最終ポイント成績
順位 |
氏名 |
所属 |
合計 |
1回戦 |
2回戦 |
3回戦 |
4回戦 |
5回戦 |
1 |
山下 健治 |
RMU |
66.8 |
50.7 |
5.5 |
20.7 |
12.0 |
-22.1 |
2 |
比嘉 秀仁 |
協会 |
34.4 |
9.9 |
57.7 |
-70.1 |
-16.5 |
53.4 |
3 |
芳賀 常代 |
一般 |
3.8 |
-12.1 |
-17.9 |
71.2 |
-49.8 |
12.4 |
4 |
生島 一也 |
一般 |
-105.0 |
-48.5 |
-45.3 |
-21.8 |
54.3 |
-43.7 |
第7回日本オープン決勝 観戦記
決勝の前日に行われた準決勝を観に行った。
私が着いたころには最終戦、それも後半にさしかかろうとしていた。
会場に着いた途端、違和感を感じる。
その理由がわかるまでに、そう時間はかからなかった。
準決勝ポイント成績
順位
|
氏名
|
所属
|
合計
|
1回戦
|
2回戦
|
3回戦
|
4回戦
|
5回戦
|
6回戦
|
1
|
比嘉 秀仁 |
協会 |
211.7
|
83.6
|
8.4
|
-0.9
|
60.9
|
59.7
|
|
2
|
山下 健治 |
RMU |
153.7
|
8.7
|
57.8
|
2.6
|
2.7
|
5.3
|
76.6
|
3
|
生島 一也 |
一般 |
145.8
|
64.1
|
8.6
|
-17.8
|
12.0
|
17.8
|
61.1
|
4
|
芳賀 常代 |
一般 |
117.7
|
-48.7
|
62.7
|
12.0
|
77.3
|
5.2
|
9.2
|
5
|
佐井 孝太郎 |
協会 |
108.7
|
74.0
|
-38.5
|
52.3
|
75.6
|
-19.7
|
-35.0
|
6
|
松田 史生 |
一般 |
82.5
|
4.3
|
11.6
|
60.1
|
-20.7
|
8.8
|
18.4
|
7
|
今里 邦彦 |
連盟 |
-15.0
|
12.8
|
71.0
|
-17.6
|
-18.6
|
-5.2
|
-17.4
|
8
|
松本 京也 |
連盟 |
-47.8
|
-57.0
|
-23.4
|
98.1
|
7.6
|
-20.1
|
-53.0
|
9
|
高田 浩志 |
協会 |
-108.4
|
-21.3
|
-16.1
|
53.0
|
2.5
|
-65.5
|
-61.0
|
10
|
多井 隆晴 |
RMU |
-63.0
|
-12.8
|
-50.1
|
3.5
|
-59.5
|
55.9
|
|
11
|
高村 健一 |
一般 |
-68.4
|
58.7
|
-20.3
|
-27.9
|
-61.1
|
-17.8
|
|
12
|
村上 淳 |
最高位戦 |
-86.8
|
-24.1
|
4.9
|
-69.3
|
55.1
|
-53.4
|
|
13
|
平山 雲唯 |
協会 |
-99.1
|
-77.5
|
-15.6
|
-46.1
|
-25.4
|
65.5
|
|
14
|
橘 悟史 |
協会 |
-106.5
|
-29.7
|
-54.0
|
-39.0
|
-39.0
|
55.2
|
|
15
|
藤崎 智 |
連盟 |
-113.4
|
23.6
|
-56.2
|
-51.3
|
-18.2
|
-11.3
|
|
16
|
和田 隆光 |
一般 |
-116.8
|
-58.7
|
49.2
|
-14.7
|
-52.2
|
-40.4
|
|
競技麻雀愛好家の方々なら、その名を聞いたことがある選手が何名かいるだろう。
そして、その選手の多くは足切りになっているのではないだろうか?
現日本オープン覇者(というより日本オープンの1/2覇者)・藤崎 智、第一回日本オープン覇者・多井 隆晴、最高位戦Aリーガー・村上
淳。
この者たちが足切りになっており、すでに会場にはいない。
過去マスターズを制した今里も、オータムカップ優勝者の佐井も、足切りこそ逃れたものの、その表情で白旗を挙げているのがわかった。
そのトッププロたちを破って、決勝に残ったのはこの4名。
本命不在の混戦を予想させる。
☆1位通過・比嘉 秀仁(日本プロ麻雀協会)
関西C2リーグに所属する協会員で、第7回にして初の協会員の戴冠に協会員約200名の期待を一手に背負い(言い過ぎか?)、 この決勝に挑む。
準決勝を余裕の勝ち抜けで決勝進出。
その成績とは裏腹に、緊張が会場の外まで伝わりそうなくらい落ち着きのない様子だ。
☆2位通過・山下 健治(RMU)
RMUのアスリートコースに所属し、研究会等にも積極的に参加しており、見た目にもその真摯さが表れている。
とはいえ、少し決勝の独特の雰囲気に呑まれている感じがする。
無理やり落ち着かせようと、通常の会話も声を張っているように見えた。
☆3位通過・生島 一也(一般)
協会員も多く在籍する関西の雀荘で働く、決勝面子では最年少の若人。
こちらは緊張が表に出ておらず、むしろ決勝の常連のような雰囲気を醸し出している。
☆4位通過・芳賀 常代(一般)
女性の日本オープン決勝進出は、横山明香(元協会)に次いで2人目の快挙(一般では初)。
最近では中国麻将の勉強も始めているらしく、まさに麻雀愛好家の鑑といったところだろう。
非常にリラックスしているのがわかる。というより、彼女に言わせれば、麻雀を打つだけなのだから緊張するわけがないという感じが相応しいか。
しきりに「最下位じゃなければいいわ(笑)」と言っているが、おそらく本心なのだろう。
「緊張しているプロ2人とリラックスしているアマ2人」の構図がとって見えた。
4者が決勝の卓に向け、一斉に動き出す。
「よろしくお願いします!」
一際大きく山下の声が会場に響く。
緊張を抑えきれないのか、それとも決勝にかける思いが最も強いのはこの男なのか。
1回戦・・・・・比嘉−生島−山下−芳賀
最初の発声は芳賀。
生島の第一打のにポン、もいっちょポン、おまけにツモで500・1000の収入。
9巡目 ドラ 北家 芳賀(25000点)
ポン ポン ツモ
続く東2局、芳賀が親の生島のリーチを受けるも現物待ちをしっかりダマにし、生島から2000点とリーチ棒をGET。
13巡目 ドラ 西家 芳賀(27000点)
ロン
東3局、アガリはまたも芳賀。
8巡目 ドラ 南家 芳賀(30000点)
ロン
3局連続のアガリで親番を迎えた芳賀の配牌。
1巡目 ドラ 東家 芳賀(31600点)
三色も見える好配牌。
充分に流れを引き寄せての親番。これくらいは当然か。
一方、3局連続失点中の生島の配牌。
1巡目 ドラ 西家 生島(19900点)
・・・3局連続とはいえ、傷は浅いので流れは悪くないということですかね。
その生島、と怒涛のツモ。
4巡目 ドラ 西家 生島(19900点)
ツモ
4巡目にしてとペンチャン落としにかかる。誰がマンズのホンイツに見えるだろうか。
しかし次巡、せっかくの無臭っぷりに一気に香水をばらまくかのごとくチー。
確かに満貫のイーシャンテンにはなるのだが、トッププロに競り勝ちこの決勝に残っている面子が相手である。
このチーに反応出来ないほど鈍い面子ではないだろう。
このチーで早速下家の山下にが食い流れる。
手牌にがある山下から1枚も字牌が出ることはなく、生島の手は自滅。
だがこの生島のチー、結果的にはファインプレーとなっている。
親の芳賀が5巡目にこの形。
5巡目 ドラ 東家 芳賀(31600点)
ツモ
ここから打とした後、比嘉にが流れている。
そして、
9巡目 ドラ 南家 比嘉(24000点)
ツモ
一気にやる気の出てきた比嘉、ドラを引いた芳賀から出たに「ポン」の声。
・・・ポン?
このイーシャンテンから片アガリの2000点になるポン??
河に−はが3枚見えているだけ。
生島の仕掛けに反応したものかもしれないが、もったいないお化けがいたら比嘉に取り憑いてもおかしくない。
結果は下家の生島がツモ切ったでロン。
なんとも微妙な1局。
これも決勝の雰囲気が成せる光景なのか?
南入し親番を迎えた比嘉だが、先ほど得た2000点を芳賀に1000点放銃+リーチ棒であっさり消費。
次局はこの半荘もっとも大人しく打っていた山下が、比嘉からまたもリーチ棒付きのチートイドラドラのアガリ。
15巡目 ドラ 南家 山下(24500点)
ロン
山下の連荘を挟み南3局1本場、下流に甘んじていた比嘉と生島にドラの女神が舞い降りる。
9巡目 ドラ・ 西家
比嘉(15300点)
チー チー ポン
比嘉が聴牌を入れた直後、イーシャンテンの生島も新ドラのを暗カン。
ドラ表示牌にめくられた牌は。
比嘉・生島両者の打点と血圧が上昇する。
生島も長いイーシャンテン生活を抜け出し聴牌、愚形だが役なしなので当然即リーチ。
15巡目 ドラ・・ 北家 生島(15600点)
ツモ カン
「オーラスのトップ争いに参加できる権」
この熾烈なオークションに競り勝ったのは、比嘉。
16巡目 ドラ・・ 西家 比嘉(15300点)
ツモ チー チー ポン
起死回生の3000・6000でハンマープライス。
これでオーラス三つ巴となり、一気に面白くなった。
東家・芳賀 29200
南家・比嘉 28600
西家・生島 11500
北家・山下 30700
「協会ルールはトップが偉い」
このルールを打ったことがあるものの共通見解であろう。
しかも5回戦と短期決戦の初戦。
のどから手が出るほど欲しい白星だ。
親の芳賀が早い。
4巡目にのポンで一瞬にして3900聴牌。
4巡目 ドラ 東家 芳賀(29200点)
ポン
対するは前局の勝者比嘉。
6巡目 ドラ 南家 比嘉(28600点)
ツモ
イーペーコーのみでは足りないのでリーチと行きたいところだが、前巡山下にを切られているためか自重。
2巡後、芳賀はツモから仕掛けた山下の現物であると振り替えるが、比嘉はこれをスルー。
そして比嘉、直後にを引き、今度はノータイムでリーチと行く。
8巡目 ドラ 南家 比嘉(28600点)
ツモと山下からの直撃は無条件トップ、他家からの出アガリは一発か裏1条件である。
するとこの選択がドンピシャとハマる。
なんとすでに聴牌している芳賀がアタリ牌であるを一発で掴む。
芳賀、ここは致し方なし。打で放銃・・・
ん?見間違いか?
いや、確かに芳賀の河に打たれているのは、である。
9巡目 ドラ 東家
芳賀(29200点)
ポン
私の人生でこんなを止めたことなんて今までないし、これからもないだろう。
だが、現実に一発で打たれるはずのが芳賀の手牌に吸収されているのだ。
なぜだ?どうして??
頭の中で自分なりに整理しているとき、芳賀のツモ番が再び回ってくる。
ツモってきた牌は、再び聴牌を果たす。
一巡、たった一巡だが比嘉にとっては41300点の価値が消失した一巡。
10巡目 ドラ 裏ドラ 南家
比嘉(28600点)
ロン
・・・この瞬間、観戦者の全員が同じことを思ったに違いない。
「これは裏ドラ乗らないな。」
こんなことをいっては怒られるかもしれないが、あの場にいてあの光景を見ていたものは間違いなくそう感じただろう。
実際めくった裏ドラに落胆する比嘉だったのだが、落とし穴は意外なところにあったのだ。
1回戦成績
山下 +50.7 比嘉 +9.9 芳賀 -12.1 生島 -48.5
2回戦・・・・・山下−芳賀−比嘉−生島
先ほどトップを逃した比嘉だが、今回はそのお返しと言わんばかりにテンポよくアガリを重ねる。
東1局1本場
5巡目 ドラ 西家 比嘉(26500点)
チー ポン ロン
東2局
9巡目 ドラ 南家 比嘉(30700点)
ロン
東4局
6巡目 ドラ 裏ドラ 北家 比嘉(33300点)
リーチ ロン
南1局、まだまだ比嘉の牌勢に衰えはない。
7巡目には暗刻のチャンタもチートイツも狙える形。
7巡目 ドラ 西家 比嘉(39700点)
ダマで満貫まで見え、仕掛けも受けも出来る贅沢な手牌だ。
そして芳賀から切られた生牌のにチー。
ペンの残る2000点の微妙なチーだが、
2着目と16900点の差があり、ここはかわしにかかった。
しかし、これにはもったいないお化けさんがご立腹。
親の山下に2枚切れのカンを一発でツモられてしまう。
11巡目 ドラ 裏ドラ 東家 山下(18600点)
ツモ
裏ドラこそ乗らなかったものの、ラス目から一気に30000点復帰となる4000オール。
親の4000オール、しかも1回戦トップの山下のアガリ。
比嘉にとって最悪の結果を生む。
その後局は淡々と進み、展開に恵まれた比嘉がトップを死守。山下も2着を維持。
2回戦成績
比嘉 +57.7 山下 +5.5 芳賀 -17.9 生島 -45.3
2連続3着の芳賀はともかく、2連続ラスの生島はかなり苦しい。
後ろで見ていても一番安定感があり、きっちり守っているのだがいかんせん手が入らない。
3回戦でトップを取れなければ、優勝が現実的に厳しくなる。
2回戦終了時のトータル
比嘉 +67.6
山下 +56.2
芳賀 -30.0
生島 -93.8
3回戦・・・・・比嘉−生島−山下−芳賀
2度の流局をはさみ親番を迎えた生島に、待望の「先制」「好形」「高打点」の手が入る。
6巡目 ドラ 東家 生島(26500点)
ツモ
リーチと打って出るも山に3枚生きていた−は他家の手牌に流れ、河に顔を出すこともなく流局。
しかし続く3本場、ダブを仕掛けて山下から2900は3800点のアガリで供託を回収。
4本場も積極的に前に出る。
9巡目 ドラ 東家 生島(34300点)
この形から、をポンしてクイタンにかかる。
その後狙い通りもポン、終盤に比嘉から5800は7000点のアガリ。
15巡目 ドラ 東家 生島(34300点)
ポン ポン ロン
5本場は芳賀が倍満の聴牌を入れるも山下が冷静にダマテンでかわし、長かった生島の親が終わりを告げる。
次局山下が比嘉から7700点をアガるも、1本場は芳賀が比嘉とのリーチ合戦を制しそのまま親番を迎える。
8巡目 ドラ 東家 芳賀(22000点)
ツモ
ピンフの付かない聴牌だが、しっかり高目のをツモりあげ4000オール。
続く1本場。
生島が早い。
1巡目 ドラ 西家 生島(36700点)
ツモ
重ねたを一鳴き、更にその鳴きでを暗刻に4巡目にして満貫イーシャンテン。
4巡目 ドラ 西家 生島(36700点)
ポン
しかし、生島の上家の比嘉はしっかりと受ける。
4巡目 ドラ 南家 比嘉(4200点)
ツモ
点棒のない比嘉、そこそこの形なので危険なマンズを先切りする選択もあるだろう。
だがここは絞って打。
を切っていればどうやっても生島の8000点のアガリだった。
中盤、比嘉はさらに形がよくなる。
9巡目 ドラ 南家 比嘉(4200点)
ツモ
切り時か?
しかしここでも打で粘る。
対する生島はツモ切りを繰り返すだけ。
生島、あぁ無情・・・
生島・比嘉が苦しむ中、こっそりと山下に聴牌が入る。
10巡目 ドラ 北家 山下(25100点)
ツモ
打でダマテンを選択。
しかし12巡目にツモ切りリーチを敢行した。
比嘉・生島は追いつけるのか?
そんな周りの心配をよそに、すぐに手牌は倒された。
14巡目 ドラ 東家 芳賀(34000点)
ツモ
3者の攻防を後目に、またも4000オール。
あぁ無情・・・
それぞれがっくりと肩を落とす。
2本場、親の芳賀がさらにタンヤオ・チートイ・ドラドラの聴牌を入れるもここは流局。
3本場になっても芳賀の配牌に衰えはない。
1巡目 ドラ 東家 芳賀(48300点)
この半荘、是が非でもトップが欲しいトータルラス目の生島も応戦する。
5巡目 ドラ西家 生島(32600点)
ここからをチーしマンズのホンイツに向かう。
しかし次巡、一本道に見えた生島の手が止まる。
6巡目 ドラ西家 生島(32600点)
チー ツモ
こんなもの、ツモ切りしかないだろう。
普段なら絶対にツモ切れるはずだ。
生島の選択肢は、。
9巡目にを引きイーシャンテンになったところで、やっとドラとおさらば。
そのドラにポンの声は山下。
9巡目 ドラ 北家 山下(21000点)
この、山下が重ねたのは6巡目のこと。
ツモ切りしていれば当然鳴かれることのなかったドラ。
望外のドラポンで聴牌の山下の選択、ここでカンチャンに受ける打が最良の結果を生む。
次巡ツモで打、すぐにツモで2000/4000のアガリ。
生島と山下、一牌の切り時が両者に決定的な差を生み出した。
しかしここから芳賀、南1局目下箱下の比嘉の親と、南2局トータルラス生島の親を、あっさりとかわす。
あとは山下の親。2600オールをツモられ肉薄されるも、次局5200は5500点を生島からアガリ、 オーラスも1000点横移動で無事に大きなトップで終了。
3回戦成績
芳賀 +71.2 山下 +20.7 生島 -21.8 比嘉 -70.1
3回戦終了時のトータル
山下 +76.9
芳賀 +41.2
比嘉 -2.5
生島 -115.6
有名な麻雀漫画でこんな台詞があった。
「半荘で一番大事な局を挙げるなら、オーラスじゃなくてラス前だ!」
オーラスに指標を立てるために、たしかに大事だろう。
これは大会単位に置き換えるなら、次の4回戦が一番重要だということだ。
最終戦に優勝の目を残す。
そのために、とてもとても、大事な半荘。
4回戦・・・・・芳賀−山下−生島−比嘉
東1局、親の芳賀が1500点を先行リーチの比嘉からアガリ連荘。
続く1本場、山下と比嘉のホンイツ対決。
1巡目 ドラ 北家 比嘉(22500点)
ここから生島の一打目のをチーしてピンズのホンイツへ。
対する山下も積極的に仕掛けて対抗。
3巡目 ドラ 南家 山下(25000点)
ここからをポンしてソウズのホンイツへ。
山下も比嘉も縦横無尽に仕掛け倒す。
先に聴牌は比嘉。
7巡目 ドラ 北家 比嘉(22500点)
ポン チー チー
すぐに山下も追いつく。
8巡目 ドラ 南家 山下(25000点)
ポン ポン
ここからをチーしてカン対の対決。
この時点ではなく、が2枚が1枚の満貫勝負。
山下がを押す。
比嘉もを押す。
誰にも当たり牌が流れることなく終盤を迎えようとしたその時、山下のアガリ牌であるが比嘉の4cmに訪れた。
14巡目 ドラ 北家 比嘉(22500点)
ポン チー チー ツモ
打てば致命傷。
絶対にトップの欲しい比嘉から、絶対にトップを取られてはならない山下に8000点の放銃になってしまう。
しかし、ここで比嘉は少考に入る。
そして、顔色ひとつ変えることなく手の中からを打ち出す。
強い。
とても強いメンタルだ。
普通考えて、確かにこのは相当放銃率の高い牌だ。
しかもロンと言われれば8000点と言われることは間違いない。
比嘉はこの局面でも打っていけない牌、打点、そして相手を冷静に判断できている。
牌譜用紙に書かれた「ファインプレー☆」の文字がすべてを物語っていた。
比嘉がそれからソウズを引くことはなく、再度聴牌を組むことは出来なかった。
代わりにピンズを打てるようになった親の生島、危険牌を切ることなく聴牌し流局。
次局は比嘉のファインプレーによりチャンス手を潰された山下が、芳賀に2600は3200点の放銃。
東3局、重い展開が続くかと思われたが親の生島が局面を打開する。
8巡目にを引き入れ聴牌一番乗り。
8巡目 ドラ 東家 生島(26500点)
ツモ
場にが2枚、が1枚飛んでいるが打で聴牌とらず。
次巡、待望の引きで三色リーチ。
9巡目 ドラ 東家 生島(26500点)
これに飛び込んだのは芳賀。
15巡目 ドラ 西家 芳賀(29200点)
ツモ
形だけ見ればイーシャンテンだがは現物、もまず通る。
今まで引き際のよさが目立っていた芳賀だけに、ここはオリに回って欲しかった。
僥倖のアガリをものにした生島、4回戦目にして初の満貫ゲット。
長かった暗黒時代に別れを告げられると思ったのも束の間。
6巡目 ドラ 東家 生島(38500点)
この形からツモ切ったを北家の山下にポンされ、2巡後あっさりツモられる。
8巡目 ドラ 北家 山下(23300点)
ツモ ポン
満貫親っかぶり、しかもその相手が沈めておきたい山下。
生島の今決勝における不遇を象徴するような展開である。
ここから生島・比嘉・山下の一進一退の攻防が続く。
東4局1本場
12巡目 ドラ 北家 生島(33900点)
ポン ポン ツモ
南1局
15巡目 ドラ 北家 比嘉(19800点)
ポン ポン ツモ
南3局1本場(供託2.0)
8巡目 ドラ北家 山下(27700点)
ロン
逃げる生島、追いすがる比嘉、そこに割って入る山下。
とてもとても、大事な半荘。そしてついにオーラスを迎える。
東家 比嘉 24500
南家 芳賀 9200
西家 山下 32000
北家 生島 34300
共通の課題は、まず一つ。
1.自分がトップになる。
ただ、現実的に芳賀は苦しいだろう。
しかし山下以外の3者には、まだすることがある。
2.トータルトップ山下の着順を下げる。
これだ。
ただこれはかなり難しい。
この半荘トップ目の生島は、2着目山下から満貫をアガると3着に落とせる。
だが山下とは2300点差。
無理をして山下にまくられるようなことがあれば目も当てられない。
親の比嘉の存在もある。
比嘉はまず自分の着順を上げるために頑張らなくてはいけない。
その過程で生島からアガッて山下を押し上げてしまうのも辞さないだろう。
となると、現状山下の着順を下げるような器用な手組みを出来るのは芳賀のみ。
様々な思考が交錯する中、オーラスが行われたが、
予想だにしない形であっけなく幕は閉じる。
13巡目 ドラ 南家 芳賀(9200点)
ポン ロン
仕掛ける前の形がこう。
6巡目 ドラ南家 芳賀(9200点)
ツモ
ここから打でドラ受けとツモり三暗刻の目を残した。
そして2枚目のが上家の比嘉から切られると苦渋の声でポンを宣言。
そう、芳賀は3つ目の課題を選択したのだ。
3.山下をトップにしない。
これが最低限の課題。
現状の並びで万が一山下がトップになるということは、事実上山下の優勝を決定づけるものになる。
芳賀は最終戦にすべてをかけるため、ここで自分を殺す1000点のラス確を選択した。
4回戦成績
生島 +54.3 山下 +12.0 比嘉 -16.5 芳賀 -49.8
4回戦終了時トータル
山下 +88.9
芳賀 -8.6
比嘉 -19.0
生島 -61.3
山下の優勝条件は一目瞭然。
3者は当然トップ条件。
芳賀は山下が2着の場合57600点差、比嘉は67900点差、生島に至っては110300差をつけなくてはならない。 (同点の場合は決勝進出順位による)
山下の着順が一つ落ちる毎に、条件は20000点分縮まる。
条件を確認し、今年の日本オープン最終戦が開始された。
最終戦・・・・・比嘉−生島−山下−芳賀
東1局、親の比嘉がリーチで先手を取る。
終盤芳賀に追っかけられるも、無事1000オールのツモアガリ。
15巡目 ドラ 裏ドラ 東家 比嘉(25000点)
ツモ
続く1本場は、前回のトップで最終戦見ているだけにならずに済んだ生島が、山下から1000は1300で軽く流す。
その生島の親番も、4巡目に聴牌を果たした山下が芳賀から2600点のアガリで先ほどの失点を取り返す。
9巡目 ドラ 南家 山下(22700点)
ロン
今度は山下の親番で、芳賀と比嘉にチャンスが到来する。
16巡目 ドラ 西家 比嘉(27000点)
ツモ
打で出アガリ満貫、ツモって跳満の大物手。
17巡目 ドラ 南家 芳賀(20400点)
ポン ツモ
打で待ちの、こちらも満貫確定。
芳賀の待ちは虚しいことに山に0枚。
しかし終盤とはいえ比嘉の待ちは2枚山に生きている。
比嘉はツモ専だろう。
数巡前からオリている山下からのデバサイはまずない。
そして脇の2人からの出アガリは一時的にトップに立てるとはいえ、 山下とのトータルを考えるとむしろ自分を苦しめ、山下を楽にするアガリなのだ。
残りツモは3回。
この決勝戦、感情を表に出すことなく淡々と打ってきた比嘉。
この局面でこの手が入っているというのに、その表情に変わりはない。
・・・あと2回、・・・1回、・・・そして0回。
最大のチャンスをものに出来なかった比嘉。記録用にめくった裏ドラに、が虚しく転がる。
しかし山下の1人ノーテンで終わらせることには成功。
東4局1本場こそ比嘉が1人ノーテンを食らうも、2本場には誰でもアガれる満貫をプレゼントされる。
6巡目 ドラ 南家 比嘉(27000点)
一発ツモ
面白くなってきた。
観戦記者としてそう思った瞬間、山下の一撃が卓上を切り裂く。
14巡目 ドラ 西家 山下(21100点)
ロン
これで比嘉のラス親が流れる。
現状、山下追撃一番手だった比嘉だったが、この点差で親番が流れるのは痛い。
こうなると山下の着順を落とさないことには話にならないからだ。
一人脱落か・・・
そう思った南2局、状況を一変させる出来事が起こる。
11巡目 ドラ 裏ドラ 東家 生島(25100点)
リーチ ロン
これに飛び込んだのは、山下。
振り込んだ山下の手牌はこう。
11巡目 ドラ 裏ドラ 南家 山下(22100点)
チー ツモ
そして生島の捨牌は
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
流石にの方が安全に思える。
ただし、自分を狙ってくるという意識があるとが危険に見えてしまうのが麻雀の不思議なところ。
結果一番やってはいけない親への放銃となってしまう。
追われるものの重圧が、普段とは違うであろう打牌に現れた。
しかし、またも山下が空気を一変させるアガリを見せる。
10巡目 ドラ 南家 山下(16300点)
ツモ チー チー
3着目だった芳賀の出したリーチ棒も回収し、一瞬でラス抜け。
このアガリを見て、先日行われた第7期雀王決定戦を彷彿とさせた。
鈴木達也・鈴木たろう・赤坂げんきが何度も追い詰める中、 あと一息という局面で三人のメンタルを破壊する強烈なアガリをものにする男、第7期雀王「小倉
孝」。
勝者のアガリ、まさにそう思わせるに相応しいものだった。
とはいえまだ山下はラス目の芳賀と2900点差。
そして南3局山下の親番、なんとか被らせたい。
その期待に答えるように、対抗一番手の比嘉に早くも聴牌が入る。
5巡目 ドラ 西家 比嘉(35200点)
ツモ
山下との現在の点差は16500点。
トップ・ラスでも28700点差をつけなくてはならない。
素点を稼ぎつつ山下の点棒を減らす。
ドラ単騎のリーチ・ダマ、のリーチ・ダマ。
この条件を満たす選択として、正しいのは一体なんなのだろう。
この局面に自分が立ったとして、選択しそうなのはドラ単騎ダマ。
ツモなら満貫で文句なし、山下以外からは見逃しでマンズの多面張変化でリーチか。
もちろん正解かどうかはわからない。
比嘉が珍しく長考に入る。
「・・・・リーチ」
まず一つの選択をする。
そして一枚の牌が横を向く。
。
これが比嘉の選択。
後は結果を待つのみ。
願わくは、最良の結果になることを。
次巡生島にも聴牌が入る。
6巡目 ドラ 北家 生島(30300点)
ツモ
打でリーチ。
山下、手牌からを抜く。
そのを芳賀がチーして打。
一発消しに見えるが、実はこれで芳賀もイーシャンテン。
6巡目 ドラ 南家 芳賀(15800点)
チー
8巡目、比嘉に流れてきた牌は。
これで山下がオリ打ちをしてくれるかも知れない。
そう思ったかどうかは定かではない。
もしそんなこと思っていたとしても、生島にツモ切られた牌がすべてを無きものにした。
8巡目 ドラ 西家 比嘉(35200点)
ロン
一番最初にツモ筋にいたのは。
比嘉は最良の選択をしたのだ。
裏ドラに輝くが、そう言っていた。
食い流されてしまったのは、比嘉の選択の範疇ではないのだから。
舞台は整った。
山下、比嘉、そしてラス親の芳賀に優勝の可能性は絞られた。
山下は現状1位なのでアガれば優勝。
芳賀はラス親なのでひたすらアガる。(脇の着順次第で必要な点数が変わる。)
比嘉はツモアガリこそ3倍満以上と難しいが、山下から直撃なら3200点から条件を満たせる。
それぞれが条件を確認し、オーラスのオーラスが開始される。
比嘉の配牌を見て愕然とした。
1巡目 ドラ 南家 比嘉(44200点)
これは酷い。
これを条件の満たす手牌に育てるなんて、無謀もいいところだ。
一方アガリトップの山下の配牌を覗く。
1巡目 ドラ 北家 山下(18700点)
決まった。
これはそう思わざるを得ない。
親の芳賀と、現実的に優勝条件がある比嘉は前に出てくる。
が止まる可能性が少ないのだ。
それをわかっている山下、ゲームセットへ自ら動き出す。
7巡目 ドラ 北家 山下(18700点)
チー
比嘉、芳賀ともに追いつく気配はないまま4巡が過ぎる。
ここでを持ってきた山下、比嘉の捨て牌にマンズが高いのを見て一枚切れのを切り出しオリに回る。
打たなければ安泰の山下、ここは懸命な判断か。
山下がオリに回ったとき、比嘉にまさかの聴牌が入る。
12巡目 ドラ 南家 比嘉(44200点)
ツモ
山下のキー牌のを配牌から抱えたままチートイツの聴牌。
打で待ち。
山下はオリている。
山下はを2枚持っている。
今度は俄然比嘉が優勝する絵が見えてきた。
ほら、今にもロンの声がかかりそうだ。
・・・ところが。
比嘉がツモ切った牌に、芳賀から声がかかった。
17巡目 ドラ 東家 芳賀(15800点)
ロン
実は比嘉より2巡も早く聴牌していた芳賀。
しっかりとダマテンを決め込んでいた。
もう1局。
だが、放銃した比嘉も、条件が新しく加わる。
山下からの直撃は3900以上になったが、ツモアガリは満貫でよくなったのだ。
ただし、満貫のみである。
満貫未満は素点が足りず、跳満以上は3着に浮上した芳賀を再びラスにしてしまうのでダメ。
複雑な条件がプラスされた中、1本場が始まる。
アガるだけの山下、条件を満たす手を作りにいく比嘉。
そんな隙を与えまいと、芳賀が2巡目にをポン。
そして3巡目には早くも聴牌。
3巡目 ドラ 東家 芳賀(21600点)
ツモ ポン
しかし、ここからドラ切りの聴牌を拒否する打。
流石にやりすぎか?
5巡後にを引き聴牌。
いや、このくらいじゃやっぱり聴牌を取っておいたほうが良かっただろう。
実際を2枚も打たれてしまっている。
ところが次巡を持ってきて加カン。
新ドラは、なんと!
10巡目 ドラ・ 東家 芳賀(21600点)
加槓 ツモ
100人中99人は1500点でアガっているだろう手を、4000オールに仕上げてしまった。
お見事、その一言に尽きる。
これで芳賀は何をアガってもトータル首位に立てるが、アガリ止めがないのでまだまだ先は長い。
アガられる度に条件の増える比嘉、今度はツモアガリも満貫以上ならすべて条件を満たすようになった。
一方追い詰められたのは山下。
決勝という大舞台で充分なリードから迫られた立場。
筆者が味わったことのないものでも、そのプレッシャーは想像するに容易い。
2本場、芳賀はがトイツ、比嘉も手牌が中張牌で構成されている。
二人とも条件を満たす手組みが立てられる。
一体どっちが山下を捲くるんだ?
会場内がそんな空気で充満している。
そんな中、山下がホワイトボードを何度も見直す。
もう局面は7巡目を終わろうとしているのに、今更条件確認か?
そんなことを思いながら山下の挙動に目をやる。
すると、山下がおもむろに口を開く。
「ツモ」
7巡目 ドラ 北家 山下(14600点)
ツモ
なんともフワっとした終わり方だった。
ツモアガリに条件はなく、山下の手牌はスムーズに倒されるはずだが、追われる者の動揺があったのだろう。
会場の時が一瞬止まる。
その空気を一新するべく、立会人が高らかに優勝者の名を告げた。
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第四位・・・生島 一也
今回は状態、展開ともに恵まれず苦しい戦いとなってしまった。
しかし最後まで耐え難きを耐え、優良なゲームを演出したその功績は計り知れない。
第三位・・・芳賀 常代
リーチが嫌いというその雀風らしく守備力に長け、時折見せる鋭い攻撃で場を支配した。
後半、武器である守備に難が出てしまったのが悔やまれる。
第二位・・・比嘉 秀仁
厳しい状況に追い込まれることも多々あったが、下を向くことなく実直な態度でそれを受け入れる精神力の強さ。
この胆力が、最後まで手に汗握る三つ巴の戦いを作り上げたに違いない。
そして、最終戦こそ決勝の雰囲気が動揺を誘ったが、卓越したゲームバランスで4回戦まで危なげなく戦い抜き、 最後も自らのアガリで締めくくった。
第7回日本オープン、栄えある優勝者は
「山下 健治」
(文:橘 哲也)
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