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第15回日本オープン

順位
氏名
所属
合計
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
1
渋川 難波 プロ協会
88.8
9.6
-53.3
64.1
11.2
57.2
2
石立 岳大 プロ連盟
35.8
58.1
-17.6
-23.0
63.5
-45.2
3
小倉 孝 プロ協会
-43.6
-48.2
62.7
10.8
-47.6
-21.3
4
桑原 俊之 一般
-82.0
-19.5
7.2
-51.9
-27.1
9.3

≪決勝観戦記≫

昨年まで本戦は180名(60人3ブロック)だった日本オープンであるが、今期からは会場移転とともに200名(40人5ブロック)と規模を拡大した。
その分、本戦から決勝までの道のりは若干厳しくなったといえるだろう。
その中を掻き分け勝ち進んできた決勝進出者は次の4名。

石立岳大プロ(準決勝1位通過・プロ連盟)

「いしだて・たけひろ」と読むそうである。
もとは本名で活動していたが、最近プロ連盟での登録名をこちらに変更したとのこと。
若く見えるが、この日の解説者だった矢島亨と同い年らしい。
連盟でも十年選手である。
桑原俊之さん(準決勝2位通過・一般)

決勝メンツ唯一の一般。
千葉予選勝ち上がり。埼玉県在住で競技歴は長く、故・堀江弘明氏の「SPロッキー」の常連で、
協会道場だった「パレット」でもお見掛けした方。

千葉予選が行われた連盟・西川淳プロの「ワンダフルデイズ」も行きなれた会場だったようだ。

渋川難波(準決勝3位通過・プロ協会)

3年連続決勝進出だった雀竜位戦が今年は音沙汰なかったかわりに、こちらに顔を出した。

前日の準決最終戦では同卓の小倉と生き残りをかけて戦い、トップを取って決勝進出を決めた。
小倉孝(準決勝4位通過・プロ協会)

前日の準決勝最終戦。渋川に敗れ、「終わった」と思っていたが、
別卓でトップを取らなくても余裕だった桑原さんがトップだったために4位に滑り込んだ。
「追い風が吹いている」などと言ったら、デジタル革命を起こしたこの男に鼻で笑われそうだが、
少なくとも気分はいいはずだ。

悲運で終わった第6回のリベンジを果たすことができるだろうか?

昨年までは、一般も参加する日本オープンは顔出しNGの方もいるだろうという配慮から動画配信はしていなかったが、時代の流れというべきか、今回からは生放映することとなった。もちろん一般の桑原さんにも了承済である。なお、以降は全員敬称を略させていただきます。

★1回戦(座順・桑原−渋川−石立−小倉)

東1局、西家の石立が好スタート。
 ドラ
と、タンキで仮テンしていたところに絶好のツモ。打の4メンチャンリーチ。アガリは約束されたようなもの。
ドラはなかったが(ドラ・裏ドラ)、一発ツモで2000・4000。

東2局、ドラトイツの親・渋川がリーチ。
解説の橘哲也が思わず「いやらしい河」と叫ぶ。


これで待ち七対子である。
すでにポンでテンパイを入れていた小倉がリーチに押す。
 ポンドラ
小倉はをアンコにして打、3メンチャンでさらに押し続ける。
桑原にはの形があり、ここに4枚目のまで持ってきた。
渋川ばかりでなく押し返す小倉まで見ると……こうしてが押し出されてしまった。
一般参加の桑原は配信対局など初めてである。本人も「ずっと緊張していた」と語っていたが、見ていて正直メンタル面が心配になった。
しかし、東3局の桑原、
 ドラ
をリーチしてツモ。裏ドラで2000・4000。

東4局、
 ドラ
ドラ2枚のこの手で、テンパイ取らずの切り。
すでに仕掛けていた親の小倉がこれをポンしてテンパイを入れる。
 ポン ポン ドラ
。単なる引っ掛けというよりもトイトイに変化した際に、よりハジの牌で待ちたいという含みがあっただろう。
桑原はを引いてリーチ。
小倉、を掴む。前巡にを切っていては致し方なし。一発放銃で満貫献上(裏ドラ)。
スタート直後からの満貫親かぶり、親満放銃となった桑原だったが、2局連続の満貫アガリで点棒もメンタルも持ち直した。
なにより2度目のアガリ、あわてず好形めざしたテンパイ取らずの手順は競技歴の長さを感じさせる。いわゆる「年季が入っている」というやつだ。

南1局は石立が1000・2000。
 リーチツモ ドラ 裏ドラ
このアガリで石立が渋川をまくってトップに立った。

南2局、小倉に好手が入った。
 ドラ
テンパイ取らずの切り。
以降、引き→打引き→打リーチ。
 ドラ
テンパイ取らずから流れるような手順で入れた満貫確定リーチだが、イーシャンテン時に切ったがつまずきのシナリオメーカーとなる。
 ドラ
このイーシャンテンだった石立、を引き、切りでピンフ-ヤミテンを入れる。
は小倉の切ったのスジなのでさほど目立たない。
ここで親ながらも手にならない渋川がオリ気味にスジのに手を掛けてしまう。
小倉の捨て牌にがなければ、このシナリオは描かれなかったはず。おそらく一人旅になっていただろう。
石立、小倉の満貫リーチを潰すとともに渋川の親落としに成功。

南3局は石立500オ−ルで加点。
1本場は渋川がドラ3リーチを打つも流局で1人テンパイ。

オーラス、供託棒もあって3900の出アガリでトップの渋川がポン、ラス目で親の小倉がポンと、序盤から激しい空中戦を仕掛ける。
ここで石立が思い切った行動に出る。
 ドラ
このイーシャンテンから、渋川の切ったをチー、出来メンツのを切ってフリテン含みのタンヤオ仕掛けにしたのである。
この英断に、ご褒美のようにツモ。空中戦の2人より早く-のテンパイを果たす。
このとき渋川の手は、
 ポン ポン ドラ
のイーシャンテン。ツモ、打としたところでもしくはを刻子にしない限りは放銃は避けられない運命だった。
結局、さらにドラのをかさねたところで打となって決着。

1回戦結果
石立+58.1 渋川+9.6 桑原△19.5 小倉△48.2

 

★2回戦(座順・桑原−渋川−石立−小倉)

東1局は石立がリーチ。親の桑原はのトイツを頼りに仕掛けるも後半はオリ。なかなか連チャンさせてもらえない。

東2局は小倉が6巡目リーチ。
親の渋川はこのときホンイツのイーシャンテンになっていた。
 ドラ
早いリーチで現物もない。そして打点は十分。
解説の矢島が「これは無限に押すでしょう」と言った矢先にを掴んで放銃。
小倉は-待ちだったが、2翻高めのほうだった。
 ロン ドラ 裏ドラ

小倉は東ラスの親番でもリーチドラ1を石立から打ち取り、リードを広げる。

南1局、西家の石立がリーチ。
 ドラ
これに追いついた親・桑原がリーチ。
 ドラ
ともに2枚残りだったが、は掴んでもカンできるだけ石立が有利かと思われたが、石立が掴んだのはカンできないほうのラス牌だった。
裏ドラがで5800。桑原、1回戦から通じて親での初アガリで、これで気合が乗らないわけがない。
1本場もたたみかけるように7巡目リーチ。
 ツモ→打 ドラ
三色確定。当然のドラ切りリーチだが、一発目のツモは皮肉にも
三色が崩れるツモならば、これをとらえて親満だっただろう。結果、流局。

私見だが、この局、桑原が親満をものにしていれば、この後の展開、そしてなによりも桑原自身の闘争心が大きく変わっていたような気がしてならない。

次局はドラ表のカンに喰らいついてきっちりテンパイを入れた石立が500・1000は700・1200で桑原の親を終わらす。
 ツモ チー ドラ
その後は大きなアガリが出ることなく、
小倉43700、桑原28200、石立20400、渋川5700
という並びでオーラスを迎える。小倉はラス親なのでノーテンで終わらすことも可能だ。

石立、タンヤオ七対子をドラ待ちで即リーチ。
ハネ満手というよりは、一発でツモッて、あるいは裏ドラを乗せて倍満で一気にトップまでの気概だっただろう。
ドラ2の手で、すでにを仕掛けていた小倉、このリーチにはあせっただろう。ハネ満ツモはセーフだが、直撃はまずい。
安全牌のない手牌だったが、捨て牌に高いピンズよりはマシと、のターツを払っていくと、こんな手になった。
 ポン ドラ
もはや退くわけにはいかない。しかし、待ち牌はすでにヤマにはなかった(石立も当然カラテン)。
最後のツモでを引き、それまでに通っていたを打ったが、カンテンパイである。
小倉がテンパイ宣言をするかどうかに注目が集まった。
手を開ければ2着桑原との差は広がる。稼ぎ時、いわゆる王様タイムとして連チャンする手もあったが、2着3着の差は5800に縮まり、さらに1本場供託1本で1回戦トップの石立に2着浮上のチャンスを与えることになる。小倉は冷静に手牌を伏せてこの半荘を終わらせた。

2回戦結果
小倉+62.7 桑原+7.2 石立△17.6 渋川△53.3

トータル
石立+40.5 小倉+7.2 桑原△12.3 渋川△43.7

 

★3回戦(座順・桑原−渋川−石立−小倉)

協会では場決め、起家決め、ともにサイツ二度振りで行っているのだが、どうしたわけか3半荘連続同じ並びである。
ここまでの2回はタイトル戦の決勝にしては早く終わっているが、この回は輪をかけて早かった。連荘は1回のみの全9局。流局も1回しかない。
東1局は小倉が6巡目リーチ。
 ドラ
10、11巡目にと持って来て「ここまで待っていれば一発ツモ」ではあったが、これが伝説の小倉リーチ。
かつて小倉が近代麻雀で連載していた戦術コラムで、「十分な体勢でシュートができるのが理想だが、それを待っていてはシュートのタイミングを逸してしまう」と、サッカーになぞらえて持論を展開していた。
好形だから成功するとは限らない。それよりも打てるシュート……いや、リーチを積極的に打つことに重点を置くのが小倉流なのだ。
スジになったこともあって桑原から出アガリ、2600。

次局は桑原が11巡目リーチ。親番は渋川だったが、手が遅かったこともあって無抵抗で親を流した。桑原の1人テンパイ。

流れての東3局1本場、渋川がリーチツモピンフ・ドラ1をツモる。
 ドラ
のイーシャンテンに一番おもしろくないツモでのテンパイだったが、5200+1本場+供託1本と十分な収入。

次局は七対子ドラ2をリーチしてツモ。
 ドラ
リーチした7巡目で、は生牌だったが、誰も持っていなくてヤマに3枚残りだった。
渋川はこの後徹底した守備で2回のアガリの点棒を守り切った。
オーラスはラス目の桑原がメンタンピン・ドラ1のリーチと来たが、果敢にポンで仕掛け返し(桑原に満貫を打ってもトップで終われる状況だった)アガリ切った。攻守ともに光った、まさに渋川の半荘。石立に連続3着を引かせたために3者横一線の展開になった。

3回戦結果
渋川+64.1 小倉+10.8 石立△23.0 桑原△51.9

トータル
小倉+25.3 渋川+20.4 石立+17.5 桑原△64.2

 

★4回戦(座順・石立−小倉−渋川−桑原)

ここまでは短時間で終わる半荘だったが、この4回戦はうって変わって2時間超えの熱戦となった。
その時間のうち半分は石立が親だった。起家を引いていきなり6本場まで積んだからだ。
大物手はひとつもない。最高打点は0本場のリーチ・ドラ1の3900と3本場でのトイトイのみ1300オール。
ただし、こちらは供託3本をかっさらい、積み棒共々計7800点であった。他は1翻手かテンパイ料の収入。
それでも親番終了時に4万点近く持っていた。それが徐々に削られていったところで決定打が出る。再び親を迎えた南1局でのアガリ。

温存していたの加カンが、様々な要素で小倉の読みを狂わせた。
終了後、小倉はこの局について「打点が読み辛かった」と語っている。
たしかに、カンドラ表示にがめくられたが、そのは石立自身が3枚かぶり捨てている。また、このことからソーズ下のメンツはおそらくゼロ。本ドラがトイツかアンコはあり得るが、ドラがまるでない可能性もある。捨て牌はホンイツには見えない。
さらにの手出し加カンである。一刻も早くアガりたい親の勝負手。このような場合イーシャンテンでのカンがセオリーとされている。
テンパイまで加カンを引っ張るのは嶺上開花が狙えるが、もし嶺上に有効牌がいた場合、テンパイが1手遅れになるからだ。
また、打点が欲しいからカンに踏み切ったようにも見える。
おそらく石立もカンをして一刻も早くテンパイしたかったにちがいない。
しかし他の3人はメンゼン。リーチが飛んできたときには渋々を安全牌として使用するつもりだったのだろう。
それが結果としてテンパイした事実をわかり辛くしている。
つまり、このカンの瞬間、
打点については「ドラトイツかもしれないがゼロかもしれない」
進行に関しては「テンパイかもしれないがイーシャンテンの可能性も大いにあり得る」
という相反する可能性がすべて共存する、まるで靄(もや)に包まれたような状況なのだ。
小倉はツモ切りで放銃となったが、ノータイムでの打牌ではない。
靄の向うの姿を推測するのに5秒ほどかけた末にGOサインを出し、結果敗れたわけで、安易な放銃ではないのである。
全19局中9局が親番という猛攻で、石立が1回戦以来のでかいトップを決め、最終戦を有利に迎える。
2度目のラスを引かされた小倉は桑原に次ぐ苦しいポジションとなった。

4回戦結果
石立+63.5 渋川+11.2 桑原△27.1 小倉△47.6

トータル
石立+81.0 渋川+31.6 小倉△22.3 桑原△91.3

 

★5回戦(座順・渋川−小倉−桑原−石立)

条件を確認してみよう。渋川はトップを取って石立を3着以下にすれば優勝。石立2着でも9500以上の差を付ければ優勝である。
また、2着の場合でも石立を9500差のラス、または29500差の3着にすれば優勝である(同点の場合は準決勝順位で石立が優位)。

小倉は石立と23400以上差のトップラス、かつ渋川を3着、または14000差の2着にできれば優勝である。

桑原は苦しい。1人、もしくは2人を躱すことは可能でも、3人まとめてとなると、相当な難題である。
現実的なのは小倉相手にトップラス、または9000差のトップ3着での3位浮上。「せめてそれを目指します」と言って卓に着いた。

協会のタイトル戦決勝では、最終戦は場決めをするが、起家決めはせずにそれまでのトータル首位者が自動的にラス親となる。
これによって起家にさせられたのは渋川。できれば西家、せめて南家スタートになりたかったにちがいない。
序盤で石立を躱して十分なリードを持てれば問題ないが、そうでなければ稼ぎ時の親番がいち早く終わってしまうので不利である。
仮に西家スタートならば、先に親番のなくなる小倉、桑原のどちらか、あるいは2人とも条件を満たせずアガリに制限がかかる中でのびのびと連荘が狙える。その差はでかい。
ということで、渋川は序盤からアクセル全開で攻めることになる。
開局早々リーチ。すぐに桑原の追っかけを喰うが流局。そして1本場でビンゴを引き当てた。
 ツモ→打リーチ ドラ
5巡目リーチ。そして捨て牌はこうである。

ドラメンツがあり、678三色含みのタンピン形に育っていた桑原、
 ツモ ドラ
たまらずが出ていった。ポイントリードしている者ならば一発目はまず現物のと行くこともできようが、いまの桑原にそれを求めるのは酷。だいいち一発を避けたところで親満だ(裏ドラ)。

2本場、この局は小倉が序盤から中張牌を並べ手が重そう。桑原は親満放銃の後では安手でアガるはずがない。
ということで「この親を落とすのは俺しかいない」とばかりに石立が果敢に仕掛け、喰いタンで渋川の親を落とした。

東2局、親の小倉が粘るも、リーチ→流局。1本場、喰い三色のみ(放銃・桑原)。
2本場、リーチ→流局と点棒はさほど増えない。
3本場、小倉またも11巡目にリーチ。
 ドラ
すでにポンと仕掛けていた石立、
 ポン ポン
リーチ後に掴んだをノータイムでツモ切り。小倉の捨て牌にソーズはリーチ打牌のがあるだけで相当の危険牌。
結局小倉がを掴んで石立のアガリ。
平坦な点棒状況ならば親番の小倉や桑原と勝負しなければならないのは渋川のほうだが、すでに優勝条件は渋川の掌中にあるので、石立がそれぞれの親番と勝負しなければならないという図式になっている。
桑原も親でポン・ドラ2の5800(放銃・小倉)、1本場はリーチ→流局と粘るも、2本場に、
 ドラ
渋川がこの手で11巡目リーチ。14巡目にツモで1000・2000(裏ドラ)。

小倉が5800を打っていたために2着に浮上していた石立、親番を迎えてあとは渋川との点差を詰めるだけだったが、下位陣2人に手が入って2軒リーチ。石立は何もできないままに終わる。この局の結果は小倉が桑原にリーチ棒付き8000放銃。これで石立は3着に。
苦しい展開だが、ここで石立に神風が吹く。
小倉が3巡目にリーチ。
 ドラ
すでにアドバンテージを握っている渋川は親とはいえ、当然のオリ。そうして局面が長引くうちに、桑原が追いついた。
 ドラ
12巡目リーチ、そして3巡後にツモアガッた。(裏ドラ
ハネ満ツモ、そして渋川が親かぶり。これでどうなったかというと、渋川35700、桑原37500と、トップが入れ替わったのである。
この瞬間、勝利条件が渋川から石立に転げ落ちた。

南2局は小倉がリーチ→流局(小倉、石立がテンパイ)。
1本場は渋川のリーチに石立が飛び込んでしまう。
リーチピンフの2000点と安かったが、前局供託棒も入れて、桑原を1500上回り、再びトップになった。

南3局、桑原の親番。連荘され、再び桑原がトップになると屈辱の4位落ちとなる小倉が執念のハネ満ツモ。
 リーチツモ ドラ 裏ドラ
6巡目リーチ。高目を一発でツモって3000・6000。
オーラスを迎えてどうなったかというと……
渋川34500 桑原30000 小倉19400 石立16100

最終戦開始前のポイントはこうである。
石立+81.0 渋川+31.6 小倉△22.3 桑原△91.3

石立は連荘して渋川と9500以内の2着に浮上すればいいが、もうひとつ道がある。
ひとアガリして小倉をまくり、3着に浮上したのちに桑原が渋川との4500差をまくってくれることに期待する道である。
桑原は「せめて3位」と語っていたのだから、アガッてトップを目指すのは間違いない。
どちらの道にしろ、この点差でラス目のままではたとえ渋川が2着に落ちても優勝に届かないので、まずは連荘あるのみ。
(桑原がこの半荘のトップ=3位浮上を目指して5200以上の手を作り、それに小倉が放銃して渋川2着、石立3着となっても石立優勝だが、これは狙ってできることではないので石立自身の指針とはならない)

「まずは連荘」と取った石立の配牌。
 ドラ
役牌2組で連荘はできそうな配牌であったが、もっと理想的な配牌を手にした者がいた。
 ドラ
4回戦で、あれほど連荘した石立だったが、この半荘の東ラスでは連荘できなかった。
そしてこのオーラスは、連荘どころか、たった1分で終わってしまったのである。
 ポン チー ドラ
渋川、1回ツモッただけで、2巡目チー、3巡目ポンでテンパイ、4巡目ツモ!
劇的なオーラスとなることが多い日本オープンで、かつてないようなあまりにもあっけない幕切れであった。

5回戦結果
渋川+57.2 桑原+9.3 小倉△21.3 石立△45.2

優勝・渋川+88.8
2位・石立+35.8 
3位・小倉△43.6 
4位・桑原△82.0

渋川難波、優勝おめでとう。
最終戦オーラスに限っていえば配牌の勝利以外の何物でもないが、それも、ここまで守備に重点を置いて、勝利への道を踏み外さないように打ってきたからである。どこかで失点を重ね、ダブアンコでもまだ足りないというポイントになっていれば、この配牌が生かせなかったかもしれないのだから。ちなみに、渋川の放銃は、1回戦に2回(1000点2回)、ラスになった2回戦は2回(8000、3900)あるが、3回戦以降は1度たりとも放銃がなかったのである。いかに慎重に打っていたかがわかる数字だ。

石立岳大、随所に見せた鋭い躱し手と連荘力は注目に値する。昨年優勝した山口大和は連盟Aルールで培った手作り重視の重いメンゼン麻雀を貫いて結果を出したが、石立は協会ルールを十分に研究してきたのだろう、メンゼン、喰い仕掛けにかかわらず終始アグレッシブに局面をリードしていた。最後の最後にあと一歩及ばなかったが、連盟の層の厚さを感じさせてくれた。捲土重来に期待したい。

打ち上げの席で「やはりプロとのちがいを感じさせられました」と謙虚に語っていた桑原俊之。
たしかに後半はちょっと気後れしていたように感じられた。先にも触れたが、
 ドラ
2回戦のこの手で安目ツモとなってカン一発ツモの親満となっていれば、あるいは早いうちに1回トップを取っていれば、十分優勝争いができたのではないかと思う。「プロはちがう」と感じるとしたら、それは配信対局や決勝に場慣れしているからで、実力では決して劣っていませんでした。来年お待ちしています。

決勝の翌日に「日本オープン決勝負け。(海外のカジノでの)金かけたポーカーで負ける25倍悲しい」とツイートしていた小倉孝。
じゃあきっと、勝つと25倍うれしいだろうな。ポーカーばかりやってないで、こっちに戻って来〜い!

渋川は第11期の雀竜位に次ぐ2度目の戴冠となったが、雀竜位戦ではアガリまくり、他3者を沈めてぶっち切りの優勝であった。
いわば「攻め」の勝利だったが、今回は明らかに「守って」の勝利である。
決勝15回戦の雀竜位とちがって5回戦の戦いなので、まず戦いの中央から脱落しないことに重点を置いた結果なのかもしれないが、今回の優勝で「勝ちパターンの引き出し」が増えた印象である。
数年のうちに3っつ、4っつと獲得タイトルを増やしていくだろうと予言して、筆を置き……いや、PCを閉じます。

(文・五十嵐 毅)

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