアガり逃がしをしている間に中林にリーチが入る。
中林(西家) 8巡目リーチ
 ドラ

打点こそ高くはないが、ここでのテーマはとにかくアガること。
実際にはが麻瑞に暗刻で待ちが薄いが、中林から見れば鉄板の待ちに見える。

リーチを受けた鈴木。
一発目こそ1枚切れのを切るが、次にを掴み、今通ったばかりのを切り回る。
すると次のツモはなんと
「弱り目に祟り目」、「泣きっ面に蜂」など昔の人はうまく言ったものだが、まさにこの時の鈴木がそう。
しかしながら、オリているように見せてリーチ者の現物の-待ちだ。アガれるかも知れない。
その淡い思いも自らのミスで吹っ飛んでしまう。
次巡をツモ切ると、
「ロン!9600は10800!!」

逢川(東家) 11巡目
 ロン ドラ
手を空けたのは親の逢川。
なんとあのバラバラの配牌がしくりなくテンパイまで進んでいたのだ。
一見、の放銃は単なる事故にしか見えないが、全体牌譜をご覧頂きたい。
麻瑞がを通した後、全員がツモ切りを続けているのだ。
初牌のを入れ替えるのは当然だろう。

この局だけを見れば、第一第二の鈴木には程遠い。
第三の鈴木のネーミングは、第五の鈴木ぐらいに落としておいたほうがいいかも知れない。

南1局5本場。
リーチ棒を合わせて15000点近くの収入があった、親の逢川。
ここぞとばかりに攻める。8巡目に高めツモでハネ満となるリーチ。
逢川(東家) 8巡目リーチ
 ドラ
さすがにの裏スジ、ドラまたぎでは出アガリはほぼ期待できない。
ツモにかけたリーチだが、今まで出番のなかった中林が安全に進め1300は2800で流し事なきを得る。
放銃はまたもや鈴木。
1回戦終了後に、が4枚見えてが現物のの暗刻落としのほうが良かったとの意見もあったが、
牌譜をみると中林の入り目は。鈴木のミスもあるが完全にオリているように見せた中林の技ありといったほうがいいだろう。
ただ、ピンズが高い中林に放銃なら満貫まで覚悟しなければならない。
中林(西家) 16巡目
 ポン ロン ドラ
また逢川のリーチだが、高めが出やすいであり、闇テンで加点するほうがトップを盤石にする気もするが・・・
麻雀歴が浅い逢川であれば、小さくまとまるよりもこのように勢いで行ったほうがいい結果が出るかも知れない。

南2局0本場。
西家鈴木が以下の捨て牌でリーチと来る。
(リーチ)
その時の東家・麻瑞の手牌がこちら。
麻瑞(東家) 7巡目
 ツモドラ
現物がしかない場面。ヒントが少なく勝負する手もあるが、グッとこらえてを切る。
続いて新たに安全牌となったを切り、ベタオリするかと思ったが、フリテンのをチーすると13巡目にフリテンのドラ待ちテンパイ。
そして16巡目にはドラをツモって2000オールのミラクルなアガリが出る。
麻瑞(東家) 16巡目
 チー ツモ ドラ

続く南2局1本場は、鈴木に6巡目高めツモハネ満のチャンス手が入る。
2回の放銃で点棒を掃き出した鈴木。ここはなんとしてもをツモリたい。
鈴木(西家) 15巡目
 リーチツモ ドラ 裏ドラ
鈴木の思惑とは裏腹にツモったのは3翻下がる
しかし裏が乗って1300・2600の1本場の収入。このアガリで鈴木も少しは落ち着きが出てきたか。

南3局は全員ノーテンで流れた南4局1本場。
ここまでの各家の持ち点を確認しよう。
東家・鈴木 13900、南家・逢川 35400、西家・麻瑞 29300、北家・中林 21400
ここで東家・鈴木に手が入る。

鈴木(東家) 配牌
 ドラ
2巡目に絶好の、3巡目にを引き、6巡目には三色が確定となるを入れて即リーチ。
終局間際の15巡目にをツモり待望の4000オールとなる。
鈴木(東家) 15巡目
 リーチツモ ドラ 裏ドラ
形だけ見れば純チャン一手変わりだが、三色を崩さないためにはの手替わりしかない。
それよりは裏ドラ1枚で6000オールとなる即リーのほうがいいだろう。

さらに鈴木は1000は1100オールをツモりトップまで300点差まで迫る。
東家・鈴木 29800、南家・逢川 30100、西家・麻瑞 24000、北家・中林 16100

南4局3本場。東家鈴木が軽快にと鳴いて6巡目にテンパイを果たす。
鈴木(東家) 6巡目
 ポン ポン ドラ
3900でも十分な加点となるが、ドラの振り替わりで一気に満貫まで伸びる。
これに待ったをかけたのが現在ラス目の中林。
中林(北家) 9巡目リーチ
 ドラ
なんてことはないリーチなのだが、ドラが見えていない状況で他家にはわからない。
鈴木が12巡目に中林の危険牌をツモり手が止まる。
・中林に6400以上の手を放銃するとラスまで落ちる。
・しかも優勝候補としてマークしている中林だ。
・ソウズを1枚押しても次は押せない。
・アガっても次局がある。
・自分のアガり牌は他家の手に収まっているのでは?
などなど鈴木は色々と頭を巡らせたであろう。打
すると鈴木をあざ笑うかのように次巡、鈴木のツモ牌は
結局鈴木はテンパイを取れず。このままの順位で終了。

1回戦結果
逢川+49.1 鈴木+8.8 麻瑞▲17.0 中林▲41.9
供託+1.0

 

★2回戦★ 麻瑞-逢川-鈴木-中林

1回戦を取ったのは格下の逢川。
他3人は、逢川ならすぐに落ちてくるだろうという余裕すらあったのではないか?

東1局。
鈴木が1打目からを仕掛けると、本来北家の中林に入るはずだったドラのが2枚東家の麻瑞に流れ、ドラ暗刻のチャンス手が来る。
片アガリながら7巡目に親満のテンパイ。
麻瑞(東家) 7巡目
 チー チー ドラ
そして10巡目に先ほどトップを取った逢川が「リーチ」と発声する。
逢川は点数申告の時などコテコテの関西弁なのだが、この「リーチ」の発声はハッキリとしていてそれでいて嫌味がない。
非常に好感が持てる。
逢川(南家) 10巡目リーチ
 ドラ
このリーチを受けての麻瑞。
ツモってきたのはアガれない。当然のようにを落としてタンヤオに向かう。ここからの麻瑞の手が面白い。
麻瑞(東家) 14巡目
 チー チー ツモ ドラ
13巡目に自身で切っているを持ってくると、14巡目にはツモでノーチャンスのドラ切り、カン待ち。
さらにはツモでカンに受け変えるが、アガリ逃しとなるツモ
最終的には無筋のを持ってきて、親権を放棄する。
麻瑞は攻めのイメージであったが、1回戦から切れない牌は切れないとしっかりとオリる。
結果当たり牌は掴んでいなかったが、ここは一人テンパイで流局。

流局を挟んで1000点のアガリしか出ていない東3局1本場。
またもや逢川に手が入る。
9巡目にメンタンピンドラ1の手を曲げると望外の一発ツモ。3000・6000の1本場。
逢川(北家) 10巡目
 リーチ一発ツモ ドラ 裏ドラ

さらには東4局1本場にも1300・2600の1本場をツモり、2回戦もトップを不動のものとする。
逢川(西家) 10巡目
 リーチツモ ドラ 裏ドラ

南場に入り、中林が1000・2000、麻瑞が1300・2600とアガるがトップを脅かすほどではない。

南4局。9100点持ちのダンラスの鈴木。
満貫ツモでも4着のままだが、裏が1枚乗ればハネ満ツモで2着のリーチ。
鈴木(北家) 11巡目リーチ
 ドラ
ここは不発だったものの、捲りにいく姿勢は素晴らしい。

と、思った同1本場。疑問手が出る。
鈴木は3着の麻瑞とは10700点差ながら、供託が1本あり、満貫ツモ圏内。
すると鈴木、2枚目ながら3巡目にを仕掛けたのだ。
鈴木(北家) 3巡目
 ポン ドラ
アガって4着且つ逢川2連勝を決める仕掛け。自分が捲れないなら、ラススタートの中林にトップを捲ってもらったほうが良い。
鈴木は1回戦目にはひどいミスがあった。ミスが重なって頭が真っ白になったのかも知れない。
しかし仕掛けには意思がある。この仕掛けを見せられては、同卓者からの信頼も得られない。
鈴木への戒めとして、あえて牌譜を載せておくことにする。

南4局2本場。先ほどの鈴木とは対称的に麻瑞の1つでも着順を上げようとする意地を見る。
麻瑞(南家) 3巡目
 ツモ ドラ
2巡目にすでにイーシャンテンとなった麻瑞。を持ってきて止まる。
2着の東家中林とは9600点差で供託が1000点あるものの1300・2600では3着のままである。
現状、ピンフイーペーコーの裏1条件といったところか。

ここで三暗刻をみて打とする。これがうまくはまり、と引き入れ、6巡目にはツモで2着条件を満たすリーチを打つ。
麻瑞(南家) 13巡目
 リーチツモ ドラ 裏ドラ
これをしっかりとツモリ2着浮上。

2回戦結果
逢川+62.0 麻瑞+6.9 中林▲17.3 鈴木▲51.6

2回戦終了時トータル
逢川 +111.1
麻瑞 ▲10.1
鈴木 ▲42.8
中林 ▲59.2
供託+1.0

 

★3回戦★ 中林-麻瑞-鈴木-逢川

2回戦が終了し、予想外の逢川2連勝。
5回戦しかないので他の3人は、ここからは逢川を協力して落としていくことがテーマとなるが、どうなるだろうか?

東1局。まずは下の平面図をご覧いただきたい。

まだ2段目に入ったところ。この中に鬼手とも言える手が入っている人がいるのがおわかりだろうか?

答えは西家の鈴木。

この巡目この捨て牌で何と以下のメンチン・一通・イーペーコー・ドラ3の三倍満の闇テン。
ツモ切り後の手出しで染め手の匂いを消している。
鈴木(西家) 7巡目
 ドラ
テンパイして当然のように切りでペンチャンに受けるが、逢川が合わせたのは
正着打を打ってのことだから、このアガリ逃がしは気にしないだろう。
しかし、東家・中林よりリーチが入る。この親リーに対し当然のように何枚とも押すが、鈴木が持ってきたのは
これも通すが、さすがに3面張には掴んでしまう。5800の放銃。
中林(東家) 14巡目
 リーチロン ドラ 裏ドラ
この戦いを象徴するかのように場が荒れる。

東1局1本場。最初にテンパイを入れたのは加点をしたい中林。5巡目に7700の闇テンを入れる。
中林(東家) 5巡目
 ドラ
これが出てこないまま11巡目に麻瑞よりリーチが入り、
流局かと思われたハイテイ牌をツモリあげ、裏ドラが乗って3000・6000の1本場のアガリ。

麻瑞(南家)18巡目
 リーチハイテイツモ ドラ 裏ドラ

さらに麻瑞は親で中林のリーチに追いかけ、中林から3900点をアガる。
麻瑞の一人テンパイで終わった後の東2局2本場。
タンピン・三色・ドラ2を見て進めた鈴木が6巡目にドラを暗刻、7巡目にリーチ。
 ドラ
これを一発でツモリ、そして裏がの倍満となる。

逢川をラスにする展開になった。と思われた矢先の東3局。
逢川が10巡目にドラを暗刻にしタンヤオ・ドラ3の闇テンとなる。
逢川(南家) 10巡目
 ドラ
そして12巡目にを暗刻にし、打で高め三暗刻にする。同巡、麻瑞よりリーチ。
麻瑞(北家) 12巡目リーチ
 ドラ
この対決は逢川が安めながら、をツモリ2000・4000の収入となる。

東4局。アガって持ってきた親の逢川。14巡目と遅いがリーチを打つ。
逢川(東家) 14巡目
 ドラ
このリーチだが、巡目・形・中林の偏った捨て牌、ラスは避けたい局面。
もろもろ考慮して私は絶対に打たないのだが、どうだろうか?

これに喜んでぶつけてきたのが中林。すぐさまを入れて追っかけリーチ。
そして鼻息荒く一発ツモ。このアガリが大きいのはわかるが、ツモ牌強打は格好悪い。とにもかくにも3000・6000で並びを作った。
3回戦終了後、中林に聞いたのだが逢川のリーチがなければ曲げずに逢川直狙いとのこと。
逢川のリーチがこの3000・6000を誘発したことには間違いない。

中林(南家) 15巡目
 リーチ一発ツモ ドラ 裏ドラ


出入りが激しい麻雀なので、南入時点での持ち点を確認しよう。
東家・中林 25600、南家・麻瑞 30000、西家・鈴木 25700、北家・逢川 18700

ハネ満だの倍満だの出ている割には接戦になっている。このまま逢川をラスのままにしておけるか?

逢川から鈴木に1300移動した後の南2局。逢川が腹をくくったかのようにドラ待ちカンでリーチする。
逢川(西家) 7巡目
 ツモ ドラ
場にはと切っており、作り直してもフリテンが残りそうだ。
このリーチの是非は置いておいて、2巡前に同じイーシャンテンでをツモ切りしたのは問題だろう。
普通に打でいいが、打とするぐらいならまだ打のほうが良かった。
を引くよりも、リーチで満貫確定となるツモのほうが格段にうれしいだろう。

このリーチは当然のように不発。道中をツモっているだけにもし優勝出来なければ、敗着打となるかも知れない。

しかし、逢川に打てない3人ともオリて一人テンパイ。

南3局1本場。配牌でをトイツで持っている逢川が2巡目から果敢に仕掛ける。
そして6巡目にはをチーして以下のテンパイ。
逢川(南家) 6巡目
 チー ポン ドラ

そして10巡目には東家・鈴木からドラ切りリーチが入る。すると一発目で逢川が切ったのは無筋の切り。
これにはびっくりした。鈴木の後ろで見ていたのでドラのとのシャンポンに変えたのはすぐにわかったのだが、
は場に1枚飛んでおり、最大2枚しかアガリ牌がない。
ここでは一瞬回ったかのようにドラのを手出しで切るのが普通だよな。と見ていると、逢川の次のツモは
4枚も生きていたのだから当然と言えば当然だが、このアガリ逃がしは痛い。
500・1000の手といえども、供託が2本あり、以下の点数状況になったはずなのだ。
逢川 23700、中林 24000、麻瑞 28400、鈴木 23900

そして次巡。
「ツモ!」 
「2000・4000は2100・4100!!」

なんと2枚しか生きていない確定満貫に受けてをツモり、リャンメンの親リーに勝ってしまったのだ。
このアガリを見て中林は心が折れたと言う。捨て牌を見れば誰でもマイノリティを選択したのはわかる。


そしてオーラス南4局。実際の持ち点は
東家・逢川 29700、南家・中林 22500、西家・麻瑞 26900、北家・鈴木 20900

トータルトップの逢川が現状トップ目なので、他者は最低限これを阻止しなければならないが、
ラス目の鈴木以外がマンガンを直撃しても逢川はラスには落ちない。
無謀な勝負に見えた前局のアガリがものすごく大きかったのだ。

配牌でチャンスをもらったのは中林。
中林(南家) 1巡目
 ツモ ドラ
中林は逢川と7200点差。逢川が親であるので1300・2600でトップに立てる。
ダブを生かせばクリア出来る。さらにホンイツまでつけて満貫にすれば、どこからでもアガることが出来る。
1打目の候補のがくっつき困る。形だけ見れば三色があるが、確定しない為、翻牌を落としてまで見るものではない。
を選択する。次巡ツモ切りの後、を暗刻にする。ダブを叩いてもを雀頭にしては3900にしかならない。
このを自力で暗刻に出来たのは大きい。
さらに4巡目ダブを叩き、次巡をチーした場面。
中林(南家) 5巡目
 チー ポン ドラ
ここから1枚切らなければならないのだが、中林が選択したのは打でのホンイツへの渡り。
まず、リャンメン×リャンメンのイーシャンテンからダブをポンしたのだが、メンゼンでリーチしても3200点の手。
これはポンの一手だろう。さらにチー。逢川から出た牌だから、スルーして-待ちにすれば直撃出来るかも知れない。
しかしイーシャンテンとテンパイでは大きな違い。これも鳴くだろう。
意見が分かれるのがここから。
でのツモ直狙い。の加カン、の暗カンもしくは大明カンぐらいでしか打点は変わらない。
であれば、中林のようにホンイツに渡り、どこからでもアガれるテンパイを組むのが自然か。
中林は絶好の単騎に受け、西家・麻瑞にも7巡目テンパイが入る。
麻瑞(西家) 7巡目
 ツモ ドラ
麻瑞と親の逢川は2800点差。500・1000で変わるのでツモ専のリーチでいいのだが、直撃だと裏ドラ期待となってしまう。
それでもリーチだろうが、麻瑞は悩む。
リーチ棒を出すと3800点差。流局時のテンパイ・ノーテンのことを考えているのだろうか?
そして打でテンパイを外す。すると10巡目・11巡目でと引き込むと、今度は迷いなくリーチ。
するとリーチの一発目に中林がを掴み、地獄単騎に受け変えるはずもなく8000点の放銃。
麻瑞(西家) 12巡目
 リーチ一発ロン ドラ 裏ドラ

3回戦の終了後、麻瑞は「打のトイツ落としではでしたね」
手順はそうだが、「即リーでツモ専にしないの?」と訊くと
「条件を間違えていました」とのこと。
素直でいいのだが、素晴らしい捲りの後に聞かないほうが良かった・・・

タラレバだが、中林にアガりがあるとすれば、親の逢川に合わせてを素直に切ることだった。
そうすれば、序盤にのトイツを生かし、逢川ので討ち取れたのだが。
序盤からホンイツを見ていた為仕方ないか・・・

3回戦結果
麻瑞+54.9 逢川+6.9 鈴木▲19.1 鈴木▲45.5

3回戦終了時トータル
逢川 +120.8
麻瑞 +44.8
鈴木 ▲61.9
中林 ▲104.8
供託+1.0

 

★4回戦★ 麻瑞-逢川-中林-鈴木

鈴木と中林はかなり条件が厳しくなったが、3回戦目のトップで麻瑞と逢川のは76ポイント差。
協会ルールではトップ・ラスで最低80ポイント差がつく。
そこまでいかなくても、残り40ポイント差以内に詰めておけば、最後は2人のうちでトップを取ったほうが優勝となる。

東1局。手が早いのが鈴木。
3巡目にしてイーシャンテン。5巡目にはを引き万全のイーシャンテンとなる。
鈴木(北家) 5巡目
 ツモ ドラ
しかし先にリーチが入ったのは逢川。

逢川(南家)8巡目
 ドラ
配牌こそ下のように冴えなかったが、なんとツモはとまったく無駄がない。
逢川(南家) 配牌
 ドラ
鈴木がを暗刻にする以外出るだろうと思っていたが、鈴木がドラのを引いたリーチ2発目のところで放銃。
逢川に勝負手をぶつけたいと思う気持ち、通ってない牌が多すぎる、を離すタイミングがなかったなど、この放銃は責められない。
しかし手牌が見れない同卓者には何やってんだと思われたかも知れない。

さらには東2局には逢川には願ってもない展開となる。当面のライバル麻瑞が5巡目に満貫確定リーチを入れるが、
南家中林が12巡目に追いかけ、麻瑞が2600の放銃。

東3局に麻瑞が逢川から直撃するが1300点と脅かすほどではない。

東4局。ここで優勝者を決めるアガリが出る。逢川にドラがトイツの好配牌。4巡目には以下の手となる。
逢川(西家) 4巡目
 ドラ
下家は中林が露骨にソウズで染めている。どちらの色でテンパイしてもポロリがありそうだ。
そして6巡目にツモでテンパイ。慎重にを切る。ここは当然のダマテン。すると10巡目その中林がをツモ切る。
「ロン!」
「12000!!」

逢川(西家) 10巡目
 ロン ドラ


南1局は鈴木が1000・2000をアガり、南2局は中林が先制リーチを打つ。
親が逢川なので親かぶりさせて点差を詰めておきたいところだ。
中林(南家) 5巡目リーチ
 ドラ
789の三色を見ていた為、3巡目にが捨ててあるがこれは仕方がない。
とは言え、はツモってくるのに-は顔を出さない。
17巡目に中林が捨てたを鈴木がチーして形テンを入れると、ハイテイ牌が鈴木にずれ、そして鈴木がハイテイ牌をツモリあげる。
そこにはが・・・

鈴木(西家) 18巡目
 チー ハイテイツモ ドラ

中林のツキのなさを象徴する1局でもあった。

そして南3局。逢川の優勝をさらに近づけるアガリが出る。
鈴木の6巡目リーチに麻瑞はのトイツ落としで回るが、のスジでをツモ切ると鈴木に満貫の放銃。
鈴木(南家) 8巡目
 リーチロン ドラ 裏ドラ
宣言牌がであったので危ないとは思ったのだろうが、親番がない状況で行かざるを得なかったのだろう。
しかしこのラス落ちは痛い。この放銃がなければ親の中林が、絶好のイーシャンテンでもありどうなっていたか分からなかった。

南4局。各家の持ち点を確認しよう。
東家・鈴木 35800、南家・麻瑞 11200、西家・逢川 38900、北家・中林 14100

逢川がトップを取れば優勝がほぼ決まる。しかし逢川と鈴木の差はわずか3100点。
3者は鈴木を押し上げても逢川のトップだけは阻止しなければならない。

しかし逢川の手が軽く、1巡目にリャンメンチーから入り、2フーロで300・500をアガり切りトップ。
逢川(西家) 9巡目
 チー チー ツモ ドラ

4回戦成績
逢川+60.0 鈴木+15.3 中林▲26.2 麻瑞▲49.1

4回戦終了時トータル
逢川 +180.8
麻瑞 ▲4.3
鈴木 ▲46.6
中林 ▲130.9
供託+1.0

4回戦が終了し、トータルトップ逢川と麻瑞の差が185.1ポイント。
トップ・ラスでも10万点以上の差をつけなければいけない。

新人王戦決勝は全5回戦といえど、勝負の決まってしまった麻雀を書いても仕方がない。
5回戦は逢川が先行し、後はアガれるところだけあがり、トップ・ラスの着順も10万点差などつけることも出来ずに終了した。

優勝は逢川 恵夢 おめでとう!!

 優勝  逢川 恵夢 +167.9
第2位 鈴木 啓祐 +8.2
第3位   麻瑞   +3.9
第4位 中林 啓  ▲181.0

最後にデータで4人の成績を見てみよう。
(勝負が決まってしまった5回戦は除く全43局)

 
逢川 恵夢
鈴木 啓祐
麻瑞
中林 啓
アガリ率
18.6%
20.9%
18.6%
11.6%
放銃率
4.7%
11.6%
7.0%
7.0%
平均和了点数
7638
5867
5676
5280
平均放銃点数
1300
4580
4200
7967

流局回数が13局あり、全体的にアガリ率が低くなっている。逆に放銃率が全員低くこの数字ならかなり優秀だ。
逢川が優勝した要因にピンポイントで手が入っていたことも大きいが、1300点を2回放銃したのみというのは素晴らしい。

この観戦記はかなり辛口に書いてきた。しかし、個人的な評価としては一人を走らせた以外は上々であったと思っている。

まずは4位の中林。
常に手が重くこの席に座っていたら誰でも勝てないと思わせるほどきつかった。
負け癖がついたと言われるが、その席にすらつけない者はいくらでもいる。決勝に居座る限りいつかタイトルを取れるだろう。

3位の麻瑞。
しっかりと当たり牌を止め、逆転を見る構想には光るものがあった。女流という枠を超えて活躍して欲しい。

2位の鈴木。
この決勝戦では緊張のせいか守備に難があった場面が見られたが、鋭い攻撃を垣間見ることができた。
この決勝戦という舞台で戦えたこと、ミスしたことも含め必ず次に繋がる。

そして優勝した逢川。
麻雀を覚えてまだ2年というのは末恐ろしい。数年後どれだけ強くなっているか・・・。
運で勝ったと言われるかも知れないが、先ほどのデータを見ても自信を持っていい。

 

最後に優勝した逢川 恵夢について紹介しよう。

逢川 恵夢(あいかわ めぐむ)
生まれも育ちも大阪。コテコテの関西人。
23歳。2年前21歳の時にたまたま大成クラブの求人をみつけアルバイトとして働く。
協会には10期前期入会。関西C3リーグで対局こそこなしているものの、今回の新人王戦が初の大会出場。現在、雀荘「エサカ」に勤務。
家が貧乏すぎて、現在4人家族がすべてバラバラに暮らしているという涙もののエピソードも。

この新人王獲得は、逢川のシンデレラストーリーの序章となるかもしれない・・・

(文;阿賀 寿直)

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