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日本プロ麻雀協会、関西所属協会員による西日本最強決定戦。
「ウェスタン・チャンピオンシップ2012」開催。

最終ポイント成績

順位
名前
TOTAL
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
1
水谷 葵
135.2
63.4
11.9
58.8
56.9
-55.8
2
乾 哲也
-2.5
8.1
-22.3
-13.3
-56.6
81.6
3
柴 卓司
-10.3
-52.0
61.1
16.8
-10.3
-25.9
4
山代 直毅
-123.4
-19.5
-50.7
-62.3
10.0
-0.9

≪決勝観戦記≫

「若いなぁ」
今大会の決定戦出場者を眺めた感想である。
何故なら、乾・柴・水谷の3人は11期後期生。
つまり、まだ入会してちょうど半年の新人である。

前日行われた準々決勝・準決勝はトーナメント方式で行われたのだが、トーナメントに勝つためには経験が必要という話をよく聞く。
条件を有利にするための打ち方は計算と頭の回転が必要であり、それは実戦によって身につくという考え方からだろう。
しかし彼らはそんなことを物ともせずに勝ち上がってきた。
そのことを裏付ける要因になるかは分からないが、3人はそれぞれ有名な大学の出身である。
勉強が出来る人は実戦が少なくとも理解が早いということだろうか。

新人3人の話ばかりになってしまったが、山代もプロ歴3年目の20代選手なので若手と呼んでいいだろう。
彼が若手ではないとなると、似たような歳の私も若手ではなくなってしまう。
それは嫌だ、是非若手と呼んで欲しい。
山代は今期の雀王戦でC1リーグに昇級を決め、雀竜位戦でもB級に昇級。
決定戦進出は初めてではあるが、実績では他の3人を圧倒している。
新人3人が山代に挑むという構図の決定戦が始まった。

★1回戦★(山代→乾→水谷→柴)

まず大きく点棒が動いたのは東3局。

水谷の早い親リーチに対して、ホンイツテンパイが入った柴とタンピン三色イーペーコーまで見えるイーシャンテンの乾。
2人共しばらくは突っ込む気満々というところか。
しかしこのリーチに飛び込んでしまったのは山代。
リャンシャンテンだが、現物どころか通りそうな牌すら1枚もない。
ドラドラであるため開き直って押してみたが、ワンチャンスの牌であっさり刺さってしまう。
裏が乗っての親満貫。

続いて1本場。
乾のリーチを受けた山代の手牌。
山代(西家)10巡目
 ポン ドラ
乾捨牌

(リーチ)
ここで上家からが出て長考する。
鳴くかどうかだけではなく、鳴いてテンパイを取るかどうかも選ばなくてはならない。
山代が選んだのは、チーして打
振り込みたくはないが、ほふく前進くらいはしようという選択である。
これがはまった。
次巡を引き、程無くして乾がを掴んだ。
前局大きな失点をしてしまった山代だが、この初アガリで落ち着けるだろうか。

東4局。

13巡目に水谷がリーチ。
ホンイツかもしれない親の仕掛けに対し、その色待ちの愚形。
不利な勝負に見えるが、他の2人はを持っていないように見える。
それならばこのくじを引いてみる価値はある、という考えだろうか。
狙い通りには3枚全て山生き、しっかりツモって裏も乗せた。
トップ目にこういうアガリを決められる展開、他3人の顔色が曇るのも無理はない。

南1局 柴→乾8000
南2局 乾 2000オール
南2局1本場 乾 1000は1100オール
乾が3連続でアガリを決め、水谷に6400点差と迫る。
しかし次の南2局2本場。
山代(北家)6巡目
 リーチ一発ロン ドラ 裏ドラ
このリーチに一発で捕まったのは乾。
これで乾はトップが厳しくなり、1回戦は水谷のトップで終了。

水谷+63.4 乾+8.1 山代▲19.5 柴▲52.0

 

★2回戦★(山代→柴→乾→水谷)

この半荘は乾が先制する。
東1局 乾(西家)12巡目
 リーチツモ ドラ
ドラ表待ちカンチャンリーチをしっかりツモりあげた。
決勝開始前、4人の中で1番緊張していなさそうに見えたのが乾だった。
乾の普段の雀風に詳しいわけではないが、決勝の舞台でもこのリーチをかけられるということは平常心で打てているということだろう。

東4局に大きなアガリが発生する。

水谷の最後の打牌に対して山代が少考していた。
チーをすると柴のハイテイをずらすことができる。
乾は手を崩していることが濃厚なので、ハイテイをずらすという行為はした方がいいだろう。
たださすがには鳴けない、安全牌が無くなってしまう。
泣く泣く見送った結果のハイテイツモ。
私は山代の採譜者だったので山代目線で観戦していたが、この日の山代は牌の巡りがどうにも噛み合わなかった。

次局もそうだ。
南1局 山代(東家)5巡目
 ツモ ドラ
のみ手とはいえ当然のリーチ。
しかし、仕掛けていた乾のアガリ牌をあっさり掴んでしまう。
乾(西家)7巡目
 ポン ドラ
「またか、今日はこんなことばかりだなぁ」という心の声が聞こえてきそうである。
麻雀というゲームの性質上こういうことがおきてもおかしくないのだが、それでも腐っていいことなんか何もない。
まだ先は長い。

続いて南2局。

大物手が入ったのは水谷。
水谷(西家)14巡目
 ドラ
テンパイ打牌のはホンイツ仕掛けで2フーロの乾にかなり危険な牌だが、躊躇なく押した。
その後乾から手出しのが入り、その後に水谷が生牌のを掴む。
これも躊躇なく打ち出し、放銃となった。
水谷の目からが全て見えていて、乾がの面子を持っているパターンもほぼない。
そうなると乾の手牌はかなり限られてくるため、の危険度は相当なものである。
で放銃するとおそらく5200点、可能性は低いが12000点もあり得る。
残り2巡で、自分は2枚切れのカンチャン待ち。
いくら満貫テンパイとはいえ、このは我慢できたかもしれない。

南4局1本場供託2000点
水谷14300
山代14500
柴36400
乾32800

柴はアガればトップ、乾は300・500条件。
山代は、1回戦ラスだった柴をトップにしての3着であれば良しというところか。
3人が早アガリを狙ってくる状況である。
そして山代と柴にファン牌が対子、乾もチャンタを見据えつつ1巡目から仕掛ける。
親の水谷にとってはかなり辛い状況のはずだった。
しかし1番手が入っていたのは水谷、5巡目にリーチ。
水谷(東家)
 ドラ
一気にトップまで見える手が入った。
さすがにこの巡目に親に曲げられると全員押せない。
リーチ時点で5枚残っている待ちだったが、脇に流れて流局。

次局も全員アガればいいだけの点棒状況は変わらない。
ここでも水谷の早いリーチが入る。
今度は安全牌のない山代と仕掛けていた乾が押しの態勢に入ったが、決着はすぐについた。
南4局2本場 水谷(東家)7巡目
 リーチ一発ツモ ドラ 裏ドラ
前巡、水谷はリーチの発声をするまでかなりの時間を要した。
確かにこの巡目のこの手牌ではもったいない気もするが、全員が早アガリに向かう状況であり、さらにもう乾の仕掛けも入っている。
足を止めるためにさっさと曲げておいた方がいいだろう。
その選択が最高の結果を呼び、トップ目まで突き抜けた。

南4局3本場
水谷31900
山代9300
柴31200
乾27600

乾は700・1300か3900でトップだが、できれば1000・2000以上で1回戦トップだった水谷を3着に落としておきたい。
柴はアガればトップ。
山代はハネ満以上しか着順が変わらない、水谷にトップを取らせないようなアガリや差し込みが現実的か。

最初のテンパイはまたも水谷。
水谷(東家)9巡目
 ポン ドラ
1500点だが、柴から出れば次局伏せることができる。
数巡後に乾がリーチ。
乾(北家)13巡目
 ドラ
どこから出ても条件は満たしている。
しかし、この局を制したのは柴だった。
柴(西家)14巡目
 ロン ポン ドラ
乾のツモ切った牌を捉えて満貫。
このアガリで、柴が1回戦のラスを帳消しにするトップをもぎ取った。

柴+61.1 水谷+11.9 乾▲22.3 山代▲50.7

(2回戦終了時)
水谷+75.3
柴 +9.1
乾 ▲14.2
山代▲70.2

 

★3回戦★(山代→水谷→乾→柴)

山代はこの半荘でトップを取らなければ厳しいだろう。
しかし、いきなり満貫放銃のスタート。

親番を維持するために、リーチに通りそうな牌を切ってテンパイに向かうという考え方はいいだろう。
ただ、水谷はリーチの一発目に無筋のをノータイムで押している。
イーシャンテンを維持するのはいいが、水谷にも通っているから切るべきだっただろう。
ここまでの展開に焦り、集中力を切らしてしまったか。
山代は東3局にも柴にリーチ棒付きの満貫を献上してしまい、この時点で山代の優勝の可能性はかなり厳しくなってしまった。

東4局、柴が正解に辿り着いたアガリを見せる。

柴(東家)4巡目
 ツモ ドラ
どのターツを落とすかの選択だが、ソーズの安さと三色を見ての打
そして12巡目にテンパイ。
 ツモ ドラ
確定しているダブ東という役を手放したくはないが、染め手仕掛けの水谷に対して2枚もマンズを押しきれない。
高目三色という役は残るため、切りリーチ。
リーチ時点で待ちは1枚しか残っていなかったが、安目とはいえその牌を引きアガった。
裏も乗って4000オール。

ここから柴が噴いた。
東4局1本場 柴(東家)11巡目
 ツモ ドラ
南1局 柴(北家)6巡目
 ツモ ドラ
何だこいつ、何でそんなところを引けるんだ。
この時点では、これはまさに優勝者のツモであろうと思っていた。
どちらの手もリーチでアガりきり、この時点で持ち点は6万点を超える。
後はこのままトップを守りきって、優勝の行方は水谷とのマッチレースとなる。
そうなるはずだった。

南3局
乾15700
柴59200
山代▲9000
水谷34100

この乾の親を流せばトップが決まる柴、この局もリーチをかける。
柴(南家)4巡目
 ドラ
このリーチは観戦者の中でも賛否両論あったが、私はリーチをかけることが損だと思っている。
確かに早いし待ちも悪くない。
ただ、これだけ点差が離れている乾の親番である。
乾が連荘して水谷をマクってくれるのが理想的。
自然とアガれる手はアガればいいと思うが、無理して流しにいく必要はなさそうだ。
何より守備の面で無防備になるのが怖い。
ダマにしてもツモればアガれるし、役が欲しいなら3巡目に切ったを残しておいてピンフまで待ち続ける手もあった。

結果は最悪だった。
乾(東家)8巡目
 ロン ポン ドラ
掴んだのは柴。
この満貫放銃で、一気にトップが危うくなってきた。

その後も乾が連荘して一旦2着に浮上するが、山代のハネ満を親被って再び3着に舞い戻ったオーラス。

柴40800
山代▲300
水谷30800
乾28700

乾は先程の親被りで満ツモトップの圏外へ押し出されたため、最低でも水谷をマクって2着になることが目標だろう。
柴や山代にとっても、そうなってくれることが自分にとって都合がいい。
とにかく、水谷にアガられることだけは避けなければならない。

しかし、3者の願いは脆くも崩れ去った。
水谷(西家)12巡目
 ツモ ドラ 裏ドラ
そこだけには、その打点だけはアガられてはいけなかった。
しかも、裏ドラ条件の三面張で裏ドラの牌をツモりあげてのトップ。
これにより、水谷がトータルポイントで一気に突き抜けた。

水谷+58.8 柴+16.8 乾▲13.3 山代▲62.3

(3回戦終了時)
水谷+134.1
柴 +25.9
乾 ▲27.5
山代▲132.5

柴の心境はどうだろうか。
途中までダントツ目に立っていたが、最後の最後にターゲットにマクられてしまった。
普段から感情の起伏が激しい人間ではないので見た目ではよく分からないが、さすがに落ち込んでいてもおかしくない。
4回戦までの長めの休憩で切り替えが出来たかどうか。

 

★4回戦★(柴→山代→乾→水谷)

東3局。

乾の親リーチの一発目、柴が長考する。
柴(西家)8巡目
 ツモ ドラ
協会ルールにおいて、平和ドラ1は結構な勝負手だと思われる。
普段ならを押しての即リーチで問題ないだろう。
ただ、これは決定戦であり条件戦。
水谷を沈めるために、親のリーチにはオリて連荘させにいく手もある。
無スジを押して追っかける必要があるかどうかは悩むところだ。
それでも、柴が選択したのは追っかけリーチ。
水谷を沈めることより自分のトップ率を上げにいく方を選んだ。
柴のポイントだと連勝すれば自然と水谷マクることもあるため、それもいいだろう。
狙い通り乾がを掴み、3900のアガリ。

この後は互いに牽制し合う展開が続く。
局数は多いが、大物手が出ない。
この半荘は1度も満貫以上のアガリが出なかった。
全員のターゲットである水谷は、東場の親で1人テンパイ後、1300は1400オールのアガリ。
南2局にも3900をアガるなど、要所でのアガリで点棒を減らさない。
こうなると3者は親での連荘で水谷を沈めたいが、それも叶わずオーラスを迎えたところで決定的なアガリが出た。

2回戦・3回戦に続き、オーラスに勝負強さを見せた水谷。
七対子のイーシャンテンから積極的にリャンメンチーを入れた結果、高目でのアガリを呼んだ。
この局、柴と山代は手が悪すぎて降りることしか出来なかったが、乾にはアガれそうな手が来ていた。
ただ、自分の持ち点の少なさから高打点を目指して水谷に鳴かれる牌を下ろしてしまった。
ここは水谷の3着を確定させるアガリに向かった方がまだ優勝確率が高かったように思える。

続いて1本場、この局がラストチャンス。
山代と柴は1300・2600か満貫条件、とにかくトップを取るしかない。

柴(南家)6巡目
 ツモ ドラ
色んな手役が見えていて難しい。
ホンイツが見える、七対子も見える、三色も見える、ダブ南は重ねたい、ドラは使いたい。
出来ることなら何も切らないで次のツモ牌を見たいところだが、そういうわけにもいかない。
柴が選んだのは、対子手を選択肢から外した。
2巡後のツモがで一気にやる気が出る。
マンズターツを払い、がポンできればドラのくっつきかホンイツで条件を満たす。
11巡目にを引き、いよいよイーシャンテン。
南ポンでも門前テンパイでも1300・2600が出来そうだ。
ただ、この時点で山代と乾はほぼオリている。
水谷はイーシャンテンだが、危険そうな牌を引けばすぐに手仕舞いするだろう。
がポン出来る可能性はほとんどない。
つまり、あとは柴と山との格闘である。

この対戦、勝ったのは山だった。
最後まで柴の手牌がテンパイすることはなく、全員ノーテン。
水谷の優勝がほぼ決定した瞬間である。

水谷+56.9 山代+10.0 柴▲10.3 乾▲56.6

(4回戦終了時)
水谷+191.0
柴 +15.6
乾 ▲84.1
山代▲122.5

★5回戦★(水谷→山代→乾→柴)

後は水谷のウイニングランであるはずなのだが、少し危なっかしかった。
東2局に手詰まりから山代の親リーチに7700を打ち上げてしまい、まず並びを作ってしまう。
そしてその次局、事件が起こりかける。

乾のドラポンに対して、水谷が役ありリーチをかける。
ドラポンとリーチで親の山代を挟み、オリさせにいくという意図なのだろうか。
乾がただのドラポンならまだよかったのだが、実際はご覧の通り。
これを水谷が掴んでいれば大事件だったが、ツモアガリで助かった。

この後も連続でピンチを迎える。
東3局、水谷の2フーロに対して乾が親リーチ。
乾(東家)10巡目
 ドラ
高目ハネ満の大物手。
直後に3フーロ目のチーテンを入れた水谷がすぐ掴めば出すかもしれない。
しかしここは水谷に軍配が上がる。
水谷(西家)11巡目
 ツモ チー ポン ポン ドラ

東4局、まず水谷がリーチ。
直後に親の柴が追っかけた。
柴(東家)9巡目
 ドラ
ハネ満確定リーチ。
トップラスで約10万点差必要な柴だが、直撃出来ればかなり詰まる。
最後の大チャンスである。
しかしここも勝ったのは水谷。
水谷(南家)9巡目
 リーチ一発ツモ ドラ 裏ドラ
ラス牌のカンチャンを一発ツモ。
この日の水谷は最後の最後まで勝負強かった。

乾+81.6 山代▲0.9 柴▲25.9 水谷▲55.8 (供託1.0)

(最終結果)
水谷+135.2
乾 ▲2.5
柴 ▲10.3
山代▲123.4
(供託1.0)

 

 


水谷は普段は一般企業に勤めているOLで、
休日にゲストプロとして活動している。

大阪・豊中市の雀荘にもゲストに入っているのだが、
このお店にはちょっとしたジンクスがある。

このお店で働いている、もしくは働いていた後に初タイトルを獲った協会員や元協会員を私は既に6人知っている。

関西の選手は関東の選手と比べて大会に出場できる機会が少ないと考えると、これは異常な数字だろう。

そして、今回水谷が7人目のタイトル獲得者となった。

 

そういえば、そのお店に7年近くいるのに未だ無冠の協会員がいたっけか。

そう考えるとそのジンクスもあまり効果ないのかな。

 

 

そうか、それはその張本人である私の力不足なだけか。

(文・田村 洸)

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